ウナギ 特徴

ウナギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/01 06:16 UTC 版)

特徴

泳ぎはさほど上手くなく、遊泳速度は遅い。他の魚と異なり、ヘビのように体を横にくねらせて波打たせることで推進力を得る。このような遊泳方法は蛇行型と呼ばれ、ウツボハモアナゴなどウナギと似た体型の魚に見られる。

一般的に淡水魚として知られているが、海で産卵・孵化を行い、淡水にさかのぼってくる「降河回遊(こうかかいゆう)」という生活形態をとる。嗅覚は非常に優れておりイヌに匹敵する[5]

ウナギの生活史
アメリカウナギ Anguilla rostrataの若魚

名称

属名 Anguillaラテン語でウナギの意。

日本では奈良時代の『万葉集』に「武奈伎(むなぎ)」として見えるのが初出で、これがウナギの古称である。京都大学がデジタル公開している万葉集(尼崎本)では、万葉仮名の隣にかな書きがされており、「武奈伎」の箇所に「むなぎ」のかな書きが充てられている。

院政期頃になって「ウナギ」という語形が登場し、その後定着した。そもそものムナギの語源には

  • 家屋の「棟木(むなぎ)」のように丸くて細長いから
  • 胸が黄色い「胸黄(むなぎ)」から
  • 料理の際に胸を開く「むなびらき」から

この他に、「ナギ」の部分に着目して

  • 「ナギ」は「ナガ(長)」に通じ「ム(身)ナギ(長)」の意である
  • 「ナギ」は蛇類の総称であり、蛇・虹の意の沖縄方言ナギ・ノーガと同源の語である → 参考: 天叢雲剣#「蛇の剣」
  • 「nag-」は「水中の細長い生き物(長魚<ながうお>)」を意味する。この語根はアナゴイカナゴ(水中で巨大な(往々にして細長い)魚群を作る)にも含まれている

などとする説もある。

近畿地方の方言では「まむし」と呼ぶ。

薬缶」と題する江戸小咄では、「鵜が飲み込むのに難儀したから鵜難儀、うなんぎ、うなぎ」といった地口が語られている。また落語のマクラには、ウナギを食べる習慣がなかった頃、小料理屋のおかみがウナギ料理を出したところ案外美味だったので「お内儀もうひとつくれ、おないぎ、おなぎ、うなぎ」というものがある。

漁業におけるウナギ

漁法

日本では重要な食用魚の一つで、年間11万トンもの鰻が消費されている。成体となったウナギや加工ウナギの輸入に加え、20世紀後半頃には養殖技術が確立され、養殖に必要となる稚魚の輸入も行われるようになった。しかしながら野生のウナギ(天然もの)の人気は根強く、釣り延縄などで漁獲されている。 さらにウナギに的を絞った伝統漁法も各地にある。

うなぎ掻き
棒の先に鉤を付けたものを巧みに操り、ウナギを引っ掛ける
うなぎ塚
ウナギの生息域にこぶし大以上の石を積み上げておき、石の隙間に潜んだウナギを捕る。ほうっておくと泥が詰まりうなぎが入らなくなるため、定期的に組み直す必要がある。遊漁券も売られている。
うなぎ筒
筒などをウナギの生息域に仕掛けておき、ウナギが筒の中で休んでいる時に筒を引き揚げて捕る。筒の片方のみ解放されているもの、両方が解放されているもの、返しがついていて一度入ると出られないものなどがある。うなぎは新しい匂いのするものには入らないため、新しく作った筒は数週間水没させるか土中に埋める必要がある。

遊漁としての釣りにおいてはミミズ等を餌にした釣り方が一般的。ウナギは嗅覚に優れるため、一般的な集魚剤等、不自然な匂いのするものは食べない。よく釣れる時間帯は一般に日没から2時間前後だが、場所によっては日没から日の出まで釣れる。餌釣りでの方法としては、ブッコミ釣り(などのブッコミ仕掛けの変形、一本針が基本)、置き釣り(ウナギが通りそうな場所に針と糸が付いた竹杭を刺してしばらく置く)、穴釣り(昼間ウナギがいそうな穴に小魚等を付けるための先端にまっすぐな針を付けた竹の棒と、針と糸を持ち、直接入れて釣る)等があり、特に置き釣りと穴釣りはウナギ以外には見られない釣り方である。ただ、ウナギ自体は簡単に釣れるが、釣れる場所を見つけるのは簡単ではないのでウナギを狙う釣り人は釣れる場所をあまり公開したがらない。特に穴釣りは一度ウナギを釣った後でも、良い穴にはすぐにまた新しいうなぎが入るため、穴を覚える釣りである。 また、河川ではなく、汽水域や外海に生息するウナギは青うなぎと呼ばれ、川魚特有の臭みもなく非常に珍重される。特に岡山県児島湾の青うなぎは有名である。

