ケトン食による治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:21 UTC 版)
「ラッセル・ワイルダー」も参照 1921年、医師のローリン・ターナー・ウディヤット(Rollin Turner Woodyatt、1878~1953)は、食事と糖尿病に関する研究を行った。その研究で明らかになったのは、健康体の人間が、 絶食状態にある 極度の低糖質かつ高脂肪な食事を摂っている このいずれかの状態にあるとき、肝臓が、「ケトン体」と総称される水溶性化合物(β-ヒドロキシ酪酸〈β-Hydroxybutyrate〉、アセト酢酸〈Acetoacetate〉、アセトン〈Acetone〉)の産生量を増やすということであった。 メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の医師、ラッセル・ワイルダーは、ウディヤットによる研究を参考に、この食事法を「ケトン食」「ケトジェニック・ダイエット」(The Ketogenic Diet)と命名した。ワイルダーは、「炭水化物の摂取を抑え、大量の脂肪分を摂取することで血中のケトン体の濃度を上昇させるケトーシス状態に導く食事法だ」と説明した。ワイルダーは、絶食しているときと同じ効果が得られる食事療法がないかどうかを模索していた。1921年、ワイルダーは少数のてんかん患者に対し、てんかんの治療手段としてケトン食を初めて処方した。 ワイルダーの同僚で小児科医のマイニー・グスタフ・ピーターマン(Mynie Gustav Peterman、1896~1971)は、体重1kgにつき、1gのタンパク質、炭水化物の1日の摂取量を10~15gに抑え、残りの栄養素はすべて脂肪から摂取する食事を処方した。1920年代のピーターマンによるケトン食の研究は、この食事法の導入とその維持手段を確立させた。この食事法を実践することによる好ましい効果(注意力・普段の振る舞い・睡眠が改善された)と副作用(吐き気)の両方を記録した。この食事法は、特に子供に対して非常に効果的であることが分かった。1925年、ピーターマンは、「若い患者37人にこの食事を処方したところ、95%の患者は発作の頻度が低下し、60%の患者は発作が見られなくなった」と報告した。 1930年までに、10代の青少年や成人に対するこの食事法の効果についての研究が行われた。メイヨー・クリニックの医師、クリフォード・ジョゼフ・バーボルカ(Clifford Joseph Barborka、1894~1971)は、「高齢の患者の56%が、この食事法で健康状態が改善し、12%は発作が起こらなくなった」と報告した。バーボルカは、「成人はこの食事法で利益を得られる可能性がもっとも低い」と結論づけ、成人患者に対するケトン食の処方の研究は、1999年まで行われなかった。
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