一人親方の労働者性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 08:26 UTC 版)
一人親方は"一匹狼の請負大工"というように肯定的にとらえることができる。しかし、労務管理の点から問題になる理由は、一人親方は労働基準法上の労働者とはみなされないことにある。 労働基準法では、労働者とは「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」(労働基準法第9条)。一人親方は誰かに使用されているわけでもないし、賃金(労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの。労働基準法第11条)を支払われているわけでもないから、労働者にはあたらない。事業主が顧客から受け取る報酬は、労働の対償ではなく、仕事の完成という結果に対して受け取っているので、同法でいう賃金にはあたらないのである。しかしながら、一人親方が従事している業務の内容は、現実には労働基準法がいうところの労働者と全く変わらないことも多い。 このことは、例えば報酬の支払いというテーマに現れる。日本は批准していないものの、ILO第94号条約の流れをうけて、公契約(国や地方自治体が発注する工事や業務委託の契約)に、それに携わる労働者の賃金などの労働条件の最低基準を契約に盛り込む動きが進んでいる。2009年には千葉県野田市が全国で初めて公契約条例を制定したのだが、その条例がいうところの労働者とは、労働基準法第9条の定めるところの労働者であって、一人親方は含まれていなかった。その後の改訂で、一定の条件を満たす一人親方にも適用されるようにはなったが、事業主としての性格を併せ持つ一人親方は、ほかの労働者と同一視できない場合があるのである。 なお、労働組合法においては、一人親方も労働者として認められるので、一人親方が労働組合を結成して元請け等に団体交渉を求めたり労働協約を締結することは可能である。 また、中小企業退職金共済制度の一つである、建設業退職金共済制度(建退共)についても、次項の労災保険と同じく、既に建退共に加入している任意組合に加入するか、新たに任意組合を結成して組合が建退共に加入する形で、一人親方も加入できる。
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