2019新型コロナウイルスへの適用
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「レムデシビル」の記事における「2019新型コロナウイルスへの適用」の解説
詳細は「COVID-19に対する薬剤転用研究」を参照 2020年5月1日、アメリカ合衆国でコンパッショネート使用を認めた新薬であり、日本では「特例承認制度」を用いて、2020年5月7日に正式に新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) への治療薬として、世界で初めて承認された。点滴静脈注射により最長10日間投与する。 2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) によって引き起こされた新型コロナウイルス感染症の流行に対応して、ギリアド社は、中国の医療機関と協力してその効果を研究するために「少数の患者」にレムデシビルを提供した。ギリアドは、新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの臨床検査も開始した。ギリアドは、レムデシビルがSARSおよびMERSに動物実験で「有効であることが示された (shown to be active)」と述べた。 2020年1月下旬、新型コロナウイルスに感染していることが確認された最初の米国の患者に、未承認薬のコンパッショネート使用として、投与された。肺炎に進行した後での投与だったが、患者の状態は翌日劇的に改善し、最終的に退院した。ただし、この急速な回復が薬物の効果によるものであるかどうかを明確に証明することはできない。 1月下旬、中国の医学研究者は、30の薬剤候補の選択を考慮した探索的研究で、そのうちの3つ、レムデシビル、クロロキン、ロピナビル/リトナビルを、細胞レベルで新型コロナウイルスに対し「かなり良い抑制効果がある (fairly good inhibitory effects)」と報道機関に対し発表した。 2月4日にネイチャーの姉妹誌であるCell Researchに、中国科学院武漢ウイルス研究所などの研究グループが発表したレター (速報論文) によれば、in vitro (試験管内) の環境下で、アフリカミドリザル起源の標準細胞 Vero E6細胞を用いて、レムデシビルを含む7種類の物質の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を、50%効果濃度 (EC50値) を基準として評価する試験を行ったところ、レムデシビルのEC50値は 0.77 μM (μmol/L) であり、試された7つの物質のうちでは、最も高い効果を示していた。 2月6日、中国でレムデシビルの臨床試験が開始された。 2月15日付けの科技日报(発行:中華人民共和国科学技術部)は、上記の in vitro 試験の結果に基づいて、レムデシビル以外にも、ファビピラビル、クロロキンの臨床試験を開始したと発表した。 3月12日に、米国の複数の研究者で構成する横断的な研究チームである”The COVID-19 Investigation Team”が、medRxiVプレプリントサーバ上に投稿した未査読論文によれば、1月20日から2月5日にかけて、アメリカ疾病予防管理センター (CDC) により新型コロナウイルスへの感染が確定した、米国における最初の12人の患者について、彼らは情報収集を行ったところ、12人の患者のうちの7人が入院治療を受け、さらにこの内の3人に対してレムデシビルが投与されていた。研究チームは、レムデシビルの投与はコントロールされたランダム対照試験のもとで行われたものではないので、その治療効果については評価できないとしている。レムデシビルの副作用については、これを投与された3人の患者を含む、治療を受けた7人の患者全てで、肝臓の損傷を示すアミノ基転移酵素(アミノトランスファーゼ、ASTおよびALT)の血中濃度の上昇が見られたが、これとレムデシビルの因果関係については結論を述べていない(グラフから見て、因果関係がありそうなのは3人中1人のみ)。3月14日付けの、米国の投資情報会社 The Motley Fool の調査員 Cory Renauer のレポートによれば、この未査読論文で言及されている、肝臓の酵素の血中濃度の上昇が、もしレムデシビルの副作用であるのなら、レムデシビルの息の根を止めかねないほど重大な問題であるとしている。ただし、Renauer によれば、この臨床試験においては、レムデシビル投与群とそれ以外の患者群は完全にランダムに配分された訳ではないので、レムデシビルの副作用と判断するのは時期尚早であるとも述べている。 