痛風 症状

痛風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/29 01:21 UTC 版)

症状

関節に激烈な痛みが起こり、発赤や発熱を伴う。尿酸の結晶は比重が高く重力に引かれて足部に沈着しやすいため、痛風発作(痛風性関節炎)は足趾(特に母趾MP関節)に好発する。初発症状は足部であることが多いが、足関節、膝関節から発症することもある。足の親指の付け根やアキレス腱部分などに発作が起きると痛みを感ずるだけではなく、歩行困難となる場合もある。発作を繰り返すたびに症状は増悪する。発作の痛みは強く、非常に苦痛を伴う。また、耳介などに痛風結節と呼ばれる皮下結節を作ることがあり、これが診断の助けとなる。X線では骨髄腫のようにpunched out打ち抜き)と呼ばれる骨破壊像が見える。痛風と鑑別を要する関節炎の疾患としては関節リウマチ変形性関節症偽痛風がある。

検査

  • 痛風を発症する患者では、少なくとも非発作時には血液検査での高尿酸血症が見られるが、25%の患者で発作時に尿酸値が正常である。
  • 関節穿刺液検査における多形核細胞の増加と尿酸結晶の証明(これが一番大事だが、感度は100%ではない。85%程度とする文献がある)。

治療

対症療法

好中球の活動抑制、抗炎症薬の投与、鎮痛薬の投与、患部の管理、緩やかな尿酸の排出、尿酸値上昇要因の排除、の5手法併用を以って行う。

好中球の活動抑制

  • コルヒチン製剤力価0.5 mgを、発作を起こすに足る程度の好中球の活動の抑制が果たされるまで、概ね4時間以上の間隔で経口投与することが多い。
  • 日本において認可されているコルヒチン剤は製品名「コルヒチン」として塩野義製薬が生産していたが、2010年4月に高田製薬に販売が継承された。国内では先発品の本剤しかないが、薬価が安いことがあり、ジェネリック品は開発されていない。海外においてもインガラボラトリ社(インド)の製品名「ガウトニル」など対外向けジェネリック産品が生産されているが、日本においては未認可である。

消炎・鎮痛

現状では、非ステロイド系鎮痛消炎薬を使用することが多い。例えば、力価60mgのロキソプロフェンナトリウム製剤を、その投入が不要と認められるまで、概ね8時間以上の間隔で経口投与することが多い。ロキソプロフェン製剤服用にあたっては、壁へのダメージを避ける目的で、テプレノン製剤・レバミピド製剤などの胃粘膜保護剤を併せて処方することが多い。

  • NSAIDs(非ステロイド系抗炎症鎮痛薬)と呼ばれる種類の痛み止めの薬で対症療法を行う。インドメタシンなどに、臨床研究に基づく科学的根拠がある(根拠に基づく医療)。
  • 疼痛が強い患者では、ステロイドの全身投与や、単関節炎患者では関節内投与が極めて有効である。最近では、最初にNSAIDsではなくステロイドを服用したほうが、効果は同等で副作用(悪心消化管出血など)は少ないとする報告がある[19]

患部の管理

  • 発作を起こしている関節ないし周辺部位は、安静および冷涼に保持する必要があり、患部を動かしたり熱温する行為は炎症を重篤化させることが知られている。特に、発作時患部の駆動および温度上昇の双方を同時にもたらす入浴は禁忌とする。患者が、安易に民間療法的な発想で、痛風発作と同様に関節部に痛みを伴う関節リウマチの慢性期療法等の温泉療法を連想し入浴を行うと、痛風発作の症状をほぼ100%悪化させる。

緩やかな尿酸の排出

  • 体内の尿酸を自然に排泄する手段として、水分を多めに摂り排尿を促す。
  • クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤は[20]、尿のpHをアルカリ化するため尿酸の排出が促され、痛風を緩和するとされている。
  • 尿酸排泄促進薬の使用中は酸性尿となるため尿路結石や腎障害を発症しやすく、尿アルカリ化薬を併用する。
  • 痛風発作中に尿酸降下薬の投与を開始すると発作を増悪させるので、投与を開始してはならない。ただし尿酸降下薬の投与中は原則として服用を中止しない。

