迷宮のミノタウロス編
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 15:41 UTC 版)
雪井出 薫(ゆきいで かおる) 賭郎会員。専属立会人は不明。警官もしくは警察の協力者(公的な立場は不明)。迷宮編の主要人物。 甚平を着用した落ち着いた雰囲気の青年。IQ190を超える天才。嗜眠性脳炎という難病を患っており、約10年に渡って意識不明であったため、人生において記憶の欠落がある。その期間の空白を仮想的に埋めるためのゲーム「ラビリンス(迷宮)」(別名に「0円ギャンブル」)を主催し、挑戦者にはある特定日の記憶を賭けさせているという。しかし、その実態は、警察の意向を受けて未解決事件(迷宮入り事件)の被疑者を作り出すことにあり、奪ったある日の記憶=当日のアリバイを奪われた敗者は、その日に起きた未解決事件の容疑者に仕立て上げられる。 幼少より父親から「秩序を守るためならばどんな行為も許される」という歪んだ教育を受けて育ち、その結果、国家や警察、そしてそこに携わる自分を正義と妄信するようになる。このため、愛想の良い態度の裏では、相手をギャンブル好きのクズと見下し、(実際にイカサマをしているにも関わらず)軽く不正を疑われるだけで激怒する。嗜眠性脳炎による約10年に渡る意識不明の期間があったのは事実で、目覚めた時に父の親友であった天真に誘われ、秩序の維持者として現在の仕事を行うようになった。 迷宮編の前半に登場する。まず梶と対戦していつものイカサマで難なく勝利すると羽山が犯人の迷宮入り事件の被疑者に仕立てる。その後、貘と対戦することとなるが、1億円を賭けた初戦でイカサマの裏をかかれて敗北した上に、続く2戦目は勝ったことで貘の「屋形越えの日」を奪ってしまい、保留されていた命の取り立ての対象が自分に移るという事態に追い込まれる。このため、「屋形越えの日 + 10億円」という大勝負をせざるを得なくなるが、再度イカサマの裏をかかれて貘に完全敗北する。さらに彼から自分が信じていた秩序の維持という使命も否定される。そして命の取り立ての即時執行で立会人の門倉に殺害されかけるが、直前に嗜眠性脳炎が再発したことを貘が「もう死んだようなもの」と告げ、門倉も同意したことで見逃される。 エピローグにおいて病院で眠りから目覚め、看護師から貘やマルコが見舞いに訪れていたことを聞かされる。 天真 征一(あまこ せいいち) キャリア警察官僚で階級は警視長。迷宮編の主要人物。 外面(そとづら)は良いが、本性は非常に醜悪で狡猾な中年の男。迷宮ギャンブルとLファイルの直接の管理者であり、密葬課にも関わっている。キャリアである自身を強者、民衆を平和ボケした弱者と蔑み、部下や同僚さえも駒扱いする。様々な音を「色」として認識できる共感覚の持ち主。雪井出を騙してプレーヤーに仕立てた張本人。 迷宮編の後半、雪井出が敗れた直後に箕輪を伴って登場する。当初は思いやりのある人間のように振る舞うが、すぐに本性を貘に見抜かれ、雪井出を椅子から蹴り落とすなど残虐な振る舞いを行う。もともと貘の口封じと勝ち金11億円の回収が目的であったが、貘もマルコを前もって呼び寄せていたなど予想が狂い、門倉の仲裁によって、Lファイルを賭けて「警視庁地下の実物の迷宮ギャンブル」を行うこととなる。地の利と音に対する共感覚の能力、箕輪と随時モールス信号での情報のやり取り、さらに外部から門倉に対する南方の横槍と、勝負を有利に進めていく。しかし、イカサマによって常に正確なMポイントを把握していた貘の想定外の逆襲に遭って命乞いの為に貘の靴を舐めるという最大の屈辱を味わう。それでもまだ逆転の目があったが、箕輪と仲間割れし、迷宮のミノタウロスとなった彼に食い殺される。 箕輪 勢一(みのわ せいいち) 密葬課の課員。