鶴見川
鶴見川は、東京都町田市上小山田町にその源を発し、多摩丘陵、川崎市と流れ、横浜市の鶴見川多目的遊水地を通り、大きく蛇行しながら京浜工業地帯の鶴見区生麦で東京湾に注いでいます。流域面積235km2、流路延長42.5kmの一級河川です。また、流域の形が動物のバクの姿に似ていることから、鶴見川流域は「バクの流域」としても親しまれています。 |
鶴見川多目的遊水地(横浜市港北区) |
河川概要 |
| ○拡大図 |
1.鶴見川の歴史 |
"昔から大雨のたびに洪水・氾濫をもたらしてきた鶴見川は、川の規模が小さく水害を受けやすい地形的な条件もあって、ごく最近まで貴重な緑の空間を数多く残していました。しかし、昭和40年頃からの急速な都市化によって、現在では、鶴見川は国内でも有数の典型的な都市河川となっています。" |
〔江戸時代までの鶴見川〕 丘陵地と台地の間を蛇行しながら緩やかな勾配で流れる鶴見川は、河床が浅く、川沿いは低くて平らな沖積地が連なっている地形的な特徴により、昔から大雨のたびに洪水・氾濫をもたらしてきました。 戦国時代の末期から江戸時代にかけて、日本の各地で有力大名による大規模な治水事業が実施され、広大な新田開発が盛んに行われましたが、鶴見川流域では、水害を受けやすい土地条件などが災いして、江戸時代に入っても開発の規模は小さいものでした。また、江戸時代に鶴見川は舟運にもかなり利用されるようになり、年貢米をはじめとする物資の輸送が盛んとなりました。しかし、利根川などとは異なり、鶴見川は川の規模が小さいことから、往来できる舟の大きさも限られていました。こうした地形的な事情もあって、鶴見川流域は、江戸に近接しているという地理的条件に恵まれながらも、社会経済的に発展してきた地域とは言えず、東京と横浜という大都市に挟まれた地域でありながら、ごく最近まで貴重な緑の空間を数多く残すことができたのではないでしょうか。 〔明治時代以降の鶴見川と流域の市街化〕
戦後、昭和30年頃の鶴見川流域は、自然豊かな環境も数多く残されていましたが、昭和40年頃からこの鶴見川流域も著しい市街化が進みました。国際都市横浜に位置し、首都東京にも近いという地理的条件により、下流域では京浜工業地帯が発達し、昭和39年には東海道新幹線が開通し、新横浜駅も開業しました。その後も第三京浜や田園都市線、東名高速の開通など、主要交通機関の発達に伴って中流域を中心に急速な都市化が進みました。その結果、現在では鶴見川は国内でも有数の典型的な都市河川となっています。 |
2.地域の中の鶴見川 |
"鶴見川流域では、市民・行政・企業で構成された「ふれあって鶴見川」実行委員会を設置し、市民参加型の様々な各種イベントを企画・主催して、都市河川ならではの様々な問題に対する取り組みとしての「総合治水対策」や「鶴見川流域水マスタープラン」を推進していく必要性をPRするために、流域が一体となって広報活動を展開しています。" |
鶴見川の流域活動 鶴見川流域では、急激な都市化により水田や森林等による保水・遊水機能が低下し、短時間で大量に降雨が川へ集まってしまうなどの典型的な都市河川ならではの様々な問題が発生してきました。 このため、昭和55年からは、鶴見川を河道だけでなく流域全体として捉え、市民や行政などが一体となって「総合治水対策」を全国に先駆けて推し進め、一定の成果を収めてきました。しかし、都市における水害対策は極めて重要であり、鶴見川流域における「総合治水対策」も、より一層の取り組みが求められるようになりました。
具体的な広報活動の取り組みとして、鶴見川流域で様々な活動をしている市民団体の方々や流域自治体、地元マスコミ関係者の方などで構成された「ふれあって鶴見川」実行委員会を設置し、流域を題材とした学習会を開催したり、委員会で連携しながら様々な各種イベントを企画・主催して、参加してくれた市民一人一人に鶴見川流域への関心を高めてもらえるように、市民・行政・企業が連携・協力し合いながら、流域で一体となって広報活動に取り組んでいます。 |
3.鶴見川の自然環境 |
"鶴見川流域では、急速な市街化によって緑地などが激減してしまいましたが、源流域など、まだ自然が多く見られるところも残っています。源流域の丘陵地帯などに残る谷戸や雑木林では、オオタカやホトケドジョウなどの貴重種の生息も確認されていて、多種多様な生物の貴重な生息地になっています。" |
源流域の丘陵地帯では、湧水などの浸食によって複雑に刻み込まれた地形である谷戸がまだ数多く残っていて、クヌギやコナラ等の雑木林も広がっています。また、この地域は、水域でホトケドジョウ、森林ではオオタカなどの貴重種の生息も確認されていて、鶴見川流域でも最大の、多様な生物の生息地になっています。 源流域から続く多摩丘陵を流れる上流域では、人工的な護岸整備がされているものの、オイカワ、タモロコ等の魚類が数多く見られます。 多摩丘陵を抜け下末吉台地を流下する中流域は、新横浜などの市街地に近接してますが比較的広い高水敷が両岸に残されている箇所も多く、ヨシやオギ等の群落が形成され、オオヨシキリ、セッカ等の野鳥の貴重な生息地にもなっています。 下流域では、事業所や住宅が密集し、河口部は京浜工業地帯になっていますが、残存する干潟では多様な生物が確認されています。 |
4.鶴見川の主な災害 |
"鶴見川は、地形的な条件なども災いして、昔から大雨のたびに洪水・氾濫をおこしてきました。戦後の主な災害の実績としては、昭和33年、41年、51年、57年の台風による洪水災害があげられ、流域に甚大な被害をもたらしました。" |