尿酸値上昇要因の排除

  • 血内の尿酸を濃化させる行為を慎む。具体的には、業務・対人などストレスを発生させる行為の中止、負荷のかかる運動の中止(負荷のかかる運動によって死滅した筋細胞はプリン体の主要な供給源のひとつである)、プリン体を多く含む食材の摂食中止、飲酒の中止などを行う。
食事療法
  • 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインの「生活指導」では、特に「1日400mgを目安にしたプリン体の摂取制限」が示されている[21]

予防

高尿酸血症患者においては、その治療方法そのものが、すなわち痛風発作の予防方法のほぼ全てを充足するほか、非高尿酸血症者においても、日常において血中尿酸の急激な濃淡を起こさないような体調・ストレスの管理を要する。

  • 尿酸産生抑制剤であるアロプリノールフェブキソスタットトピロキソスタット、尿酸排泄促進剤であるベンズブロマロン(分泌後再吸収阻害剤)、プロベネシド(分泌前再吸収阻害剤)[22]を予防的に経口投与し、高尿酸血症を改善する。これらは、高尿酸血症の原因が、尿酸産生過剰によるものか尿酸排泄能力低下によるものか、あるいは薬効の患者への影響度などを見極めて使い分ける。
  • 血中尿酸値の濃化・淡化を問わず、その急激な変動そのものが痛風発作の原因となるため、これらの薬剤については、急激な尿酸値低下による発作の悪化や再発を誘引せぬよう、痛風発作の発現中ならびに寛解直後数週間の服用は推奨されていない。
  • 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』[23]では、「適度な量の飲酒」、「プリン体の摂取を控えめにする」、「十分な水分摂取」、「尿をアルカリ性に保つ」、「運動」、「ストレスの解消」がすすめられている。
  • 帝人ファーマが創製し、同社が日本で、イプセンがヨーロッパで、TAP社、(後に武田薬品に買収される)が米国で開発したフェブキソスタットが新規痛風治療薬として米国では2009年、日本では2011年にフェブリク(帝人ファーマ製造販売)として承認された。
  • 富士薬品が創製したトピロキソスタットが、2013年よりトピロリック(富士薬品)/ウリアデック(三和化学研究所)の2ブランドで販売されている。

その他

痛風患者は発作の前兆を感じることがあると言われ、そのときコルヒチンを飲むと発作を予防する効果があるとされている。しかしこの治療法に臨床研究に基づく根拠はない。ただし、発作の初期症状である発作発現部に感じる「違和感」や、ごく軽い内部から感じる痒み等については、痛風発作の初発患者のほとんどがこれを軽微な思い過ごしと見過ごして発作を激痛による歩行困難となるまで重篤化させるが、再発患者は既にその初期症状の特徴である患部の微妙な違和感を体験しているため、痛風発作発生のごく初期にいち早く診療を受けてコルヒチンを処方され服用して、激痛が発生する前に発作の進行を抑制・寛解させるケースが非常に多い。これは、痛風発作の激痛に懲りた経験のある患者にとって再度くりかえし過酷な発作を蒙りたくないと考えるゆえの当然の行動によるものであり、あくまで発作歴のある患者が発作初期の患部の違和感を素早く感知して早期に対症療法を受けたことによる成果であって、「前兆」「予感」等ではなく発作の「自覚症状」にもとづくものであり、その診療経緯は当然に診察医のカルテにも記録されるので、疫学的に反映させることが可能なものである。

遺伝

痛風を来す作用が極めて強く、1つの遺伝子が痛風の原因となる場合(単一遺伝子病)と、1つの遺伝子の作用が弱く、複数の遺伝子と環境要因が加わって痛風を来す場合(多因子病)がある。前者にはPRPP合成酵素亢進症、HPRT欠損症(レッシュ・ナイハン症候群)などの酵素異常症、ウロモデュリン異常症などがある。後者には多数の遺伝子があり、上記のように少なくとも27個の遺伝子が関係している。




