ケトン食療法
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「ケトジェニック・ダイエット」の記事における「ケトン食療法」の解説
「ラッセル・ワイルダー」も参照 1921年、医師のローリン・ターナー・ウディヤット( Rollin Turner Woodyatt, 1878~1953 )は、食事と糖尿病に関する研究を行った。その研究で明らかになったのは、健康体の人間が、 絶食状態にある 極度の低糖質かつ高脂肪な食事を摂っている このいずれかの状態にあるとき、肝臓が、「ケトン体」と総称される水溶性化合物(β-ヒドロキシ酪酸〈 β-Hydroxybutyrate 〉、アセト酢酸〈 Acetoacetate 〉、アセトン〈 Acetone 〉)の産生量を増やすということであった。 メイヨー・クリニック( Mayo Clinic )の医師、ラッセル・モース・ワイルダー( Russell Morse Wilder, 1885~1959 )は、ウディヤットによる研究を参考に、この食事法を「ケトン食」「ケトジェニック・ダイエット」( The Ketogenic Diet )と命名した。ワイルダーは、「炭水化物の摂取を抑え、大量の脂肪分を摂取することで血中のケトン体の濃度を上昇させるケトーシス状態に導く食事法だ」と説明した。ワイルダーは、絶食しているときと同じ効果が得られる食事療法が無いかどうかを模索していた。1921年、ワイルダーは少数の癲癇患者に対し、癲癇の治療手段としてケトン食を初めて処方した。 ワイルダーの同僚で小児科医のマイニー・グスタフ・ピーターマン( Mynie Gustav Peterman, 1896~1971 )は、体重1kgにつき、1gのタンパク質、炭水化物の1日の摂取量を10~15gに抑え、残りの栄養素は全て脂肪から摂取する食事を処方した。1920年代のピーターマンによるケトン食の研究は、この食事法の導入とその維持手段を確立させた。この食事法を実践することによる好ましい効果(注意力・普段の振舞い・睡眠が改善された)と副作用(吐き気)の両方を記録した。この食事法は、とくに子供に対して非常に効果的であることが分かった。1925年、ピーターマンは、「若い患者37人にこの食事を処方したところ、95%の患者は発作の頻度が低下し、60%の患者は発作が見られなくなった」と報告した。 1930年までに、10代の青少年や成人に対するこの食事法の効果についての研究が行われた。メイヨー・クリニックの医師、クリフォード・ジョゼフ・バーボルカ( Clifford Joseph Barborka, 1894~1971 )は、「高齢の患者の56%が、この食事法で健康状態が改善し、12%は発作が起こらなくなった」と報告した。バーボルカは、「成人はこの食事法で利益を得られる可能性がもっとも低い」と結論付け、成人患者に対するケトン食の処方の研究は、1999年まで行われなかった。
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ケトン食療法
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「レノックス・ガストー症候群」の記事における「ケトン食療法」の解説
ケトン食療法は、糖質を極端に制限した食事により、体内のケトン体の量が増加したケトーシスの状態とする療法。 抗てんかん薬の普及により一時廃れたが、難治性てんかんに効果があるとして見直され、普及している。
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ケトン食療法
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「ケトジェニック・ダイエット」も参照 通常、炭水化物を摂取すると、体内でブドウ糖に合成され、全身の細胞に運ばれて消費される。一方、炭水化物をほとんど含まず、脂肪分が豊富な食事を摂ると、肝臓は脂肪を脂肪酸(Fatty Acids)とケトン体(keto)に分解する。ケトン体は脳に入り、ブドウ糖に代わるエネルギー源として消費される。血中のケトン体濃度の上昇は「ケトーシス」(Ketosis)と呼ばれ、この状態になると、癲癇の発作の頻度を低下させる。なお、この「ケトーシス」と「糖尿病性ケトアシドーシス」(Diabetic Ketoacidosis)は明確に異なる。この食事法の潜在的副作用としては、便秘(Constipation)、成長の遅延、高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)、腎臓結石(Kidney Stone)がある。 砂糖、甘い果物全般、デンプンが豊富なもの全般を避け、各種ナッツ、生クリーム、バターの摂取を増やす。食べ物に含まれる脂肪分は、「長鎖中性脂肪」(Long-Chain Triglycerides、LCT)と呼ばれる分子で構成されるが、このLCTよりも短い炭素鎖からなる「中鎖中性脂肪」(Medium-Chain Triglycerides、MCT)は、ケトン体の産生量を増やすため、MCTが豊富なココナッツオイルを摂取する場合もある。脂肪の摂取比率を減らし、タンパク質の摂取を増やすケトン食もある。