放射性ヨウ素とは? わかりやすく解説

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ほうしゃせい‐ようそ〔ハウシヤセイエウソ〕【放射性沃素】


放射性ヨウ素、放射性ヨード

【仮名】ほうしゃせいようそ
原文radioactive iodine

ヨウ素のうち放射性有するもので、しばしば画像検査利用されたり、甲状腺機能亢進症甲状腺がん始めとする特定のがんに対す治療用いられたりする。画像検査では、患者体内投与され少量の放射性ヨウ素が甲状腺細胞や一部の腫瘍内部集積し、これによりスキャナでの検出が可能となる。甲状腺がん対す治療の場合は、大量の放射性ヨウ素を投与し、それによって甲状腺細胞殺傷する。放射性ヨウ素はまた、前立腺がんや眼内(眼の黒色腫さらにはカルチノイド呼ばれる腫瘍対す内照射療法にも用いられる。放射性ヨウ素は、がん細胞殺傷することを目的として、液剤カプセル剤として経口的に投与されたり、注射によって投与されたり、あるいはシード封入し腫瘍内部やその周囲埋め込まれたりする。

ヨウ素の同位体

(放射性ヨウ素 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/05 03:12 UTC 版)

本稿では、ヨウ素の同位体について解説する。

概要

ヨウ素(I)の同位体は、37種類が知られるものの、127Iのみが安定同位体であり、他は全て放射性同位体である。したがって、ヨウ素はモノアイソトピック元素の1つとして数えられる。しかし、宇宙線の影響や、地球上に存在するウランなどが自発核分裂を起こすことにより、半減期約1570万年の129Iが生成され続けている関係で、ごく微量ながら129Iも天然に存在する。また、近年はヒトが人工的に核分裂を起こしている関係で、放射性物質によって汚染された場所では、より高濃度に129Iが存在する。ヨウ素の他の同位体は半減期が短いため、通常は環境中に見られない。このため、標準原子量は126.90447uと、事実上127Iの質量と一致する。

129I

129Iは、ウランなどの核分裂の結果生成される同位体の1つとして知られている。129Iは、半減期約1570万年でβ崩壊して129Xeとなって安定することから、核変換の対象として取り上げられることがある[1]

ところで、129Iには、36Clと類似点が見られる。36Clと比べると反応性に乏しいものの、129Iと36Clは、共に可溶性のハロゲンであり、主に吸着性のアニオンとして存在し、宇宙線と地球表面との相互作用によって生じることである。一方、36Clと異なる点もある。塩素全体の中の36Clの割合と比べて、ヨウ素全体の中の129Iの割合は極めて小さいこと。36Clの半減期が約30万1000年であるのに対して、129Iの半減期は約1570万年と長いこと。36Clと比べて129Iは生体親和性が高いこと。36ClがCl-となっていることが多いのに対して、129IはI-やIO3-など様々な形のイオンとなって存在することである。このことから、129Iは植物土壌乳汁動物組織などの生物圏に組み込まれている。

131I

131Iは、半減期約8日の放射性同位体であり、β崩壊して131Xeとなって安定する。131Iは、ウランなどの核分裂の結果生成される同位体の1つとして知られている。半減期はわずか8日程度に過ぎず、129Iとは違って通常は環境中で見られることはない。

その他のヨウ素の同位体

一覧の節などを参照。)

医療への利用

ヨウ素の同位体の多くは、シンチグラフィ等の医療用途に用いられている。123Iや131I単一光子放射断層撮影(SPECT)に、124Iはポジトロン断層法(PET)に用いられている。これらは異なった画像品質となる[2]。また、125Iは前立腺癌に対する小線源治療に用いられる(小線源治療#適応を参照)。また、131Iは甲状腺機能亢進症甲状腺癌に対するRI内用療法に用いられる(RI内用療法#日本国内で保険承認されているRI内用療法を参照)。

