怒り 権力者と怒り

怒り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/01 16:08 UTC 版)

権力者と怒り

The Anger of Achilles(アキレスの怒り)。 アガメムノンを攻撃するギリシャの英雄アキレスジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの絵画

韓非はその著作の中で、喩え、竜の喉にある逆鱗(げきりん)に触れると竜が怒り出すと言われていることから、これに触れないように説かなければならない、と述べた。ここから、権力者の怒りをかうことを「逆鱗に触れる」と言うようになった。絶対的な君主制の下では、王を怒らせることは極めて危険であり、怒らせたものの命にかかわった。王が道を誤った場合に、誤っていると示唆したり指摘するのは命がけであった。

人々の怒りをあえて煽り人々を操つる(扇動する)権力者や政治家もいる。

私憤・公憤

怒り(いきどおり)のうち、自身の個人的な事柄に関するいきどおりを「私憤」と言う[3]。それに対して、社会のに対して、自分の利害をこえて感じる憤りを「公憤」と言う[4]

例えば、ナイロンザイル事件において、家族を失った人が、その原因となったナイロン製のザイル(登山用ロープ)の開発者や製造者に怒りを抱くのはまず私憤である。だが、直接の被害者やその遺族というわけでなくて、自分が直接に被害を被っているわけでなくても、そうした不誠実な開発者や製造者という悪がこの社会に存在していて、人々を苦しめていることに対して怒りを抱くことは公憤である。同事件は後に続く消費者保護の日本における契機ともなった。

最初は被害者だけが憤っていても、やがて多くの人々が公憤に基づいて行動しはじめることはある。この社会には、もっぱら私利私欲や自分の損得勘定ばかりで行動を選ぶ人々もいるが、(幸いなことに)ものごとを自分の損得だけでは判断せず、むしろ、何が正しいか何が間違っているか、という観点に重きを置いて判断し行動している人々もいるからである。また人間には自分と立場の異なる人にも共感する能力があるおかげでもある。

例えば、森永ヒ素ミルク中毒事件では、最初は子供に障害が残ってしまった被害者がやり場のない怒りを抱いていたにとどまっていたが、やがてそうした被害を受けている人々がいることを、被害を受けていない人も知るようになり、彼らは社会でそのような悪が行われていることに対して憤りを感じるようになり、多数の人々が参加する運動となって社会を動かしていった[5]。日本の医療でワクチンが健康被害をもたらしていた事件でも、最初は私憤にとどまってはいたがやがて公憤を感じる人が増え、社会問題として扱われるようになり、医療を変えてゆくことになった[6]

悪徳なことを行う企業があっても、公憤で行動する人々の人数が増えれば、広く知らせるための運動を行ったり製品の不買運動等を起こすことで企業の行動を是正させたり市場から撤退させることは可能である。また政治や行政に関しても、公憤で動く人が増えれば、選挙での投票先を変えることで、議員を変え、法律を変更させることもできる。また公憤で動く人々が革命を引き起こし悪政を行う権力者らを政権の座から直接的に引きずり下ろす、ということも様々な国で起きている。

芸術や表現と怒り

大島渚は「いまの日本人は怒らなすぎる。僕は怒らない日本人に怒っている」とテレビのニュース番組で述べたことがある。




  1. ^ a b c d e http://www.encyclopedia.com/topic/Anger.aspx
  2. ^ ダニエル・ゴールマン『EQ こころの知能指数』p.98
  3. ^ 大辞泉【私憤】
  4. ^ 大辞泉【公憤】
  5. ^ 『私憤から公憤への軌跡に学ぶ―森永ひ素ミルク中毒事件に見る公衆衛生の原点』1993
  6. ^ 吉原賢二『私憤から公憤へ: 社会問題としてのワクチン禍』岩波書店、1975
  7. ^ a b c d e 『EQ 心の知能指数』p.99
  8. ^ 『EQ 心の知能指数』p.99-101
  9. ^ Turn off anger”. Harvard Health Publishing (2015年7月). 2020年2月8日閲覧。
  10. ^ Publishing, Harvard Health. “Working out while angry? Just don’t do it”. Harvard Health. 2021年1月1日閲覧。
  11. ^ 『EQ 心の知能指数』p.102
  12. ^ 『EQ 心の知能指数』p.103
  13. ^ a b c d 『EQ 心の知能指数』p.104
  14. ^ 安易なショッピングは無駄遣いをしてしまったという後悔や自己嫌悪、「やけ食い」もしばしば後悔・自己嫌悪につながり、人によっては肥満→自己嫌悪・ストレス→肥満 という自己破壊的な悪循環にも陥ってしまうことがある。
  15. ^ a b c d 『EQ 心の知能指数』p.106







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