伝承歌詞
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出典 「大島節歌詞集」昭和59年4月改訂版 大島町岡田 坂上豊吉による地元古老聞き書き書より121詞を抜粋。(上述写真参照。坂上豊吉は、伊豆大島の伝承芸能文化保存者) ※歌詞中の「御神火(ごじんか)」は畏敬を込めた三原山噴火口の呼び名、また、「主」は「ぬし」または「にし」と発音し、伊豆大島の方言で「あなた」の意(岡田地区では「我」「われ」と言う)。 001 私しゃ大島 御神火育ち(ヨ) 胸に煙は(ナ) 絶えやせぬ(ヨ) 002 つつじ椿は 御山(みやま)を照らす 殿の御船(みふね)は 灘照らす 003 男伊達なら 茅ヶ崎沖の 潮の早いを 止めてみろ 004 潮の早いは 止めよで止まる 止めて止まらぬ 色の道 005 乳ヶ崎沖まじゃ 見送りましょが それから先は 神だのみ 006 私しゃ大島 荒浜育ち 色の黒いは 親譲り 007 私しゃ大島 荒浜育ち 浪も荒いが 気も荒い 008 うつつ心で 柱にもたれて 起きていながら 主(ぬし)の夢 009 夢はよいもの 逢わせてくれる 夢でなければ 逢えやせぬ 010 胸に千把(せんば)の 茅(かや)焚くとても 煙出さなきゃ 主ゃ知らぬ 011 私しゃ大島 一重の桜 八重に咲く気は さらにない 012 今日のうれしさ 障子に書いて 開け閉(た)てするたび 思い出す 013 相模灘をば 両手で拝む 可愛い旦那ツ子の 乗るうちは 014 杉の若萌 みたよな殿御 人にとられて なるものか 015 私の人(男)でも ないのだけれど 誰かの人(男)にも したくない 016 強い お強い 為朝様も 島のあん娘(こ)にゃ 負けたもの 017 別れつらくも 帆を巻く朝は 涙流すな 波が立つ 018 いやなお方の 親切よりも 好いたお方の 無理がよい 019 客は千来る 万来る中で 私の待つ人 ただひとり 020 名こそ差さねど あの町にひとり 命かけたい 主(にし)がいる 021 沖を通るは ありゃどれ丸だ 外じゃあるまい 主(ぬし)の船 022 さくら丸には 用事はないが 乗ってる旦那っ子に 用がある 023 千両箱をば 山に積んでも いやなお方は 私しゃいやだ はだかはだしで一文無しでも 主(ぬし)が良い 024 竹の一本橋ゃ 細くて長くて しなしな しのうて(しなって)危ないけど 私とあなたと二人で渡るにゃ 怖かない 025 お江戸離れて 南え三十六里(みそろくり) 潮の花散る 椿島 026 お江戸恋しや 島なつかしや 橋をかけても 渡りたい 027 来てはとんとん 雨戸をたたく 心迷わす 西の風 028 九尺二間の 雨戸一枚と 私の心 あちら閉(た)てれば こちらが立たない こちら閉てれば あちらが立たない 両方閉てれば 身が立たぬ 029 男心と 茶釜の水は 沸くも早いが 冷めやすい 030 お月さま たったひと言教えておくれ 主(ぬし)の夕べの 居どころを 031 野増村から 来い(恋)との手紙 行かじゃなるまい ひと先ずは 032 岡田みなとで ドンと打つ浪は 可愛い旦那ッ子の 度胸だめし 033 西も東も 南もいらぬ わたしゃあなたの 北(来た)がよい 034 「北も南も 東もいらぬ わたしゃやっぱり 西(主=にし)がよい」 035 なくて七癖 わたしのクセは 逢えば帰すが イヤなクセ 036 好きで通えば 千里も一里 いやで通えば 一里も千里 037 アワイ大浜 登りがなけりゃ 野増通いも 苦にゃならぬ 038 アンコ出て見ろ 三原の煙り いやなお方にゃ なびきゃせぬ 039 波浮と差木地じゃ 一里のちがい 主(ぬし)と私は 三つ違い 040 ほれた「ほ」の字は どう書きなさる まよった「ま」の字に ヘン(偏)がつく 041 逢えばさほどの 話しはないが 逢わなきゃ話しは 富士の山 042 逢った嬉しさ 別れのつらさ 逢って別れが なけりゃあよい 043 ガタガタ落としの つるべでさえも 水に合わなきゃ 返りゃせぬ 044 恋のつるべが 返らぬゆえに あなたの心が 汲みにくい 045 私の心が 竹なら木なら 割って見せたい 四つ割りに 046 小石(恋し)九つ 重石(想いし)一つ ままにならぬは 主(ぬし)ひとり 047 遠く離れて 逢いたい時は 月が鏡に なればよい 048 来てはくれるな ない名が立つに 来なきゃある名も 立ちゃせぬ 049 末の取り膳 たのしむよりも 当座抱き寝が してみたい 050 三原下ろしの 雪風よりも 主のひと言が 身にしみる 051 返事しかねて いろりの灰に 火箸で判らぬ 文字を書く 052 手紙千本 やりとりよりも 逢ってひと言 話したい 053 遠く離れりゃ 手紙が便り(頼り) どこの配達も 目にとまる 054 思い出すよじゃ 惚れよが薄い 思い出さずに 忘れずに 055 思い出させて 泣かせておいて どこにそれたか 今朝の風 056 思い出さでは 泣き暮らさでは いやで別れた 仲じゃない 057 