一覧

同位体核種 Z(p) N(n) 同位体質量 (u) 半減期 核スピン数 天然存在比 天然存在比
(範囲)
励起エネルギー
108I 53 55 107.94348(39)# 36(6) ms (1)#
109I 53 56 108.93815(11) 103(5) µs (5/2+)
110I 53 57 109.93524(33)# 650(20) ms 1+#
111I 53 58 110.93028(32)# 2.5(2) s (5/2+)#
112I 53 59 111.92797(23)# 3.42(11) s
113I 53 60 112.92364(6) 6.6(2) s 5/2+#
114I 53 61 113.92185(32)# 2.1(2) s 1+
114mI 265.9(5) keV 6.2(5) s (7)
115I 53 62 114.91805(3) 1.3(2) min (5/2+)#
116I 53 63 115.91681(10) 2.91(15) s 1+
116mI 400(50)# keV 3.27(16) µs (7-)
117I 53 64 116.91365(3) 2.22(4) min (5/2)+
118I 53 65 117.913074(21) 13.7(5) min 2-
118mI 190.1(10) keV 8.5(5) min (7-)
119I 53 66 118.91007(3) 19.1(4) min 5/2+
120I 53 67 119.910048(19) 81.6(2) min 2-
120m1I 72.61(9) keV 228(15) ns (1+,2+,3+)
120m2I 320(15) keV 53(4) min (7-)
121I 53 68 120.907367(11) 2.12(1) h 5/2+
121mI 2376.9(4) keV 9.0(15) µs
122I 53 69 121.907589(6) 3.63(6) min 1+
123I 53 70 122.905589(4) 13.2235(19) h 5/2+
124I 53 71 123.9062099(25) 4.1760(3) d 2-
125I 53 72 124.9046302(16) 59.400(10) d 5/2+
126I 53 73 125.905624(4) 12.93(5) d 2-
127I 53 74 126.904473(4) STABLE 5/2+ 1.0000
128I 53 75 127.905809(4) 24.99(2) min 1+
128m1I 137.850(4) keV 845(20) ns 4-
128m2I 167.367(5) keV 175(15) ns (6)-
129I 53 76 128.904988(3) 1.57(4)E+7 y 7/2+ 10-10~10-14
130I 53 77 129.906674(3) 12.36(1) h 5+
130m1I 39.9525(13) keV 8.84(6) min 2+
130m2I 69.5865(7) keV 133(7) ns (6)-
130m3I 82.3960(19) keV 315(15) ns -
130m4I 85.1099(10) keV 254(4) ns (6)-
131I 53 78 130.9061246(12) 8.02070(11) d 7/2+
132I 53 79 131.907997(6) 2.295(13) h 4+
132mI 104(12) keV 1.387(15) h (8-)
133I 53 80 132.907797(5) 20.8(1) h 7/2+
133m1I 1634.174(17) keV 9(2) s (19/2-)
133m2I 1729.160(17) keV ~170 ns (15/2-)
134I 53 81 133.909744(9) 52.5(2) min (4)+
134mI 316.49(22) keV 3.52(4) min (8)-
135I 53 82 134.910048(8) 6.57(2) h 7/2+
136I 53 83 135.91465(5) 83.4(10) s (1-)
136mI 650(120) keV 46.9(10) s (6-)
137I 53 84 136.917871(30) 24.13(12) s (7/2+)
138I 53 85 137.92235(9) 6.23(3) s (2-)
139I 53 86 138.92610(3) 2.282(10) s 7/2+#
140I 53 87 139.93100(21)# 860(40) ms (3)(-#)
141I 53 88 140.93503(21)# 430(20) ms 7/2+#
142I 53 89 141.94018(43)# ~200 ms 2-#
143I 53 90 142.94456(43)# 100# ms [>300 ns] 7/2+#
144I 53 91 143.94999(54)# 50# ms [>300 ns] 1-#

出典

  1. ^ 長寿命核分裂生成物の半減時間を9年以下に短縮”. 東京工業大学 (2020年1月14日). 2023年5月25日閲覧。
  2. ^ Erwann Rault, Stefaan Vandenberghe, Roel Van Holen, Jan De Beenhouwer, Steven Staelens, Ignace Lemahieu (2007). “Comparison of Image Quality of Different Iodine Isotopes (I-123, I-124, and I-131)” (abstract). Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 22 (3): 423–430. doi:10.1089/cbr.2006.323. http://www.liebertonline.com/doi/abs/10.1089/cbr.2006.323. 

参考文献

外部リンク


放射性ヨウ素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 17:43 UTC 版)

ヨウ素」の記事における「放射性ヨウ素」の解説

チェルノブイリ原子力発電所事故では、核分裂生成物131I放射性同位体)が多量に放出されたが、これが甲状腺蓄積したため、住民甲状腺ガン多発した放射能汚染起きた場合放射性でないヨウ素大量摂取により、あらかじめ甲状腺ヨウ素飽和させる防護策が必要である(ヨウ化カリウム#用途ヨウ素剤参照)。そのため、日本国民保護法に基づく国民保護に関する基本指針により、核攻撃等の武力攻撃発生した場合武力攻撃事態対策本部長又は都道府県知事が、安定ヨウ素剤服用する時期指示することになっている。なお、独立行政法人放射線医学総合研究所は、たとえヨウ素含んでいてもうがい薬消毒剤など、内服薬でないものは「安定ヨウ素剤」の代わりに飲んだりしないようにとしている。 世界保健機関 (WHO) の飲料水中の放射性核種のガイダンスレベルは平常時の値は10 Bq/Lで原子力危機時の誘導介入レベル介入レベル超えないように環境汚染物質汚染食品摂取流通制限するため、二次的に設定される制限レベル、「暫定規制値」とも言う)であり、国際原子力機関介入レベル敷地外一般公衆が、過度被曝生ず恐れのある場合は、実行可能な限り被曝低減のための対策をとることが必要となる。その判断基礎となる線量)を3,000 Bq/Lとしているが、平常時の値や誘導介入レベル定めていない。日本では一定の基準はなくWHOの基準相当 を守っていた。しかし2011年東北地方太平洋沖地震における福島第一原子力発電所事故の影響から、放射性ヨウ素の飲料水中及び牛乳・乳製品中の暫定規制値300 Bq/kgと定めた。 または、ヨウ素甲状腺に集まる性質は、画像診断法の一つである甲状腺シンチグラフィ利用される甲状腺シンチグラフィではヨウ素の同位体のうち123I などを用いる。

※この「放射性ヨウ素」の解説は、「ヨウ素」の解説の一部です。
「放射性ヨウ素」を含む「ヨウ素」の記事については、「ヨウ素」の概要を参照ください。

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