国民健康保険 国民健康保険の概要

国民健康保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/26 09:26 UTC 版)

日本の人口のうち27.5%が市町村国保への加入者、2.5%が国民健康保険組合の加入者である(2011年)[1]。特徴としては軽減措置を受けている世帯が59.3%に上ることであり、その6割は無職者であった(2017年)[2]

なお75歳に達すると国民健康保険は脱退となり、後期高齢者医療制度の加入者となる。

  • 国民健康保険法について、以下では条数のみ記す。
日本の国民医療費(制度区別、2016年度)[3]
公費負担医療給付 3兆1433億円 (007.5%)
後期高齢者医療給付 14兆1731億円 (033.6%)
医療保険等給付
19兆5663億円
(45.7%)
被用者保険
9兆7210億円
(22.2%)
協会けんぽ 5兆1171億円 (012.1%)
健康保険組合 3兆5254億円 (008.4%)
船員保険 195億円 (000.0%)
共済組合 1兆0583億円 (002.6%)
国民健康保険 9兆5404億円 (022.6%)
その他労災など 3049億円 (000.7%)
患者等負担 5兆1435億円 (012.2%)
軽減特例措置 1119億円 (000.3%)
総額 42兆1381億円 (100.0%)


歴史

国民健康保険発祥の地の碑(埼玉県越谷市
国民健康保険発祥の地の碑(山形県戸沢村

日本において最初の公的医療保険は、1922年大正11年)に施行された健康保険法であり、これは企業雇用者の職域健康保険であった[4]

農家・自営業者の地域保険については、埼玉県南埼玉郡越ヶ谷町(現在は越谷市)の一般住民を対象とした、日本初の地域健康保険制度「越ヶ谷順正会」が1935年昭和10年)に発足し、その3年後の1938年(昭和13年)に、政府レベルでの国民健康保険法(旧法)が創設された。このため越谷市は「越ヶ谷順正会」を「国民健康保険の発祥」と称しており、国民健康保険法施行10周年を記念して、1948年(昭和23年)には「越ヶ谷順正会」を顕彰する「相扶共済の碑」が、現在の越谷市役所の敷地内に立てられている。

また、山形県角川村(現在は戸沢村)は、当時無医村だった村に村営診療所を設立するため、1936年(昭和11年)に「角川村健康保険組合」を発足させ、その2年後の1938年(昭和13年)8月20日に国民健康保険法の下で認可された国民健康保険組合第1号となった[5]ことにより、「国民健康保険の発祥の地」と称しており、国民健康保険法施行20周年を記念して、1958年(昭和33年)に、現在の農村環境改善センターの敷地内に「相扶共済の碑」と「国民健康保険発祥地の由来の碑」を立てている。

1938年(昭和13年)の旧法制度では、当時は組合方式であり農山漁村の住民を対象としていた[4]市町村運営方式により、官庁や企業に組織化されていない日本国民が対象となったのは、1958年(昭和33年)であり、1961年(昭和36年)には、日本国民全てが「公的医療保険」に加入する国民皆保険体制が整えられた[4]

急速な少子高齢化など大きな環境変化に直面している中、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとし、国民皆保険を堅持していくために、2015年平成27年)5月27日に成立した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」により、2018年(平成30年)4月より都道府県が財政運営の主体となり、国民健康保険の運営に中心的な役割を担うこととなった。以下では特記しない限り、平成30年4月施行の改正法に基づいて述べる。

目的・管掌

国民健康保険法は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする(第1条)。そしてこの目的を達するために、被保険者の疾病負傷出産又は死亡に関して、必要な保険給付を行う(第2条)。健康保険や船員保険のような披用者保険とは異なり、業務上、業務外の区別なく保険給付を行う。

は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるよう必要な各般の措置を講ずるとともに、第1条に規定する目的の達成に資するため、保険、医療、福祉に関する施策その他の関連施策を積極的に推進するものとする(第4条1項)。また都道府県は、安定的な財政運営、市町村の国民健康保険事業の効率的な実施の確保その他の都道府県及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の健全な運営について中心的な役割を果たすものとする(第4条2項)。市町村は、被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項、国民健康保険の保険料の徴収、保健事業の実施その他の国民健康保険事業を適切に実施するものとする(第4条3項)。