思い出しては 写真を眺め なぜに写真は もの言わぬ 058 添われないから 来るなと言うても 来れば泣いたり 泣かせたり 059 親もよく聞け さて叔父叔母も いやな方とは 添われない 060 恋の病いを 親達ゃ知らず いやな薬を 飲め飲めと 061 東京育ちの 学生よりも 山で炭焼く 主(にし)がよい 062 船長さまより 機関長よりも 炊事(カシキ)あがりの 主(ぬし)がよい 063 親がくれなきゃ 逃げよじゃないか 逃げて添うのも 粋なもの 064 連れてゆくから 髪結いなおせ 世間島田で 渡られぬ 065 連れて逃げれば 戸籍がもめる 死ねば新聞 笑い草 066 思っちゃ見ちゃ泣き 見ちゃ思っちゃ泣き 葉書き四つ折り 書いちゃ泣き 067 キリギリス羽根で鳴くかよ セミや腹で鳴く わたしゃ主(にし)ゆえ 胸で泣く 068 島のアンコに 想いをかけて 月に三度の 島通い 069 髪の長さに つい魅かされて 誰も寄り来る 大島え 070 島でなければ 鉄道架けて 一夜通いが してみたい 071 波浮の港は 巾着みなと 惜しいことには ひもがない 072 島と名がつきゃ どの島も可愛い 分けて利島(年増)は なお可愛い 073 お酒飲む人 しんから可愛い 飲んでくだ巻きゃ なお可愛い 074 三原御神火 名所のひとつ 野増村では 竜の口 075 明日はお立ちか お名残惜しや せめて波風 おだやかに 076 明日はお立ちか お名残惜しや 西の十日も 吹けばよいに 077 沖の荒波 風ゆえもめる わたしゃ主ゆえ 気がもめる 078 船がかすむと 磯から言えば 磯がかすむと 船で言う 079 義理に迫れば ウグイスさえも 梅を離れて ヤブで啼く 080 浮気ウグイス 梅をば捨てて 隣り屋敷の ヤブで鳴く 081 金のなる木を 庭木に植えて 可愛いあの子に ゆずりたい 082 松になりたや 乳ヶ崎松に 出船入船を 見て暮らす 083 松になりたや 岡田の松に 枯れて落ちても 二人連れ 084 松という字は 木ヘンに公(きみ)だ 君(公)に気(木)がなきゃ 待つ(松)じゃない 085 沖のかもめが もの言うならば 便り聞いたり 聞かせたり 086 椿花散りゃ 桜が笑う 次はつつじが 気を燃やす 087 島のアンコと 椿の花は そっとしておけ 手にとるな 088 山の椿は 真っ赤に燃えて 主の情けを 待つばかり 089 去年の今夜は 知らないお人 今年の今夜は 家の人 090 きょうは嬉しや 皆さんと一座 明日もこの手で 願います 091 きょうは嬉しや 皆さんと一緒 明日はどなたと 語るやら 092 飲んでおくれよ 騒いでおくれ きょうは我が家の 身の祝い 093 目出度めでたの 若松さまよ 枝も栄えて 葉も茂る 094 ここのお家は 目出度いお家 鶴と亀とが 舞い遊ぶ 095 ここのお屋根に ウグイスとめて 繁盛繁盛と 鳴かせたい 096 ここの座敷は 六畳め八畳 九畳(苦情)がないので 来ておくれよ 097 丸い卵も 切りよで四角 ものも言いよで 角が立つ 098 「殻も白身も オヘソもいらぬ 私しゃやっぱり 黄身(君)がよい」 099 唄を願います ○○ さんとやらに お気に召さずと 是非ひとつ 100 唄え十七 唄わず置いて 後で悔やむな 年老いて 101 唄いなされよ お唄いなされ 唄で器量は 下がりゃせぬ 102 唄え唄えと 攻めたてられて 唄は出ないで 汗が出る 103 主は百まで わしゃ九十九まで ともに白髪の 生えるまで 104 七転び八起きの浮世に 心配するな 牡丹もコモ着て 冬ごもる 105 お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒 106 私しゃ大島 雨水育ち 胸にぼうふらは 絶えやせぬ 107 置いてゆくだな つぼみの私 後で咲くとも 主(にし)や知らぬ 108 花の大島 岡田の港 椿咲くぞえ 実も結ぶ 109 年は寄り来る 山道や茂る 人の情けも 薄くなる 110 沖にちらちら 航海ランプ 主(ぬし)もいるずら あの船に 111 色で迷わす 西瓜でさえも 中にゃ黒(苦労)の タネがある 112 月を眺めて ほろりと涙 あの星あたりが 主(ぬし)の空よ 113 月が出たなら 私と思え 私しゃ主(ぬし)だと 手で拝む 114 沖を流れる 炭スゴさえも 鳥に一夜の 宿を貸す 115 今年ゃこれきり また来年も 都合つけては 逢いにくる 116 心意気さえ 届いていれば 逢うにゃ五年に 一度でも 117 苦労する身は 細書きに いのちゃお前に かけすずり 118 行って来いやい 四合の山に せめて十日も いたらこい 119 先の出ようで 鬼とも蛇とも なるよ神とも 仏とも 120 私ゃローソク 芯から燃える あなたランプで 口ばかり 121 主(ぬし)を待つ待つ 月日を忘れ うぐいす鳴くから 春じゃやら
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