脂質異常症 脂質異常症の概要

脂質異常症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 17:57 UTC 版)

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脂質異常症
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
内分泌学
ICD-10 E78.0
ICD-9-CM 272.0
DiseasesDB 6226
eMedicine med/1073
Patient UK 脂質異常症
MeSH D006937
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診断基準及び病態による分類

脂質異常症(高脂血症)は診断基準による分類と病態による分類とがあり、診断基準による分類は、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類があり、世界保健機関 (WHO) の基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている[1]。一方病態による分類はリポタンパク質の増加状態より分類するもので、世界保健機関の1970年報告[2] に基づき日本動脈硬化学会が2013年版脂質異常症治療ガイドに脂質異常症表現型の分類法として記載した[3]

A.診断基準による分類法

高コレステロール血症

高コレステロール血症Hypercholesterolemia)とは、血液中の総コレステロール値が高い(220ミリグラム (mg)/デシリットル (dL)以上)タイプの脂質異常症である。生活習慣による脂質異常症の多くがこのタイプである。1997年の国民栄養調査では、日本人の男27%、女33%が該当する。フラミンガムスタディにおいて使用されたためこの値と生活習慣病との関連が注目されたという意味で重要だが、現在WHO、アメリカ、日本のガイドラインは、いずれも総コレステロール値に注目していない。ただし、LDLコレステロールの直接測定法は、主に日本で使われており、欧米では総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール値から計算するLDLコレステロール値(Friedewaldの計算式{LDL-C=TC-(HDL-C)-TG/5})を使用しており、わが国でも日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」からFriedewaldの計算式によるLDLコレステロール値を用いることとなった。ただし、計算式は TGが400mg/dL未満のとき有効である。

高LDLコレステロール血症

高LDLコレステロール血症高LDL-C血症)とは、LDL中のコレステロールが血液中に多く存在する(140 mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。アメリカ合衆国のACC/AHAガイドラインでは、家族性高コレステロール血症以外についてはLDLの目標値を設定するエビデンスはないとされていた。LdH 佐野コレステロールは単にコレステロールを肝臓から他の臓器に運ぶ働きがあるだけで、その存在自体は体にとって必要であり、単純に悪玉であるとは考えられていない。

低HDLコレステロール血症

低HDLコレステロール血症低HDL-C血症)とは、血液中の善玉コレステロール (HDL) が少ない(40 mg/dL 未満)タイプの脂質異常症である。特に女性において、心血管疾患の重要なリスクファクターとなりうる。1997年の国民栄養調査では、日本人の男性の16%、女性の5%が該当する。この病態は脂質が低下して起こるため、高脂血症から脂質異常症へと改名される主な理由となった。

高トリグリセリド血症

高トリグリセリド血症高TG血症)とは、血液中に中性脂肪(トリグリセリド)が多く存在する(150 mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。1997年の国民栄養調査では、日本人の男45%、女33%が該当する。内臓脂肪型肥満の人に多い。一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されたが、現在ではやはり関連はあると考える人が多い。RLP-C (Remnant-like lipoprotein particles-cholesterol) の高TG血症における動脈硬化発症への関与が示唆されている。

B.(WHO型)病態分類法 (図参照)

1965年Fredriksonらは、ヒトのコレステロールや中性脂肪を超遠心分析法と濾紙電気泳動法で分析し、高脂血症(現在の脂質異常症)をⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型と命名し、1970年に世界保健機構もこの分類法を承継してⅠ型・Ⅱa型・Ⅱb型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型とするWHO型の病態分類法を制定し、日本動脈硬化学会も、同上の脂質異常症の表現型分類を「脂質異治療ガイド2013年版」に掲載した。しかし、旧態のWHO型は、最近使われなくなった分析法による分類で、実際の判定に使用され難くなっていた。また、日本動脈硬化学会の2013年版も、リポ蛋白質の種類やコレステロールおよびトリグリセライドが増加したか否かの表現で具体的な判定法が示されていなかった。2019年久保田らは(引用文献1、日本体質医学会誌)、最近臨床検査室で日常使われている分析法の測定結果を用いて、改変型WHO病態分類法を提案し(表1)、具体的な数値でもって判定することができるようになった。

特徴的な病態

Ⅲ型脂質異常症 : 遺伝的にアポタンパクE2/2ホモタイプに出現することが多い。VLDLが高くLDLがほとんどないタイプ。若くして心筋梗塞になりやすいが、発症しない人もいる。

