文化人類学でのタブーとは? わかりやすく解説

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文化人類学でのタブー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 06:19 UTC 版)

タブー」の記事における「文化人類学でのタブー」の解説

ポリネシア語tabuもしくはtapu)は前後二つ部分分けられるtaは徴(しるし)、あるいは徴づけられたもの。buは「強く」を意味する。すなわち「強く徴づけられたもの」を指す。 その社会における聖なるものや俗なるもの、日常非日常清浄穢れなどの対立構造と密接に関連していることが多い。これらの関係性着目したアプローチ構造主義がある。何がタブーとされるかは文化によって著しく変わってくるが一般に死、出産生理食物貴種被差別民魔物個人の名前はタブーとされることが多い。 すべきである、という場合も、忌避行動すべきであるという場合多く一般的には禁止として現れるここから禁忌」とも呼ばれるタブーとされる行動ありようには様々なものが知られており、超自然的な力と関係付けられたり、霊との関係が強調されたりもする。タブーありよう調べると、未開人古代人々が、できごと生起どのように捉えていたのか、ものごと因果をどう把握していたのかが分かることがあるまた、世界存在原理や、個人共同体どのような構造成立しているのか、文化ごとで独特な世界観前提理解できることがあるタブーとされる行動をなぜ取ってならないのか、合理的な説明存在しない場合が多い。しかし、タブー侵犯すると、どのようなことが起こるとその社会では考えられていたかを調査すると、世界共同体存立根拠タブー遵守密接な関係を持っていることが分かるタブーという言葉とその概念は、宗教学的または文化人類学的な研究対象であり、未開人古代社会について論じられていた。しかし、タブー現代社会にも存在していることが認められており、宗教学的なタブー概念比喩的に使った表現として現代タブー」というものが考えられる一方で比喩的な意味ではなく文字通り、現在に生きるタブー存在知られている。従って、タブー現象とは、未開人古代社会問題尽きず現代の問題でもある。 タブーに関して文化人類学説明試みられてきたが、代表的なものには次のようなものがある。 デュルケーム流の聖と俗二元論に基づくとするもの(人間の心理聖と俗といった観念自体があることは必ずしも否定されないが、あまりにも硬直的区分であるとする批判がある。)。 ジェームズ・フレイザー呪術分類による感染呪術によるとするもの。 これらは初期のものであったが、現在ではファン・ヘネップ通過儀礼研究後世メアリー・ダグラス山口昌男ヴィクター・ターナーなどの研究により、むしろその境界領域にある両義性境界性の問題重点移りつつある。日本民俗学でいう「ハレ」「ケ」「ケガレ」の議論もその範疇に入るだろう。例えファン・ヘネップの著『通過儀礼』では分離過渡統合3段階が提示される過渡期には「聖と俗」、「死と再生」などの間に境界性が認められるとした。死と再生に関してフレイザー金枝篇』などの事例エリアーデなどによる宗教学観点から、古く不可分の関係と捉えられていた事が有力視されつつある。ひとつの宗教圏内においても「正統とされるキリスト教仏教教義では説明できない地上留まる霊魂存在イメージ根強く重層した基層文化一部をなしていることが多い。蘇った死者魂呼ばいなど)に対して忌避感情がある一方、(生前の)故人親しい者にとっては蘇生復活なんらかの形での存続を願う気持ちを伴うことも珍しくはなく両義的心情見出されるであろう。またトリックスター事例はしばし善悪役割越えられ境界性が侵犯される。 両義性象徴する顕著な例には血に関するものが挙げられる日本においては穢れとして忌避されるが、一方血の繋がり」「熱血」といった用法からも窺えるように子孫繁栄生命力象徴する場合もある。殺害屠殺の際のように死をイメージさせるものでもあるが、他方月経出産のように新生に繋がるものでもあり、両義的性質兼ねているといえるだろう。血の象徴とされる赤色についても呪術的用途持っていたことが窺えお守り破魔矢などの色に多用される他、ハレの日用いられるものであった。また辰砂、丹)は神仙思想における不老長寿の術(錬丹術)に用いられとされる血の色生命力想起させたのであろう日本でも大物主神賀茂別雷神などに関する神話では「丹塗りの矢」は妊娠もたらす物として描写されている。 キリスト教圏においてはイエス最後の晩餐におけるパンと葡萄酒肉体と血になぞらえた故事知られ重要な儀式のひとつをなす。これはイエス受肉によって自ら贖罪引き受けた死と復活感謝捧げ祝福するのである。逆の意味合い持たされた例としては民間吸血鬼伝承挙げられ、これには土葬された死体への恐怖が関わっている。死後最後の審判の日に裁かれるまでに甦ることは、異教的なものと見なされていたのである。 また古代においては生贄祭壇捧げる儀式広く見られ収穫祭などと共に共同体繁栄祝い、祈るものであった。ここにも犠牲からの一種の甦りという死と再生信仰見てとることができよう。これらは『金枝篇』、ハイヌウェレ型神話創造神話一部始まり比喩的に誕生同一視される)など豊富な事例裏付けられる。 性に関するタブー広く見られるのであるが、行為そのまま自然である動物ではあまり観察されないものであり、自我意識認識社会規範などと深く関係していると思われる深層心理学精神分析は、無意識とその葛藤といった人間両義性孕んだ複雑な心理(アンビヴァレンツ)を扱っている。これはジークムント・フロイトによる『トーテムタブー』などの一連の著作前提にある。

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「文化人類学でのタブー」を含む「タブー」の記事については、「タブー」の概要を参照ください。

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