陸揚げ漁港

2002年度

  1. 宇佐漁港(高知県
  2. 須佐漁港(山口県
  3. 川越漁港(三重県
  4. 広浦漁港(茨城県
  5. 長井漁港神奈川県

養殖

ウナギの養殖はまず、天然のシラスウナギを捕ることから始まる。黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたウナギの子供、シラスウナギを大量に漁獲してこれを育てるのである。養殖方法は、日本ではビニールハウスを利用した養殖が主流である。 台湾と中国南部の広東省では池を掘っただけの露地養殖。ハウス養殖は、ボイラーを焚いて水温を約30℃に保っており、成長を早めることができる。但し、養殖の過程で餌を由来としたサルモネラ菌の汚染が発生している[6]。現在商業化されている全ての「養殖ウナギ」は天然稚魚を育てたものであり、天然資源が枯渇すると養殖不可能となる。天然稚魚を必要としない受精卵からの養殖については、#完全養殖の項を参照のこと。

日本のウナギ養殖(養鰻)は、1879年(明治12年)に東京深川で、殖産家である服部倉治郎によって初めて試みられた。その後、1891年(明治24年)に現在の静岡県湖西市で、原田仙右衛門が7ヘクタールの池を造り、日本で初めて人工池での養鰻を試みたほか、服部倉治郎も1897年(明治30年)に現在の浜松市西区にて養鰻を始めている。これが後に日本の養鰻の中心地となる浜名湖の養殖ウナギのルーツとなる[7]。温暖な気候や地下水などウナギの生育に適した環境に加え、浜名湖や天竜川河口でシラスウナギが多く獲れたことが、この地で養鰻業が盛んになった理由とされている。その後、浜名湖周辺を中心とした静岡県遠州地方のほか、愛知県三河地方岐阜県三重県中勢地方鹿児島県宮崎県などが主な生産地となり、大東亜戦争によって一時衰退するも、戦後は概ね復興する。2000年以降2013年までの間、都道府県別の養殖ウナギ収穫量は順位を替えながらも、鹿児島県、愛知県、宮崎県の3県が常にトップ3に位置しており、その下も、静岡県、高知県徳島県などが比較的安定した収穫量を維持している。しかし日本全体で見れば、2011年まではほぼ毎年約2万トン前後養殖されていたものが、2012年以降減少に転じ、2013年では約1万4000トンにまで減少している[8]

輸入品は台湾が20年以上の歴史を持っているが、現在[いつ?]ヨーロッパウナギのシラスウナギを中国に輸入し養殖したウナギが主流である[要出典][要検証]。 種類は、日本ではニホンウナギ Anguilla japonica のみで、 台湾ではAnguilla japonica、中国ではニホンウナギ Anguilla japonica とヨーロッパウナギ Anguilla anguilla が8 : 2くらいである[要出典]門司税関博多税関支署によると土用の丑の日がある7月が、年間を通して輸入量はピークになる[要出典]2005年は6月の輸入量に比べて、7月は2倍近くの139トンに増加していた。2006年は検査の強化や中国側が輸出を控えたため、台湾産が増えている[要出典]

2013年のデータでは、養殖生産量が全体の生産量の95%を占めているとされている[9]。。 また、養殖ウナギと天然ウナギの見分け方として一般的に胴回りが太く腹の色が黄色がかっているのが天然ウナギだとされるが、実際の天然ウナギは生息環境や餌によって色、模様、体型が様々に変化するため、見た目で識別することは容易ではない。

出所の不透明さが指摘される香港産のニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」を日本が2018年12月と19年1月に計約6トン輸入し、同じ期間に日本の養殖池に入れられた稚魚の約8割を占めていることが明らかになった。香港にはシラスウナギ漁の実態がほとんどなく、輸出を禁じる台湾などから不法に持ち出された可能性が高いと指摘されている[10]

