テレビドラマでの十津川警部シリーズ
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「十津川警部シリーズ」の記事における「テレビドラマでの十津川警部シリーズ」の解説
十津川警部のテレビ初登場は、小説での初登場から6年後の1979年に放映された「寝台特急殺人事件」で、演じたのは三橋達也である。放送局はテレビ朝日、2時間サスペンスの草分けとして1977年に開始された『土曜ワイド劇場』(土ワイ)3年目での初登場だった。この作品以後、朝日放送・大映企画・大映京都撮影所の制作で1982年までに計3作品が放送された。1981年からはテレビ朝日・東映制作で、現在も放送が続いており、2020年現在で72作に達する、2時間サスペンス史上最長寿のシリーズになっている(毎年1〜2作品のペース)。東映製作のシリーズ第4作より使用されている甲斐正人によるテーマ曲も有名である。「土ワイ」でのシリーズ名は開始以後、新作放映の度にまちまちの状態が続いていたが、1989年の第15作「アルプス誘拐ルート」以降、『西村京太郎トラベルミステリー』がシリーズ名として定着する。 大映製作の3作品で亀井刑事を演じたのは綿引洪(わたびきひろし・第3作では本名の綿引勝彦に改名していた)であった。東映製作作品で亀井刑事を演じたのは愛川欽也で、18年間“三橋十津川・愛川カメさん”のコンビが茶の間に親しまれることになった。東映版製作開始の1981年以来、愛川が主演として事件解決の中心となり、三橋が責任者として愛川を援助していくスタイル(これはシリーズ開始当時60歳だった三橋の年齢を考慮し、十津川があまり動き回らない設定にしたためといわれる)が定着した。また、三橋のいかつい外見に合わせ、大学時代のサークル活動はラグビー部に変更されている(東映製作のシリーズ第9作『寝台急行「銀河」殺人事件』)。なお、このシリーズで十津川警部の代名詞となった三橋達也は、警視庁の警察広報にも採用されている。 三橋が病を患ったため代役として、1984年の東映製作のシリーズ第5作には天知茂が、1995年の東映製作のシリーズ第28作には高島忠夫が十津川警部を演じている。西村自身は“天知警部”を大変気にいったとも伝えられる。また、そのせいか後にファミリーコンピュータ用ゲーム『寝台特急殺人事件』では、十津川班のメンバーは「土ワイ」版を元にしているが、十津川は天知茂がモデルになっていた。また、第5作では森本レオ演じる西本刑事が初登場。以降第68作まで出演している。 テレビ朝日での成功により2時間サスペンスの時間枠が各局に設けられ、十津川警部もテレビ朝日の専売特許ではなくなる。テレビ2人目の十津川警部は、1981年、日本テレビ系『火曜サスペンス劇場』での「消えたタンカー」で演じた夏木勲(亀井刑事は登場しない)であった。 1982年に開始されたTBS系『ザ・サスペンス』でも「特急さくら殺人事件」で、宝田明の十津川(亀井刑事は犬塚弘)が登場した。 『ザ・サスペンス』での十津川は、翌1983年の「日本一周『旅号』殺人事件」で、若林豪に交代(亀井刑事も坂上二郎に交代)、姓の読みが「とつがわ」でなく「とつかわ」に変更されていた。若林豪による十津川警部は1984年に『ザ・サスペンス』が終了するまでに4作が製作され、テレビ朝日以外での初めてのシリーズとなった。なお、若林は1995年のフジテレビ系「環状線に消えた女」と合わせて通算5作品で十津川を演じた。 1986年、フジテレビ系では『木曜ドラマストリート』で放送された「展望車殺人事件」(堤大二郎演じる西本刑事主演)で、石立鉄男の十津川が助演で登場(亀井刑事は山谷初男)したが、この1本限り。翌87年、同じくフジ系『金曜・女のドラマスペシャル(現・金曜プレミアム)』で「寝台特急はやぶさの女」が放送され、小野寺昭の十津川、川谷拓三の亀井が登場した。この時間枠を引き継いだ『男と女のミステリー』で89年放送された「寝台特急ゆうづるの女」でも十津川は小野寺(この時亀井刑事は室田日出男)だったが、以上フジテレビ系の2時間ドラマ枠もすべて短命に終わったため、長期シリーズにはならず、小野寺版は2本で終わっている。 短命の2時間ドラマ枠はTBSやフジテレビに限らず、テレビ朝日でも90年に新たな時間枠『火曜ミステリー劇場』を開始し、高橋英樹が主役として十津川警部を演じる「十津川警部の挑戦」(1990年)、「十津川警部の対決」(1991年)、「十津川警部の反撃」(1991年/以上3作での亀井刑事はいかりや長介)の3作を放送したが、第3作は「火曜ミステリー劇場」の最終作となっている。 新たな長期のシリーズとなったのは、1992年に渡瀬恒彦の十津川警部と伊東四朗の亀井刑事で第1作「札幌駅殺人事件」が放映されたTBS系「月曜ドラマスペシャル」(1989年放映開始・現:「月曜ゴールデン」)での「西村京太郎サスペンス・十津川警部シリーズ」である。TBS版は原作の設定年齢に比較的近い配役と、渡瀬主演で十津川が中心となって事件を解決する原作通りのスタイルで、以後順調に新作を放映して軌道に乗り、第2の長期シリーズとして定着した。