4月10日、医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン (NEJM) に発表された、ギリアド社が資金提供しレムデシビルの臨床研究を実施した、各国の研究者が連名で著した論文”Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19”によれば、レムデシビルの重症のコロナ肺炎患者へのコンパッショネート・ユースでの臨床試験のデータを集計したところ、53人の患者の内、36人 (64%) の患者で呼吸機能に改善が見られたとしている。53人の重症患者のうち、体外式膜型人工肺 (ECMO) または陰圧式人工呼吸器使用者が34人、それ以外が19人であった。用法・用例の標準としては、点滴静脈注射により、初日200mg、それ以降1日100mg、10日間投与であった。改善についての所見は呼吸機能のみに着目したものであり、胸部X線影像の改善、PCR陰転化などについては触れられていない。この臨床試験はあくまでコンパッショネート・ユースであり、二重盲検法でランダムに投与群と対照群 (プラシーボを投与する) を設定する厳格な対照試験ではないが、現在数カ国でこのような対照試験を実施中であり、近々さらに厳格な証拠が与えられるであろうとの言及がある。3月12日発表の論文(前述)でも言及されていた、肝臓の損傷を示す肝酵素 (ALT、AST) の血中濃度の上昇は、今回の調査対象でも、53人中12人 (23%) の患者で認められた。これを含め、何らかの副作用が認められた患者は、53人中32人 (60%) であった。 4月23日の、米国の医学情報報道サイト STAT の報道によれば、ギリアド社が中国で実施していた、レムデシビルの無作為抽出による初期臨床試験の報告書の草稿が、誤って世界保健機関 (WHO) のウェブサイト上に掲載され、すぐに削除されたが、STATのスタッフは掲載に気づいて画像を保存していた。この草稿によれば、コロナ肺炎患者237人のうち、158人をレムデシビル投与群とし、79人を対照群 (プラシーボを投与) として試験を実施したところ、死亡率はレムデシビル投与群が13.9%、対照群が12.8%であり、有意な差は見られなかったと報告している。同日、フィナンシャル・タイムズは、削除された草案の内容からレムデシビルの初期臨床試験が失敗に終わったと報じると、製造メーカーであるギリアドの株価は約6%下落。ギリアド側は、被験者が少なく打ち切られた治験に基づく草案であり、結果は確定的ではないと反論した。 4月30日にギリアド社はプレスリリースにて、レムデシビルの有用性を報告した。ACTT-1試験において、レムデシビルはプラセボと比較して回復までの期間を短縮させ(11日 vs 15日)、また14日目時点での死亡率を改善させる傾向にあった(7.1% vs 11.9%)。またSIMPLE試験においてレムデシビルの5日間投与と10日間投与が比較され、有効性に有意差は認めなかった。 5月12日に、日本での医療現場への供給が開始したことが加藤勝信厚生労働大臣により発表された。 6月29日、ギリアド社は、公的保険を持つ先進国政府向けの価格を患者1人あたり2340ドル(約25万円)に設定すると発表した。1本当たりの薬価は390ドルで、標準的な治療では5日間で6本投与される。米国ではこの価格設定は比較的割安と評価された。Vekluryの特許出願では、100 mgのレムデシビルに加えて、Ligand Pharmaceuticals(米国、サンディエゴ)またはCycloLab Cyclodextrin R&D Laboratory Ltd.(ブダペスト、ハンガリー)が製造したスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(商品名:CaptisolまたはDexolve)が可溶化剤として、3.0gあるいは6.0g使用されている。 10月17日、WHOは大規模な治験の結果、レムデシビルが新型コロナウイルスに効果がなかったとの暫定的な研究結果を発表し、11月20日、副作用や医療現場への負担の懸念から新型コロナウイルス患者に対して使用しないことを勧告した。厚生労働省は、現時点で特例承認の取り消しを考えておらず、厚労省の「診療の手引き」によると、原則として重症患者に投与するとされていて、手引きの改訂時に、WHOが今回示したデータの追加などを検討する。 12月10日、元ニューヨーク市長のジュリアーニ弁護士は当該ウイルスに罹患したが、レムデシビルで緩解したと発表し、職務に復帰した。
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2019新型コロナウイルスへの適用
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「クロロキン」の記事における「2019新型コロナウイルスへの適用」の解説
