【機関砲】(きかんほう)
Auto cannon.
手動での装填作業を行わずに連続発射が可能で、人が携帯できない大型の火砲の事。
NATOでは口径20mm以上を機関砲、それ未満を機関銃(machine gun)として区別する。
もちろん、国や時代によって正確な定義は異なる。
航空機、車両、艦艇に搭載される最も一般的な武装であり、陸海空のあらゆる戦場で幅広く使用される。
しかしながら戦果の主体とは言い難く、基本的に防御・迎撃のために用いられる。
関連:ガトリングガン チェーンガン リボルバーカノン 近接信管
航空機搭載機関砲
現代の戦闘機は、ドッグファイトに備えて機関砲を標準装備する。
この用途で使用される弾薬は、口径20mm~30mmの徹甲弾が普通である。
航空戦の黎明期では拳銃や軽機関銃でも航空機を撃墜可能であった。
しかし、対応防御思想による装甲の強化に応じて大口径化、空対空ミサイルの登場をもって現状に落ち着いた。
また、攻撃機や攻撃ヘリコプターに搭載されるものでは、対地攻撃用に30mm程度の榴弾・焼夷弾が用いられる。
車載機関砲
歩兵戦闘車や偵察車両の機関砲は、軽装甲車両を標的として20mm~35mm程度の徹甲弾を発射する。
対人制圧用途では小口径の機関銃がよく用いられる。
対空車両では、35mm~57mm程度の榴弾や焼夷弾を近接信管で炸裂させ、高速で飛翔する航空機を撃破する。
また、近年の対空機関砲は、徹甲弾を直撃させるほどの高度な火器管制装置を備えた物も登場している。
艦載機関砲
戦闘艦艇では、攻撃機やミサイルの撃墜を目的とした20~30mm程度の機関砲、通称CIWSを主に用いる。
ミサイルの普及以前では、25mm~40mmの対空機関砲を多数用いて弾幕を張る事がよく行われていた。
また、この他の艦艇でも機関砲を装備するケースがある。
機関砲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/29 02:30 UTC 版)

機関砲(きかんほう、英: Autocannon)は、装填から発射までの、射撃にかかわる一連の動作を自動的に行う機構を備えた火砲[1]。重機関銃と類似する面もあるが、より大型・大口径の砲弾を使用する[2]。
設計
機関銃(機銃)との区別は、国や時代、あるいは軍種によっても異なる。例えばアメリカ軍では口径16mm以上のものを機関砲と称したのに対し[2]、大日本帝国陸軍では当初は口径が小さくとも全てを機関砲と称しており、1907年6月以降は口径11mm以下を機関銃と称するようになり、1936年1月以降はこの基準を廃止して銃・砲の区分は制式制定毎に決定するようになった[3]。また大日本帝国海軍では、当初は口径とは無関係に全てを機砲と称し、1921年(大正10年)より機銃と改称した[4]。これ以降、口径とは無関係に火薬ガスなどを利用して連続発射が可能なものは機銃と呼んでおり、口径40mmでも機銃と称された[5]。
このような経緯もあり、設計面では、機関砲と重機関銃とは類似する面も多い[2]。自動機構の形式においても、反動利用式やガス利用式、外部動力利用式(ガトリング式やチェーン利用式)など、基本的には機関銃の場合と同様である[1]。ただしガス利用式では閉鎖機に遊底を使用するのが通常だが、機関砲の場合は、遊底を用いない特殊な形式であるリヴォルヴァー式も多く用いられているなど、機関砲特有の設計もある[1]。また火砲であることから、ボフォース 60口径40mm機関砲のように速射砲と同様の鎖栓式閉鎖機を採用する例もあるほか[6]、駐退復座機を備えている場合も多い[1]。
この他、航空機に搭載して使用する航空機関砲の場合、特有の事情として、機体が空中で激しく機動している状態での射撃に対応できるよう、加速度(G)がかかっていても尾筒部・砲尾部が確実に動作するように設計されている[7]。
概史
第二次大戦前
ヴィッカース社では、.303ブリティッシュ弾を使用するマキシム機関銃(ヴィッカース重機関銃)の大口径版として29口径37mm機関砲(QF 1ポンド・ポンポン砲)を開発しており[8]、イギリス軍はボーア戦争でその同型砲の脅威に直面したのちにこれを導入、第一次世界大戦で実戦投入した[9]。これに準じた設計の機関砲はドイツ帝国でも用いられたほか、イギリスではこれを大口径化した39口径40mm機関砲(QF 2ポンド・ポンポン砲)も開発・運用していた[9]。
