ペンシルバニア鉄道MP85形電車
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ペンシルバニア鉄道MP85形電車はバッド社が開発した交流近郊型電車である。パイオニアIIIやシルバーライナーIとも呼ばれる。1956年にバッド社は軽量化に特化した客車を製作した。1両のみ試作したものの、鉄道旅客交通の斜陽化による輸送量低下の結果、発注を取ることができなかったバッド社は電車として再設計する事とした。 製作された6両の電車はペンシルバニア鉄道が購入し、米国北東部の短距離から長距離まで運用可能な高速形電車として開発。 この6両のパイオニアIIIは北米初の全不銹鋼製の電車となりその総重量は41tで当時最軽量であった。
- ^ White, John H. (1985) [1978]. The American Railroad Passenger Car. Baltimore, MD: Johns Hopkins University Press. p. 177. ISBN 0801827434.
- ^ Staufer, Alvin (1968). Pennsy Power II: Steam Diesel and Electric Locomotives of the Pennsylvania Railroad. Staufer. pp. 168–193. ISBN 0944513050.
- ^ http://www.trainsarefun.com/lirr/gasturbinecars/gasturbinecars.htm
- 1 ペンシルバニア鉄道MP85形電車とは
- 2 ペンシルバニア鉄道MP85形電車の概要
- 3 ガスタービン試験車
パイオニアIII
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「鉄道車両の台車史」の記事における「パイオニアIII」の解説
汽車製造がエコノミカルトラックをはじめとする空気ばね台車の開発を行っていたのと同時期、アメリカのバッド社 (The Budd Company) でも空気ばねを使用する1自由度系軽量構造台車の研究開発が進められていた。 当初、革新的技術を導入した製品にパイオニア (Pioneer) の名を冠するバッド社の伝統に則ってパイオニアIII (Pioneer III)と命名された軽量構造のオールステンレス製客車(1956年)に採用され、更にこの構造を援用したペンシルバニア鉄道向け近郊電車「シルバーライナーI」などにも同系機種が納入されたこの台車シリーズは、1959年にバッド社と技術提携契約を結んで同社の特許技術のライセンス供与を受けられるようになった東急車輛製造によって日本へもたらされ、東京急行電鉄7000系(初代)(1962年)に装着されたTS-701 (PIII-701) より各社への供給が開始された。 このパイオニアIII台車の特徴は以下の通り。 軸箱は防振ゴムによる緩衝リングを介して側梁に固定される。 左右の側梁は、V字形のトランサム(横梁)を向かい合わせにして噛み合わせ、心皿を挟んでX字状に組み合わせて中心ピンで位置決めし、左右側梁の位置関係のねじれに対応する。 枕ばねはダイレクトマウント方式で枕梁の上に置かれ、牽引力は車体と枕梁を結ぶボルスタアンカー、枕梁の中心ピンから心皿、トランサムを介して側梁へ伝達される。 基礎ブレーキ装置は放熱性やフラット対策に有利なディスクブレーキとする。 元のパイオニアIII台車は標準軌向けのため、軌道中心から軸端へ順に駆動装置、側枠、車輪、ブレーキディスクとなっている。これを狭軌向けに、駆動装置、車輪、側枠、ブレーキディスクに変更する。 この台車はメンテナンスフリーと軽量化を重視して設計されている。摺動部品がほぼ心皿の側受に限られ、それさえ低摩擦係数のテフロン材を摺動面に貼り付けて注油の必要性を排除しており、各車輪に基礎ブレーキ装置をユニット化して実装するディスクブレーキの採用と合わせ、極力保守の手のかからない設計とされている。この台車はTS-701で自重が4.5tと非常に軽いため、その構造からばね間重量が実質的にばね下重量に近い扱いとなることを考慮しても、軌道保守面において十分メリットのある設計であった。 もっとも、高速走行時の蛇行動に対する研究がアメリカにおいてもまだ不十分な状況で設計されたため、ブレーキユニットを避けるように高い位置に取り付けられたボルスタアンカーが蛇行動を抑えられないという重大な問題が、導入各社での高速運転時に表面化した。アメリカの一部の鉄道ではボルスタアンカーの支持腕を継ぎ足して作用点を引き下げるという対応をとっており、東京急行電鉄でも試験的にデハ7042において同様の改造を実施した。しかし、蛇行動抑止に効果がある一方で継ぎ足したボルスターアンカーに生じる応力が過大になることが判ったため、この1両に留まっている。 