産学提携とは? わかりやすく解説

産学連携

(産学提携 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/24 14:54 UTC 版)

産学連携(さんがくれんけい)とは、新技術の研究開発や、新事業の創出を図ることを目的として、大学などの教育機関研究機関民間企業が連携することをいう。政府地方公共団体などの「官」を加えて、「産学官連携」または「産官学連携」ともいう。

概要

産学連携、あるいは産学官連携という場合の「産」とは、民間企業やNPO等広い意味での商業的活動をする集団をいい、研究開発を経済活動に直接結びつけていく役割を果たす。次に「学」とは、大学、高等専門学校等のアカデミックな活動集団をいい、新しい知の創造や優れた人材の養成・輩出、知的資産の継承という役割を担っている。また「官」とは、科学技術の向上を目指した政策の構築、具体的な戦略目標に基づく研究開発基盤形成や制度改善を行う、国や地方公共団体をいう。広義では、公設試験研究機関や研究開発型独立行政法人等の公的資金で運営される政府系試験研究機関を指す場合もあるが、多くの場合これらの機関は「学」と同様に機能するものと解釈される[1]

背景と経緯

米国では、1980年に連邦政府の資金提供を受けて行われた研究開発の成果物としての発明であっても、大学等に帰属させることを可能とした「1980年特許商標法修正法」(バイ・ドール法:Bayh・Dole Act)英語版により、技術移転機関の設置も進み、産学連携が活発化した[2]

日本においての産学連携の事例(産学連携における教育活動、研究開発を目的に行われた連携)は1942年(昭和17年)に実施された千葉工業大学によるものが最初である。欧米各国が産学連携を深める中、日本国内では1960年代の大学紛争により企業と大学との連携に及び腰になっていた。そのような状況下で新技術開発事業団が産学連携を助け、成果を挙げた[3]。 1990年代に入り、欧米の強力な特許保護政策によって経済が次第に力を失い、産学官連携と知的財産の活用による経済振興政策を国策とする必然性が生じたため、1995年に「科学技術基本法」が制定され合計38.7兆円の公的資金が大学等の研究に投入された。続いて1998年、「大学等技術移転促進法」(TLO法)が制定され、大学の技術や研究成果を民間企業へ移転する技術移転機関の活動を国が支援することとなった。さらに、1999年には日本版バイ・ドール法(産業活力再生特別措置法第30条)が制定され、政府資金による研究開発から生じた特許等の権利を受託者に帰属させることが可能となった。加えて2004年の国立大学法人法、2006年の新教育基本法の制定により、研究成果の社会還元が大学の使命のひとつとして明記されたことによって、特許などの知的財産を活用した産学連携が活性化し、日本においても、世界的な知の競争に勝ち抜くための本格的な産学官連携時代に突入した[1]

一方で、の研究成果は基礎研究や学術的な研究段階のものが多く、事業化までに時間やコストを要することが多いことから、大企業において事業化されない技術や休眠特許等を中小・ベンチャー企業に移転する「産産連携」の促進[4]や、資金調達を視野に金融機関を加えた「産学金連携」「産学金官連携[5]など、連携体の多様化がみられる。

産学連携の成果

脚注

  1. ^ a b 国立大学法人神戸大学連携創造本部 公式ウェブサイト - 2012年5月22日時点のアーカイブ
  2. ^ 田村紀雄, 染谷薫「「産学連携」論 : コミュニケーション学からの考察」『コミュニケーション科学』第22巻、東京経済大学 コミュニケーション学会、2005年3月、191-209頁、CRID 1050564287440651136hdl:11150/144ISSN 1340-587XNAID 110006596742 
  3. ^ アモルファス合金 官の支援「委託開発」で大企業と連携”. 産学官の道しるべ. 2019年2月3日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ 日経BP知財Awareness - 2016年3月4日時点のアーカイブ
  5. ^ 金融機関と大学との産学金官連携例 環境にやさしい機能水”Juju” -金属加工のオイルフリーに挑戦-”. 産学官の道しるべ. 2019年2月3日閲覧。

関連項目

外部リンク


産学提携

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:43 UTC 版)

