きりしまやく‐こくりつこうえん〔‐コクリツコウヱン〕【霧島屋久国立公園】
霧島屋久国立公園
[桜島]
屋久島は巨樹の島である。縄文杉などのヤクスギをはじめ、山麓の森で出合うツガなどにも、ほかではなかなか見ることのできない立派な木が多い。森林内に横たわる倒木やその上を覆って育つコケも、原生的な雰囲気を高めている。巨樹は、それ自体が人に畏敬の念を呼び起こす存在だが、巨樹を育んできたこの森には、何よりも静寂が、人の感覚を研ぎ澄まし、精神を思索へと誘う深い静寂がある。
密集した火山群・霧島
[韓国岳山頂付近から、
高千穂峰(左奥)、新燃岳(右手前)]
霧島火山群を中心に、桜島や指宿(いぶすき)などの錦江(きんこう)湾沿岸と、屋久島主要部を含む公園である。昭和9年に霧島地域が雲仙、瀬戸内海とともに霧島国立公園として指定され、39年に錦江湾国定公園を編入し、屋久島地域を追加指定して現在の名称になった。
霧島地域は、20座以上の山が集まった山塊である。最高峰韓国(からくに)岳(1,700m)、新燃(しんもえ)岳、高千穂峰(たかちほのみね)など、多くが円錐形の山体の頂きに丸い火口を持つ、いかにも火山らしい姿の山々である。これらのうち、新燃岳と高千穂峰の寄生火山御鉢は、過去にたびたび噴火している。また、大浪(おおなみの)池、御(み)池など火口湖も多い。一帯には自然林が広がり、高千穂峰にはミヤマキリシマの大群落がある。高千穂峰は、また天孫降臨(てんそんこうりん)伝説の地であり、山頂には天(あま)ノ逆鉾(さかほこ)が突き立っている。登山基地の高千穂河原には、かつて霧島神宮があったが、18世紀の噴火により焼失した。
この地区の利用拠点は、韓国岳北西に広がるえびの高原である。温泉があり、ススキの穂がえび色に染まるところからついた地名とされる。南西側の山麓には林田、丸尾などの霧島温泉郷がある。
錦江湾は北部の姶良(あいら)、湾口の阿多両カルデラと、それをつなぐ溝状の低地によってできた深い湾である。桜島(1,117m)は、姶良カルデラの南の縁に噴出した火山であり、3つの山体のうち南岳が今も盛んに活動している。もとは島であったが、大正3年の噴火の際の溶岩流により大隅(おおすみ)半島とつながった。
開聞(かいもん)岳(924m)は、海岸から立ち上がる円錐形の山で、足元には池田湖がある。指宿温泉はこの地域の利用の拠点である。
高温多雨に育まれた屋久島の森
平成5年に世界自然遺産に登録された屋久島は、面積505km2のほぼ円形の島である。中央部には、九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)をはじめ山岳が連なり、「洋上アルプス」とも呼ばれる。「月に35日雨が降る」といわれ、年間降水量が平地でも4,000mmに達する多雨地域であり、島全体が森林に覆われている。
植生は、海岸の一部にはマングローブやガジュマルなどの熱帯系殖物があるが、山麓は常緑広葉樹林帯、上部はこの島独特のスギ帯となる。スギのうち、樹齢1000年以上のものをヤクスギといい、巨樹に生長する。
屋久島は、江戸時代には島津藩が屋久島奉行を置いて、ヤクスギの伐採を行っていた。大正3年に発見されたウィルソン株は300〜400年前に伐採され、根株だけが腐らずに残っているもので、内部に祠(ほこら)が祀ってある。
昭和41年に発見された縄文杉は幹回り16m以上で、屋久島のシンボルのようになった。踏圧などによる影響を避けるため、そばには寄れない。ほかに大王杉、大和杉、紀元杉など、名前のついた巨樹が多い。
島内の探勝には、縄文杉を目指す大株歩道、渓谷が美しい白谷雲水(しらたにうんすい)峡、手軽に入れるヤクスギランドなどがある。また、島を一周する車道もあり、山上とは異なるアコウやガジュマルなどの植物や、千尋(せんぴろ)滝などを見ることができる。また、ともに固有亜種のヤクシカとヤクザルは多く、どこかで出合える可能性が高い。
アカウミガメ
日本近海には5種のウミガメが見られるが、産卵に上陸するのは大部分がアカウミガメで、茨城県以南の、主に太平洋岸の砂浜で産卵する。
屋久島では、北西部の永田浜などが知られ、夏季多数が上陸産卵する。また、アオウミガメも少数だが産卵する。ウミガメ類は過剰な捕獲や産卵場所の消滅や環境悪化などの理由から、世界的にいずれも個体数が減少傾向にある。
関連リンク
- 霧島屋久国立公園 (環境省ホームページ)
霧島錦江湾国立公園
(霧島・屋久国立公園 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 22:20 UTC 版)
霧島錦江湾国立公園 Kirishima-Kinkōwan National Park |
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湯之平展望所より望む桜島
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指定区域 | 北緯31度33分00秒 東経130度39分00秒 / 北緯31.55000度 東経130.65000度座標: 北緯31度33分00秒 東経130度39分00秒 / 北緯31.55000度 東経130.65000度 |
分類 | 国立公園 |
面積 | 36,605 ha(陸域)[3] |
前身 | 霧島屋久国立公園 |
指定日 | 1934年3月16日 |
運営者 | 環境省 |
