アズベルグ地方
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アリシア・ライセン 声 - 小林ゆう 本作の主人公。ライセン強公爵夫人で地方伯フェイトリン家の直系の子女。初登場時は15歳。通称「死神姫」。 「死神姫」という物騒な名前から、絶世の美女とか眼が三つあるとか角が生えている等様々に噂されるが、実際は平凡で地味な容姿の少女。 実家は格式高い地方伯だが、没落して久しい。そのため、独身時代は使用人も使わず一人で生活しており、自身の身支度はもちろん、庭を耕しての家庭菜園や料理等の家事は得意。趣味の読書も、値段が安いという理由で恐怖小説ばかりを読んでいる(その影響でおどろおどろしいものを好み、薄暗く不気味なライセンの屋敷を初めて見たときも「理想のお城だ」とはしゃいでいた)。 浮世離れした天然ボケな上、長い貧乏生活によりかなり現金で俗物的な性格で、ひどい嫌がらせをされても気付かず、全く意に介さない(しかしこれは、怒りや悲しみの感情は燃費が悪いとの考えから、気付かないよう心に蓋をし、あえて避けているから)。また視力が相当悪く、眼鏡をかけてはいるがあまり見えていない。 幼少期に貧しさが原因で両親が死去。特に親族もおらず、両親亡き後は叔父を後見人として屋敷を受け継ぎ、ひっそり暮らしていたが、叔父の口利きで金持ちの新興貴族との結婚が決まる。しかし、結婚式で夫が殺害され未亡人となったため、そのまま離縁し実家へ戻ることに。この事件がもとで「死神姫」の二つ名が付いた。 一年後、再び叔父の手引きにより、ライセン家当主カシュヴァーンと再婚。爵位は名ばかりで貧乏な上に、広大な実家の屋敷は維持費がかかるため、金持ちであるカシュヴァーンとの結婚は渡りに船であったアリシアは、政略結婚で名ばかりの妻だと聞かされても「お買い上げありがとうございます」と嬉々として受け入れ、ノーラが公然と愛人を自称しても「さすがお金持ち」と歓迎している。 結婚当初は正に“政略結婚”だったが、少しずつ互いを知り愛情を育む。たまにカシュヴァーンが夫婦らしい事をしようとすると急に「お腹が痛く」なってしまい、どうしてそうなるのか本人にも分かっていない。嫉妬は贅沢と考え、かって両親を喪った経験から「誰かを『特別』に好きになること」を恐れていたが、カシュヴァーンとの絆が深まったことで、彼を「『特別』に好きな人」だと認めた。 あまりにも貧乏だったため、幼少の頃から猛毒「肥料いらず」をよく食べており(本人曰く、慣れれば美味しい)、毒が効かない。 「翼の祈り」の本部に誘拐されたときに、海に落とされ無事生還したため、「死神姫」のみならず「真の聖女」という噂も立てられた。 カシュヴァーン・ライセン 声 - 杉田智和 新興貴族ライセン“強”公爵家の当主で、アズベルグ地方を治める領主。初登場時は22歳。通称「アズベルグの暴君」。 性格は居丈高で癇癪持ち。自分に従わない領民を殺す事に抵抗を感じておらず、その強硬なやり口から「暴君」と恐れられている。カシュヴァーン自身も「暴君」というイメージを進んで身に付けようとしており、「“強”公爵」という一代限りの称号を、王に自ら望んで与えられた(買った)。 苦労の多い人生を送ってきた為か実年齢より上に見られがち(初対面のアリシアには「33歳くらい」だと思われたが、実際は22歳)。 かなりの合理主義者で、宗教を全く信じておらず、特に国教「翼の祈り」には並々ならぬ敵意を抱いている。ただし最初から信じていなかったわけではなく、メイドであった彼の母が敬虔な「翼の祈り」信者でありながら、死後翼をもらうことができなかったという過去に起因している。 金に物を言わせてアリシアと結婚し、お飾りの妻に迎える。その目的は、成り上がりのライセン家に箔をつけるため名門・地方伯の血を入れること、「死神姫」の名を周囲への牽制に利用すること。初対面のアリシアにもそのことを話して威圧しようとするが、萎縮するどころか嬉々とするアリシアに拍子抜けし、逆にその現実的で合理的な姿を気に入る。 最初はそうでもなかったようだが、日々を共に過ごすうち、アリシアのことを次第に愛しく思うようになる。ついには夫馬鹿をこじらせ、「アリシアは世界一かわいい」と発言しては周囲に視力を疑われている。また、「翼の祈り」教団の策略で崖から海に落ちたアリシアを救出した際には、無信心を公言するカシュヴァーンが無意識に「神よ」と呟いたほど。意外と嫉妬深く、アリシアに他の男が寄り付かないか常に警戒している。 「いつか自分も父のような『怪物』になるのではないか」と恐れ、あえて暴虐に振る舞っていたが、アリシアを愛し、またディネロからアスベルグ地方を託されたことで、アリシアとの間に子を作り平和に生きることを望む様になった。 ノーラ・テルペス 声 - 小清水亜美 自称「カシュヴァーンの愛人」である、アリシア付きのメイド。アリシアを追い出し正妻の座に収まろうと野心を持っているが、相手にされていない。針子としては有能。 幼い頃に父親を亡くしている。女手一つで苦労していた母親を見て「貧乏は嫌だ」と思うようになり、母親の反対を押し切ってライセン家のメイドになった。