車載通信系とは? わかりやすく解説

車載通信系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/06 22:17 UTC 版)

警察無線」の記事における「車載通信系」の解説

日本の警察無線の中の車載通信系の通信機は、パトカー白バイなどの警察車両航空機船舶搭載されている他、警察署警察本部およびその配下各部隊配備されている。車載通信系の通信受信することのみが可能な受令機もある。携帯型通信機もあり、車両から離れた場所であっても通信が可能である。最も広範囲警察官カバーできる通信系であり、警察活動における指揮伝達において重要なのである110番入電した通報はこの通信系通じて通信指令本部から速やかに警察署第一線警察官にその対応を指令される。 あらゆる場所での事件災害の発生可能性備えて、車載通信系は各都道府県内を島嶼海上含めくまなくカバーする必要性がある。そのため見晴らしのよい山上や高層ビルなどに設置した中継所介したシステムとして設計されている。送信され電波は一旦、中継所受信され別の周波数再送信される仕組みになっているため、送信者からの遠近かかわらず広範囲存在する無線局との相互交信他局通信内容傍受可能になっている。つまり、同一チャンネル通信している限りにおいて、他局通信傍受することができるため、ある局の通信内容その他の局伝言するよな中継作業不要であり通話効率が高い。また、主な地下街トンネルターミナル駅など電波届かない、あるいは届きにくい場所について中継装置設け活動中警察官通信傍受ないしは送受ができるように整備されている。このように車載通信系は日本全域を高い覆域率でカバーする移動体通信システムである。車載系の歴史1950年頃から始まっており移動体通信先駆的存在である。 車載通信系は1950年昭和25年)頃から30MHz帯(FM変調)を使って開始された。車載移動局基地局(警察署警察本部)の送信周波数差は概ね2MHz程度あった。移動局出力は25W、基地局固定局は50Wで免許交付されていた。当時写真には、後部バンパー長いホイップアンテナや、警察署警察本部屋上設置されスリーブブラウン型と思われるアンテナ記録されている。昭和30年代(1955-1964)の写真からは、有人山上中継所に30MHz帯や150MHz帯空中線整備されていることが確認できるが、どのような中継設計運用がされているかは不明である。 30MHz帯の利用平行して1950年頃から150MHz帯実用化試験局(車載移動局)を用いた研究が行われた。当時真空管用いた通信機であり実用化に至るまでには相当な時間要した技術の進歩により、昭和40年代(1965-1974)に都道府県単位段階的に150MHz帯(FM変調)に移行した150MHz帯比較して30MHz帯はエンジンなど発するノイズによる通信品質への影響大きく、この移行に伴い通信品質大幅に向上したまた、150MHz帯では山上中継所介したシステムとなり、前述通り広い範囲存在する移動局間の相互通話通信傍受が可能となった山上中継所は、送信する電波広範囲届けられる一方で広範囲散在する移動局電波好条件受信することができる。送信出力比較小さく通常ならば数百メートルから数キロ程度し交信できない携帯型通信機などであっても本部などの固定局遠く数十キロ離れた移動局とも安定した通信が行えるようになった150MHz帯への周波数帯変更に伴い不感地帯影響顕著になり、既存山上中継所の他に補助無線中継所整備された。30MHz帯と比較して150MHz帯直進性強く地形影響を受けやすいためである。またこの時代山間部僻地トンネルを通る高速道路整備されてきたこともあり中継所整備強化された。 車載通信系は大ゾーン方式移動体通信システム設計基本的に採用されている。条件にもよるが比較標高のある山頂からの見通しで30-50km程度カバーする携帯電話など小ゾーン方式が多い公衆向け通信システム異なりこの方式は局数限定されること、設置局数抑えられることや簡素な設計で済むことによる設置コスト運用コスト低減できること海上山間部など広範囲カバーする必要性などを勘案し上で設計されたものと推察される。ただし、一つ通信チャネル多数無線局開局するため通話一時的に輻輳することがあるまた、時代変遷に伴い通話量が増加する傾向がある。そのため、複数通信チャネル設定しておき、目的に応じて切り替えて利用している。車載通信系は地域ごとに分割した複数方面系や県内系などの他に、警察規模によっては交通捜査などの専門周波数割り当てられている。また多府県にまたがる広域共通の周波数高速道路専用周波数割り当てられている。さらに、災害時の増波に備えて臨時使用周波数周波数割り当て計画盛り込まれている。 この時代、車載通信系はその周波数帯変調方式一般的なものであり傍受が容易であることから長らく傍受対象とされてきた。そのため、通信そのこと前提として行わざるを得ず機密事項プライバシー関わる内容について有線電話併用したまた、音声周波数処理して送信する方法などもとられたが、抜本的な対策とはならなかった。昭和50年代(1975-1984)に入るとデジタル技術移動音声通信への応用向けた研究進み昭和58年1983年)から順次デジタル化された車載通信系の導入開始された。車載通信系は大規模かつ24時間365日稼働するシステムであることから、既存システムとを併用しながら機器入れ替え進め、完全に移行するには5年以上を要した開発期間中から導入時期頃にかけては車載通信系への妨害事件多発した他、グリコ・森永事件被疑者警察無線受信した証拠物件発見され警察動向把握しながら犯行行っていることが明らかになるなどしたため開発導入進んだとされるデジタル化に伴い音声以外のデータ通信にも車載通信系が利用された。マイクロ多重回線活用したモニター機能もこの時代整備され遠隔地行われる通信管区警察局警察庁モニターできるようになった1998年革マル派アジトで車載通信系を録音したテープ受信装置押収されたことから、革マル派デジタル無線復号成功していたことが明らかになった。また、無線雑誌ラジオライフ読者も、革マル派とは異なる独自の回路ソフトウェア使い復調復号成功していた。一般的に暗号強度は、コンピューター処理能力増大に伴い脆弱性を増す。機器全般老朽化進んでいたことから新たな車載通信系システム開発進められ2003年従来デジタル警察無線形式(MPR)に代わり新型であるAPR(Advanced Police Radio)へと移行したAPR特長以下の通りデータ通信通信スロット音声スロットから独立しているためデータ通信音声通話阻害しない。 複数中継所から同一周波数同期された同時送信行っており、MPRシステム問題となった干渉問題大幅に軽減されている。その結果不感地帯減少させることができる。また、これまで干渉問題利用できなかった中継所活用できるようになったことも不感地帯減少寄与している。 暗号強度強化 隣接する都道府県通信系との接続性向上 パトカー搭載した車載通信機一時的に中継モードにすることで、他の移動体と中継所との間を中継することができる。不感地帯事件事故発生した場合機動的に対応することができる。 2011年3月11日発生した東日本大震災においては、山上無線中継所介した車載系は大きな力を発揮した有線無線一般電話網は、地震発生直後から津波地震の被害により、大きく損なわれた。被害を受けなかった通信網も、通話輻輳通信統制によりその利用大きく制限された。その一方で山上無線中継所非常用発動発電機備えており、商用電源停電による即時機能停止免れた。また津波被害を受けなかったこともあり、発動発電機燃料補給することで継続的かつ安定的に車載無線中継機能を提供することができた。

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