日本の主な商業栽培品種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 20:29 UTC 版)
品種改良が進んでおり、多数の品種が栽培されている。2009年2月2日の時点では登録品種は157種。2016年11月14日の時点では、登録品種は258種、そのうち登録維持されているのは129種。日本産イチゴはほとんどが甘味の強い生食用で、栃木県、福岡県など各地で、新品種が生まれている。大粒の九州産「とよのか」、実がしっかりしている栃木産の「とちおとめ」、酸味が控えめの静岡産「章姫」、香りが強くほどよい酸味の「紅ほっぺ」、大粒品種の「あまおう」など、それぞれに特徴を持たせた品種がよく知られる。 日本の主な商業栽培品種品種名(一般名)品種登録年特徴外部リンクとよのか 1984年 この品種は農研機構(旧・野菜試験場久留米支場)(福岡県久留米市)において、1973年に「ひみこ」に「はるのか」を交配し、以後、選抜を重ねて育成したものである。1980年から3カ年系統適応性検定試験および特性検定試験を行い、1983年5月に農林水産省育成農作物新品種として登録された。なお、出願時の名称は「イチゴ久留米42号」であった。酸味が少なく大粒で甘い(粒が大きいほうが甘い)。九州を中心に広く栽培される。1980年代から1990年代後期までは「東の女峰、西のとよのか」と呼ばれるほどで、二大品種の一つであった。2017年現在では売れ筋こそ後続のより大粒な品種に奪われているが、スーパーマーケットなどでよく目にする定番の品種である。 農水省 女峰(にょほう) 1985年 栃木県農業試験場が、九州の「とよのか」に対抗して「麗紅」に変わる品種を育成する目的で「はるのか」「ダナー」「麗紅」を交配。女峰山に因んで名付けられた。糖度が極めて高く酸味も適度にあり、甘酸っぱい味が特徴。さらには色が鮮やかで外観が良いといった見栄えする点から、ショートケーキなどに向けた業務用イチゴとしても使われていた。うどんこ病の耐性はやや高。主に東日本で栽培されている。 農水省 章姫(あきひめ) 1992年 萩原章弘(静岡市)が、「女峰」と「久能早生」を交配。女峰の酸味、病害抵抗性などの問題点を解決するため改良された。品種名は、品種改良者の章の字に因んで命名されている。長円錐形で、女峰より大きく、細長い形をしている。糖度は高く(10度以上)、酸度は少ない(0.5 - 0.6程度)。休眠が浅く、暖地での施設栽培に向く。 農水省 雷峰(らいほう) 1992年 「円雷」と「女峰」の自殖系。甘みと酸味のバランスが良く、食味良好で、果肉が硬く、日持ちがよい。洋菓子の加工用に多く用いられる。一年を通して栽培。主な産地は宮城県、北海道、山形県、長野県など。 農水省 レッドパール 1993年 愛媛県の生産者が「とよのか」と「アイベリー」を交配。両者の特徴に加え、とちひめ同様中まで赤い。生産量が少ない種。ケーキ、高級菓子用。 農水省 アスカウェイブ 1994年 奈良県農業試験場が「久留米促成3号」「宝交早生」「ダナー」「神戸1号」を交配。アスカルビーが開発されるまで、同県での主力品種。赤みが強く、甘みと酸味のバランスがよい。当初は「アスカエース」と呼ばれていた。 農水省 あかねっ娘(ももいちご) 1994年 愛知県で「アイベリー」×「宝交早生」の選抜系に「とよのか」を交配して選抜したものを母系とし、別の「アイベリー」×「宝交早生」の選抜系を父系とする。出願時の名称は「愛知2号」。かつて徳島県佐那河内村の30数軒の農家で主に栽培されていたが、現在は栽培されていない。奈良県や愛知県、福岡県等で手に入れることができる。ネット通販などで人気である。「ももいちご」の別称は大粒で桃の形に似ていることから名前が付いたとされる。栽培が広がる過程で「愛知2号」の名称だったため、奈良県の生産者がそう呼び始めたのが最初である。一季成。 農水省ももいちご目指せベジフルさん ペチカ(ペチカプライム) 1995年 株式会社ホーブ(北海道)が「大石四季成2号」と「サマーベリー」を交配。甘みが控えめで見栄えのよい四季成りイチゴ。夏場の端境期に出荷され、香りが多くケーキ用として輸入品に対抗。 農水省 越後姫(えちごひめ) 1996年 新潟県園芸研究センターで「ベルルージュ」「女峰」「とよのか」を交配。やや短い円錐形で、肉質は緻密で果汁が多い。糖度が高く、種子が果肉に埋もれることから美しい外観を持つ反面、果肉が柔らかいため輸送性に劣り、その大半が県内で消費される。新潟県内で生産される生食向けいちごの大半は越後姫である。 農水省新潟県農林水産部 とちおとめ 1996年 栃木県農業試験場により「とよのか」と「女峰」を交配し、さらに「栃の峰」を交配、1996年(平成8年)に品種登録された。女峰より粒が大きく甘さも強い、日持ちが良い品種。従来の二大品種であった「とよのか」「女峰」に代わり日本一の生産量を誇る(2019年現在)。 農水省 アスカルビー 2000年 奈良県農業試験場が「アスカウェイブ」と「女峰」を交配。果実は円錐形で赤く艶があり甘みも強い。宝石のように見えることからこの名が付いた。登録前の名称は「奈良7号」。奈良県内のほか、近年は全国各地で生産されているが、別のブランド名になっていることが多い。 