河川の水質
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河川においては、昆虫や貝類を中心とする水生動物相が、富栄養化などによって大きく変わることはよく知られており、それが水質汚濁の良い指標として利用される。古くは、20世紀初頭にコルクヴィッツやマールソンが指標化の方法を開発している。これは、あらかじめ様々な汚濁の段階の水域の特徴である指標生物を選んでおき、採集された動物相の中の優占種がどこに属するかによって判断するものであった。 数値化の方法として有名なのがベックによる方法である。彼は河川の生息する動物の代表的なものを選び、それを水質汚濁に耐性のない種(intolenant species)と耐性のある種(tolenant species)に分けた。そして、ある地点で河川の水生動物調査を行って得られた動物のうち、それぞれの種数を前者をA、後者をBとしたとき、2A+Bの値をもって生物指数(biotic index)と呼んだ。この生物指数が大きい方が清冽で、小さい方が汚濁が進んでいると判断される。これをベック法と言い、その後の生物による水質判定の基礎となった。日本では津田がこれに若干の手を加えたベック・ツダ法がよく使われている。ベック・ツダ法では、採集法として50cm四方のコドラート法による採集と、周辺でのランダムな採集を行い、これにより発見された種類について上記のような計算をおこなうものである。 河川における生物指標としては、この他に分類群ごとの個体数を勘案するパントル・バック法もある。この方法では、生物を汚濁への耐性で四段階に分け、それぞれに数値を与えて累積し、それを出現個体数で割る、といった操作が行われる。 現在では、環境省がこれをさらに簡略化し、分類群の区別も大まかながらわかりやすくしたものがある。この方法は、さほど厳密な同定をせずとも利用可能なため、小中学校の実習等にもよく利用されている。 カワゲラウォッチングも参照。
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河川の水質
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吾妻川中和事業についての詳細は品木ダムを参照。 利根川水系の河川における水質について、利根川本流は久喜市栗橋における計測で2009年(平成21年)の平均値で生物化学的酸素要求量 (BOD) が1.3 mg/lとおおむね良好な水質が保たれている。主要な支流では烏川、渡良瀬川、鬼怒川、小貝川、江戸川では利根川同様水質はおおむね良好な数値を維持しているが、都市部を流れる支流については水質が良いとは言いがたい。 利根川水系主要河川のBOD値 (mg/l) 河川観測地点BOD河川観測地点BOD河川観測地点BOD河川観測地点BOD利根川上流 群馬大橋 0.9 神流川 神流川橋 0.8 鬼怒川中流 川島橋 0.7 利根運河 合流部 8.7 利根川中流 久喜市栗橋 1.3 渡良瀬川中流 渡良瀬大橋 1.7 鬼怒川下流 豊水橋 1.2 江戸川 新葛飾橋 1.7 利根川下流 銚子大橋 1.6 渡良瀬川下流 渡良瀬貯水池 3.8 小貝川 文巻橋 1.9 中川 飯塚橋 3.4 烏川 高崎市岩鼻 1.6 鬼怒川上流 日光市川治 0.7 手賀川 手賀沼水門 5.2 綾瀬川 手代橋 3.7 特に中川と支流の綾瀬川については高度経済成長に伴う流域の都市化で、生活排水が流入。下水道整備も未熟だったこともあって急速に水質汚濁が進行した。両河川のBOD平均値は1989年(平成元年)時点において中川は7.3 mg/l、綾瀬川に至っては17.8 mg/lと「ドブ川」の体であり国土交通省が毎年発表する一級河川の水質現況においてワーストランキングで綾瀬川は1980年(昭和55年)から実に15年間「日本一汚い川」に名を連ねる不名誉な状況が継続していた。このため埼玉県などの流域自治体において中川・綾瀬川浄化のための諸施策を講じた結果水質は著しく改善。2009年段階のBOD平均値は中川で3.0 mg/l、綾瀬川で3.8 mg/lと水質改善度は最も高かった。しかしワーストランキングからの脱却は果たせず、日本の主要な国土交通省管理(指定区間外)の一級河川165河川中で綾瀬川は日本一、中川は日本第2位の汚い川に位置している。 利根川水系全体を俯瞰した場合、BOD平均値が最も低い「清流」は神流川である。一方最も汚染が激しいのは足利市を流れる渡良瀬川の支流、松田川の下流部でBOD平均値は15.0 mg/lと都道府県管理(指定区間)を含む一級河川の中では日本一の汚染度であり、江戸川支流の真間川に注ぐ春木川 (10 mg/l) と国分川 (9.2 mg/l) はそれぞれワースト3位と4位の汚染度となっている。足尾鉱毒事件による重金属汚染が問題化した渡良瀬川については現在も継続的な水質調査が実施され、特に首都圏の水がめである草木ダムについては管理者の水資源機構が灌漑期(夏季)には毎日、非灌漑期(冬季)には毎週厳重な水質監視を続けている。銅、砒素や鉛などを始めとする人体に影響を与える可能性のある化学物質については、銚子市を流れる高田川が化学肥料などの影響で硝酸性窒素の値が環境基準値を超過した以外は利根川水系で問題となる指標は検出されていない。しかし2011年(平成23年)の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散で江戸川から取水している金町浄水場などから放射性ヨウ素が乳児摂取許容量を一時超過、さらに印旛郡栄町の利根川河川敷においてセシウムが基準値を上回る計測値が検出されている。 一方自然環境が原因の水質汚染も存在した。群馬県を流れる利根川の支流・吾妻川は流域に草津温泉・万座温泉や硫黄鉱山が存在し、この一帯を水源に持つ万座川や白砂川といった吾妻川支流は河水の酸性度が高かった。特に白砂川支流の湯川は草津白根山を水源とすることからpHは平均1.8と希塩酸や希硫酸並の酸性度であった。こうした酸性河川が吾妻川に流入するため吾妻川の酸性度も高く、鉄釘は10日でほぼ溶解、コンクリートは30日で30%近く減量するなど河川工作物への影響も大きかった。魚類は全く生息せず、農業用水にも不適で合流後の利根川の水質悪化も招き、「死の川」と形容されていた。このため群馬県は世界初の河川中和事業である吾妻川中和事業を1961年(昭和36年)より開始、湯川などに中和工場を建設して石灰を投入し下流の品木ダムで中和する対策を講じた。これにより吾妻川の酸性度は改善され、魚類も生息する河川へと蘇った。中和事業は現在国土交通省による直轄事業となり、老朽化した施設の改築や万座ダムなどの万座川中和を含めた吾妻川上流総合開発事業が計画されているが、民主党鳩山由紀夫内閣によるダム事業見直しに伴い同事業は見直し対象となっている。 利根大堰から取水される武蔵水路は荒川へと導水されるが、この利根川の河水を利用した隅田川の水質改善も行われた。1961年(昭和36年)当時の隅田川はBODが38mg/lと水質汚濁が激しくメタンガスも湧出する河川だったが、利根大堰建設における目的の一つとして隅田川浄化が挙げられ、利根川上流ダム群より利根大堰、武蔵水路を経由し秋ヶ瀬取水堰(荒川)で朝霞水路に導水された利根川の河水は新河岸川へ放流され、隅田川に導かれる。同時に下水道整備も実施されたことで隅田川のBODは1975年(昭和50年)には環境基準を下回り、2002年(平成14年)には4.9 mg/lにまで改善された。これにより1961年(昭和36年)に中断した早慶レガッタの隅田川開催が1978年(昭和53年)に復活するなど、隅田川の水質改善には利根川が大きく関わっている。
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