一人親方の災害補償
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 08:26 UTC 版)
一人親方が労働者とみなされないことについての不都合がはっきり表れるのことがあるケースは、 特に建設業において、一人親方が仕事中に事故にあい、その補償を考える場合である。 事業者が労働者を一人でも使用していれば、事業者は労災保険に加入しなければならない。労働者がパートやアルバイトでも同様である。元請以下数次の請負で事業が成り立っていることが通例である請負事業でも同様であるが、少ししくみが違う。その事業に携わる労働者は、災害補償については元請に使用されているとみなされ(労働保険徴収法第8条、労働基準法第87条)、元請が一括して労災保険に加入する義務がある(下請が一定規模以上でない限り、一括は自動的に行われる)。いずれの場合にしても業務中ないし通勤中に労働者が事故を起こした場合には、必ず労災保険で補償する仕組みになっている。 しかし、一人親方は労働者とはみなされず、労災保険の適用範囲に入らない。2007年には最高裁判所でもその判断がなされた。この判決では、元請もその作業者が労働者として業務に従事しているということ(労働者性)を認め、労災を申請したのだが、労働基準監督署が労働者に該当しないという判断をし、そのことに対し裁判がなされたのである。最終的には、報酬の支払い形態、業務指示の形態、契約していた会社への専属の度合い、適用されている他の社会保障制度、作業工具の所有者、などの点から、最高裁判所は労務に対して賃金が支払われているのではなく、仕事の完成に対して報酬が支払われていると判断し、労働基準法や労働者災害補償保険法でいうところの労働者であるとは認めなかった。 ただし、一人親方が団体を作ることで、労災保険に特別加入できる制度がある。コンプライアンスが正常に機能している企業が管理している工事では、特別加入をしていない一人親方は現場にはいることを許されないのが通例である。 一人親方は自身が事業主なので、各自が所属団体を通じて保険料を支払うことになる。林業における一人親方の場合、農業と兼業していることが多く、その場合、通年一人親方として就労しているわけではない。しかし、労災保険は通年で加入しなければならず、保険料が割高に感じられている。 雇用されている労働者であれば、厚生年金や健康保険に保険料労使折半で加入できるが、事業主たる一人親方は厚生年金や健康保険に加入できず、保険料が比較的割高で保障が比較的薄いとされる国民年金や国民健康保険に保険料全額自己負担で加入しなければならない。「2020年(令和2年)10月1日以降、建設企業の社会保険加入が建設業許可・更新の要件とされる」等、政府による社会保険加入対策が強化されていく中で、法定福利費等の労働関係諸経費の削減を意図した偽装請負としての一人親方化が問題となっている。
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