完全養殖

ウナギの人工孵化1973年北海道大学において初めて成功し、2002年には三重県水産総合研究センター養殖研究所(現「増養殖研究所」)が仔魚(幼生)をシラスウナギに変態させることに世界で初めて成功した[11]。しかし人工孵化と孵化直後養殖技術はいまだ莫大な費用が掛かり、成功率も低いため研究中で、養殖種苗となるシラスウナギを海岸で捕獲し、成魚になるまで養殖する方法しか商業的には実現していない。自然界における個体数の減少、稚魚の減少にも直接繋がっており、養殖産業自身も打撃を受けつつある。

そうした中で2010年、水産総合研究センターが人工孵化したウナギを親ウナギに成長させ、さらに次の世代の稚魚を誕生させるという完全養殖に世界で初めて成功したと発表[12]。25万個余りの卵が生まれ、このうち75%が孵化したと報じており、先に述べた稚魚の漁獲高減少もあって、期待を集めている。だが、孵化直後の稚魚の餌の原料にサメの卵が必要で、毎日水を入れ替えなければならず、人工環境ではほとんどオスしか生まれないため産卵のためにホルモンによるメス化が必要など、多くの課題が残されている[13]

2012年には、マリンスノーが餌となることが突き止められた[14]。また、鶏卵やヤマメの精巣も餌になることが判明し、幼生は約9割が育つまでになった。しかし、2013年の現状ではシラスウナギ1匹にかかるコストは飼料代、設備投資、人件費、光熱費など1000円以下では無理だといわれている[15]。水産庁は、完全養殖の商業化の目標年を2020年としている[16]

2019年には、人工で育てたシラスウナギを民間の養殖業者に委託し、成魚にするサイクルにはじめて成功した[17]。これにより安定したウナギの生産につながると期待されている。

資源量

資源量の減少

ニホンウナギ 内水面漁業・養殖業魚種別生産量累年統計(種苗採捕量)(1957年-2012年)

ウナギ資源は、1970年代から減少を続けており[18]、消費の99%以上を占める、養殖ウナギに用いられるシラスウナギの日本国内での漁獲量は、ピーク時には200トンを超えていたが、2013年には5.2トンにまで落ち込んだ[19][20][21]

2013年2月には、ニホンウナギ環境省レッドリスト[22]2014年6月には、IUCNレッドリスト絶滅危惧種として選定された[23]

絶滅危惧種

また、ヨーロッパウナギについては、1990年代に稚魚を中華人民共和国で養殖し、日本へ輸出する販路が定着し、輸出が本格化すると、資源は激減した[24]。2008年にIUCNレッドリストで絶滅危惧種に指定されており[25][26][23]、後述するように2007年6月のワシントン条約第14回締約国会議において、規制対象となることが決定。2009年3月から、その効力が発生することとなった[27]

ウナギの生態には、未解明の部分があるため定かではないものの、減少の理由は

などが挙げられ[18][19][20]、とりわけ乱獲については、かつて世界のウナギの7割を消費していた、日本の流通業界や消費者の責任が指摘されている[19][28][29]

なお2007年以降は、中華人民共和国が最大の消費国となっており、2013年には、世界における日本のウナギ消費量は1割強にまで落ち込み、中華人民共和国の消費量が約7割となっている[9]

2010年以降、シラスウナギの不漁が深刻化し、シラスウナギの価格が1キログラム当たり300万円まで上昇した。こうした状況を受けて、水産庁2012年6月、ウナギ緊急対策の実施を発表し[30]、同年9月より日本・中国・台湾の三者間でニホンウナギの国際資源管理をめぐって非公式協議を進めている[31]

一方2012年7月に、ニホンウナギが絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の取引規制対象として検討された際には、農林水産大臣郡司彰は「規制されるほど枯渇していない」と主張した[32]

資源管理の動きとは対照的に、日本のシラスウナギは、1960年代から密漁が続いており、全体の5割以上が「違法漁獲もしくは闇市場を通じた取引である」と指摘されている[33]

また2012年7月には、浜松市の業者によって、アフリカ産ウナギ(Anguilla mossambica)が初輸入されることが報じられた[34]太平洋海岸周辺やインド洋海岸周辺に生息するビカーラ種(Anguilla bicolor)もニホンウナギの代替として、日本経済新聞に紹介されたが[35]、その翌年の2014年に、IUCNレッドリストにおいて準絶滅危惧種に指定された[23]

