ぎそう‐うけおい〔ギサウうけおひ〕【偽装請負】
読み方:ぎそううけおい
実際には派遣労働であるのに、請負契約を装うことで企業が雇用責任を免れようとすること。請負事業は本来、請負業務を発注する会社(委託会社)と業務を引き受ける請負会社が請負契約を結び、請負会社が自社で雇用した労働者に指示を出して業務を完成させるものである。請負会社が委託会社に労働者を派遣し、委託会社の指示のもとで業務を行わせることは派遣事業とみなされ、労働者派遣契約を結ばずにこうした派遣を行うことは労働者派遣法および職業安定法に違反する。派遣事業の場合、派遣先の委託会社は使用者として労働時間管理や安全衛生の確保などの責任を負うが、偽装請負の場合、実質的な使用者(委託会社)と契約上の使用者(請負会社)が一致しないため、責任の所在が不明確になりがちで、雇用や安全上の問題が生じやすくなるおそれがある。
[補説] 請負労働者への業務上の指示を請負会社が行わない限り、請負事業とは認められない。例えば、委託会社の管理者が請負労働者に対して作業方法などを文書または口頭で指示する場合や、請負労働者が委託会社の社員と同じ職場で作業しているため必然的に委託会社の担当者から直接指示を受ける状況にある場合、請負会社の管理者が請負労働者を兼ねていて他の請負労働者を十分に管理できない場合などは、いずれも偽装請負とみなされる。
偽装請負(ぎそう・うけおい)
メーカーなどの企業が事実上、派遣の雇用形態で労働者を受け入れているにもかかわらず、派遣ではなく請負として契約を結ぶこと。職業安定法と労働者派遣法に違反する。
2004年に解禁された製造業への労働者派遣では、労働者派遣法に基づき、使用者責任や労働安全上の義務を負う派遣契約を結ばなくてはならない。一方、請負契約にすることで、使用者責任や労働安全上の義務は請負会社(人材会社)が負うことになり、受け入れ側のメーカーは責任を免れる。
偽装請負によってメーカーなどの企業で働く人たちは、労働基準法の適用による保護が受けられない。派遣契約では、一定期間経過後に直接雇用される道があるが、請負契約では、その見込みがない。
連合が偽装請負について調査したところ、請負労働者がいる企業の6割に偽装請負が広がっている可能性が高いことが判明した。
(2006.12.19掲載)
偽装請負
・契約上は注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じない「業務請負」の形式をとっているにも関わらず、実際には注文主の指揮命令下で労働者に業務を行わせること。
・「業務請負」では労働安全衛生法に基づく事業者責任は請負業者が負い、注文主には業務上一切責任がない。「労働者派遣」や、実態が労働者派遣となる「偽装請負」の場合は、当該事業者責任は派遣先(注文主)が負うことになるため、注文主が事業者責任を負わない「業務請負」が広まった。
・「労働者派遣」か「業務請負」かは、契約形式ではなく実態に即して判断され、労働者と注文主との間に指揮命令関係があれば、労働者派遣と見なされるため、『偽装請負』は「職業安定法第44条」及び「労働基準法第6条(中間搾取の排除)」に抵触する。
・製造業では、2004年2月までは労働者派遣が禁止されていたために、それまではコスト抑制対策の為に「業務請負」の形式をとっている業者は多かった。
・2004年3月の製造業への労働者派遣解禁後も、製造業への労働者派遣は派遣期間が1年と限定されており、派遣期限後は労働者へ直接雇用を申し込む義務があったため、「偽装請負」の実態が減ることはあまりなかった。
・製造業に限らず、IT業界でも個人事業主や請負業者が業務を請け負っているにも関わらず、現場の指揮管理責任者がおらず、注文主から直接の指揮命令により業務を行っていることも多い。
・近年は、大手メーカーによる偽装請負の実態がマスコミに明らかになり、また2007年3月には製造業への派遣期限が3年に延長されたことなどもあり、偽装請負の実態は減ってきている。
偽装請負
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 09:01 UTC 版)
偽装請負(ぎそううけおい)とは、日本において、契約が業務請負、業務委託、委任契約もしくは個人事業主であるのに実態が労働者供給あるいは供給された労働者の使役、または労働者派遣として適正に管理すべきである状況のことである。
- ^ a b 労働調査会 外井浩志著 偽装請負:労働者派遣と請負の知識(ISBN 978-4-89782-965-4, NBN 21288416, NDL AZ-512-H250)
- ^ “第19回 IT業界では当たり前だった「偽装請負」”. 日経クロステック (2009年6月30日). 2022年10月29日閲覧。
- ^ 労働ビッグバン 労働法制の主導権争い
- ^ hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
- ^ a b c d 柴田徹平「建設産業における個人請負化の新たな段階とその特徴」『中央大学経済研究所年報』第49号、中央大学経済研究所、2017年10月10日、253-275頁、ISSN 0285-9718、NAID 120006640651、2021年12月25日閲覧。
- ^ 業務遂行における裁量性がなく、発注側が報酬水準決定の主導権を握る契約形態。多くの場合、報酬は日給月給制である。
- ^ 業務遂行における裁量性があり、発注側が報酬水準決定の主導権を握る契約形態。多くの場合、報酬は出来高見合いである。
- ^ 業務遂行における裁量性があり、受注側が報酬水準決定の主導権を握る契約形態。多くの場合、報酬は出来高見合いである。
- ^ “偽装請負:解雇無効上告審 雇用認めず 派遣元との契約「有効」--最高裁初判断”. 毎日新聞. (2009年12月19日)
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- ^ 「建設現場におけるオペレーターの行為は、建設工事の完成を目的とした行為であり、したがってオペレーター付きリース契約は建設業法上の建設工事の請負契約に該当する」という立場による。なお、建設業法上の建設工事の請負契約と労働法制上の請負関係は異なる概念である。
- ^ 一例として、島根県土木部土木総務課 建設産業対策室 (2022年4月). “建設業法Q&A” (PDF). 2022年10月4日閲覧。
- ^ 労働安全衛生法第3条に定める責務を指す。
- ^ 例えば、リース会社の労働者であるオペレーターが建設現場で労働災害に遭った場合、借り主である建設事業の労災保険(現場労災)ではなく、オペレーターの雇い主であるリース会社の労災保険によって補償が行われる。
- ^ 厚生労働省の通達においても、「移動式クレーン等をリースする業者であって自らの労働者がリース先の建設現場において移動式クレーン等を操作するものについては、法第33条第1項の措置とともに、事業者としてクレーン等安全規則等に定められた措置を講ずること」とされており、事業者責任を負うのはリース会社である旨が確認されている。厚生労働省. “建設業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置”. 2022年10月4日閲覧。
- ^ 菊一功『偽装請負 労働安全衛生法と建設業法の接点(第3刷)』労働新聞社、2009年、122頁。
- ^ “大日本印刷グループ3社/二重の偽装請負を告訴/元労働者 大企業の責任問う/さいたま地検に”. しんぶん赤旗 (2010年12月9日). 2022年10月29日閲覧。
- ^ 加藤俊治、P6-9 Q&A 実例 告訴・告発の実際、立花書房
- ^ 武富士残業代不払事件 日本労働弁護団「労働者の権利」vol.249
- ^ 港湾雇用安定等計画 厚生労働省 平成21〜25年度
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