美 漢字における「美」の含意

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/14 14:49 UTC 版)

漢字における「美」の含意

日本語で使われる「美」の文字は漢字であり、中国において3000年以上前に発明されたものである。この「美」という漢字は、「」や「」と同様に、一種の要素合成によって造られており、それぞれの上半分の部分は、「」という文字である。

「羊」と「大」の合成が「美」であり、「羊」と「我」の合成が「義」である。孔子の『論語』の中にも記されているが、「羊」は宗教的祭式において献物として利用された動物で、「犠牲の動物」の意味があり、そこから「羊」を要素とする合成漢字には、「犠牲」の意味が含まれている[10]。あるいは、「犠牲」の意味を持つ概念を表現するために、これらの漢字は合成され造られたとも言える。

「義」とは「我の責任の限りの犠牲」という意味があり、「善」は、「儀式の祭具に盛る限りの犠牲」という意味があるが、「美」とは「大いなる犠牲」である。この場合の犠牲とは、「自己犠牲」であり、共同体の命運などに対し、人間として行える最大限の犠牲、つまり己が命を献げて対象を高めるという含意があり、言い換えれば、人の倫理の道において、最も崇高な行いが「美」であったのである[10]

白川説

「美」について『説文解字』に、「羊に従ひ、大に従ふ。」とあり、会意としているが、白川静は「美」全体を象形とし、「羊の全形」と解釈している。以下、白川の字説である。

羊は羊の上半身を前から見た形で、羊の後ろ足まで加えて上から見た形が「美」である。母羊の後ろから小羊が生まれ落ちるさまを「羍[11]」というが、その上部の大と、「美」の下部の大は同じであり、母羊を後ろから見た形である。羊は犠牲として神に供えられ、その羊は美しく完全であることが求められたことから、成熟した羊の美しさを美といい、のちすべての「うつくしい」の意味に用いられた。
「義」は、羊と我に従う会意であるが、我はの象形であり、羊を鋸で截り、犠牲とする意味である。その犠牲として神に供えるのに欠陥がないことを「義(ただ)しい」という。このように、我はもと鋸を意味する字であったが、一人称代名詞「われ」として使うようになり、我に代えて、のこぎりを意味する字として形声の鋸(キョ)が作られた。代名詞にはそれを示す適確な方法がなく、すべてその字の本義をすてて音を借りた仮借の用法になる。『説文』では「義」を会意としながらも、「己の威儀なり」と解釈しているが、仮借義で会意の字を構成することはないので、我を己と解すのは誤りである[12][13]


ヴィーナスの誕生」。西洋絵画の伝統技法では、美を人格化する時にはしばしばヴィーナスが用いられる。

  1. ^ 今道友信は、より厳密な表現においてであるが、自然・技術・芸術・人格存在のありようにおいて、「美の位相差」を論じている。
  2. ^ これらは別の「美しいもの」によって例示可能である。
  3. ^ 数学者が感じる美についての説明は「数学的な美」という詳細な記事が書かれているので、必要ならば参照のこと。
  1. ^ a b c 広辞苑第六版【美】
  2. ^ a b c d e f ブリタニカ百科事典【美】
  3. ^ 今道友信「美学と芸術理論」『岩波講座哲学 (6)芸術』、p.13。
  4. ^ 「はしがき」『岩波講座哲学 (6)芸術』、i。巻頭の「はしがき」において、編者は、「大和の国は美しく、小野小町は美しく、方程式のこの解法は美しいという」と記している(引用)
  5. ^ a b 「はしがき」『岩波講座哲学・芸術』、i。
  6. ^ 古代ギリシア語カロス(kalos)は、現代日本語の「美しい」とは意味の異なる言葉である。英語の beautiful に「見事な」という意味があるように、言葉の概念が対応しない例である。
  7. ^ 今道友信「西洋における芸術思想の歴史的展開(古代・中世)」『岩波講座哲学・芸術』、p.39。パンドーラーキルケーヘレネーなどの「美しき者」はまた同時に災悪(カキアー)であった。
  8. ^ 今道友信「西洋における芸術思想の歴史的展開(古代・中世)」、p.54。「カロカカキア」というギリシア語は存在しない。『理想』に掲載した論文中で今道が造語した。
  9. ^ a b 今道友信「西洋における芸術思想の歴史的展開(古代・中世)」『岩波講座哲学・芸術』、p.39。
  10. ^ a b 今道友信「美学と芸術理論」『岩波講座哲学・芸術』、p.8。
  11. ^ 羍(タツ・こひつじ)について『説文』に「小羊なり」、『玉篇』に「生まるるなり」とあり、小羊の生まれるさまをいう(白川(字統) p.597)。
  12. ^ 白川(字統) p.85、p.168、p.597、p.745
  13. ^ 白川(常用字解) p.50、p.103、p.537







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