カシュヴァーンの愛人と言い張るが、彼とそのような関係を持ったことはない。 成長していくティルナードの姿を見て、次第に好意を抱くようになり、時間をかけてゆっくり愛を育んだ。 ティルナードとの婚約直前に、ゼオルディスの策略によりティルナードとの仲を引き裂かれそうになるが、ガーゼット公爵の養女になることで、ティルナードと婚約することが出来た。 トレイス 声 - 小西克幸 カシュヴァーンの幼馴染で、姉・リリアをレジオールに殺されている。「翼の祈り」の熱心な信徒。変わっていくカシュヴァーンを見ていることに耐えられず、傍から離れ生活していたが、一度はユーランの説得により城に戻りカシュヴァーンに刃を向けた。それを許されて以降は、執事兼カシュヴァーンの右腕として仕えている。外見は年下に見えるがカシュヴァーンよりも2歳年上である。 一度は聖職者を目指したこともあり、下手の聖職者より精神は清らか。結婚はしないと決めている。とても潔癖であり、カシュヴァーンがアリシアといちゃいちゃし始めると「破廉恥」「ふしだら」と声を上げる一方、カシュヴァーンにはアリシアと結ばれて幸せになって欲しいとも思っている。 リュクに絵を習うが才能は皆無。 リュク 「翼の祈り」の信者の一人。美術の才能があり、現アーシェルに逢ったことがある。しかし頼まれた仕事を期日までにやり遂げることができない。アリシアをさらったが彼女を逃がそうとしたことで、教団の裏切り者となった。アリシアたちと共に救出されて以降は、ともにライデンの屋敷に住んでいる。出身はレイデン地方で、何度も帰れと言われているのに帰る様子がない。 口が軽く、話してはいけないことまでペラペラ喋ってしまう。惚れっぽい性格で、アリシアやノーラ、ルネ、果てはセイラにまで好意を抱いていた。 ディネロ・アズベルグ 元地方伯アズベルグ家に生まれた青年。領地を毎日決まった時間に見まわることから、時計公爵と呼ばれていた。ディネロ自身はカシュヴァーンがただの暴君ではなく良い領主だと認めているが、周囲にはアズベルグ地方の真の領主はディネロだとする声は少なくない。 アリシアを好きだが、カシュヴァーンを思う彼女の気持ちを尊重している。「自分は結婚もせず、子も作らない」と宣言し、アスベルグの統治とアリシアをカシュヴァーンに託した。 アレクトール・ケルヴァン アズベルグ家の執事見習いの青年。ディネロを敬愛し、熱意を持って仕えている。そのため、事あるごとにカシュバーンに食ってかかっているが、カシュバーンからは歯牙にもかけられない。 ダン ライセン家の料理人。レジオールの代から、『ハルバーストの薔薇屋敷』で働く古参の使用人で、セイラの夫。ガーゼット伯爵が滞在したときには、伯爵の食事に頭を悩ませた。 セイラ ライセン家のメイド。レジオールの代から、『ハルバーストの薔薇屋敷』で働く古参の使用人で、ダンの妻。リュクを息子のように可愛がっており、手に結婚指輪を嵌めていなかったことから、一時期リュクから惚れられていた。 ロセ ライセン家の御者。レジオールの代から、『ハルバーストの薔薇屋敷』で働く古参の使用人。アリシアを屋敷まで連れて行く際の馬車の御者を務めた。 レジオール・ハルバースト 先代のアズベルグ地方の領主で、カシュヴァーンの父。薔薇にしか興味のなかった妻ジーナを殺してしまってから、狂気に陥り、薔薇を咲かせるために次々に女性を殺し、薔薇園に彼女達の死体を埋めて肥料にしていた。カシュヴァーンを日常的に虐待していて、最終的にはカシュヴァーンが十五歳の時に彼に本当の母親を明かし、激昂したカシュヴァーンによって殴り殺された。 カシュヴァーンの容姿は父に酷似しており、彼の抱える「いつか自分も父と同じ『怪物』になるのでは」という不安の原因の一つとなっている。 ジーナ・アズベルグ レジオールの正妻で、アズベルグの出身。薔薇にちなんだ赤いドレスしか着なかった美しいが、変わり者の女性だったと伝えられる。夫となったレジオールに興味を示さず、薔薇の育成に没頭していたが、やがて怒ったレジオールに殺され、薔薇園に埋められた最初の犠牲者となった。 マリアンヌ・ライセン レジオールに仕えていたメイドで、カシュヴァーンの母。敬虔な「翼の祈り」の信者で、レジオールに身体を許したのも信仰心から。レジオールから虐待を受けていたカシュヴァーンをかばっていた数少ない人物だが、「ジーナが自分の母親である」と聞かされていたカシュヴァーンからは嫌われていた。最終的には他の女性同様に殺され、薔薇園に埋められた。
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アズベルグ地方
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王国の北の辺境にある地方。領主はライセン家。地方伯アズベルグ家は領主の位を退き、一地域に隠棲している。やせた土地は起伏が激しく、背の高い森が多いので日照に乏しくて農産物の生産性は低い。このような閉鎖的な厳しい気候に生きるせいか、領民は他の地方に比べて「翼の祈り」への信心が深く、迷信にもこだわる。
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