告示 | 霧嶋國立公園指定(昭和9年内務省告示第134号) |
事務所 | 九州地方環境事務所 |
事務所所在地 | 〒862-0913 熊本県熊本市東区尾ノ上1-6-22 |
公式サイト | 霧島錦江湾国立公園(環境省) |
霧島錦江湾国立公園(きりしまきんこうわんこくりつこうえん)は、鹿児島県(鹿児島市、指宿市、垂水市、霧島市、姶良市、湧水町、南大隅町)と宮崎県(都城市、小林市、えびの市、高原町)の8市3町にまたがる南九州の主要な景勝地に設けられた国立公園。
概説
霧島山を中心とする霧島地域及び姶良カルデラ(北部地区)、桜島、佐多岬周辺、指宿地区など薩摩半島南岸を中心とする錦江湾地域の2地域で構成される[4]。一帯は霧島火山帯に属し、霧島温泉郷、指宿温泉など温泉地が豊富にあることから、訪れる人も多い。
2011年(平成23年)12月22日、屋久島地域が屋久島国立公園として独立し、新たに姶良カルデラを編入した上で霧島錦江湾国立公園とする計画が決定し[5][6]、2012年3月16日に官報に告示され姶良カルデラ部分を加え、屋久島地域が分割され、その残部が改称された[7]。
- 指定面積
- 2018年8月10日区域変更の時点
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陸域 計36,605 ha - 鹿児島県が65%、宮崎県が35%[3]
- うち特別保護地区 4,961 ha、第1種特別地域 3,738 ha、第2種特別地域 10,335 ha、第3種特別地域 5,381 ha、普通地域 12,190 ha[3]
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海域(普通地域を含む概算) およそ37,000 ha[注 1]
- うち海域公園地区 487.7 ha - 7地区8か所[3]
自然
霧島地域は韓国岳を始めとして、20数座の火山を持ち、火口湖が多い。また、シイ、アカマツなどの自然林も豊富に残り、ミヤマキリシマが咲く。
錦江湾地域は現在もなお、活発な火山活動を続ける桜島、九州で唯一の天然湖である池田湖、優美な山容を持つ開聞岳、海蝕崖が発達した佐多岬をはじめ、世界最北のマングローブ林である旧喜入町のアコウ生息地や陸繋砂州の知林ヶ島など変化に富む。
火山
霧島山、桜島 開聞岳
歴史
1934年(昭和9年)3月16日、霧島山周辺の東西約22km、面積202km2の領域が霧島国立公園として、瀬戸内海国立公園、雲仙国立公園(現雲仙天草国立公園)と共に日本で最初の国立公園に指定された。1964年(昭和39年)3月16日には、錦江湾地域に指定されていた国定公園である錦江湾国定公園(1955年9月1日指定)及び屋久島地域が編入され、霧島屋久国立公園に改称した。
2010年(平成22年)11月13日に松本龍環境大臣が先述の公園拡大・分割案構想を表明し、2011年(平成23年)12月22日、姶良カルデラを加えた霧島錦江湾国立公園と屋久島国立公園に分割する計画が決定し[6]、2011年12月22日はに霧島屋久国立公園の区域に姶良カルデラを含め、霧島錦江湾国立公園に改称し、屋久島地域が独立する形で屋久島国立公園を設置する計画が決定した[9]。 2012年3月16日には官報に告示され同日付で屋久島部分が屋久島国立公園として分割され、残部に姶良カルデラを加えた区域が霧島錦江湾国立公園に改称した[7]。
主要な景勝地
- 霧島地域
- 錦江湾地域
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鹿児島湾北部に広がる姶良カルデラ
関連項目
脚注
注釈
出典
- ^ “霧島錦江湾国立公園の区域図(桜島・吉野地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “霧島錦江湾国立公園の区域図(指宿・佐多地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ a b c d e “霧島錦江湾国立公園の公園紹介”. 環境省. 2023年10月7日閲覧。
- ^ a b 霧島錦江湾国立公園 - 鹿児島県 2012年3月23日閲覧。
- ^ “「霧島」「屋久島」を分割へ=国立公園、計30に―環境省” (日本語). 朝日新聞. (2010年11月13日) 2011年1月11日閲覧。
- ^ a b “国立公園「霧島錦江湾」決定 「屋久島」と分割” (日本語). 南日本新聞. (2011年12月23日) 2011年12月23日閲覧。
- ^ a b 霧島屋久国立公園、二つに分割・再編成 - 読売新聞 2012年3月23日閲覧。
- ^ “Protected Area Profile for Kirishima kinkowan” (英語). World Database on Protected Areas (WDPA). UNEP-WCMC. 2023年10月7日閲覧。
- ^ 国立公園「霧島錦江湾」決定 「屋久島」と分割 - 南日本新聞 2012年3月16日閲覧。
- ^ 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
外部リンク
- 霧島錦江湾国立公園
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