今道友信とは? わかりやすく解説

今道友信

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/17 06:10 UTC 版)

今道 友信(いまみち とものぶ、1922年11月19日 - 2012年10月13日)は、日本の美学者および中世哲学研究者である。「エコエティカ」(生命倫理による人間学倫理学)を提唱したことで知られる。東京大学名誉教授、聖トマス大学名誉教授、国際形而上学会会長、国際美学会終身委員兼名誉会長、国際エコエティカ学会名誉会長といった多くの要職を歴任した。かつては哲学美学比較研究国際センター所長、日本美容専門学校校長を務め、日本アスペン研究所特別顧問でもあった。

家族

今道は離婚歴があり、実子としてギタリストで元BARBEE BOYSのメンバーであるいまみちともたか、ピアニストの川口信子がいる。再婚したドイツ人のクリスティネとの間には、ドイツ在住の今道友紀子と、心理学者でニューヨーク市立大学教員である今道友昭がいる。

人物

息子のともたかの回想によれば、オーディオ・マニアであった。また、息子のために趣味で作曲した「子守歌」を1970年の大阪万博の際に演奏したというエピソードが残されている[1]

略歴

東京生まれ。父は支店長も務めた銀行員。父の転勤で山形県に移り住み、旧制鶴岡中学に入学。弁論大会で1年乙組代表として参加、「いそしむことの尊さ」を弁じて入賞。乙組の級長であった。担任は原子英太郎。同校の教員であった芳賀幸四郎の言葉に感化され、哲学を志したという。中学2年2学期から高知の旧制城東中学に編入。中学4年で受験に失敗、5年までいた。東京府立一中補習科に在籍し、旧制成城高校旧制一高を経て、1948年、東京大学文学部哲学科卒業、出隆の指導を受けた。読売新聞会長の渡邉恒雄は後輩で当時から交流があった。

パリ大学ヴュルツブルク大学で非常勤講師。1958年、九州大学助教授。1962年、東京大学助教授。1968年、東京大学文学部教授。1975年、国際美学会副会長。1978年、文学部長。学生の占拠する学部長室の失火事件で学生を処分。1982年、定年退官し名誉教授。後は放送大学教授、清泉女子大学教授(副学長)、英知大学(現・聖トマス大学)大学院長を歴任[2]。1982年、哲学美学比較研究国際センターを創設し、2010年まで所長。1986年に紫綬褒章、1993年に勲三等旭日中綬章を受章。1996-1999年、哲学国際研究所(IIP, パリ)所長。2006年、学校法人日美学園 日本美容専門学校校長に就任した。

1974年 東京大学 文学博士。論文は「同一性の自己塑性」[3]

2012年10月13日、大腸癌のため東京都港区の病院で逝去、89歳没[4]。告別式は翌年1月に聖イグナチオ教会で執り行われた。喪主は妻のクリスティネ[5]

著書

単著

  • 『美の位相と藝術』(東京大学出版会) 1968、増補版 1971
  • 『子守唄』(すみれ文庫) 1969 - 作詞作曲集
  • 『解釈の位置と方位』(東京大学文学部、美学史研究叢書別冊) 1971
  • 『同一性の自己塑性』(東京大学出版会) 1971
  • 『愛について』(講談社現代新書) 1972、のち中公文庫 2001
  • 『美について』(講談社現代新書) 1973、のち新装版
  • 『芸術と理性』(富山県教育委員会、精神開発叢書) 1978 - 講演録
  • 『アリストテレス』(講談社、人類の知的遺産) 1980、のち講談社学術文庫 2004
  • 『東洋の美学』(TBSブリタニカ) 1980
  • 『東西の哲学』(TBSブリタニカ) 1981
  • 『断章空気への手紙』(TBSブリタニカ) 1983
  • 『現代の思想』(放送大学) 1985
  • 『新しい知性と徳を求めて』(ぎょうせい) 1986
  • 『西洋哲学史』(講談社学術文庫) 1987
  • 『存在と価値 現代哲学の課題』(放送大学教育振興会) 1989
  • 『詩と展景』(ぎょうせい) 1990
  • 『エコエティカ - 生圏倫理学入門』(講談社学術文庫) 1990
  • 自然哲学序説』(講談社学術文庫) 1993
  • 『知の光を求めて 一哲学者の歩んだ道』(中央公論新社) 2000
  • 『暁の前に 藤川正夫の詩』(藤川千代子、私家版) 2002
  • ダンテ神曲」講義』(みすず書房) 2002、改訂普及版[2] 2004、新装版 2017
  • 『出会いの輝き』(女子パウロ会) 2005
  • 『美の存立と生成』(ピナケス出版) 2006
  • 『遠い茜』(哲学美学比較研究国際センター) 2006
  • 『チェロを奏く象』(レイライン) 2007
  • 『超越への指標』(ピナケス出版) 2008
  • 『あこがれと涙とほほえみと』(教友社) 2008
  • 『中世の哲学』(岩波書店) 2010
  • 『今道友信わが哲学を語る - 今、私達は何をなすべきか』(佐藤孝雄, 池田雅之編、かまくら春秋社) 2010
  • 『人生の贈り物 - 四つの物語』(葉祥明イラスト、かまくら春秋社) 2011
  • 『美について考えるために』(日美学園) 2011、のち新訂(ピナケス出版) 2015
  • 『教えるこころ 新しい時代の教育への提言』(女子パウロ会) 2011
  • 『未来を創る倫理学エコエティカ』(昭和堂) 2011
  • 『世界は涙を忘れて・・・・』(女子パウロ会) 2012
  • 『雲のゆくおるがん』(葉祥明イラスト、かまくら春秋社) 2012 - 絵本詩集
  • 『音楽のカロノロジー 哲学的思索としての音楽美学』(日美学園) 2013

編書

  • 『芸術と解釈』(編、東京大学出版会) 1976
  • 『藝術と想像力』(編、東京大学出版会) 1982
  • 『講座美学』全5巻(編、東京大学出版会) 1984 - 1985
  • 『西洋美学のエッセンス』(編、ぺりかん社) 1987
  • 『精神と音楽の交響』(音楽之友社) 1997
  • 『新しい倫理 エコエティカをめざして』(哲学美学比較研究国際センター編) 2001

註釈と訳文

  • 『詩学』(岩波書店、アリストテレス全集 17) 1972

共著

  • 『美しい心を育てる - 教育対話』(井沢純、ぎょうせい) 1975
  • 「山本信君の思い出」(工作舎、『形而上学の可能性を求めて - 山本信の哲学』) 2012 ISBN 978-4-87502-447-7

論文

脚注

  1. ^ 吉田豪インタビュー集「バンドライフ」メディアックス
  2. ^ [1] カロノロジー会による略歴
  3. ^ 博士論文書誌データベース
  4. ^ 訃報:今道友信さん89歳=東大名誉教授エコエティカ提唱 毎日.jp、2012年10月16日
  5. ^ (おくやみ)故今道友信氏の告別式 東京大名誉教授”. 日本経済新聞 (2012年12月10日). 2022年9月16日閲覧。




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