なお、この蛇行動については小田急電鉄4000形向けTS-706で設計の改善が図られた。具体的には、側梁そのものをかつての釣り合い梁式台車の釣り合い梁のように緩やかな弓形として側枠の各ブレーキユニット取り付け位置を引き下げることでボルスタアンカーとの干渉を避けて作用点を下げ、更にボルスタアンカーとの連結棒を従前より太いものとした。また、これに続く東京急行電鉄7200系用TS-707と同8000系用TS-708では、電動車へのブレーキ力負担を回生ブレーキ常用に転嫁することを前提に、ブレーキディスクをシングルローター化の上で車輪間に移動することでボルスタアンカーとの干渉を避けて作用点を下げている。 こうしてパイオニアIII台車はバッド社とのライセンス契約の制約の中でも着実に改良を重ね、東急車輛製造が車両を納入していた東京急行電鉄、小田急電鉄、京王帝都電鉄、南海電気鉄道の狭軌私鉄4社に対して合計383両分が納入された。うち小田急では機器流用車である4000形に使用されたことから、同一台車でカルダン駆動と吊り掛け駆動が混在する稀な台車になっている。 だが、この台車には蛇行動以外にも乗り心地で問題があった。 同様に軸ばねを廃止して軸箱を包む防振ゴムによる弾性支持でこれを代用した汽車製造のエコノミカル台車でも、初期設計グループでびびり振動が問題となった。とりわけ東急では7000系が営団(現・東京地下鉄)日比谷線乗り入れ用に使用されたため、住友金属工業製のミンデンドイツ台車やS型ミンデン台車といった、軸ばねを備える通常の2自由度系台車を装着する他社各形式と比較されることになり、より深刻な問題になった。 この後の東急7200系では、電動車については大出力化した主電動機の装架の困難さを理由として通常の片押し式ブレーキシューを備えた軸ばね台車 (TS-802) への変更が行われたが、付随台車については廉価かつ軽量なパイオニアIII (PIII-707) の採用を継続した。この構成は続く8000系にも踏襲された。 加えて決定的な問題となったのが、軸重抜けによる競り上がり脱線であった。この現象はパイオニアIIIを装着する車両のみで編成を組んで走行する場合には表面化しなかったが、ばね特性の硬い軸箱支持機構を備えた台車を装着した車両と併結した特定条件下で惹起し、脱線事故が小田急電鉄で繰り返し発生した。具体的には、パイオニアIII (TS-706) を装着する4000形と、軸距が2,500mmと長く乗車率300%を前提にばねを意図的に硬くした軸ばね台車である国鉄DT13を装着する1800形を併結した場合で、1973年4月19日と5月2日に続けて発生したことから深刻な問題であると見なされた。 これらの脱線事故については、事故時と条件を揃えて実際の車両を用いた再現実験が行われ、小田急電鉄社外の識者による脱線事故調査委員会での検証・原因究明作業が行われた。その結果、これらの事故は低速時におけるパイオニアIIIの浮き上がりによる脱線が原因と判断された。これにより、事実上欠陥台車の烙印を押された形となったパイオニアIII台車の発展の道は閉ざされることになり、以後、南海電鉄6100系用PIII-710(1968年設計)を最終形式として日本におけるパイオニアIII台車の各私鉄での新規採用は途絶えた。 もっとも、この問題は小田急電鉄の場合、パイオニアIII装着車とDT13装着車を併結しない限り発生しなかったため、事故発生後は4000形を他系列と混用せず限定運用とし(ただ1回の例外を除き)、編成一端の制御車の台車を軸ばね式の一般型と振り替えた上で線路や車輪の踏面管理などを徹底するという対策を講じることで、回避が図られた。これにより、4000形は機器更新の完了でパイオニアIII台車が全数淘汰された1988年まで無事故でこの台車を使用し続けることができた。 また、南海電気鉄道においても、やはりばね特性が線路方向に硬い板ばねを軸箱の弾性支持と案内に用いるミンデンドイツ台車を装着する車両を併用していたため、この競り上がり脱線の発生が警戒されたため、これら2種の台車の装着車が完全に分離されるように車両運用管理が徹底された。その甲斐あって、こちらも機器更新でパイオニアIIIが全数廃却される2009年まで、同種の脱線事故を発生させることなくこの台車を使用し続けることができた。 もっとも、それは車両運用の制約が生じ、結果として予備車確保などの点、ひいてはコスト面でかえって不利になるということであり、本来1自由度系台車に期待された経済性の点では本末転倒であって、増して1990年代に入っても一部形式で国鉄型台車を使用していた西武鉄道など採用のしようもなく、日本におけるパイオニアIII台車の系譜はここで途絶えた。
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