ひとり‐おやかた【一人親方】
一人親方
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一人親方(ひとりおやかた)とは、建設業などで労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主のこと。元々は職人をまとめて仕事ができる能力をもっているという職階をしめす。しかし現代においては労務管理上の問題として取り上げられることが多い。一般的には、建設業や林業に携わる個人事業主をさすが、労災保険の特別加入制度(後述)では、一人親方等として、建設業、林業の他に、職業ドライバー、漁業従事者、医薬品の配置販売業、廃棄物処理業、船員、柔道整復師、高年齢者雇用安定法に定める創業支援等措置・社会貢献事業制度に基づいて高年齢者が行う事業、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師、歯科技工士を挙げている[1][注釈 1]。なお、建設業には、大工工事業、左官工事業のほかにも、電気通信工事業、しゅんせつ工事業なども含まれる[3]。
注釈
- ^ 労働者災害補償保険法施行規則[2]第四十六条の十七に基づいている。
- ^ 中小事業主・役員・家族従事者は、労災保険の特別加入制度においては、「中小事業主等」という分類に含まれる。
- ^ 「一人親方等」の語を当該定義で用いている例としては、労働災害統計[4]の「建設業の一人親方等の死亡災害発生状況」がある。また、「労働基準法および労働安全衛生法が適用されない者」という意味で「一人親方等」の語を用いる場合についても、当該定義が適用される。
- ^ 労働力調査における「雇無業主である建設技能者」であることをもって、一人親方である建設技能者の定義としている。
- ^ 一人親方以外の非労働者(雇有業主・家族従事者・役員)を含めた、非労働者である建設技能者の数の合計は約99万人であり、これは建設技能者全体の30.6%を占める[5]。
- ^ 野田市の例では、市は請負金額から実質賃金分を算出することが難しいから、としている[17]。
- ^ 労働基準法施行規則第48条の2により、当該請負事業の範囲は、労働基準法別表第1第3「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業」に限定される。
- ^ これは、労働者災害補償保険法[20]が「労働者」の定義を労働基準法[21]と同一にしていることによる。
- ^ 1953年から1970年には、建設業の一人親方が作った団体を適用事業者と擬制して一人親方が日雇健康保険に加入できる制度が存在した。1970年の制度廃止時、厚生省は救済措置として建設産業従事者を対象とする39の国民健康保険組合の設立を認可している。
- ^ 労働災害統計[4]において、「建設業の一人親方等の死亡災害発生状況」という統計資料が存在するのは、2013年(平成25年)発生分以降のみである。
- ^ なお、2020年10月1日施行の改正建設業法において、一定の条件を満たす場合について下請事業者の主任技術者配置義務を免除する専門工事一括管理施工制度が新設されたため、以降は建設業許可を受けた事業者の場合にも「技術面での担保は上位の発注者である建設業者の技術者が行う」という運用が法律上是認されるケースが存在する。
- ^ 特別教育の法的根拠となる労働安全衛生法第59条第3項の規定が、「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、…当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。」というものであるため。
- ^ 法的根拠は労働安全衛生法第61条第1項。同項には「事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、…当該業務に係る免許を受けた者又は…当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。」と規定されている。
- ^ 労働安全衛生法第61項第2項に「前項(労働安全衛生法第61条第1項)の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行ってはならない。」と規定されている。
出典
- ^ “労災保険 特別加入制度のしおり 一人親方その他の自営業者用” (PDF). 厚生労働省. 2023年3月20日閲覧。
- ^ “労働者災害補償保険法施行規則”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2023年3月20日閲覧。
- ^ “このはな建設部会”. 2012年5月19日閲覧。
- ^ a b “労働災害統計”. 職場のあんぜんサイト. 厚生労働省. 2023年2月18日閲覧。
- ^ a b “一人親方問題の背景”. 第1回 建設業の一人親方問題に関する検討会. 国土交通省. 2020年11月26日閲覧。
- ^ a b 全国建設労働組合総連合 1995, p. 31.
- ^ 山下 2007, pp. 73–74.
- ^ a b 全国建設労働組合総連合ほか 2010, p. 17.
- ^ 全国建設労働組合総連合ほか 2010, p. 21.
- ^ 全国建設労働組合総連合ほか 2010, p. 12.
- ^ a b c 川崎ほか 2006, p. 12.
- ^ a b “一人親方対策について”. 国土交通省. 2020年8月1日閲覧。
- ^ “ある社会保険労務士のウェブサイト”. 2011年12月20日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 「公契約における労働条項に関する契約」1949年
- ^ 松井、五十嵐 2011, p. 1.
- ^ 松井、五十嵐 2011, p. 8.
- ^ “野田市公契約条例の一部を改正する条例(案)に対する意見募集の結果について” (PDF). 野田市 (2010年8月27日). 2011年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月21日閲覧。
- ^ 昭和21年6月1日労発325号、昭和25年5月8日労発153号
- ^ “Q1-1.一人親方ですが加入できるのでしょうか。”. 建設行退職金共済事業本部. 2018年5月2日閲覧。
- ^ “労働者災害補償保険法”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2011年12月21日閲覧。
- ^ “労働基準法”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2011年12月21日閲覧。
- ^ a b 最高裁判所第一小法廷判決 平成19年6月28日 集民第224号701頁、平成17(行ヒ)145、『労働者災害補償保険給付不支給処分取消請求事件』。
- ^ 山下 2007, pp. 76–77.
- ^ a b “建設業における一人親方等の安全及び健康の確保について”. 厚生労働省. 2019年12月7日閲覧。
- ^ 最高裁判所第一小法廷判決 令和3年5月17日 民集第75巻5号1359頁、平成30(受)1447、『各損害賠償請求事件』。
- ^ “「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」について労働政策審議会から妥当との答申がありました~一人親方等も労働安全衛生法に基づく保護措置の対象になります~”. 厚生労働省 (2022年1月31日). 2022年2月14日閲覧。
- ^ 大阪高等裁判所の裁判例。事件番号は「平20(ネ)39」。
- ^ “労働判例No.989(48ページ「損害賠償:一人親方大工の転落事故」)”. 産労総合研究所. 2020年2月16日閲覧。
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