これらの初期の機関砲は、いずれも従来の機関銃を単に大口径化したものであり、新規設計による機関砲の開発は1920年代に入ってからとなった[2]。この時点では対戦車兵器としての性格が強かったが、1930年代頃からは対空兵器としても注目されるようになった[2][注 1]。これは、航空機の発達とともに構造が強固になり、機関銃では有効なダメージを与えにくくなった一方、高射砲では特に低空で飛来する敵機を捕捉できないという事態を受けたものであった[2][11]。
第二次世界大戦では、ドイツ国の2 cm Flak 30/38や3.7 cm FlaK 36/37/43、大日本帝国陸軍の九八式二十粍高射機関砲、アメリカ合衆国のブローニング 37mm機関砲など、各国で多くの機関砲が開発・運用された[2]。特にスイスのエリコン 20 mm 機関砲やスウェーデンのボフォース 60口径40mm機関砲は、両陣営で広く用いられた[2]。
-
エリコン 70口径20mm機関砲
第二次大戦後
新しい対空兵器として地・艦対空ミサイル(SAM)が登場した後でも、高度1,000メートル以下の低高度領域では、対空機関砲がもっとも有効な対空兵器であり続けている[12][注 2]。ヘリコプターの発達・普及とともに対空機関砲は強化されているが、特に攻撃ヘリコプターはこれに対抗して装甲などを強化しており、20mmや23mmなど小口径の機関砲弾には抗堪しうるようになっている[12]。これへの対抗や対地射撃時の威力も考慮して、機関砲の大口径化が進んでおり、歩兵戦闘車の備砲などとしても用いられるようになっている[13]。また2022年ロシアのウクライナ侵攻以降、特にゲパルト自走対空砲などの自走対空機関砲車両は、無人航空機兵器(偵察機を含む)の脅威に対し、ランニングコストが安価で実用的な対空兵器として再評価された[14]。
一方、洋上においては、ジェット機への移行に伴って攻撃機が高速化すると、近距離用の機関砲の価値は低下し、近接信管(VT信管)に対応するとともに火器管制レーダーとも連動した3–5インチ (76–127 mm)口径の艦砲が対空兵器の主流となっていった[15][注 3]。しかしその後、対艦ミサイルの脅威が顕在化すると機関砲が復権し、これを火器管制レーダーと連動させたCIWSが広く普及した[12][15][注 4]。またCIWSではない従来型の機関砲も、艦砲をもたない補助艦艇や哨戒艦艇の主武装としては用いられ続けた他、冷戦終結後のマルチハザード化およびグローバル化に伴って任務の多様化が進むと、米艦コール襲撃事件のような非対称戦争に対処するため、戦闘艦にもCIWSと並んで装備されるようになった[17]。
戦闘機においては、一時期は搭載兵装を全てミサイル化して航空機関砲を廃した機種も登場したものの、近距離での交戦能力や多用途性を考慮して、結局は航空機関砲が外付けも含めて復権している[7]。
脚注
注釈
- ^ 第一次世界大戦中、ドイツによる戦略爆撃に対してイギリスが国土防空体制を急ぎ構築した際にはポンポン砲も用いられており、ツェッペリン飛行船を撃墜する戦果も挙げてはいたが、総合的にみて性能は限定的だったうえに危険でもあり、ロンドンの防空体制構築の責任者となったスコット提督は、これを廃止して通常の高射砲と置き換えた[10]。
- ^ システムの可搬性の面では、携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)などSAMのほうが優れている面もある[12]。
- ^ ただし艦砲についても自動化・機力化が進み、機関砲と同様に全自動化した速射砲も普及している[15]。その一部は速射能力相応の発熱に耐えるべく水冷化までしている。
- ^ 後には、機関砲に加えて、小型の近接防空ミサイルを併用するシステムも登場している[16]。
出典
- ^ a b c d 弾道学研究会 2012, pp. 889–896.
- ^ a b c d e f g h ワールドフォトプレス 1986, pp. 70–84.
- ^ 「機関砲と機関銃の称呼区分廃止の件」 アジア歴史資料センター Ref.C01005020700
- ^ 高須 1992.
- ^ 高須 1979.
- ^ Gander 2013, pp. 16–27.