5.その他 |
"鶴見川流域では、都市河川ならではの様々な問題の対策として「総合治水対策」を全国に先駆けて推し進め、一定の成果を収めてはきましたが、改善できない課題も多く残っています。そこで、〝水循環系の健全化〟をキーワードに「総合治水対策」をより発展させた「鶴見川流域水マスタープラン」を策定しました。" |
鶴見川流域水マスタープラン 〔総合治水対策〕 鶴見川流域は、昭和40年頃から急速な都市化が進み、流域の水田や森林などによる保水・遊水機能が低下してしまったため、短時間で大量の降雨が川へ流れ込んでしまい、洪水を引き起こしやすくなってしまうなどの、典型的な都市河川ならではの様々な問題が浮き彫りになってきました。 このような問題の対策として、昭和55年から、鶴見川を河川だけでなく流域全体として捉え、市民や行政などが一体となって取り組む「総合治水対策」を全国に先駆けて推し進め、一定の成果を収めてはきました。しかしながら、治水を中心とした対策だけでは、環境面などでの改善できない課題も多く残っています。 〔鶴見川流域水マスタープラン〕 そして、「いのちと暮らしを地球につなぐ鶴見川流域再生ビジョン」をキャッチフレーズとして、市民・行政・企業が一つの流域として連携・協働しながら「鶴見川流域水マスタープラン」を推進しています。 |
(注:この情報は2008年2月現在のものです)
鶴見川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 08:53 UTC 版)
鶴見川(つるみがわ)は、東京都および神奈川県を流れる川。鶴見川水系の幹川で、一級河川に指定されている。東京都町田市上小山田町の泉を源流とし、神奈川県横浜市鶴見区の河口から東京湾に注ぐ。全長42.5km、流域面積235km2、支川数は10。2005年(平成17年)4月に特定都市河川浸水被害対策法に基づく特定都市河川に指定された。
- ^ 河川法4条1項、河川法第四条第一項の水系を指定する政令31号。
- ^ なお、鶴見川は、旧河川法に基づき、1967年(昭和42年)5月に、建設大臣から一級水系の指定を受けている。
- ^ 支川については、矢上川、早渕川、鳥山川の一部が国交省管理区間となっている他は、神奈川県、東京都、横浜市などの管理区間となっている。
- ^ “河川整備基本方針>鶴見川水系・鶴見川水系流域及び河川の概要” (PDF). 国土交通省. 2012年1月3日閲覧。
- ^ 鶴見川を特定都市河川の第1号に指定、国土交通省河川局、2005年(平成17年)3月24日。
- ^ “つるみ区のプロフィール 区の歩みと現状・誕生・地勢・略年表”. 平成23年度版 つるみ区の白書. 横浜市鶴見区役所. 2019年9月6日閲覧。
- ^ “第15回:鶴見地名考”. www.city.yokohama.lg.jp. 2019年9月6日閲覧。
- ^ 鶴見川沿いの植樹事業について、横浜市市民活力推進局。
- ^ タマちゃんは、2002年8月7日に多摩川丸子橋付近に現れた後、8月25日から8月30日まで鶴見川にとどまり、その後、帷子川、大岡川、中川、荒川など、東京湾に注ぐ河川各所に出没した。
- ^ アンモニア態窒素 (NH4-N) とは、水中にアンモニウム塩として含まれている窒素のことで、主として、屎尿や家庭下水中の有機物の分解などに起因し、富栄養化などに関わる水質汚濁の指標となる。
- ^ 平成15年度・河川水辺の国勢調査(河川空間利用実態調査)、国土交通省河川局。
- ^ 平成15年度・調査対象河川区域面積あたりの年間利用者数ベスト10、同上。
- ^ 三村竹清『近世能書傳』二見書房、1930年、P.314頁。
- ^ BOD(Biochemical Oxygen Demand、生物化学的酸素要求量)とは、水中の好気性微生物の増殖や呼吸によって消費される酸素量のこと。水の有機物汚染が大きければその有機物を栄養分とする微生物の活動も活発になり、微生物によって消費される酸素の量も増加する。そのため、BOD値が大きければ水中の有機物汚染が大きいことを示すため、水の有機物汚染の指標とされる。
- ^ BOD75%値とは、年間の日平均値の全データ(n個)を値の小さいものから順に並べ、「0.75×n番目」のデータの値をいう。BOD75%値と環境基準値を比較することで、年間日数の4分の3 (75%) における、基準値達成状況が分かる。
- ^ 「平成18年度・全国一級河川の水質現況の公表について」、国土交通省河川局。
- ^ 地方衛生研究所全国協議会、健康危機事例集「鶴見川・有馬川水系のコレラ菌汚染」、大阪府立公衆衛生研究所。
- ^ 「神奈川県の感染症」、神奈川県衛生研究所。
- ^ 33ヶ所からシアン検出 横浜谷本川流域の井戸『朝日新聞』1970年(昭和45年)11月21日朝刊 12版 22面
- ^ "噂の現場「川崎市の水管橋撤去で横浜市民の避難路がなくなる!?」". 噂の東京マガジン. 28 September 2014. TBSネットワーク. TBSテレビ。
- ^ “水管橋、撤去はじまる”. タウンニュース社 (2016年1月21日). 2016年5月14日閲覧。
- ^ “新設人道橋について(新鶴見橋~末吉橋間の人道橋整備ニュース)”. 横浜市. 2022年2月19日閲覧。
固有名詞の分類
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