1997年の第14作「海を渡った愛と殺意」ではかたせ梨乃演じるキャサリンと競演、海外捜査にも乗り出している。 1999年、三橋が自身34作目の「秋田新幹線こまち殺人事件」(三橋は当時76歳)を最後に、テレビでの当たり役ともなった十津川警部役をついに降板。先述のように十津川を演じた経験をもつ高橋英樹が十津川役を引き継ぎ、シリーズは転機を迎える。2000年の東映製作シリーズ第34作「津軽陸中殺人ルート」より、「土ワイ」版は愛川主演から高橋主演となり、十津川が事件捜査の中心となる、原作またTBS版シリーズに近い構成へと移行していく。シリーズ開始25年目にあたる2003年は、「土ワイ」でのシリーズ初の海外捜査作品「オリエント急行殺人事件」(東映版第38作)など最多の年間4作が放送され、このシリーズの根強い人気が浮き彫りになった。また、テレビ朝日では2000年から、本シリーズを原作としながら主演に沢口靖子を迎え、各種設定をオリジナルのものとした「鉄道捜査官」シリーズを年1回ペースで制作・放送しており(こちらも東映製作)、2019年には「西村京太郎トラベルミステリー」とのクロスオーバー企画も放送された。 TBS版も『月曜ミステリー劇場』(後に『月曜ゴールデン』)に改称された同枠の看板シリーズのひとつとして親しまれ続け、2005年の第35作「金沢加賀殺意の旅」で渡瀬は三橋の34作を追い抜いて、テレビで最も多く十津川を演じた俳優となった。このシリーズでは、渡瀬・伊東コンビは一度も交代していなかったが、同枠が『月曜ゴールデン』を経て、2016年4月 - 2019年3月に放送された『月曜名作劇場』では開始当初の段階でシリーズの制作が途絶えた状態となり、渡瀬・伊東コンビのシリーズは事実上終了する形となった。そして、同枠では2017年1月23日放送分から「十津川警部シリーズ」のタイトルでキャスティング・スタッフ・制作プロダクションなどを大幅に入れ替え、その第1作となる「伊豆・下田殺人ルート」から、十津川役は内藤剛志、亀井役は石丸謙二郎がそれぞれ演じ、十津川の妻役には池上季実子が起用されるなど、キャスティングを大幅に入れ替え、制作会社もこれまでのテレパックからオスカープロモーションに変更されたが、第5作からは、製作会社がザ レインドロップスに交代し、十津川・亀井以外のメンバーも十津川班の刑事を中心に大幅に入れ替わった。 2003年、テレビ東京系の新しい2時間ドラマ枠『女と愛とミステリー』(テレビ東京・BSジャパン〈現:BSテレ東〉共同制作。後の『水曜ミステリー9』や『水曜シアター9』や『水曜エンタ・水曜ミステリー9』も含む)で、小林稔侍演じる亀井刑事主演の「日本一周『旅号』殺人事件」が放映される。十津川警部は助演で萩原健一。翌年の第2作「寝台特急「はやぶさ」の女」と第3作「寝台特急八分停車」では十津川警部は神田正輝が演じたが、この3作で当シリーズは終了となる。 2009年、フジテレビ系2時間ドラマ枠『金曜プレステージ』で、十津川が捜査主任だった頃の奮闘を描いた「十津川刑事の肖像・人捜しゲーム」が放送された。十津川は高嶋政伸、亀井刑事は古谷一行で、以後「十津川刑事の肖像」シリーズとして毎年新作を放映、テレビ朝日系・TBS系両シリーズより若い時代の十津川の奮闘を描く、新たな特色を備えた第3のシリーズとなった。その後シリーズ名は2013年6月放映の第7作から「十津川捜査班」に変更、2016年7月の「十津川警部『悪女』」でシリーズは10作に到達したが、以降新作は制作されていない。 2012年には、テレ朝版「西村京太郎トラベルミステリー」で30年・57作にわたって活躍してきた亀井刑事役・愛川欽也が遂に降板。同シリーズは高田純次を新たに亀井役に迎えて、高橋とのコンビで継続されている。2013年9月にはTBS版が「消えたタンカー」で第50作目を迎え、シリーズ50作到達記念として、分冊百科「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ DVDコレクション」(発行:東京ニュース通信社)の発行が開始、シリーズのDVD化は初めてで、2015年7月で全50巻が完結。その後2018年現在、TBS版シリーズは第54作まで放映されている(ただし、第51作〜第54作のDVD化は予定されていない)。 2020年には、テレビ東京『月曜プレミア8』で、「十津川警部の事件簿」が放送(5月25日放送)。十津川役は船越英一郎で、角野卓造が亀井を演じる。 なお、ドラマ作品は全民放共通の設定として亀井刑事の子息は登場しておらず、原作よりも比較的年齢の高い(概ね制作時点で50代以上)の俳優が起用されている。また、鉄道関係のドラマ作品については原作に登場した列車がダイヤ改正で時刻変更または廃止、あるいは原作に登場する鉄道事業者の撮影許可が降りなかったなどの理由から、設定が大きく改変されたものがある。
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