- ^ a b 立花 1999, pp. 162–172.
- ^ a b Friedman 2011, p. 120.
- ^ Hogg 1982, pp. 12–19.
- ^ Hogg 1982, pp. 61–63.
- ^ a b c d Dunnigan 1992, pp. 188–190.
- ^ ワールドフォトプレス 1986, pp. 84–95.
- ^ 斎藤雅道「「この対空砲使えないでしょ…」一転、もはや防空の要に! 「ゲパルト」はウクライナでなぜ成功したのか」『乗りものニュース』2024年1月26日 。
- ^ a b c 堤 2006.
- ^ 多田 2022, pp. 96–102.
- ^ 野木 2014.
参考文献
- Dunnigan, James F.「第8章 防空」『新・戦争のテクノロジー』岡芳輝 (訳)、河出書房新社、1992年(原著1988年)、185-201頁。doi:10.11501/12678411。
- Gander, Terry (2013). The Bofors Gun. Pen and Sword. ISBN 978-1783462025
- Hogg, Ian V.『対空戦』陸上自衛隊高射学校 (翻訳)、原書房、1982年(原著1978年)。doi:10.11501/12675660。
- Friedman, Norman (2011). Naval Weapons of World War One - Guns, Torpedoes, Mines, and ASW Weapons of All Nations. Naval Institute Press. ISBN 978-1848321007
- 高須廣一「「現代の艦砲」理解のために その基本的メカニズムを解明する (特集・最近の艦載砲熕兵器)」『世界の艦船』第267号、海人社、62-69頁、1979年4月。NDLJP:3292056。
- 高須廣一「兵装 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第453号、海人社、174-181頁、1992年7月。NDLJP:3292237。
- 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。 CRID 1520012777807199616。
- 立花正照『ジェット戦闘機入門』光人社〈光人社NF文庫〉、1999年。 ISBN 978-4769822387。
- 弾道学研究会 編『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会、2012年。 NCID BB10661098。
- 堤明夫「砲熕兵装 (特集・対空兵装の変遷)」『世界の艦船』第662号、海人社、78-83頁、2006年8月。 NAID 40007357719。
- 野木恵一「ますます多彩に CIWSと機銃 (特集・対空兵装の変遷)」『世界の艦船』第806号、海人社、90-93頁、2014年11月。 NAID 40020216072。
- ワールドフォトプレス 編『世界の重火器』光文社〈ミリタリー・イラストレイテッド〉、1986年。doi:10.11501/12671592。
外部リンク
機関砲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 07:00 UTC 版)
30mm ガトリング砲は、GE社製7砲身30mm ガトリング砲であるGAU-8/A アヴェンジャーに酷似している。一方で、ロシア製GSh-6-30 6砲身30mm ガトリング砲の中国版であるとする説もある。砲塔直下に即応弾500発が入った弾倉が装備されている。 俯仰角範囲は-25~+85゜、最大発射速度は毎分4,200-5,800発、有効射程は3キロ程度と言われている。 CIWSの比較AK-630ファランクスゴールキーパー730型画像 重量9,114 kg (20,093 lb) 6,200 kg (13,700 lb) 9,902 kg (21,830 lb) 9,800 kg (21,600 lb)? 武装GSh-6-30 30 mm (1.2 in)6砲身ガトリング砲 M61 20 mm (0.79 in)6砲身ガトリング砲 GAU-8 30 mm (1.2 in)7砲身ガトリング砲 30 mm (1.2 in)7砲身ガトリング砲 発射数毎分5,000発 毎分4,500発 毎分4,200発 毎分5,800発 射程4,000 m (13,000 ft) 1,490 m (4,890 ft) 2,000 m (6,600 ft) 3,000 m (9,800 ft) 携行弾数2,000発 1,550発 1,190発 1,000発 弾丸初速毎秒900 m (3,000 ft) 毎秒1,100 m (3,600 ft) 毎秒1,109 m (3,638 ft) 毎秒1,100 m (3,600 ft) 垂直軸射撃範囲+88°~-12° +85°~-25° 水平軸射撃範囲360° +150°~-150° 360°
※この「機関砲」の解説は、「730型CIWS」の解説の一部です。
「機関砲」を含む「730型CIWS」の記事については、「730型CIWS」の概要を参照ください。
機関砲
「機関砲」の例文・使い方・用例・文例
- 機関・砲のページへのリンク