市場への対応・景気対策
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「鳩山由紀夫内閣の政策」の記事における「市場への対応・景気対策」の解説
株価指数は9月第1週を目先のピークに下落に転じ、11月第3週には、日経平均株価は9500円割れ、東証株価指数(TOPIX)は4月上旬の850割れの水準まで下落した。政権発足直後は欧米および新興国の株価が軒並み上昇するなか、日本の株価は低迷を続け、メリルリンチ証券による世界投資家調査では、日本が最も不人気な株式市場に選ばれてしまった。証券業界では、鳩山内閣の経済政策および日本市場への信頼が低下し、「日本売り」が加速する可能性を指摘された。11月18日にはTOPIXの年初来変化率がマイナスとなった。『サーチナ』は民主党の成長戦略がみえないためとする見解を掲載した。2009年11月27日には日経平均株価が前日から301円の大幅下落し9081円まで落ち込んだ。また、為替レートは14年4カ月ぶりに1ドル=84円台に突入し、御手洗冨士夫経団連会長は急激な円高に懸念を表明した。日本国外では、日本の株・円・国債全ての評価が悪化した。2009年12月9日、内閣府は、2009年度7-9月期の国内総生産改定値を、11月16日に発表した速報値1.2%増(前期比。年率4.8%増)0.3%(同。年率1.3%増)へ大幅に下方修正した。製造業の設備投資が過去最大の下落幅(前年同月比40.7%減)を記録したことによる。『産経新聞』は物価下落と不況が内需主導の成長を掲げる鳩山政権の経済運営に重荷となっていると報じた。 内閣発足直前に、藤井裕久財務相が、為替介入に否定的な発言をしたことが「円高容認」との観測を呼び、円が急騰し、ミスター円高と呼ばれた。このことについて、欧米の金融関係者や識者は批判を強めた。その後、藤井はイスタンブールで開催されたG7で「(為替が)一方的に偏った動きが激しくなればそれなりの対応をする」と釈明し、民主党の経済政策を説明したが、各国の経済担当首脳からの大きな反応はなかった。 2009年9月の民主党政権発足後、デノミネーションを検討していたことが2010年3月18日明らかとなった。しかし、2010年1月に藤井が財務相を辞任し論議は頓挫したとされている。 亀井静香金融・郵政改革担当相は、就任直後の9月16日から17日未明にかけ、金融機関からの借入金の返済猶予(モラトリアム)制度を創設する意向を表明した(金融モラトリアム構想)。これを受け、同17日から新BIS規制に対処するための新株発行(増資)を懸念されていた銀行株が軒並み売られる展開となった。 2009年11月16日、直嶋正行経済産業相が内閣府の発表30分前にGDPの伸び率を漏らしていたことが発覚。GDPは株価や為替の動きに重大な影響を与える可能性があり、平野博文官房長官は報道陣からの「インサイダー取引も誘発しかねない」との指摘に同意し、「政権の危機管理も問われる」と語っている。 2009年11月18日、経済協力開発機構(OECD)は日本の経済政策に関する提言を発表。鳩山内閣が目玉としている子ども手当について大幅な見直しを求めている。また、経済協力開発機構は2010年3月26日にも日本の2011-17年の潜在成長率を平均0.9%と先進7カ国で最も低くなると予想し、鳩山内閣の成長目標に疑問を呈している。 同11月20日、政府は11月の月例経済報告で「日本経済は緩やかなデフレ状況にある」と述べ、日本経済がリーマン・ショックの影響で2004年以来のデフレに移行したことを宣言した。2009年11月17日には、『フジサンケイ ビジネスアイ』が、日本経済が回復基調にあるとしながらも、再度の景気失速やデフレの可能性もあると報じていた。 内閣府は、デフレ宣言の根拠として、「消費者物価指数が前月比6ヶ月連続で下落」、「7-9月期の名目GDP伸び率が2四半期連続で実質GDPを下回った」、「大幅な需要不足が物価の下押し圧力となっている」の3点を挙げた。 『産経新聞』は、「世界の主要株式市場をみると、リーマン・ショックからの戻りは日本が一番遅れている」と報じていた。 自民党の大島理森幹事長は「デフレ宣言と同時に対応策を発表すべきだった」と述べ、政府の経済政策を批判した。 2009年11月22日、菅直人副総理は、公式サイトに、「最近、経済における『第三の道』を考えている」と記した。これに対し、明治大学教授の高木勝は、「民主党は確かに頑張っているが、マクロ経済を分かっている人がいない」、「官僚に頼らないなら外部からしかるべき人物を招請すべき」と批判した。 2009年12月2日、自民党では、谷垣禎一総裁が、日本経済が置かれている状況を「鳩山不況」と表現した。メディアでも鳩山内閣発足直後、2009年度の補正予算案の削減を行ったことで「鳩山不況」が発生すると懸念された。自民党では「鳩山不況」対策検討PTを発足させ、2009年12月10日に初会合を開き、冨山和彦、内海孚、鳥羽博道からヒアリングを受けた。 12月に入って以降、ドル高、円安が進行したことや、日銀が「物価安定の理解」の方針を打ち出したこと、鳩山がガソリン税の暫定税率を実質的に維持する方針を示したことで、2010年度国債発行の44兆円枠が守られる道筋がみえてきたことなどから株価は上昇に転じた。また、2010年1月7日には、体調不良を理由に辞任した藤井裕久に代わって財務相に就任した菅直人が、「経済界では90円台半ばあたりが適切という見方が多い」と発言。現職の財相が具体的な為替水準にまで言及したことに内閣からも賛否両論が起こったが、翌日の東京株式市場ではこの発言をきっかけに円相場が下落したことを好感し日経平均は一時、約1年3カ月ぶりに1万800円台を回復した。アジア経済の景気回復が回復すると外需が増え、金融を含む東証一部上場企業の2009年10-12月期の経常利益の総額は7兆1000億円となり、リーマンショック直前の7兆円を上回ったが、建設や不動産、情報通信、陸運など内需型企業の業績が低迷は続いた。 2010年1月18日、国際通貨基金(IMF)のドミニク・ストロス=カーン専務理事は菅直人財務・経済財政担当相と会談した際、日本を含めた先進国の経済の状況について、「危機が過ぎ去ったとは言えない。特に雇用情勢が厳しい」と日本からの支援を求める一方、鳩山政権の経済・財政政策について「公共投資を抑え、消費を刺激する政策をとっており、IMFが考えている望ましい政策の方向性と一致している」と評価した。 鳩山内閣は日本銀行がデフレ克服のために金融政策運営を行うことに期待をしており、菅は衆院予算委員会で物価上昇率について1%程度を「政策的な目標にすべきだ」と述べ、インフレターゲットの導入も視野に、日銀に対しより一層の金融緩和を進めるよう働きかけている。日銀はインフレターゲットに関しては慎重な姿勢を崩していない が、金融緩和策に関しては「追加の金融緩和策の検討に入った」との報道がなされ、市場からも好感されている。 2010年2月17日、谷垣禎一自民党総裁との党首討論にて鳩山は、「政権交代前から民主党は常々緊急経済対策をしろといっていたが前政権(自民党、公明党)が無視していた」と発言し、自公政権の対応も景気悪化の要因の一つとの見方を示した。民主党は、野党時代の2009年、当時の与党が提示していた(定額給付金を盛り込んだ)第2次補正予算案については審議拒否をおこなっている。
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