肉や魚、食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質です。単に脂肪とも呼ばれますが、脂肪酸が3本、グリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしており、中性を示すことから、この名で呼ばれています。
その構成成分である脂肪酸は、動物性脂肪では飽和脂肪酸が多く、バターやラードのように、常温では固体として存在します。それに対して、植物性脂肪では、不飽和脂肪酸が多く、液状です。
中性脂肪は人や動物にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の摂取にも不可欠ですが、とりすぎると体脂肪としてたくわえられ、肥満をまねき、生活習慣病を引き起こします。血液中の中性脂肪の値が150mg/dl以上になると「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれています。
日本人の脂質エネルギー比率(摂取エネルギーに占める脂肪の割合)は戦後、急激に上昇し、これに伴って肥満も増加してきたことから、「健康日本21」では20代〜40代成人の脂質エネルギー比率を25%以下にする目標を掲げています。
トリアシルグリセロール
中性脂肪
別名:トリグリセリド,トリグリセライド
【英】:TG
トリアシルグリセロール
(トリグリセリド から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 15:02 UTC 版)
![]() |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2023年1月)
|

トリアシルグリセロール(英語: triacylglycerol、TAG)とは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロールで、単純脂質に属する中性脂肪の1つである。トリグリセリド(英語: triglyceride、TG)またはトリアシルグリセリド(英語: triacylglyceride)ともいう。
中性脂肪は動物の体内脂肪組織に蓄えられる脂肪や、食品中の油脂、植物油(種子)などを構成する脂質の8から9割を占めるが、その中ではトリアシルグリセロールが圧倒的に多く、特に動物の脂肪組織では95%を超える。このことから、単に「トリアシルグリセロール」というときは油脂のことを指し、グリセロールと3分子の脂肪酸が結合したひとつの分子を示すときは「トリアシルグリセロール分子種」ともいう。
構造と物理化学的性質
グリセロール(グリセリン)に結合する脂肪酸の部分は、置換基としてはアシル基である。したがって、トリ・アシル・グリセロール=3分子・脂肪酸・グリセロールという意味となる。アシル基となる脂肪酸の種類は極めて多いが、それらアシル基の組み合わせ、グリセロールへの結合位置によってさまざまなトリアシルグリセロール分子種が生ずる。脂肪酸が n 種あるとすれば、理論的にはおよそ n3/2 種類(グリセロールの1位と3位は対称だから)のトリアシルグリセロール分子種が存在すると考えてよい。個々のトリアシルグリセロール分子種は以下の例のように呼ばれて区別される。
- パルミチン酸が3分子結合した分子種
- トリパルミチン、CAS登録番号は555-44-2。パルミチン酸(Palmitic acid)は、略してPと表示できるので、簡単にPPPとも書く。
- パルミチン酸が1分子、オレイン酸が2分子結合した分子種
- グリセロールへの結合位置によって、1-パルミトイル-2,3-ジオレオイルグリセロール (POO)、1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール (OPO) などと表示する。オレイン酸 (Oleic acid) は略してOと示す。
- パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸がそれぞれ1分子ずつ結合した分子種
- 前述と同様に、1-パルミトオレオイル-2-ステアロイル-3-リノレオイルグリセロール (PoSL)、1-リノレオイル-2-パルミトオレオイル-3-ステアロイルグリセロールなどと表示する。パルミトレイン酸 (Palmitoleic acid)、ステアリン酸 (Stearic acid)、リノール酸 (Linoleic acid) はそれぞれPo、S、Lと略される。
トリアシルグリセロール分子種には立体位置異性体が存在し、2 や 3 の例のように、同じ脂肪酸で構成される分子種であっても POO - OPO - OOP、PoSL - PoLS - SPoL - SLPo - LPoS - LSPo はそれぞれ異なる分子種となる。結合位置が不明な場合(どの異性体か不明な場合)は、POO、PoSL というように脂肪酸の炭素数が小さい順に、二重結合の少ない順に表示することが多い。LPoS というようにアルファベット順に示す場合もある。
個々の脂肪酸は二重結合の有無(不飽和度)によって融点が異なるが、この不飽和度によってトリアシルグリセロールの性質が大きく異なる。不飽和脂肪酸の多いトリアシルグリセロールは室温 (25 °C) で油状の液体だが、飽和脂肪酸の多いトリアシルグリセロールは固体となる。オリーブ油やサフラワー油などは前者に、ココナッツ油やパーム核油は後者に当たる。またトリアシルグリセロールは一般に有機溶媒によく溶けるが、ステアリン酸のような長鎖の飽和脂肪酸が多くなると、アルコール、石油エーテル、ジエチルエーテルなどにも難溶になる。
健康への影響
トリアシルグリセロールが高値になると動脈硬化・膵臓炎になる。肝臓にトリアシルグリセロールが過剰に沈着すると、脂肪肝になる。
血液検査の参考基準値
トリアシルグリセロールについての血液検査の参考基準値は以下のとおりである。
項目 | 年齢 | 下限値 | 上限値 | 単位 | 最適範囲 |
---|---|---|---|---|---|
トリアシルグリセロール | 10–39 歳 | 54[1] | 110[1] | mg/dL | < 100 mg/dL[2] or 1.1[2] mmol/L |
0.61[3] | 1.2 [3] | mmol/L | |||
40–59 歳 | 70[1] | 150[1] | mg/dL | ||
0.77[3] | 1.7[3] | mmol/L | |||
>60歳 | 80[1] | 150[1] | mg/dL | ||
0.9[3] | 1.7[3] | mmol/L |
脚注
- ^ a b c d e f Blood Test Results - Normal Ranges Bloodbook.Com
- ^ a b Adëeva Nutritionals Canada > Optimal blood test values Archived 2009年5月29日, at the Wayback Machine. Retrieved on July 9, 2009
- ^ a b c d e f Derived from values in mg/dl to mmol/l, by dividing by 89, according to faqs.org: What are mg/dl and mmol/l? How to convert? Glucose? Cholesterol? Last Update July 21, 2009. Retrieved on July 21, 2009
関連項目
「トリグリセリド」の例文・使い方・用例・文例
- トリグリセリドを低下させるのに効果的な口径薬(商標名リピター)
- 血液の中のトリグリセリドのレベルを引き下げるのに使用される薬(商標名ロピッド)
- 肝臓での特定の脂肪(トリグリセリド)の蓄積の結果として起こる黄変
- 酪酸の苦い油性のトリグリセリド
- 消化の間、腸で生産されるトリグリセリドの微細な粒子
- 有機的な組織で起こって、脂質の混合物から成る軟質の油性物質(ほとんどトリグリセリド)
- パルミチン酸のトリグリセリド
- ステアリン酸のトリグリセリド
- トリグリセリドが豊富な大きなリポタンパク質
トリグリセリドと同じ種類の言葉
- トリグリセリドのページへのリンク