農水省 さちのか 2000年 農研機構が「とよのか」と「アイベリー」を交配した長崎県の品種。糖度(平均糖度10度)が高く、酸度は低い(平均酸度0.59)。果実は硬めで日持ちがよい。 農水省 さがほのか 2001年 佐賀県で「大錦」と「とよのか」を交配。佐賀県産いちごの9割のシェアを持つ。円錐形で果肉がかたく、比較的日持ちする。 農水省 とちひめ 2001年 栃木県で「栃の峰」と「久留米49号」を交配。中まで色が赤く甘さが強い、果実が軟らかいため観光イチゴ狩り用。 農水省 アマテラス 2002年 福岡県の農家が「とよのか」と「鬼怒甘(女峰の突然変異種)」を交配。果実は円錐形でかなり大きい。大型の施設栽培に向く品種である。ネット通販などで人気である。 農水省 紅ほっぺ(べにほっぺ) 2002年 静岡県が「章姫」と「さちのか」を交配。章姫と比較し、果心の色が淡赤・花房当たりの花数が少ない。「さちのか」と比較して小葉や果実が大きく、花柄長が長い。実の内側まで赤い。主な産地は静岡県。 農水省 ダイアモンドベリー 2002年 福岡の生産者による、「さがほのか」と「久留米54号」の交配により育成。実は大きめで促成栽培に向いている。 農水省 福岡S6号(あまおう) 2003年 福岡県農業総合試験場園芸研究所で「久留米53号」に出願者所有の育成系統を交配。「あ」かい、「ま」るい、「お」おきい、「う」まいの頭文字をとって名づけられた品種。福岡県では栽培品種が「とよのか」から急速に「あまおう」に置き換わっている。一粒40 gにもなる。なお「あまおう」は全国農業協同組合連合会の登録商標である。大粒で甘く、形がよいのが特徴。九州などの西日本地域で多く栽培されている。 農水省JA全農ふくれん サマープリンセス 2003年 長野県で「麗紅」×「夏芳」の選抜系統に「女峰」を交配。色や光沢の良い夏イチゴ(四季成)。しかし、実が軟らかいため、輸送に向かない。 農水省 エッチエス138(夏実) 2004年 北海三共社の育成品種。実肉が硬く暑さに強い、日持ち・輸送性に優れる夏イチゴ。四季成り性品種。 農水省北海道農政部 夏娘(カレイニャ) 2004年 北海道の生産者による「みよし」と「サマーベリー」の交配種の実生選別種。糖度は高いが、表皮の色が斑で光沢が少なく軟らかい夏イチゴ(四季成)。酸度はやや低い。 農水省 やよいひめ 2005年 群馬県農業技術センターによって育成され、2005年(平成17年)に登録された品種。果実が大果で果肉がしっかりして日持ちがよい。食味は酸味まろやかで、糖度は高くジューシーである。果色は明るく、高温期に黒ずむことがない。 農水省 和田初こい(初恋の香り) 2009年 果皮の色は淡紅。熟しても赤くならず、果肉も白いイチゴで、「白イチゴ」ともよばれる。品種改良時に偶然発見された。実は大きく、香り高いのが特徴。同じく白いイチゴであるパインベリーと混同されやすい。 農水省初恋の香り かおり野 2010年 三重県農業研究所が開発した品種。果実が大きく酸味は低めで、爽やかな甘さが特徴。イチゴの最重要病害炭疽病に対して抵抗性を持つという、他のイチゴにはない長所がある。 農水省 桜桃壱号(桜桃苺) 2015年 福岡県の生産者による「アマテラス」と「紅ほっぺ」の交配種の実生選別種。果実の大きさは極大。果実の縦横比は同等、果実の形は円錐形。ネット通販などで人気である。 農水省 千葉S4号(チーバベリー) 2015年 千葉県農林総合研究センターで1996年に「みつる」と「章姫」を交配後、2012年までに「栃の峰」「とちおとめ」と交配し、選別を繰り返してできた品種。大粒で果汁が多く、うどんこ病に強い。「チーバベリー」という愛称は公募。 農水省千葉県いちご新品種「チーバベリー」 咲姫(さきひめ) 2017年 佐賀県のイチゴ農家が、「やよいひめ」と「さがほのか」の交配により育成。果実は大果で、糖度が高く酸味が少ないため、クランベリーのようなジューシーな味わいが特徴。「さがほのか」に代わる新たなブランド品種として期待されている。 農水省咲姫.com 大分6号(ベリーツ) 2017年 「大分中間母本」と「かおり野」の交配品種。極早生性で果実は鮮やかな赤色で、糖度が高い。 農水省 過去の商業栽培品種 宝交早生 不明 「八雲(幸玉)」と「タホー」を交配したものを、兵庫県農業試験場が1960年に発表。宝塚市で生れたため「宝交」と命名された。新品種が登場する1980年代まで、イチゴを全国に普及させた代表的品種であった。寒冷地の露地栽培に向く。甘みが強く、果実が軟らかい。 宝交早生 アイベリー 不明 交配データ不明。愛知県の愛三種苗が作出し、アメリカの品種と国産種の交配で作られた。実は最大で80 g、長さが7 cmにもなり、普通のイチゴの2 - 3倍の大きさがある。愛知県で育成されたことから、この名前が付いた。 ダナー種 関東地方を中心に広く栽培された。2017年時点、主流の品種に比較すると酸味があり甘みは弱く、小粒。終戦後、アメリカより導入され、昭和50年代頃まで栽培されていたが新種に淘汰された。
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