産学連携
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産学連携(さんがくれんけい)とは、新技術の研究開発や、新事業の創出を図ることを目的として、大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携することをいう。政府・地方公共団体などの「官」を加えて、「産学官連携」または「産官学連携」ともいう。
概要
産学連携、あるいは産学官連携という場合の「産」とは、民間企業やNPO等広い意味での商業的活動をする集団をいい、研究開発を経済活動に直接結びつけていく役割を果たす。次に「学」とは、大学、高等専門学校等のアカデミックな活動集団をいい、新しい知の創造や優れた人材の養成・輩出、知的資産の継承という役割を担っている。また「官」とは、科学技術の向上を目指した政策の構築、具体的な戦略目標に基づく研究開発基盤形成や制度改善を行う、国や地方公共団体をいう。広義では、公設試験研究機関や研究開発型独立行政法人等の公的資金で運営される政府系試験研究機関を指す場合もあるが、多くの場合これらの機関は「学」と同様に機能するものと解釈される[1]。
背景と経緯
米国では、1980年に連邦政府の資金提供を受けて行われた研究開発の成果物としての発明であっても、大学等に帰属させることを可能とした「1980年特許商標法修正法」(バイ・ドール法:Bayh・Dole Act)(英語版)により、技術移転機関の設置も進み、産学連携が活発化した[2]。
日本においての産学連携の事例(産学連携における教育活動、研究開発を目的に行われた連携)は1942年(昭和17年)に実施された千葉工業大学によるものが最初である。欧米各国が産学連携を深める中、日本国内では1960年代の大学紛争により企業と大学との連携に及び腰になっていた。そのような状況下で新技術開発事業団が産学連携を助け、成果を挙げた[3]。 1990年代に入り、欧米の強力な特許保護政策によって経済が次第に力を失い、産学官連携と知的財産の活用による経済振興政策を国策とする必然性が生じたため、1995年に「科学技術基本法」が制定され合計38.7兆円の公的資金が大学等の研究に投入された。続いて1998年、「大学等技術移転促進法」(TLO法)が制定され、大学の技術や研究成果を民間企業へ移転する技術移転機関の活動を国が支援することとなった。さらに、1999年には日本版バイ・ドール法(産業活力再生特別措置法第30条)が制定され、政府資金による研究開発から生じた特許等の権利を受託者に帰属させることが可能となった。加えて2004年の国立大学法人法、2006年の新教育基本法の制定により、研究成果の社会還元が大学の使命のひとつとして明記されたことによって、特許などの知的財産を活用した産学連携が活性化し、日本においても、世界的な知の競争に勝ち抜くための本格的な産学官連携時代に突入した[1]。
一方で、学の研究成果は基礎研究や学術的な研究段階のものが多く、事業化までに時間やコストを要することが多いことから、大企業において事業化されない技術や休眠特許等を中小・ベンチャー企業に移転する「産産連携」の促進[4]や、資金調達を視野に金融機関を加えた「産学金連携」「産学金官連携」[5]など、連携体の多様化がみられる。
産学連携の成果
脚注
- ^ a b 国立大学法人神戸大学連携創造本部 公式ウェブサイト - 2012年5月22日時点のアーカイブ
- ^ 田村紀雄, 染谷薫「「産学連携」論 : コミュニケーション学からの考察」『コミュニケーション科学』第22巻、東京経済大学 コミュニケーション学会、2005年3月、191-209頁、CRID 1050564287440651136、 hdl:11150/144、 ISSN 1340-587X、 NAID 110006596742。
- ^ “アモルファス合金 官の支援「委託開発」で大企業と連携”. 産学官の道しるべ. 2019年2月3日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 日経BP知財Awareness - 2016年3月4日時点のアーカイブ
- ^ “金融機関と大学との産学金官連携例 環境にやさしい機能水”Juju” -金属加工のオイルフリーに挑戦-”. 産学官の道しるべ. 2019年2月3日閲覧。
関連項目
- 産学連携学会
- 技術移転機関(TLO)
- 産業振興プラザ
- リサーチ・アドミニストレーター(RA、URA)
- コーオプ教育
- K2タウンキャンパス
- 医工連携
- 産学官連携功労者表彰/日本オープンイノベーション大賞
外部リンク
- 産学官の道しるべ - 産学官連携に関する情報サイト(独立行政法人科学技術振興機構)
- 大学等における産学官連携文部科学省HP
- NPO法人産学連携学会
産学提携
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寄附講座 私企業・団体によって企画され、講師やテキストが提供される講義が「寄附講座」として実施されている。日本通運寄附講座「社会生活と物流」 大学の設立母体でもある日本通運株式会社から提供された講座では、物流業の概要から今後の業界動向・事業戦略などを中心に、同社及びグループ会社の現役で事業に携わる幹部が講義を行うだけでなく、企業での雇用環境の変化や求める人材像についても講義する。 講座では、流通経済大学を卒業後、日本通運株式会社に勤務して要職に就いている卒業生も講師として講義を担当する機会もあり、日本通運グループにおいて600名規模の卒業生が在職 する、物流業界への人材輩出に実績 を持った大学としての特色を象徴する講座である。 野村證券寄附講座「資本市場の役割と証券投資」 野村証券及び野村総合研究所から講師を招き、基本的な経済情報の見方から債権・株式市場の果たす役割までを講義することで、ライフプランニングにおける経済的要素の重要性を認識してもらう。 