都道府県及び市町村は、これらの責務を果たすため、保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策その他の関連施策との有機的な連携を図るものとする。都道府県は、これらに規定するもののほか、国民健康保険事業の運営が適切かつ円滑に行われるよう、国民健康保険組合その他の関係者に対し、必要な指導及び助言を行うものとする(第4条4項、5項)。

具体的には、都道府県は財政運営の責任者として、市町村ごとの納付金を設定し、また市町村が担う事務の効率化・広域化、市町村が行った保険給付の点検・事後調整等を行う。市町村は保険料の徴収・賦課、実際の保険給付、被保険者証の発行等の資格管理、国保事業納付金の都道府県への納入等を行う。


注釈

  1. ^ 東京地裁平成10年7月16日判決では、在留資格のない外国人に被保険者資格を認めた。なお控訴審中に原告は在留特別許可を受け、被保険者資格を取得している。

出典

  1. ^ a b c 国民健康保険中央会 2012, pp. 5.
  2. ^ a b c 国民健康保険実態調査 平成29年度 (Report). 厚生労働省. (2019-03-12). https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450397&tstat=000001125095&cycle=8&tclass1=000001125099&result_page=1. 
  3. ^ 平成28年度 国民医療費の概況 (Report). 厚生労働省. (2018-09-21). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/16/index.html. 
  4. ^ a b c 厚生労働白書 2011, p. 35.
  5. ^ 角川村で国民健保組合の初認可『東京朝日新聞』1938年(昭和13年)8月20日.『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p730 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  6. ^ 国民健康保険事業年報 平成22年度, e-stat , (GL08020101)
  7. ^ a b c (PDF) 全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議 国民健康保険関係資料 (Report). 厚生労働省. (2012年2月6日). https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/02/dl/tp120205-1-koku_kankei.pdf. 
  8. ^ 東京都弁護士国民健康保険組合”. 2014年12月4日閲覧。
  9. ^ 保険局長 (2012年1月20日), “国民健康保険法施行規則及び高齢者の医療の確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行について(保発0120第2号)” (PDF) (プレスリリース), 厚生労働省, オリジナルの2014年2月20日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20140220185635/http://www.kokuho.or.jp/whlw/lib/ho_24_0120002.pdf 
  10. ^ a b c d e f g 国民健康保険中央会 2012, pp. 29.
  11. ^ 国民健康保険事業年報 平成29年度 (Report). 厚生労働省. (2016-03-31). https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450396&tstat=000001128395. 
  12. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 12, 17.
  13. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 17.
  14. ^ a b c d e 国民健康保険中央会 2012, pp. 15.
  15. ^ 厚生労働省 2014, p. 12.
  16. ^ 厚生労働省 2014, p. 5.
  17. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 25.
  18. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 31.
  19. ^ 厚生労働省 2014, p. 4.
  20. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 4.
  21. ^ OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. (2009-08-13). pp. 104, 118, 126-128. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561. 
  22. ^ a b 社会保障制度改革国民会議 報告書(概要) (Report). 社会保障国民会議. (2013-08-05). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/. 
  23. ^ 第189回国会 閣法 189回28号 持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案
  24. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 12.
  25. ^ “国保納付率88%、最低更新 09年度、景気悪化で”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2011年2月4日). オリジナルの2011年11月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111126052608/https://www.47news.jp/CN/201102/CN2011020401000501.html 
  26. ^ 田中敏「国民健康保険制度の現状と課題」『Issue brief』第488巻、2005年7月5日、 1-10頁、 NAID 40006756508