Ⅱa型脂質異常症 : 家族性高コレステロール血症の家系に多い。コレステロールが高く、VLDLや中性脂肪 (TG) は正常に近い。

Ⅱb 型脂質異常症 : 家族性高コレステロール血症の家系に多い。コレステロールが高く、VLDLや中性脂肪 (TG) も正常より高い。

Ⅳ型脂質異常症 : コレステロールは正常より若干高い。VLDLや中性脂肪 (TG) も非常に高い。アポタンパクE4を持っていることが多い。

Ⅴ型脂質異常症 : VLDLや中性脂肪 (TG) が非常に高く、LDLが相当低いタイプ。LDLコレステロールが低いからと放置すると膵炎を起こすことがある。

遺伝的にリパーゼ (LPL,HDGL) などの欠損または活性機能障害の時に発症することがある。

             
   表1 脂質異常症WHO型の簡易判定法1)    
  WHO型 VLDL分画(%) IDL分画(%) HDL分画(%) その他  
  Ⅴ型 30%以上 ND 10%以上 IDL、LDL分画のピーク値のODが0.1以下  
  Ⅳ型 20%以上 ND 33%未満 Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと  
  Ⅲ型 30%以上 10%以上 ND LDLのピーク値のODが 0.1以下  
  Ⅱa型 15%未満 ND 33%未満 総コレステロール値が220mg/dL以上  
  Ⅱb型 15-25%以内 ND 33%未満 総コレステロール値が220mg/dL以上  
  Ⅰ型 ND ND ND IDL、LDL、HDL分画のピーク値  
          のODが0.03以下  
         OD : Optical Density(pixel)

ND : Not Dependent

 
  注1 分画(%)は、リポ蛋白分画(PAGE法、80点) のリポフォーAS(R)の検査報告書に記載されています。
  注2 本WHO型の簡易判定法は、下記参考文献1の表2の小粒子LDL(sLDL)をⅣ型に含め簡素化したものです。

sLDLを考慮されたい方は、参考文献1の表2をご覧ください。

参考文献 1) 久保田亮、井上郁夫、小倉正恒、小泉智三、藤井隆、野田光彦 :  心筋梗塞発症体質と膵炎発症体質患者における脂質異常症例に対しポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法を用いた新病態分類法(改変WHO分類法)法による試み、日本体質医学会誌第81巻1号(表2)、p25-33、2019-2

脂質異常症(高脂血症)の病型分類リポフォーAS版

脂質についての血液検査の参考基準値

米国ACC/AHAガイドラインでは、LDLコレステロールの目標値を設定するエビデンスはないとしている。日本動脈硬化学会はこれに対し、”日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、多くの実地臨床家がガイドラインを遵守し、またその目安を求めている。 患者の治療に対するアドヒアランスも考慮すると従来通りガイドラインの管理目標値を維持するべきであるとの結論にいたった”としているが、各方面から多くの批判がある。

項目 被験者のタイプ 下限値 上限値 単位 最適範囲
中性脂肪トリグリセリド 10–39 歳 54[4] 110[4] mg/dL <100 mg/dL[5]
または 1.1[5] mmol/L
0.61[6] 1.2[6] mmol/L
40–59 歳 70[4] 150[4] mg/dL
0.77[6] 1.7[6] mmol/L
>60 歳 80[4] 150[4] mg/dL
0.9[6] 1.7[6] mmol/L
コレステロール 3.0[7], 3.6[7][8] 5.0[9][10], 6.5[8] mmol/L <3.9 [5]
120[11], 140[8] 200[11], 250[8] mg/dL <150 [5]
HDLコレステロール 女性 1.0[12], 1.2[9], 1.3[7] 2.2[12] mmol/L >1.0[12] or 1.6[7]  mmol/L
>40[13] or 60[14] mg/dL
40[13], 50[15] 86[13] mg/dL
HDLコレステロール 男性 0.9[9][12] 2.0[12] mmol/L
35[13] 80[13] mg/dL
LDLコレステロール 2.0[12], 2.4[10] 3.0[9][10], 3.4[12] mmol/L <2.5 [12]
80[13], 94[13] 120[13], 130[13] mg/dL <100[13]
LDL/HDL比 不明 5[9] (単位なし)
空腹時にトリグリセリドが <400 mg/dL であれば LDLコレステロール = 総コレステロール − HDLコレステロール − トリグリセリド/5 (トリグリセリド >500 mg/dL の場合無効)

脂質血液検査 (Lipid blood tests) は、空腹時状態での血液検査となり Fasting Lipids LDL/HDL/TG と呼ばれ表記されている。

日本における基準値の変遷

ガイドラインの改定に伴い基準値は変更されている[16]

