固体酸化物形燃料電池とは? わかりやすく解説

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こたいさんかぶつがた‐ねんりょうでんち〔コタイサンクワブツがたネンレウデンチ〕【固体酸化物形燃料電池】

読み方:こたいさんかぶつがたねんりょうでんち

酸化物セラミックスなどの固体電解質用い燃料電池電解質正極負極挟みこみ、積層化したものを使用する高温動作し発電効率が高い。また、電解質固体であるため、管理容易になるという利点がある。SOFCsolid oxide fuel cell)。


固体酸化物形燃料電池

読み方こたいさんかぶつがたねんりょうでんち
【英】Development of Solid Oxide Fuel Cell, SOFC

固体酸化物形燃料電池とは、電解質としてセラミック固体電解質用い方式燃料電池のことである。

固体酸化物形燃料電池は、作動温度7001000高温の中で燃料化学エネルギー電力変換するもので、加圧することによる発電効率の向上、あるいは排出される高温排ガス利用したガスタービン発電(それによって、きわめて高い発電効率得られる)など、様々な長所がある。小型なものから大型なものまで適用が可能であることから、火力発電代替発電プラントとしての実用化検討されている。


固体酸化物形燃料電池

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/13 06:04 UTC 版)

固体酸化物形燃料電池(こたいさんかぶつがたねんりょうでんち、英:SOFC、solid oxide fuel cell )とは、高温の固体電解質を用いた燃料電池である。

逆に水を電気分解するものを固体酸化物形電解セル(SOEC)という。燃料電池と電解セルを両立した可逆形(リバーシブル形)、rSOCの実現を目指す研究も有る。[1]

概要

現在知られている燃料電池の形態では最も高温(通常700~1000℃)で稼働し、単独の発電装置としては最も発電効率が良い(45~65%)。 電極、電解質含め発電素子中に液体が存在せず、全て固体で構成される。 電極間のイオン伝導は水素イオンでなく酸化物イオン(O2-)である。 化学反応が高温で行われるため、白金などの高価な触媒が不要である。 高温で稼働し水素以外に一酸化炭素も燃料にできることから脱硫処理は必要であるが簡単な水蒸気改質処理(一酸化炭素の除去が不要で、燃料中に若干の未改質ガスを含む改質)により都市ガス天然ガスなどを装置内で改質しながら発電に用いることも可能である。また排熱の温度が高いため、排気ガスから直接タービンなどで二次的に発電したり、コジェネーションシステムとして更に熱効率を上げることができる。

発電素子が高温で稼働するという点以外に制約が少ないため、家庭用分散電源、持ち運び用小型発電機、移動電子機器用電源などの新たな用途が見込まれている。[2]

原理

  1. 空気極(正極)に供給された酸素が電子を受け取り、酸化物イオンになる
  2. 電解質(Zr系,Ce系等)中を酸化物イオンが空気極から燃料極へ移動する
  3. 燃料極(負極)で水素や一酸化炭素が酸化物イオンと反応し二酸化炭素が生成される。この際放出された電子によって発電される[3][4]

構成

全てセラミックスで構成されるのが通例である。

  • 空気極
    • 電気的には正極となる。(La,Sr)MnO3, La,Sr(Co,Fe)O3等で構成された導電性セラミックスである。
  • 燃料極
  • 電解質

原理的には発電部分における改質(ニッケルを含む燃料極における直接内部改質)が可能であるが、吸熱反応による発電部分の極端な温度変化を防ぐために、プレリフォーマー(発電反応による熱や反応後の燃料を燃焼した熱を利用した間接内部改質)を採用するのが一般的である。