  1. ^ 藏城雅文、尿酸の酸化作用と抗酸化作用 『痛風と核酸代謝』 2014年 38巻 2号 p.145-, doi:10.6032/gnam.38.145
  2. ^ 高木和貴, 上田孝典、「尿酸分解酵素PEG化ウリカーゼの適応と意義」『高尿酸血症と痛風』18(2), 2010, pp.41-46, hdl:10098/2955
  3. ^ 痛風 MSDマニュアル家庭版
  4. ^ 金子希代子、山辺智代、藤森新、「尿酸塩結晶生成に及ぼす溶液中のタンパク質とpHの影響 - フローサイトメーターを用いた検討」『痛風と核酸代謝』 2001年 25巻 2号 p.121-128, doi:10.6032/gnam1999.25.2_121
  5. ^ 後藤武史ほか「X線回折法による痛風結節内容物の結晶学的同定」、『整形外科と災害外科』1984年 32巻 3号 p.755-758, doi:10.5035/nishiseisai.32.755
  6. ^ Kimiyoshi Ichida; Hirotaka Matsuo, Tappei Takada, Akiyoshi Nakayama, Keizo Murakami, Toru Shimizu, Yoshihide Yamanashi, Hiroshi Kasuga, Hiroshi Nakashima, Takahiro Nakamura, Yuzo Takada, Yusuke Kawamura, Hiroki Inoue, Chisa Okada, Yoshitaka Utsumi, Yuki Ikebuchi, Kousei Ito, Makiko Nakamura, Yoshihiko Shinohara, Makoto Hosoyamada, et al. (2012). “Decreased extra-renal urate excretion is a common cause of hyperuricemia.”. Nature Communications 3. doi:10.1038/ncomms1756. PMID 22473008. http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n4/full/ncomms1756.html. 
  7. ^ Identification of rs671, a common variant of ALDH2, as a gout susceptibility locus
  8. ^ 痛風(高尿酸血症) 一般社団法人 愛知県薬剤師会
  9. ^ 痛風はなぜ男性に多いのか? 公益財団法人 痛風財団
  10. ^ 痛風(高尿酸血症)患者の98%が男性、30歳代で増加 肥満や飲酒、ストレスが発症の誘因 痛みがなくても尿酸値に注意して”. min-iren.gr.jp. 全日本民主医療機関連合会 (2004年9月1日). 2020年1月7日閲覧。
  11. ^ Choi HK; Atkinson K; Karlson EW; Willett W; Curhan G. Alcohol intake and risk of incident gout in men: a prospective study. Lancet 2004 17;363:1277-81.
  12. ^ Choi HK; Atkinson K; Karlson EW; Willett W; Curhan G. Alcohol intake and risk of incident gout in men: a prospective study. Lancet 2004 17;363:1277-81.
  13. ^ 金子希代子, 山岡法子, 福内友子 ほか「アルコールが尿酸代謝に悪い理由」『痛風と核酸代謝』2017年 41巻 2号 p.228- doi:10.6032/gnam.41.228, 日本痛風・核酸代謝学会
  14. ^ KIRIN_お問い合わせ プリン体と人体の関係について (参考)
  15. ^ Choi HK; Atkinson K; Karlson EW; Willett W; Curhan G. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. NEJM. 2004 11;350:1093-103.
  16. ^ 高橋隆一 高カロリー輸液施行中に認められるアシドーシス
  17. ^ Hyon K Choi, Gary Curhan. Soft drinks, fructose consumption, and the risk of gout in men: prospective cohort study BMJ 2008; 336: 309-12.
  18. ^ Merriman, Tony R.; Dalbeth, Nicola; Topless, Ruth K.; Major, Tanya J. (2018-10-10). “Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts” (英語). BMJ 363: k3951. doi:10.1136/bmj.k3951. ISSN 1756-1833. PMID 30305269. https://www.bmj.com/content/363/bmj.k3951. 
  19. ^ Man CY et al. Comparison of oral prednisolone/paracetamol and oral indomethacin/paracetamol combination therapy in the treatment of acute goutlike arthritis: A double-blind, randomized, controlled trial. Ann Emerg Med 2007;49:670-7.
  20. ^ 細谷龍男、「第4章 合併症,併発症に対する治療」『痛風と核酸代謝』 2002年 26巻 Supplement号 p.45-57, doi:10.6032/gnam1999.26.Supplement_45, 日本痛風・核酸代謝学会
  21. ^ 食品・飲料中のプリン体含有量/公益財団法人痛風財団
  22. ^ J Rheumatol 2013 Jun; 40:872.
  23. ^ 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版』日本痛風・核酸代謝学会、2002年9月。ISBN 4-901935-02-X
  24. ^ FDAから業者への警告通知
  25. ^ USA Todayの記事





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