1997年 内容
冠動脈疾患の予防、治療の観点から見た日本人のコレステロール値適正域及び高コレステロール血症診断基準値
要素 血清総コレステロール(mg/dl) LDLコレステロール(mg/dl)
適正域 200未満 120未満
境界域 200〜219 120〜139
高コレステロール血症 220以上 140以上
高トリグリセライド血症の診断基準値 空腹時トリグリセライド(mg/dl)
空腹時トリグリセライド 150以上
低HDLコレステロール血症の診断基準値 HDLコレステロール(mg/dl)
HDLコレステロール 40未満
2002年 内容
高コレステロール血症 総コレステロール ≧ 220 mg/dl
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧ 140 mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール < 40 mg/dl
高トリグリセライド血症 トリグリセライド ≧ 150 mg/dl
2007年 内容
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧ 140 mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール < 40 mg/dl
高トリグリセライド血症 トリグリセライド ≧ 150 mg/dl
「薬物療法の開始基準を表記していない」旨の注記がある。
2017年[17] 内容
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧ 140 mg/dl
境界域高LDLコレステロール血症 120〜139 mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール < 40 mg/dl
高トリグリセライド血症 トリグリセライド ≧ 150 mg/dl
高non-HDLコレステロール血症 Non-HDLコレステロール ≧ 170 mg/dl
境界域高HDLコレステロール血症 150〜169 mg/dl

  1. ^ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版 日本動脈硬化学会 (PDF)
  2. ^ Classifcation of Hyperlipidaemias and Hyperlipoproteineamias,Bull,WHO,vol.43,891-915,1970
  3. ^ 日本動脈硬化学会2013年版14-15
  4. ^ a b c d e f Blood Test Results - Normal Ranges Bloodbook.Com
  5. ^ a b c d Adëeva Nutritionals Canada > Optimal blood test values Retrieved on July 9, 2009
  6. ^ a b c d e f Derived from values in mg/dl to mmol/l, by dividing by 89, accordig to faqs.org: What are mg/dl and mmol/l? How to convert? Glucose? Cholesterol? Last Update July 21, 2009. Retrieved on July 21, 2009
  7. ^ a b c d Derived from values in mg/dl to mmol/l, using molar mass of 386.65 g/mol
  8. ^ a b c d Last page of Deepak A. Rao; Le, Tao; Bhushan, Vikas (2007). First Aid for the USMLE Step 1 2008 (First Aid for the Usmle Step 1). McGraw-Hill Medical. ISBN 0-07-149868-0 
  9. ^ a b c d e Reference range list from Uppsala University Hospital ("Laborationslista"). Artnr 40284 Sj74a. Issued on April 22, 2008
  10. ^ a b c Reference range (cholesterol) - GPnotebook
  11. ^ a b Normal Reference Range Table from The University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas. Used in Interactive Case Study Companion to Pathologic basis of disease.
  12. ^ a b c d e f g h Royal College of Pathologists of Australasia; Cholesterol (HDL and LDL) - plasma or serum Last Updated: Monday, 6 August 2007
  13. ^ a b c d e f g h i j Derived from values in mmol/l, using molar mass of 386.65 g/mol
  14. ^ What Your Cholesterol Levels Mean. American Heart Association. Retrieved on September 12, 2009
  15. ^ American Association for Clinical Chemistry; HDL Cholesterol
  16. ^ 川久保清、李廷秀、脂質異常症 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版について 栄養学雑誌 2008年 66巻 1号 p.39-45, doi:10.5264/eiyogakuzashi.66.39
  17. ^ 山下静也、動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版の改訂のポイント (PDF)
  18. ^ 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2010年版)
  19. ^ 体力・運動能力調査平成24年度
  20. ^ 日本人の食事摂取基準(2005年版) (厚生労働省)
  21. ^ a b 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)厚生労働省 (PDF)
  22. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
  23. ^ 低い:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
  24. ^ 普通:座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
  25. ^ 高い:移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合
  26. ^ たんぱく質 (PDF) 」『日本人の食事摂取基準」(2010年版)
  27. ^ a b c Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases, 2003
  28. ^ 食事バランスガイド 厚生労働省・農林水産省決定 フードガイド(仮称)検討会報告書』(PDF) 第一出版、2005年12月。ISBN 4-8041-1117-4
  29. ^ 五訂増補 日本食品標準成分表 (文部科学省)
  30. ^ 日経メディカル. “スタチンで効果が不十分な高コレステロール血症に新薬” (日本語). 日経メディカル. 2019年8月27日閲覧。
  31. ^ 日経メディカル. “高コレステロール血症に効く国内初のPCSK9阻害薬が登場” (日本語). 日経メディカル. 2019年8月27日閲覧。
  32. ^ pkoudai (1526479259). “パルモディア®の承認〜従来型フィブラートとSPPARMαの違いとは?” (日本語). 薬剤師の脳みそ. 2019年8月27日閲覧。


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