みつ屋の店員
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 04:25 UTC 版)
梅本杏子(うめもと きょうこ) 本作の主人公。18歳。身長150センチ、体重57キロ。最終学歴は高卒。太めの体格だがブティックで買い物ができる。家族構成は両親と兄が1人。体型のせいで恋愛経験や異性との対話が苦手で学生時代、同性の親友からは別のクラスの異性に声をかける役を任されていた。地元に商店街がある育ちから勧誘に対する処世術を身に付けている。他者からの印象は、椿は「ペコちゃん」、立花からは「大福餅」と頬を触られている。大福を「大きな福」と解釈してそう讃える意味で立花は評したのだが、自身では体型を蔑む代名詞と思い込んでいるため、二の腕も触られ大福だと言った立花に殺意を持ち店を辞めようとすら思ったこともある。容姿全体の印象は、冬季にダッフルコートを着た姿を、立花からはテディベアのようだと言われている。他者からの呼ばれ方は、母親と商店街の年長者、『アンと青春』時の友人2人からは下の名前を正しく読んだ「杏子(きょうこ)」、学生時代、友人からは「コロちゃん」、椿と桜井と仕事時の立花からは名字の「梅本さん」、松本からは杏子を「あんこ」と読んだ「あんこちゃん」、プライベートの立花からは、松本と同じく「あんこちゃん」を提案後、梅本の「あんこ」から「こ」を取って欲しいとの抗議に『赤毛のアン』も因み「アンちゃん」と、それぞれ呼ばれている。制服のシャツ、自前で用意したスカートは共にLサイズ。化粧は販売員の清潔感から控えていたが、五月の「魔女」メイクと、メイク後に尚も渋る梅本に椿の指導と和菓子を用いたたとえで小綺麗な程度は行うべき、と諭した立花の意見に以降、最低限の化粧は行うようになった。立花とは当初、ギャルソンのようなイケメン容姿と、その容姿を持つ男性に対する先入観通りの対応に警戒するが、立花の乙女系性格を知り打ち解けて共同作業にあたるようになった。以前読んでいた雑誌の特集記事を応対に生かす、買い物に訪れたスーパーの和菓子を選別、柏木の接客を同じ接客業者の視点から判別等、次第に職業意識に芽生え、同時に奥に閉まっていた働く意義に悩んでいく。学生時代、異性に容姿をからかわれた経緯から男性恐怖症に陥っており、仕事に慣れてからも異性との触れ合いは、兄、父、立花、柏木、松本以外は、仕事としての応対に支障はないものの基本的に苦手のままとなっている。『アンと青春』では、柏木の自虐や柏木への思いを打ち明けた立花の一言に「あたしなんか」と自信喪失をおこしても、自身が接客している感覚がない中、機械対応で接客を行える程、業務に適応する成長をみせる。その一方で鈍感さは私生活でも健在で、京都の旅行では友人にも半ば呆れられつつ諭され、松本の「甘酒屋の荷」を「甘酒の煮」と聞き間違えていただけだったに対し、一方の立花の様子がおかしかったことと旅行の真の目的に気づいていない。 年齢の18歳は、『和菓子のアン』文庫版時点で坂木作品主人公中、最年少。 桜井(さくらい) みつ屋アルバイト。大学在学中の傍ら遅番をつとめる。梅本とは同い年で1ヶ月前のアルバイト入社。梅本の面接時、初めに声をかけた相手。元ヤンで、髪は茶髪、業務中も、たまに言葉遣いや、壁一つ隔てたバックヤード裏で休憩をしている梅本への応援の要請をソバットで行う等、地が出てしまう。制服のエプロンに言葉遣いに関するメモを忍ばせている。梅本と同席時、客が大量の伝票に住所を書き込む無茶な要求してきた時には元ヤンの本性を出して客を脅し「個人情報保護」の名の下、目の前で裁断し、客自身にも作業の協力を要請し、梅本を救った。『アンと青春』では既婚者。坂木の別作品『ウィンター・ホリデー』(文藝春秋)にも登場。主人公「沖田大和(おきた やまと)」の視点で「サクライ」表記、和菓子屋勤務であること、「サクライ」が武闘派のレディースだった時代、「棘のある桜」と呼ばれ、沖田の後輩だった縁で「サクライ」の結婚式に呼ばれた後日談が語られた。 立花早太郎(たちばな そうたろう) みつ屋社員。和菓子業界とは縁のない会社員の父親の下に生まれる。和菓子業界の後ろ盾のない中、弟子入りを断られ続けている内に松本に拾われ、和菓子職人を目指す修行の一環として「みつ屋」社員をつとめている。梅本によると年齢は20代、イケメン容姿。丁寧な応対に立花の提示した商品を購入する顧客も多い。その澱みのない口調で接客に慣れていない梅本に代わって商品の説明を行い、梅本を救うも戦力にならないと迷惑がり、椿に苦情を申し立てる。プライベートでは椿曰く「女性に囲まれて育った疑い」の乙女系男子で、以前所属していたアルバイトには自身のプライベートでの乙女系性格が起因して辞めていた。ススキから嵯峨野、嵯峨野から『源氏物語』の登場人物中、嵯峨野にゆかりのある六条御息所を思い浮かべる感性を持つ。その一方で鈍いところがあり不用意な一言で梅本を傷つけてしまうが、逆に梅本の言葉に傷つけられることもある。名字読みにかけた橘に因む「型柑(かたかん)」銘が刻まれた菓子木型を持っている。 椿はるか(つばき はるか) みつ屋こと和菓子みつ屋東京百貨店店長。選んだ和菓子から客の悩みや購入目的を言い当てる才能を持つ。本人は言い当てた1つに対し「当てずっぽう」(コミカライズ版は「勘」)と述べている。他者からの印象として、楠田は経営者としての椿を、売上よりもロスを出さない点を挙げて評価している。その一方でプライベートの趣味は株の売買他賭博で、バックヤード裏では一喜一憂の声を上げる。服のセンスも最悪で、梅本に歩きたくないと思わせた。牛丼やビールが好きで喫煙者。立花からは「プライベートはおっさん」だと印象を述べている。正月、梅本が出店をしていた骨董品屋から500円で購入した、骨董品屋曰く、中国で手に入れ、月餅のためのものと思われる「型風(かたかぜ)」の銘が刻まれた菓子木型の片割れを差し出した瞬間、表情を一変させる。立花の調査により、「型風」を作った職人と何らかの関わりがあり、ルーツを辿る旅に出た彼と死別した過去が判明した。当初、梅本が立花に嫌われていると誤解された彼の態度を見て厳しい言葉を投げかけたことがある。日頃から梅本の勤務態度を高く評価しているが、体力を過信してインフルエンザにかかった立花の穴を埋めるべく無理して働こうとした彼女を静かに諭し、働くだけでなく「休むことも仕事」と帰宅させた。
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