笑いの分析とは? わかりやすく解説

笑いの分析

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 02:48 UTC 版)

笑い」の記事における「笑いの分析」の解説

系統発生的に見ると、人間笑いは、霊長類におけるコミュニケーションの手段から進化したものではないかと言われている。オランダ比較行動学van Hooffは、サルにおける2種類笑い表情である劣位表情遊び表情が、人間における笑い表情発展していったと説明している。サル社会において、劣位サル優位サル出会った時に示す無声の歯をむき出す劣位表情」が、人間における挨拶の際に示す微笑のような社交上の笑い」(smile)に発展し子ザル多く見られる攻撃のない遊び場面で示すリラックスして口を開いている「遊び表情」が、人間における「快の笑い」(laughter)へ進化したのである考えている。 個体発生的に見ると、赤ちゃん初め見せる、授乳後の満足した笑いが「快の笑い」の始まり考えられている。生後ヶ月になると、母親周囲の人間に対して見せ笑顔が彼らの笑いを誘うことを学習するようになり、この笑いによるコミュニケーション成立が「社交上の笑い」の始まりと言われている。 よって系統発生的および個体発生的見て人間笑いは、「快の笑い」と「社交上の笑い」に二分することができる。医学博士の志彰は更に、「緊張緩和笑い」をこれに加えて三分することを提案している。 「快の笑い」は自己の欲求充足される満足感他者対す優越感覚えた時、更には事象間の不釣合い感じた時に発生する。「社交上の笑い」は社会生活における対人関係の中で見られる。「緊張緩和笑い」は、ストレス感じる強い緊張状態から解放された時や、ある程度緊張を伴うが後に無害なものと分かって安心し弛緩する時に生ず笑いなどがある。 古代ギリシア哲学者アリストテレスは、可笑しさを「他人に苦痛や害を与えない失策または不恰好」と定義し笑い本質は「他人軽蔑し見下すことから生ず快感、つまり優越感」であるとする「笑い優位説」を打ち立てたイギリス哲学者ホッブス同様に笑い優越説を提唱し笑いとは、他人劣等性または過去自分劣等性と比較して現在の自分優越性突如認識することから生ず勝利感情以外のなにものでもない考えたドイツの哲学カントは、笑いをある張り詰めた期待にわかに無に転化することよって生ず一つ情動捉えた。この考えは、束縛から解放されることで笑い生ずるという点で「笑い緊張解放説」と言われる日本落語家桂枝雀(2代目)も、落語聞いて笑い生ずるのは、非現実的な物語の世界ハラハラしていた客をサゲによって一瞬現実連れ戻す時、最高潮達した緊張が突然緩和されることによるとする、「笑い緊張緩和説」を唱えたドイツの哲学ショーペンハウエルは「笑い不一致説」を提唱した彼によると、「笑い」はある概念と、これと関連して考えられ事物とが一致しないと突然分かったときに生ずるものであり、両者間の不一致程度大きいほど可笑しさの感情増していくものなのである。 これに対しイギリス哲学者スペンサーは同じ不一致不調和)でもその方向性によって異なるとし、予期していた小さな事柄予期しない大きな事柄になった時(上昇不調和)、その不調和に対して驚異感ずるが、逆に大きな事柄から小さな事柄意識不意に移行する時(下降不調和)、その不調和に対して笑い生まれると主張した別の言い方をすれば、下降不調和感じた時、これまで蓄積され緊張解放され、それが笑いという行為となって現れるということで、この点においてカントの提唱した「笑い緊張解放説」に通ずるものがある。 ハンガリー思想家ケストラーは、笑い不一致説とは逆に不一致なもの或いは関係のない別領域のものが同一平面状で結合する時でも笑いが起こるという、「笑い二元結合説」を提唱したスコットランド心理学者ベインは、自分よりも遥かに上位位置する他者自分と同じレベルあるいはそれ以下転落する時に生まれ笑いは、優越感から来るものではなく権威威厳のある者や事柄卑俗化することによって生ずるものであるとする、「笑い卑俗化の理論」を提唱したフランス哲学者ベルクソンは「笑い」という本のなかで笑い記述法則6つ提示し笑いというものをより体系的に捉えようとした。 オーストリア精神科医フロイトは、精神分析立場から笑い心理的メカニズム説明する理論を「機知−その無意識との関係」という論文の中で展開したフロイト意識下抑圧するための内的な力を心的エネルギー呼び超自我検閲引っかかるような攻撃的なもの(からかい・皮肉)や性的なもの露出猥褻)は理性による抑圧受けているが、機知によってこの抑制不要になれば心的エネルギー節約され、その節約され分のエネルギー笑いとなって消費される滑稽ユーモアにも笑い源泉となる快感生じさせる作用があり、我々の認識活動には多く表象を必要とするが、一つ動作または短い文句済まされるような滑稽な場面で期待していたことが起きず、そのために準備していた多く表象不要となり、その分心的エネルギー節約され余ったエネルギー笑いとして消費される。またユーモアのある動作言葉は、怒り苦痛恐怖といった感情興奮不要なものにしてしまうため、その分心的エネルギー節約されて笑い生むフロイトによる笑い理論簡潔に言うと、「心的エネルギー消費節約されることで快感を得、その節約され余分なエネルギー笑いとなって放出される」または「節約された心的エネルギー運動エネルギーへの変換」となる。 心理学者柴原貞夫は、優越笑いまた、自分相対的に相手よりも優位であると感じた瞬間心的緊張力低下するため、エネルギー転換による笑い生ずると説明している。 精神科医小此木啓吾は、強者能動的な笑い弱者受動的な笑い区別し強者笑いは笑うという点において加害者でありサディスティック性質持っているが、弱者笑い笑われるという点で被害者でありマゾヒスティック性質甘え媚びへつらい特徴がある。サディスティック笑いは、優越感勝利感を味わう時に生ず自己中心的性質があり、ナルシスム的快感を伴う。無意識に存在するいやな自分他人に投射し、他人笑いものにすることによっていやな自分への不快感軽蔑解消し心理的優位性感じ自我感情高まり経験する。この笑い自分自身快感与えてくすぐり続け自己愛活動とも言えるまた、可愛い、愛しいものに対す笑いも、笑う側の優越者、支配者としてのナルシシズム確認作用である。更に、社会的な笑いにも、お互い自分自身くすぐり合って快感を得るというナルシシズム共有存在する指摘している。また、笑い性的なもの極めて親密な関係にあり、くすぐられる可笑しさを感じ笑いとして表出されるが、性的な快感刺激を受けると興奮しその表出としてオルガズム経験する。その関係から、笑い源泉は「くすぐられ快感笑い反射」という生得的与えられ生理心理的な刺激反応機構にあるとしている。 アメリカ心理学者エクマンとフリーセンは、微笑(smile)にも不幸な場面で微笑みなど矛盾するような感情を伴う可能性指摘しこのような笑いを「偽りの微笑」と称し感情を伴う純粋な微笑区別した一般に感情を伴う笑いには頬骨筋と眼輪筋2つ筋肉不随意収縮が必要であるが、この「偽りの微笑においては眼輪筋活動見られないのが特徴である。これは、頬骨筋は不随意的にも意図的に活性化することが可能であるが、眼輪筋にはそれを自らの意思によって活性化する方法がないためである。 笑い構図シェーマ)のずれによって生じるとする説があるが、異論もある。例えコントなどで滑って転ぶ政治家演じられ笑い起きたとすると、「政治家真面目で威厳ある人で、滑って転ぶことなどありえない」という構図受け手持っていて、それがずらされたことによって笑い起きたことになる。しかし、受け手常識が「政治家に威厳があるとは限らない」「滑って転ぶことは意外な出来事ではない」「政治家が転ぶというネタ目新しいものではない」といったものであった場合構図のずれが発生しないため笑い起きない。同じ出来事に対して笑い起きかどうかは、受け手の持つ構図にも依存すると言えるまた、笑い立場によって意味を変える性質がある。ある出来事がある人にとっては面白おかしい出来事であっても、ある人にとっては笑えない出来事であることもある。 さらに、笑いには攻撃的なものと愛他的・親和的なものの二つがあるとされている。しかし、愛他的・親和的であることを意図した笑いであっても受け取る側は攻撃されたと感じることもある。笑い分類する心理学研究は、1990年代から2000年を過ぎることまで活況呈し多数心理尺度作成されたが、笑い客観的に分類できるとする説には10年上前から疑問呈されており、海外主流笑い研究では、安易な分類避け傾向にある。

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