異業種への参入
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鉄道事業者の多くが、鉄道事業だけではなく、直営あるいは子会社などで、各種の関連事業や異業種の事業を行っている。これは公共交通という性格上、鉄道事業のみでは利益を生み出しにくいためであり、特に宅地開発の不動産業と商業施設の展開は、鉄道や駅の開発とセットで行うケースが多い。日本においては、阪急電鉄の創業者小林一三が鉄道事業と不動産・流通・娯楽産業などを組み合わせたビジネスモデルを成功させ、各地の私鉄や民営化後のJR各社の手本になっている。 以下のような事例がある。中には銚子電気鉄道のぬれ煎餅製造のように、本業の赤字を埋めるために異業種に参入した例もあるが、鉄道会社というブランドが企業にとってプラスになっているため、赤字であっても鉄道事業を継続している。 ※主な例 鉄道以外の交通(運輸)事業各種バス事業(路線バス、高速バス、観光バス) タクシー事業 陸運(貨物自動車運送)事業東武運輸、ジェイアール東日本物流、日本国外ではドイツ鉄道グループのDBシェンカーなど。 船舶(水運)事業 - 南海フェリー、JR西日本宮島フェリーなど 航空運送事業航空貨物の取り扱いでは西日本鉄道の国際物流事業本部や近鉄エクスプレス、阪急阪神エクスプレスなど 旅客輸送では東急グループに属していたかつての日本エアシステムなど ヘリコプター輸送では名鉄グループの中日本航空など 富山地方鉄道グループの富山地鉄サービスのように、空港の地上業務を航空会社から受託している場合もある。 旅行代理店 - 日本旅行(JR西日本グループ)、近畿日本ツーリスト(KNT-CTホールディングス)、阪急交通社、東武トップツアーズ、小田急トラベル、京王観光など 不動産事業マンションや住宅、オフィスビルなどの開発(デベロッパー)や不動産の販売 鉄道駅構内(いわゆる駅ナカ)や高架下などの賃貸 ショッピングモール・複合商業施設の運営 - 東京ソラマチ(東武グループ)、渋谷スクランブルスクエア(東急・東京メトロ・JR東日本)、渋谷マークシティ(京王電鉄・東急・東京メトロ)、東京ガーデンテラス紀尾井町(西武グループ)、阪急西宮ガーデンズ(阪急電鉄)など 土木・建設事業 - 東急建設、南海辰村建設、京王建設など 鉄道車両の製造・メンテナンス形態としてはJR東日本の新津車両製作所のように自社直営だったもの、東急車輛製造などのように子会社を設立したもの(2012年にJR東日本へ事業譲渡し、現在はJR東日本100%子会社の総合車両製作所。前記の新津車両製作所も2014年に総合車両製作所に移管し同社の新津事業所となっている)、近畿日本鉄道(近鉄)が終戦後子会社化し、現在は持分法適用関連会社としてJR西日本も出資する近畿車輛(旧・田中車輛)や、JR東海が2008年に子会社化した日本車輌製造のように既存の車輌メーカーを傘下に収めたものがある。 小売業百貨店 - 阪急阪神百貨店(阪急百貨店・阪神百貨店)、東武百貨店、東急百貨店、近鉄百貨店、小田急百貨店、京成百貨店など、大手民鉄16社のうち西武・東京地下鉄(東京メトロ)・相鉄・南海・西鉄以外の各社はグループに百貨店事業を持っているほか、山陽・遠鉄・一畑・伊予鉄のように準大手や中小私鉄でも系列に百貨店事業を持っている事業者がある。セブン&アイHD傘下のそごう・西武が運営する「西武」(旧西武百貨店)も1971年までは西武鉄道と同じグループに属していた。日本の百貨店は呉服店を起源とするものと、鉄道会社が設立した電鉄系百貨店に分かれる。阪急百貨店は上述のように小林一三が日本で初めて鉄道事業と流通事業を融合させたものであり、阪急阪神百貨店を統括するH2Oリテイリングは電鉄系百貨店の中では突出した規模を持つ(百貨店業界大手5社の一角)。分割民営化したJR各社は自前で独自には百貨店は展開してはいないものの、ジェイアール京都伊勢丹(JR西日本・三越伊勢丹HD)やジェイアール名古屋タカシマヤ(JR東海・髙島屋)など他の大手百貨店と提携している。 スーパーマーケット - 東武ストア、東急ストア、阪急オアシス、京王ストアなど。 コンビニエンスストア - JR東日本のNewDaysなど。JR西日本グループのハート・インなどのように、大手コンビニエンスストアのフランチャイジーになっているケースもある。 食堂、レストラン、ファーストフード、喫茶店などの外食産業 - JR東日本フーズ、東急グルメフロント、阪急阪神レストランズなど 食品製造業JR東日本フーズの弁当製造や、銚子電気鉄道のぬれ煎餅製造 レジャー事業遊園地やテーマパーク、動物園、水族館西武園ゆうえんち、東武動物公園、ひらかたパークなど。