社団法人 全国通運連盟寄附講座 地球環境に対する問題意識が高まる中、物流の分野でも温室効果ガスの削減が求められている。今日、環境に配慮した物流を目指す立場から、輸送手段をトラック輸送から鉄道貨物輸送を利用した通運へと切り替えるモーダルシフトを進める物流業者・荷主が増えつつある。 全国の通運業者が加盟する、社団法人 全国通運連盟から提供された講座では、日本通運などの通運事業者、鉄道貨物の輸送主体であるJR貨物、モーダルシフトを推進している荷主企業から講師を招き、環境に配慮した物流における通運や鉄道貨物輸送の重要性について講義する。 「実践講座」制度 企業で経営に携わる管理者,経営者、企業へのコンサルティング業務や改善活動を行っている、シンクタンクのコンサルタントなど、産業界で活躍する人材が講師として講義を担当する、「実践講座」が開講されている。 開講されている実践講座は「ロジスティクス実践講座」(製造業・卸売業など企業にとってのロジスティクスとは何かについて講義を行う) 「物流マネジメント実践講座」(物流管理,サード・パーティー・ロジスティクスの現状について講義を行う。) 「国際物流実践講座」(航空会社,海運会社,フォワーダー,グローバル・ロジスティクス事業者などが、国際物流の現状について講義を行う。) 「情報システム実践講座」(RFID,本人認証,VMIなど、物流・流通システムにおける情報システムの役割について講義する。) 「ロジスティクス企業訪問講座」(物流センター,ターミナルなどのロジスティクス現場を訪問し、理論が現実にどのように応用されているのか講義する。) 「ロジスティクス改善演習」(物流施設の立地・レイアウトシミュレーション,ビールゲームによるSCMの改善について演習形式で講義を行う。) 「ダイレクトマーケティング実践講座」(近年伸長の著しい、インターネットを用いた商取引の現状について講義を行う。) 「IoTロジスティクス実践講座」(物流業界の生産性向上の為に活用が期待される、AI,IoT,ロボティクスなど、先進技術の物流現場への応用,今後の展望について講義する。) 「地域ロジスティクス実践講座」(農産物・地域の特産品・地域社会と密接に関係する小売業とロジスティクスの関係を講義し、ロジスティクスが地域経済で果たす役割、地域振興の在り方について考察する) である。 サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラム (2008年(平成20年)度・経済産業省「産学連携人材育成事業(サービス人材分野)」採択事業) 生産効率化の手法として、近年、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の手法が普及している。 原材料や部品の調達から生産段階を経て、消費者への製品供給に至るまでの物流を一貫して管理することによる効率化を目指すSCMにおいて、物流業者は単に輸送や保管を受動的に担うのではなく、生産者の生産活動における物流の現状を調査・把握し、効率的な輸送や保管のあり方を提言する重要な役割を担っている。 荷主の物流改善を提言し、物流業務を一括受託する。これがいわゆる、サード・パーティー・ロジスティクス(3PL)と呼ばれるビジネスの形態である。 現代の高度化した物流管理においてSCMや3PLの重要性は増し、社会人向けのロジスティクス関連教育・研修や物流関連資格は多いものの、大学教育の段階では、こうした事項を体系的かつ、現実の経済活動の変化に即して教授していくプログラムは皆無である。 流通経済大学は建学の背景から、物流や流通に関する専門科目やそれらの産業界から講師を招いた寄附講座・特別講座が数多く開講されている。これらを体系化し、更には近年伸長している国際物流や物流の現場で調査を行うことにより物流の効率化を考えるといった、現代のロジスティクスへの理解を深めるための産学連携による新規開講科目を追加することにより、SCMや3PLを担う人材を体系的に育成しようとするのが、サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラムである。 また、プログラムで用いるための企業事例を盛り込んだオリジナルテキストも産学連携により作成されるほか、プログラムに参加する企業側委員と大学教員が共同の定期的懇談会(産学連携コンソーシアム)を設け、カリキュラムの検討,教育効果の測定を行い、プログラム運用の改良を常時実施して行く体制がとられている。 さらに、流通経済大学流通情報学部で開講されている物流関連科目を所定の単位履修すると、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会との協定により、物流管理に関する公的資格の一つである、物流技術管理士補の取得に必要とされる、基礎講座の講習が免除 されるほか、ビジネス・キャリア検定試験における、ロジスティクス分野の検定である「ロジスティクス管理」 の資格取得のための課外講座が行われている。 これらの資格・検定は、主に社会人を対象とした専門的職業能力開発のものであり、管理職昇進などの際に判断材料とされ、ロジスティクス分野の企業内教育において、取得が勧められているものである。 企業内教育では一般的な、ホワイトカラー従業員の専門的能力開発のための取り組みを、学生時代に先取りして身につけられるのが、このプログラムの大きな特色である。 全日本トラック協会推薦入試 物流業界の将来を担う専門的知識を持った人材の発掘,育成を目的とし、物流事業者団体の全日本トラック協会からの推薦で、会員企業の関係者(会員企業の経営者及び従業員の子弟や親族)を対象とした総合型選抜(AO入試)による学生受け入れを行っている。 推薦に関する条件については、毎年6月ごろに各都道府県のトラック協会ホームページや会員向けの機関紙に情報が掲載される。
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