天真の「暴」。迷宮編の主要人物。 中肉中背で人を食ったような言動をする中年男。後述する天性の肉体による多大な戦闘能力を持ち、状況判断、分析能力にも優れた一面を持つ。作中で最初に登場した密葬課員であり、天真の「暴力」として行動を共にする。 ミオスタチン(筋肉の成長抑制因子)遺伝子の突然変異と高密度に圧縮された生来の筋骨により、異常なまでの力と頑強な肉体を持つ。かつて賭郎勝負の立ち会いで彼の戦いぶりを見た能輪美年からは「超人」と評される。一方でこの体質により、常時の高カロリー摂取を必要とする欠点もある。また、幼少時より、母に選ばれた存在として過度なプレッシャーを受けており、勉強道具を捨てられ、食事を食べ続けることを強要されるといった虐待を受けていた。 迷宮編の後半において敗北した雪井出の後始末として、貘の命と金を狙う天真の暴力として現れる。その後の実物の迷宮ギャンブルにおいては、自ら迷宮を探索してモールス信号で天真に迷路の造りを伝える。途中で遭遇したマルコに一度は圧勝するものの、再戦では内なるロデムを乗り越えたマルコに大敗し重傷を負った上に、天真が仕掛けていた水圧の罠部屋で更なるダメージを負う。さらに飢餓状態に陥って心の平衡を失った結果、迷宮で人を襲う怪物ミノタウロスと化し、天真と仲間割れとなり、殺害し捕食する。続いて貘と遭遇し、暴力禁止ルールに違反して襲おうとしたために粛清対象となり、立会人の門倉と戦うこととなる。彼の一瞬の隙を突いて拳で頭部を抉るも逆に頭を潰されて死亡する。 摩周 秀則(ましゅう ひでのり) 30歳無職。0円ギャンブルの敗者。 マッシュルームカット(梶からはマッシュと呼ばれる)の青年。貘と勝負して敗北し、見逃して貰う見返りに「賭ける側は負けてもノーリスクで勝てば大金を得られるという賭場」として0円ギャンブルと、その開催者である雪井出との接触法を教える。0円ギャンブルで既に敗北しており、間もなく雪井出との勝負で賭けた記憶(=アリバイ)の代償に殺人事件の容疑者として逮捕され、そのニュースが梶に迷宮ギャンブルの正体を教えることとなる。 栗栖 恵介(くりす けいすけ) 0円ギャンブルの案内人。 きっちりとしたスーツを着た細目の不気味な男。0円ギャンブルの参加者をリムジンで迎えにやってくる。真の役割は標的に発信機を仕込むことであり、アリバイを取られた敗者の居場所を把握して迅速に逮捕させるためのものである。仕事とは別に内心では、秩序を盲信する雪井出親子の思想を、度を越しすぎてついていけないと思っている。 雪井出の父 警視。天真の同僚。現在の詳細は不明。 栗栖に「盲信した権力の尖兵」と評される人物で、かつて天真と共に迷宮ギャンブルに関係していた人物。秩序の維持のためには自身の妻も犠牲にしたという。息子の薫にも幼少のころから己の信じる「秩序」を教え込んでいたが、成長した息子の瞳に宿った闇に気付き、己の行為の罪深さを悔い始める。そこで全ての真相を明かし警察の罪を正すべく天真に協力を請うものの、逆に彼に嵌められてしまい無実の罪を着せられて失脚、刑務所に送られる。冤罪を着せられた際にも、己よりも息子の身を案じていた。以後の消息は不明。 白龍(パイロン) 伝説の殺し屋。箕輪の強さの説明を行う美年の過去話に登場。 かつて密葬課と協力関係にあった中国の官僚である張昌華(チャンチャンホア)が、彼らに莫大な手切れ金を要求した際に、行なわれることになった殺し合いの賭郎勝負の代表者。しかし、密葬課側の代表者であった箕輪に一方的に敗北する。 後に百龍(バイロン)の強さを説明する際に、伝説的な暗殺者であった百龍の模倣者として白龍と名乗っていたという旨の説明がなされる。
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