怒り 怒りの概要

怒り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 00:31 UTC 版)

原因

怒りは、人間の原初的な感情の一つで、様々な要因・理由で起きるものである。様々な説明の方法があるが、冒頭の説明を別の角度から説明すると例えば、怒りというのは「危険にさらされた」という意識・認識に起因している、と説明できることは多い。「危険にさらされた」というのは、身体的なこと、有形なことがらに限らず、自尊心名誉などの無形のことがらまで含まれる。

怒りのありがちな原因というのは、人生のステージごと、年齢層ごとに異なった傾向がある。幼児のうちは、怒りのありがちな原因というのは身体的な拘束である[1]。それが子供になってくると、厳格な規則であったり、自分に注目してくれないこと、などということが理由となる[1]青年期や大人になると、怒りの要因は身体的なことではなく、もっと社会的なものになってくる傾向がある[1]。大人では例えば、権利の剥奪、他人からの不承認、偽り・欺瞞などといったものが怒りの要因となる[1]

怒りは思い通りにならないとき、期待した反応が得られないとき、理不尽な対応を受けたとき、そして気持ちに余裕がないときに喚起しやすい。また、怒りの感情は出来事のみによって決まるものではなく、本人の受け止め方=意味づけの仕方やその時の心理状況によって決まるものである。同じような出来事に遭遇しても、それに対する反応の仕方は人それぞれ異なる。出来事が意味を持つのではなく、受け手が出来事に意味を与えている。つまり、怒りという感情を生成しているのは本人の心(本人自身)である。[2]

宗教における位置づけ

多くの宗教で、怒りは人間の最もネガティブな感情と捉えられている。憤り、怒ることを憤怒といい、キリスト教では、七つの大罪のひとつとされる。仏教では、怒りは人間を地獄界の精神状態に追いやり、死後最悪の条件に転生すると考える。また、ユニコーンドラゴン等が、憤怒を象徴する動物として描かれる事もある。

一方、は往々にして人間の中の正しくないものに向かって怒る存在であるが、ネガティブな感情であるとは限らない。ギリシア神話ローマ神話等では、怒りによりときに人間を滅ぼす場面も見られる。

仏教では、怒りは煩悩のうち、三毒とされる基本的な3つの・瞋・(とんじんち)のうち、瞋(しん)である。不動明王三宝荒神のように、貪瞋癡を許さんという慈悲が極まり、憤怒の相で表れて不浄を厭離し、仏法僧を守護する仏も見られる。磨滅するために怒りをわざと高めて悪しき心を陳伏すること。

哲学者らの見解

アリストテレスは次のように述べた。

「然るべきことがらについて、然るべきひとびとに対して、そしてまた然るべき仕方において、然るべきときに、然るべき間だけ怒る人は賞賛される」(アリストテレスニコマコス倫理学』)

ベンジャミン・フランクリンは次のように述べた。

「怒りにはいつも理由がある。ただし、正当な理由はめったにない」[3]

セネカは『怒りについて』でストア派の立場から、怒りを抑制するべきものとして論じた。

アルフレッド・アドラーが提唱した「アドラー心理学」において、怒りは捏造できるものだと述べられている。

三木清は、怒りを肯定的にも捉えた。『人生論ノート』に「怒について」という章をもうけてこれを論じている。彼は怒りが否定的に捉えられている現状を認めつつ、以下のようにこれを批判している。彼は怒りが憎しみと混同されていることを問題視する。両者は確かに似たものではあるが、憎しみが極めて個人的な負の感情であるのに対して、怒りは常に突発的なものであり、それだけに純粋な、より深いものであるとする。

一般に、怒りは正常な判断力を麻痺させる、とされることは多い。


  1. ^ a b c d e http://www.encyclopedia.com/topic/Anger.aspx
  2. ^ 『「イラッとくる」の構造』KKベストセラーズ、2014年11月20日、pp.64-69,76-79頁。 
  3. ^ ダニエル・ゴールマン『EQ こころの知能指数』p.98
  4. ^ 大辞泉【私憤】
  5. ^ 大辞泉【公憤】
  6. ^ 『私憤から公憤への軌跡に学ぶ―森永ひ素ミルク中毒事件に見る公衆衛生の原点』1993
  7. ^ 吉原賢二『私憤から公憤へ: 社会問題としてのワクチン禍』岩波書店、1975
  8. ^ a b c d e 『EQ 心の知能指数』p.99
  9. ^ 『EQ 心の知能指数』p.99-101
  10. ^ Turn off anger”. Harvard Health Publishing (2015年7月). 2020年2月8日閲覧。
  11. ^ Publishing, Harvard Health. “Working out while angry? Just don’t do it”. Harvard Health. 2021年1月1日閲覧。
  12. ^ Neuromodulator and Emotion Biomarker for Stress Induced Mental Disorders (2016)
  13. ^ Godman, Heidi (2022年1月19日). “Seeing red? 4 steps to try before responding” (英語). Harvard Health. 2022年12月16日閲覧。
  14. ^ 『EQ 心の知能指数』p.102
  15. ^ 『EQ 心の知能指数』p.103
  16. ^ a b c d 『EQ 心の知能指数』p.104
  17. ^ a b c d 『EQ 心の知能指数』p.106
  18. ^ a b 『精選版 日本国語大辞典』【腸が煮えくり返る】






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