  27. ^ 厚生労働白書 2011, Chapt.3.
  28. ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 8.
  29. ^ 厚生労働省 2014, p. 1.
  30. ^ 従業員を採用したときの手続き” (2020年6月16日). 2020年8月24日閲覧。
  31. ^ 国民健康保険改革の進捗等について”. 厚生労働省 (2019年5月29日). 2020年8月24日閲覧。
  32. ^ “経済的事情で受診遅れ死亡56人 道内は2人 民医連が調査”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2015年4月23日). オリジナルの2015年4月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150425134024/http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/health/health/1-0126205.html 2015年4月30日閲覧。 
  33. ^ “生活苦、重い窓口負担 無保険・無年金、駆け込み診療”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2014年11月27日). オリジナルの2014年12月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141221010657/http://apital.asahi.com/article/serial/2014112600008.html 2015年4月30日閲覧。 
  34. ^ 無料・低額診療にとりくんでいる事業所”. 全日本民医連 (2015年4月23日). 2015年4月30日閲覧。
  35. ^ 無料低額診療事業について (PDF)”. 厚生労働省 (2008年1月21日). 2015年4月30日閲覧。
  36. ^ 国民健康保険料(税)滞納問題に関する研究会. “国民健康保険料(税)収納率向上のための提言 ~publisher=公益社団法人 国民健康保険中央会”. 2020年6月1日閲覧。
  37. ^ 平成30年度部局予算編成方針”. 豊島区. 2018年11月6日閲覧。
  38. ^ 平成28年度 第1 回 豊島区収納対策本部”. 豊島区. 2019年3月20日閲覧。
  39. ^ 平成30年度第5回定例記者会見資料(平成30年10月12日開催)”. 船橋市. 2018年11月21日閲覧。
  40. ^ 平成30年度第2回 松戸市国民健康保険運営協議会会議録”. 松戸市. 2019年3月20日閲覧。
  41. ^ “国保誤加入で3700万余給付”. NHK NEWS WEB (日本放送協会). (2018年5月9日). オリジナルの2018年5月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180509220615/http://www3.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/20180509/4000000724.html 
  42. ^ “来日中国人が日本の医療制度に“タダ乗り”しようとしている!?”. 週刊SPA! (扶桑社). (2018年11月22日). https://nikkan-spa.jp/1241761 
  43. ^ “国保悪用の外国人急増 留学と偽り入国、高額医療費逃れ 厚労省、制度・運用見直し検討”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年1月6日). https://www.sankei.com/affairs/news/170106/afr1701060006-n1.html 
  44. ^ “自民、外国人の国保悪用防止へ検討を開始 ワーキンググループが会合”. 産経ニュース. (2018年8月29日). https://www.sankei.com/article/20180829-QQO2B4TIVNJ2BK2NDB7DNYWRWM/ 2018年8月30日閲覧。 
  45. ^ “外国人の国保調査に論議 開始半年、偽装滞在は未確認”. 佐賀新聞 (佐賀新聞社). (2018年9月12日). https://www.saga-s.co.jp/articles/-/273853 
  46. ^ 「ボリビアで三つ子産んだ」 出産一時金を詐取容疑”. 朝日新聞. 2019年9月19日閲覧。
  47. ^ 外国人に「健康保険」「扶養控除制度」が食い物にされている”. NEWSポストセブン. 2018年11月10日閲覧。
  48. ^ 海外出産一時金を調査へ 外国人の医療費未払いに対策”. 産経新聞. 2018年11月6日閲覧。
  49. ^ 井上千尋,李節子,松井三明,中村安秀,箕浦茂樹,牛島廣治. 外国人妊産婦の「飛び込み分娩」に関する実態調査 (Report). https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2005/006404/003/0534-0541.pdf 2019年3月20日閲覧。. 
  50. ^ 「飛び込み出産」急増 (Report). http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~mikiya/2007%20wadai%20tobikomisyussan.pdf  2019年3月20日閲覧。. 
  51. ^ 衛生行政報告例 / 令和元年度衛生行政報告例 統計表 年度報人工妊娠中絶件数,妊娠週数・都道府県別”. e-stat. 2021年3月31日閲覧。
  52. ^ 泣いて出てきた胎児をそのまま死なせ…中絶ビジネスの「壮絶すぎる実態」”. 現代ビジネス (2021年3月26日). 2021年3月31日閲覧。






国民健康保険と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国民健康保険」の関連用語

国民健康保険のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国民健康保険のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの国民健康保険 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS