軽・普通自動車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 14:25 UTC 版)
軽自動車及び普通車の場合、一般的にオイル交換時期は、オイルの性能低下や量の減少を考慮し、またオイル廃棄物の環境負荷など多くの条件を考慮の上、自動車メーカーによって走行距離や使用期間が指定されている。オイルの劣化を直接判断することは難しいので、走行距離もしくは使用期間ベースとした基準は自動車においてほぼ共通したものとなっている。また、センサーによりオイルの状況を感知、またはエンジンの稼働時間などによってオイル交換の時期を指示する車両もある。なおトヨタ自動車ではオイル交換の目安について、ガソリン車(ターボ車除く)の標準交換時期を15,000km、または1年としている。 【自然吸気エンジン】(直噴エンジン・ロータリーエンジンを除く)交換後走行距離10,000から15,000km 交換後1年(上記の内、どちらかに達した時点で交換) 【過給機(ターボ・スーパーチャージャーなど)付きエンジン】交換後走行距離5,000km 交換後半年(上記の内、どちらかに達した時点で交換) シビアコンディションで使われた車の場合は概ねこの半分の期間での交換が指定されている。シビアコンディションの定義は、自動車メーカーにより多少の差異は有るが概ね、以下の様に定義している。 一回の走行距離が、7.0km以下の繰り返しの場合(いわゆる、チョイノリ)。 登坂路等の高回転・高トルクを必要とする走行。 未舗装路等の粉塵の多い道路の走行。 環境保護を目的として、20,000から30,000kmと長い交換サイクルを指定する自動車もある。欧州車では酸化等の劣化が進みにくい特性を持つエンジンオイルを指定し、オイル容量を多くすることで、長期間使用できるようにしていることが多い。ただし、交換の距離は増えても、期間は大幅には増えていないことに注意が必要である。また、輸入車メーカーでも、天候や渋滞など使用環境の厳しい日本仕様では、交換距離を短くしている車種も多い。 これらの指定は保証期間内でエンジンに支障をきたさないために自動車メーカーとして定めた最低限の要求であり、オイル自体の劣化は徐々に進んでいる。そのため、メーカー指示値を最大として使用条件により早めに交換した方が良いという意見がある。しかし、現在は製造物責任法により取扱説明書の記述に欠陥がある場合は製造物の欠陥と同格に扱われることが規定されており、不具合に繋がる危険性を十分に排除した記載が製造者側に求められているだけでなく、廃棄物などの環境負荷の観点からも、指定交換時期は余裕を持って設定されているとの見解もある。 上記のように自動車メーカーが交換時期を定める一方、一部のオイルメーカーやガソリンスタンド、カー用品店、自動車整備工場等では3,000から5,000kmごとの交換を推奨している。その根拠として、3,000から5,000km程度走行するとエンジンの機械的な騒音が多少高くなることやオイルが汚れて黒くなること、更には特に日本において一般的な自動車ユーザの使用状態が低速・短距離側のシビアコンディションに該当する、などを挙げている。この騒音は機構上問題が無い程度のオイル粘度の低下が主であり、多少大きくなってもエンジンが故障するものではない。また、オイルが黒くなるのは清浄作用が働いているためであり、早くて1,000kmほどで黒くなる場合もある(ディーゼルエンジンの場合黒くなるのが早い場合がある)が、黒くなったからといっても直ちに性能が劣化しているとは言えない。これら言説では劣化状況の説明として不十分である。他に交換推奨距離を短くする理由として、摩耗防止性能が新油の7 - 8割程度に劣化する距離で設定している場合もある。 これらの業者により、オイルの特性による正常な現象を故障に結び付く要因として消費者の不安を煽るような表現を用いた交換推奨が行われるのは、頻繁なオイル交換によるオイルそのものの拡販、来店頻度を増やすことによる整備用品拡販・整備業務受注の拡大を狙ったものという批判がある。オイルメーカーは、環境問題への配慮から交換時期を長期化したロングドレインオイルの開発が求められている。学術的研究としては長寿命化に取り組んでいながら、広報上は一般的取扱説明書記載時期よりかなり短期での交換を推奨をするオイルメーカーもあり、そうした不誠実な対応もこの疑惑を強めている。 使用者としては、車種毎に決められたオイル交換時期やシビアコンディションの定義を参考に、油量などの適切な点検を行った上でオイル交換の頻度を決めることになる。 すすの出易いガソリン直噴エンジンやロータリーエンジン、は、一般的なガソリンエンジンよりもエンジンオイルにとって厳しい条件となるため、短期間での交換が推奨されている場合が多い。また、専用純正オイルが用意されている場合もある。また、ロータリーエンジンでは、アペックスシールの化学合成油による侵食劣化が原因での気密漏れ事例も報告されており、ロータリーエンジン(特にFC3S型RX-7以前の搭載エンジン等)には高粘度で攻撃性の低い鉱物油が良いとされている。 一般的な鉱物油の基油で粘度指数が100未満、PAOやVHVIで130程度であるが、このままではまだ要求する粘度指数に満たないため、粘度指数向上剤(ポリマー)を配合し粘度指数を上げているが、配合されている添加剤は変質しやすいので時間の経過と共に粘度が失われていく。また、エステル系の化学合成油は水分が加わると分解(加水分解)しやすい性質があるため、加水分解防止剤が添加されているが、長期間の多湿地域での走行などでは短い期間で交換を要する場合がある。一方でPAO系の化学合成油はPAOの化学的安定性が非常に高く、また耐熱性も高いために長期間の放置、長距離、長時間の使用に耐えうるロングドレイン油として使用される。鉱物オイルにおいても、配合される添加剤によって熱安定性が改善する場合もある。 このように化学合成油といっても、ベースオイルや添加剤によって耐久性が異なり、全てが長期間、長距離使用できる訳ではない。また、化学合成油はオイルシールに対する攻撃性(分子の細かさから来る浸透性)が、鉱物油より高く(PAO系=収縮性・エステル系=膨張性)、化学合成油の使用を前提としないオイルシールを使用した旧車等では、オイル漏れが発生する可能性がある。 エンジンオイル交換の際に上限を超えた量を注入すると、エンジン内部(クランク等)にオイルが干渉して内部抵抗が増え、燃費が悪化したりオイル中に気泡が発生してブローバイが増加し、エンジンオイルの寿命が縮まる事がある。その為、オイルは適正な量を充填しなければならない。 2000年頃から販売されている低燃費車で採用されている0W-20等の低粘度オイルであるが、これにはメーカーによっては工場充填の際有機モリブデンなどのエンジン保護添加剤が高濃度で添加されているものもある。
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