小児てんかん用のケトン食では、年齢と身長を考慮し、身体の成長と修復に必要な量のタンパク質を摂取する。この食事法を「ケトン食」「ケトン食療法」「ケトジェニック療法」「ケトジェニック・ダイエット」(The Ketogenic Diet)と呼ぶ。 この食事法は、炭水化物の1日の摂取量を10~15g以内に抑え、体内で「ケトン体」が生成される状態(「ケトーシス」と呼ばれる)に誘導する。もともとは、1920年代前半、アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスター市にあるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の医師、ラッセル・モース・ワイルダー(Russell Morse Wilder、1885~1959)がてんかん患者を治療するために開発した食事法である。 何らかの形でこの食事療法を実践すると、てんかん持ちの子供や若者の約半数は、発作を起こす頻度が半分に減り、この食事法をやめたあとも効果は持続するようになる。子供や成人を問わず、てんかん患者がこの食事療法を実践することで、その恩恵が得られる可能性を秘めており、これと類似する『修正アトキンス・ダイエット』(Modified Atkins Diet、炭水化物の1日の摂取量を10~15g以内に抑えたうえで、タンパク質・脂肪・水・茶・食べる量はいっさい制限しない。アメリカ合衆国の心臓病専門医、ロバート・アトキンス〈Robert Atkins〉が開発した食事法 )も同様に身体に有効であることを示す証拠もある。方式がどうであれ、「炭水化物および砂糖の摂取は徹底的に避けたうえで、大量の脂肪分を摂取する」点は共通している。 砂糖を筆頭に、米、麺類、パン、イモ類全般のような炭水化物の塊の摂取は禁止である。糖質を取りすぎると、ケトーシスは解除されてしまい、その効果は失われる。炭水化物の摂取を厳格に制限する代わりに、エネルギーの90%を脂肪から摂取する。ラッセル・ワイルダーが開発したケトン食における栄養素の構成比率は、「脂肪(4):タンパク質と炭水化物(1)」である。脂肪分が90%、タンパク質が6%で、炭水化物の摂取は可能な限り避ける。患者1人1人の年齢、身長、体重に合わせて内容を検討し、調理の際は栄養素を厳格に計算する。 ケトジェニック療法は、空腹中のてんかん患者に対して実施される投薬や手術以外の治療法の一つとして開発された食事療法である。1920年代に開発されて以降、10年間はこれが処方され続けたが、抗てんかん薬が新たに出てくると、徐々に使われなくなった。患者の多くは薬剤の投与で発作を抑制できるが、全患者のうちの20~30%は複数の薬剤を投与しても抑制できない。 2つ以上の薬剤を服用しても症状が抑制できない患者、特に子供のてんかん患者に対してはこのケトジェニック療法が効果を発揮し、てんかん治療の手段としてこの食事法が再評価された。 てんかん以外では、頭痛、身体的苦痛、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis)、自閉症(Autism)、各種の癌、パーキンソン病(Parkinson's Disease)、アルツハイマー病(Alzheimer's Disease)、鬱病、神経外傷(Neurotrauma)、睡眠障害(Sleep Disorders)といったさまざまな病気や神経障害(Neurological Disorders)に対して、この食事療法がもたらす作用や効果についての研究が進んでいる。 ケトン食を摂取し続けることで、身体は炭水化物ではなくケトン体を常に燃料にする体質となり、肥満や過体重の場合、体重、中性脂肪、血糖値が有意に低下し、心臓病を起こす確率が低下する。低脂肪食と比較して、ケトン食は肥満患者や糖尿病患者の体重を大幅に減らし、血糖値とインスリン感受性を改善させ、代謝機能障害に関係する死亡率も低下させる可能性があり、肥満と糖尿病に対しても有効である可能性がある。 ケトン食はミトコンドリアの機能と血糖値を改善し、酸化ストレスを減少させ、糖尿病性心筋症(Diabetic Cardiomyopathy)から身体を保護する作用がある。 また、ケトン食は記憶力の改善と死亡率の低下をもたらし、末梢軸索(Peripheral Axons)と感覚機能障害(Sensory Dysfunction)を回復させ、糖尿病の合併症も防げる可能性が出てくる。 炭水化物の少ない食事は、血糖値とその制御の大幅な改善につながり、薬物の服用回数を減らせるだけでなく、服用の必要もなくなる可能性があり、この食事法は2型糖尿病の改善と回復にも効果的である証拠が示された。 ケトン食を含めて、炭水化物を制限する食事法は安全であり、長期にわたって健康を維持し、さまざまな病理学的状態を防止または逆転させる力がある。ケトン食をやめると(炭水化物の摂取を増やし、脂肪の摂取を減らすと)、片頭痛や癲癇発作が再発する。 「炭水化物は肥満およびそれに伴う疾患の主要な推進力であり、精製された炭水化物や糖分の過剰摂取を減らすべきである」と結論づけ、炭水化物を「Carbotoxicity」(「炭水化物には毒性がある」)という造語で表現する研究者もいる。
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