流通経済大学」の記事における「産学提携」の解説

寄附講座 私企業団体によって企画され講師テキスト提供される講義が「寄附講座」として実施されている。日本通運寄附講座社会生活物流大学の設立母体でもある日本通株式会社から提供され講座では、物流業概要から今後業界動向事業戦略などを中心に同社及びグループ会社現役事業携わる幹部講義を行うだけでなく、企業での雇用環境の変化求め人材像についても講義する講座では、流通経済大学卒業後、日本通運株式会社勤務して要職に就いている卒業生講師として講義担当する機会もあり、日本通運グループにおいて600規模卒業生在職 する物流業界への人材輩出実績持った大学として特色象徴する講座である。 野村證券寄附講座「資本市場の役割と証券投資」 野村証券及び野村総合研究所から講師招き基本的な経済情報見方から債権株式市場の果たす役割までを講義することで、ライフプランニングにおける経済的要素重要性認識してもらう。 社団法人 全国通運連盟寄附講座 地球環境対す問題意識が高まる中、物流分野でも温室効果ガス削減求められている。今日環境配慮した物流目指す立場から、輸送手段トラック輸送から鉄道貨物輸送利用した通運へと切り替えるモーダルシフト進め物流業者・荷主増えつつある。 全国通運業者加盟する社団法人 全国通運連盟から提供され講座では、日本通運などの通運事業者、鉄道貨物輸送主体であるJR貨物モーダルシフト推進している荷主企業から講師招き環境配慮した物流における通運鉄道貨物輸送重要性について講義する。 「実践講座制度 企業経営携わる管理者,経営者企業へのコンサルティング業務改善活動行っている、シンクタンクコンサルタントなど、産業界活躍する人材講師として講義担当する、「実践講座」が開講されている。 開講されている実践講座は「ロジスティクス実践講座」(製造業卸売業など企業にとってのロジスティクスとは何かについて講義を行う) 「物流マネジメント実践講座」(物流管理,サード・パーティー・ロジスティクス現状について講義を行う。) 「国際物流実践講座」(航空会社,海運会社,フォワーダー,グローバル・ロジスティクス事業者などが、国際物流現状について講義を行う。) 「情報システム実践講座」(RFID,本人認証,VMIなど、物流流通システムにおける情報システム役割について講義する。) 「ロジスティクス企業訪問講座」(物流センター,ターミナルなどのロジスティクス現場訪問し理論現実どのように応用されているのか講義する。) 「ロジスティクス改善演習」(物流施設立地・レイアウトシミュレーション,ビールゲームによるSCM改善について演習形式講義を行う。) 「ダイレクトマーケティング実践講座」(近年伸長著しい、インターネット用いた商取引現状について講義を行う。) 「IoTロジスティクス実践講座」(物流業界生産性向上為に活用期待されるAI,IoT,ロボティクスなど、先進技術物流現場への応用,今後の展望について講義する。) 「地域ロジスティクス実践講座」(農産物地域特産品地域社会と密接に関係する小売業ロジスティクスの関係を講義しロジスティクス地域経済で果たす役割地域振興在り方について考察する) である。 サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラム2008年平成20年)度・経済産業省産学連携人材育成事業サービス人材分野)」採択事業生産効率の手法として、近年サプライチェーン・マネジメント(SCM)の手法が普及している。 原材料部品の調達から生産段階経て消費者への製品供給に至るまでの物流一貫して管理することによる効率化目指すSCMにおいて、物流業者は単に輸送保管受動的に担うのではなく生産者生産活動における物流現状調査把握し効率的な輸送保管あり方提言する重要な役割担っている荷主物流改善提言し物流業務を一括受託する。これがいわゆるサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)と呼ばれるビジネス形態である。 現代高度化した物流管理においてSCM3PL重要性増し社会人向けロジスティクス関連教育研修物流関連資格は多いものの、大学教育段階では、こうした事項体系的かつ、現実経済活動変化即して教授していくプログラム皆無である。 流通経済大学建学背景から、物流流通に関する専門科目やそれらの産業界から講師招いた寄附講座特別講座数多く開講されている。これらを体系化し、更には近年伸長している国際物流物流現場で調査を行うことにより物流効率化考えるといった、現代ロジスティクスへの理解を深めるための産学連携による新規開講科目追加することにより、SCM3PLを担う人材体系的に育成しようとするのが、サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラムである。 また、プログラム用いるための企業事例盛り込んだオリジナルテキストも産学連携により作成されるほか、プログラム参加する企業委員大学教員共同定期的懇談会(産学連携コンソーシアム)を設けカリキュラム検討,教育効果測定行いプログラム運用改良常時実施して行く体制がとられている。 さらに、流通経済大学流通情報学部開講されている物流関連科目所定単位履修すると、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会との協定により、物流管理に関する公的資格一つである、物流技術管理士補の取得に必要とされる基礎講座講習免除 されるほか、ビジネス・キャリア検定試験における、ロジスティクス分野検定である「ロジスティクス管理」 の資格取得のための課外講座が行われている。 これらの資格・検定は、主に社会人対象とした専門的職業能力開発のものであり、管理職昇進などの際に判断材料とされ、ロジスティクス分野企業内教育において、取得勧められているものである企業内教育では一般的なホワイトカラー従業員専門的能力開発のための取り組みを、学生時代先取りしてにつけられるのが、このプログラム大きな特色である。 全日本トラック協会推薦入試 物流業界将来を担う専門的知識持った人材発掘,育成目的とし、物流事業団体全日本トラック協会からの推薦で、会員企業関係者会員企業経営者及び従業員の子弟や親族)を対象とした総合型選抜(AO入試)による学生受け入れ行っている。 推薦に関する条件については、毎年6月ごろに各都道府県トラック協会ホームページ会員向けの機関紙情報掲載される

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