ビカーラ種の水産資源としての元々の量が少なく、生態の把握もなされておらず、現地の資源管理体制も整っていない状態で、日本が商業利用を検討したことが主な理由である。アメリカウナギも、ニホンウナギの代替として、養鰻業者が商業利用を開始したことで、絶滅危惧種に指定された[36]

三重大学勝川俊雄は、こうした流れに対して「食べるだけ食べて、資源が枯渇したら、別の地域から輸入すればよいというのは無責任だ」と批判している[24][37][38]グリーンピースは「ウナギ加工品の調達は、サプライチェーンが不透明極まりなく、トレーサビリティに重大な欠陥がある」と警鐘を鳴らしている[39]

2017年3月31日には、生物種や資源としてのニホンウナギの保全に取り組むため、日本と台湾、韓国、中国の研究者ら約100人が参加する「東アジア鰻学会」の設立総会が開かれた[40]

輸出規制

2007年EUヨーロッパウナギの絶滅を危惧してシラスウナギの輸出を規制する方針を発表し、ワシントン条約締約国会議でEU案が可決、取引規制が実施され、ヨーロッパからの輸出規制が始まった。また、中華民国も日本への過大な輸出に対して、現地の養殖業者が輸出規制を要望している。日本側も日本産シラスウナギで成り立っている業者と輸入物に頼る業者の利害対立があり、一致した意見表明ができない状況になっている。そのため、全般的にウナギの価格高騰が持続している。

また輸出規制が始まったにもかかわらず、ヨーロッパウナギの稚魚の調達は続いており、ウナギ蒲焼のDNA鑑定から、相変わらず違法輸出入が指摘されている[33]。各所から公表されている生産量と輸出量の数値を照らし合わせると、データに相違があることが確認されており、全容の把握が困難となっている[33]

食品ロス問題

グリーンピース・ジャパンの調査では、2017年(平成29年)6月4日に、日本の大手小売事業者18社が、廃棄したニホンウナギは約2.7トンと推計され、ニホンウナギが売れ残りなどを理由に大量廃棄され、無駄な消費となっていると発表した[39]

代用品

ウナギの保護や価格上昇への対応として、日本ではウナギの蒲焼に食感や味、香りが似た代用品の開発・利用が試みられている。一正蒲鉾はウナギ以外の魚すり身練り物製品を発売[41]パンガシウス科ナマズ肉も蒲焼として販売されている[42]

2019年イオンは、グループ各社で、これまでのばら肉の蒲焼きに加え、サケの腹身の蒲焼きとハラスの蒲焼きの販売を開始した。[43]


注釈

  1. ^ 柳田國男の記録による。TBS系アニメ「まんが日本昔ばなし」1991年8月10日放送の「鰻沢」はこの伝承を土台に翻案したもの。

出典

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  63. ^ 厚生労働省 輸入食品等の食品衛生法違反事例(平成19年7月分)”. 厚生労働省. 2013年7月5日閲覧。
  64. ^ 北海道新聞2007年8月1日
  65. ^ 垣田達哉「食にメス ブランドうなぎの真実 漁協ぐるみの“確信犯”」産経新聞2008年6月20日付朝刊19面。
  66. ^ お詫び”. 一色うなぎ漁業協同組合 (2008年6月17日). 2013年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。200806-20閲覧。
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  68. ^ うなぎ“食”の歴史とその効用”. 三河淡水グループ. 2012年2月8日閲覧。
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  70. ^ a b 森, 銑三『明治東京逸聞史』2、平凡社、1969年。, p.270: "鰻丼を始めたのは日本橘葺屋町の大野屋で、天保の飢饉当時に、大丼の鰻飯を天保銭一枚で売ったのが当って"
  71. ^ 佐野賢治編『虚空蔵信仰』雄山閣出版(民衆宗教史叢書)、1991年、ISBN 4639010222
  72. ^ 岡本綺堂. “岡本綺堂 鰻に呪われた男”. 青空文庫. 2017年4月25日閲覧。
  73. ^ 「されど山の芋鰻にならず、相かわらずの貧乏」(東海道中膝栗毛・発端)
  74. ^ 21世紀研究会編著 『食の世界地図』 文藝春秋〈文春新書〉、2004年5月、155頁。
  75. ^ ダンテ神曲』煉獄編 XXIV, 21-24





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