東京ディズニーリゾートの運営会社オリエンタルランドも京成電鉄の持分法適用会社である。 スーパー銭湯などの経営 温泉やスキー場など観光リゾート地の開発、経営 - 苗場スキー場・富良野スキー場など(西武グループ)、ガーラ湯沢スキー場(JR東日本)、蓼科東急スキー場など(東急)、京王高尾山温泉 有料道路の運営鬼押ハイウェー・万座ハイウェー(西武グループ)、かつて東急グループだった箱根ターンパイクなど ホテル事業 - バブル崩壊後はビジネスホテルチェーンが多い。プリンスホテル(西武グループ)、JR東日本ホテルズ、阪急阪神第一ホテルグループ、都ホテルズ&リゾーツ(近鉄グループ)など。プリンスホテルは国内のホテル業界で首位。 スポーツクラブ(フィットネスクラブ)の経営 - ジェイアール東日本スポーツ(ジェクサー)、東急スポーツシステム(アトリオ) 劇団(宝塚歌劇団やかつてのOSK日本歌劇団)、映画製作・配給(東宝)、劇場・映画館の運営(TOHOシネマズ) プロスポーツチームの経営プロ野球球団過去には京阪以外の関西大手私鉄はプロ野球球団を持っていた。現在は、阪神が阪神タイガースを単独で所有し続けているのを除き、いずれも球団を手放している。 関西以外では、西武が埼玉西武ライオンズを2009年から単独で所有している。他にも東急は東急フライヤーズ、国鉄は国鉄スワローズ、西鉄は西鉄ライオンズというプロ野球球団を所有していた。現在はそれぞれ、北海道日本ハムファイターズ、東京ヤクルトスワローズ、埼玉西武ライオンズに継承されている。また、小田急では2リーグ分裂時にプロ野球球団を所有する計画が具体的になされ、阪神と同じセントラル・リーグに加盟することを表明し、チーム名も検討するなど、球団所有の一歩手前まで達していた が、寸前で中止した。 一時期(1951 - 1953年)、中日ドラゴンズが中日新聞社と名古屋鉄道の共同経営となり、「名古屋ドラゴンズ」と名乗っていた。また、広島東洋カープも、経営が東洋工業(現・マツダ)を中心とした体制に移行する以前の広島財界共同出資時代に、広島電鉄も資本参加し、役員も派遣していた。 さらに以前は京成が読売ジャイアンツの筆頭株主、武蔵野鉄道と合併前の旧・西武鉄道は東京セネタースの後援を行っていた。 プロサッカーチームジェフユナイテッド市原・千葉(JR東日本と古河電気工業の合弁) 広告代理業 - 東急エージェンシー、小田急エージェンシーなど 民放テレビ局 - 阪急阪神HD傘下の関西テレビ放送(FNN/FNS準キー局)など。出資で関係のある局は少なくない。 ケーブルテレビ (CATV) - 東急グループのイッツ・コミュニケーションズ、近鉄ケーブルネットワークなど 貸金業(キャッシング)、クレジットカード - ビューカード(JR東日本)、東急カードなど 電力事業日本においては戦前の電力統制以前には発電・配電の大口利用先として電力会社が電鉄事業に進出する(東京電燈・京都電燈など)一方で、電鉄会社が地域の配電業者として電力事業を兼業していた事業者もあり、事業者によっては電力事業の収益が鉄道事業の収益を大きく凌駕する例もあった。関西地区の電気事業の詳細については関西私鉄の電力供給事業を参照。現在でもJR東日本や東京都交通局が発電事業を行っている。また2010年代に入りJR九州や近畿日本鉄道などが売電を目的に遊休地への太陽光発電所建設を行っている。
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異業種への参入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 06:37 UTC 版)
丸和商事時代に、異業種の企業を傘下に収めており、CADやCAMによるプラスチック金型設計を営む丸和精機、旅行業や不動産を展開する丸和観光開発などが挙げられる[要出典]。また、不動産の分野にも参入しており、沼津市、静岡市、掛川市、浜松市、名古屋市には駅前などに立地する自社ビルを所有していた[要出典]。2007年には、静岡県で初めての債権回収会社となる中部債権回収を設立し、サービサー分野にも進出した。また、丸和商事の本社ビル内に、刀剣専門の美術館としてふじ美術館を開設したが、2010年3月31日をもって閉館している。
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