詳細は「COVID-19に対する薬剤転用研究」を参照 当初、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)への期待が寄せられていたが、現在の米国ガイドラインでは、クロロキンまたはヒドロキシクロロキンは、入院患者には使用しないことを推奨し、外来患者でも臨床試験でない限り使用しないことを推奨している(これはアジスロマイシンの併用を問わない)。 2020年2月4日に、Cell Research(英語版)に、中国科学院武漢ウイルス研究所などの研究グループが発表したレター (速報論文) によれば、in vitro (試験管内) の環境下で、アフリカミドリザル起源の標準細胞 Vero E6細胞を用いて、リン酸クロロキンを含む7種類の物質の2019新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) に対する抗ウイルス効果を、50%効果濃度 (EC50値) を基準として評価する試験を行ったところ、リン酸クロロキンのEC50値は 1.13μM (マイクロモル/リットル) であり、試された7つの物質のうちでは、エボラ出血熱治療薬として開発されたレムデシビルのEC50値の 0.77μM に次ぐ高い効果を示していた。 2020年2月15日付けの科技日报(発行:中華人民共和国科学技術部)によれば、上記の in vitro 試験の結果に基づいて、ファビピラビル、レムデシビル、リン酸クロロキンについて、既に中華人民共和国で臨床試験が開始されている。 2020年2月21日付けの新華社の報道によれば、21日の中国科学技術部、徐南平副部長の記者会見で公表されたデータによれば、北京と広東でのリン酸クロロキンの135例の臨床試験のうち、130人の軽症と中等症の患者は重症化することはなく、5人の重症患者のうち4人が退院し、1人が中等症に改善した。 2020年2月21日、中国・湖北省保健衛生委員会は「リン酸クロロキンの使用における有害反応の綿密な観察に関する通知」を発行した。 通知には、中国科学院武漢ウイルス学研究所によると、成人におけるこの薬の致死量は2〜4g であり、急性致死性であることが記載されており、指定されたすべての医療機関に、この薬物の使用中に注意深く観察することを要求している。 2020年3月4日、中国・国立保健医療委員会が発表した「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療計画(第7版)」では、いかなる心臓病を有する患者に対しても、リン酸クロロキンの使用を一律に禁止している。 2020年3月19日、バイエルAGは、本剤レゾシン (Resochin) が新型コロナウイルス感染症の治療に使える可能性があることに備えて、300万錠を米国政府に寄付した。本剤の効果については中国で評価作業中としている。 2020年3月20日、米国のドナルド・トランプ大統領が記者会見で、クロロキンが新型コロナウイルスに有効で食品医薬品局 (FDA) も承認したと発言した。しかしその後、水槽清掃用のクロロキン(リン酸クロロキン)を服用した男性が服用30分後に体調急変し、米国アリゾナ州のバナーヘルス医療センターで救急治療を受けたものの、死亡した事例が発生した。クロロキンの有効性については、FDA長官が治療薬としては正式に承認していないと大統領発言を直後に訂正しており、FDA等が有効性を調査している。3月25日、中国での小規模の研究結果は、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが、他の方法よりも新型コロナウイルス感染症に効果がないことを示した。 2020年3月29日、米食品医薬品局(FDA)は、クロロキンおよびヒドロキシクロロキンを、小規模な症例の報告しかないものの「想定される効能がリスクを上回ると考えられる」として、新型コロナウイルス感染症治療としての緊急使用許可(EUA)を発行したと発表した。 2020年4月15日、ブラジルで行っていた臨床試験で被験者が死亡したため試験を中止していたことが報道された。ブラジル北部マナウスの病院で新型コロナウイルス感染者81名に臨床試験を実施したところ、被験者のうち11名が死亡した。そのため、臨床試験は6日で中止された。3月22日、フランスのニース大学病院付属パストゥール病院でも臨床試験を実施したが副作用と心臓病リスクのために直ちに試験を中止した。 2020年6月15日、米食品医薬品局(FDA)は、クロロキンとヒドロキシクロロキンは、新たな研究結果から「新型コロナ治療に有効な可能性は低い」ことが判明したので、心疾患関連の有害事象や他の深刻な副作用を考慮して、新型コロナウイルス感染症治療での緊急使用許可(EUA)を撤回すると発表した。さらに、両薬がレムデシビルの効果を弱める可能性を示すデータが得られたとし、レムデシビルと併用しないよう警告した。
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