課題

  • 燃料電池は電極のガス反応度がボトルネックになりやすいが、装置全体を加圧下に置くことでガスの反応度をあげ、燃料電池の発電圧が向上するとともに排気ガスの圧力を高くすることで後段のマイクロガスタービンでの発電の効率を上げる工夫が実施されている[5]
  • 原理的に耐久性を高く保ちやすいが、燃料極に炭素や異物などの固体が固着すると性能が下がっていき、やがて稼働できなくなる。
  • 1000℃という温度は非常に高温であり、強度や耐久性を確保することが難しい。この問題を解決するため稼働温度を下げるための技術開発が行われている。
  • 600℃未満まで稼働温度を下げると燃料改質が行えなくなるため、この温度以下に稼働温度を下げる場合には特別な工夫が必要になる。[2]
  • SOFC を運転するには必要な温度にまで昇温させる必要がある。その際、時間をかけずに急速に昇温・停止させることができれば、使用上効率的である。一方、急速な昇温・停止は大きな熱ひずみを発生させるため、セラミック構造体を破損させてしまう場合がある。そのため、急速起動・停止運転を可能にすることが、SOFC の大きな技術課題となっている[2]
  • 発電素子を小型化することで性能が向上することが知られているため、実際の発電装置は小さなSOFCセルの集合体になる。セルの性能にばらつきがあるため数千~数万になるセルの安定稼働が難しく、セル同士の品質管理が今後の課題になる[6]

年表

2009年6月11日に日本ガイシ株式会社は独自構造のSOFCを開発し、世界最高レベルの63%の発電効率(LHV)と90%の高い燃料利用率を達成したと発表した。[7][リンク切れ]

2011年10月、JX日鉱日石エネルギーが市販機としては世界で初めてSOFC型エネファームを発売した[8]

2018年5月には、IHIアンモニアを燃料とした燃料電池システムでの発電を成功させた[9]。都市ガスを燃料にすると二酸化炭素が発生するが、アンモニアの場合は窒素が発生するだけなので環境への影響がさらに低減されることが期待される。

脚注

関連項目


固体酸化物形燃料電池 (SOFC)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 12:40 UTC 版)

燃料電池」の記事における「固体酸化物形燃料電池 (SOFC)」の解説

詳細は「固体酸化物形燃料電池」を参照 固体酸化物形燃料電池(SOFC, Solid Oxide Fuel Cell)は、固体電解質燃料電池とも呼ばれ動作温度は700-1,000を必要とするので高耐熱性材料が必要となる。また、起動停止時間も長い電解質として酸化物イオン透過性が高い安定化ジルコニアランタンガリウムペロブスカイト酸化物などのイオン伝導性セラミックス用いており、空気極生成した酸化物イオン(O2-)が電解質透過し燃料極水素あるいは一酸化炭素反応することにより電気エネルギー発生させている。そのため、水素だけではなく天然ガス石炭ガスなども、脱硫処理は必要であるが、簡単な水蒸気改質処理(一酸化炭素除去不要で、燃料中に若干の未改質ガスを含む改質)により燃料として用いることが可能である。活性化電圧降下少ないので発電効率高く、すでに56.1%LHVを達成している例もある。家庭用業務用の1kW-10kW級としても開発されている。原理的に発電部分における改質ニッケルを含む燃料極における直接内部改質)が可能であるが、吸熱反応による発電部分極端な温度変化を防ぐために、プレリフォーマー(発電反応による熱や反応後の燃料燃焼した熱を利用した間接内部改質)を採用するのが一般的である。固体高分子形燃料電池等の他の燃料電池使用される白金パラジウム等の貴金属系の触媒不要燃料極としては、ニッケル電解質セラミックスによるサーメット空気極としては導電性セラミックス用いる。大型SOFCは、燃焼排ガスガスタービン発電蒸気発電利用すれば極めて高い総合発電効率を得ることが出来ると予測されるため、火力発電所代替などの用途期待されている。 日本ガイシ株式会社2009年6月11日に独自構造SOFC開発し世界高レベル63%の発電効率(LHV)と90%の高い燃料利用率達成した発表したJX日鉱日石エネルギー2011年10月市販機としては世界初となるSOFC型「エネファーム」を発売した

※この「固体酸化物形燃料電池 (SOFC)」の解説は、「燃料電池」の解説の一部です。
「固体酸化物形燃料電池 (SOFC)」を含む「燃料電池」の記事については、「燃料電池」の概要を参照ください。

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