異業種からの参入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 23:34 UTC 版)
元来は鉄道事業者ではない異業種の事業者が、直営あるいは子会社などで鉄道事業を行う、もしくは経営破綻した鉄道事業者の再建支援を行っている例として以下のようなものがある。中には紀州鉄道のように「鉄道会社」というネームバリューを得るために既存の鉄道会社を買収し、自社の社名を買収会社のそれに変更したケースも存在する。 参入者自身が直営で鉄道事業を行っているもの、行っていたもの山万 - 本業は不動産会社。千葉県に同社が開発したニュータウンへの交通の便を図るため、新交通システム・ユーカリが丘線を運営。 関西電力 - 本業は電力会社。2018年まで長野県で関電トンネルトロリーバスを運営していた。1971年までは富山県で黒部峡谷鉄道本線も直営していたが、同年から子会社の黒部峡谷鉄道に分離した。トロリーバス廃止で旅客鉄道事業からいったん撤退することになるが、近い将来関西電力黒部専用鉄道などの欅平・黒部ダムルートを開放する予定で、その際は旅客鉄道事業として事実上復活する。 鞍馬寺 - 京都にある寺院。参拝者の利便を図るため、鞍馬山鋼索鉄道というケーブルカーを運行している。 大阪観光 - 大阪府で箕面温泉観光ホテルを運営している会社。1965年から1993年まで宿泊者や温泉利用者のために箕面鋼索鉄道というケーブルカーを運営していた。 岡本製作所 - 本業は遊具製造業。2003年から2018年まで別府ラクテンチケーブル線というケーブルカーの運営を大分県で行っていた。ただし、一般の鉄道路線と異なり事実上、山上に所在する同社経営の遊園地への来園者専用となっている。なお、このケーブルカーは遊園地とともに、2003年まで同県でホテルを経営していた別府国際観光が運営していた。2018年からは地元資本のラクテンチが遊園地とともにケーブルカーを運営している。 下北交通 - 当時の社名は「下北バス」。国鉄大畑線が第1次特定地方交通線に指定された際に南部縦貫鉄道が引き受け意向を示した事から、経営エリア防衛の一環として1985年に鉄道経営に参入。しかし赤字のため2001年をもって廃止・撤退した。 鉄道事業を行うために設立した子会社で間接的に運営するもの、する予定であったもの、していたもの舞浜リゾートライン - 千葉県浦安市にあるモノレール、ディズニーリゾートラインを運営管理する第一種鉄道事業者。東京ディズニーリゾートを経営・運営するオリエンタルランドの完全子会社であり、全ての駅の全ての出入口がオリエンタルランドの所有地内にある。そのため、東京ディズニーリゾート来場者の施設間移動の便宜をはかることが運行の主目的である。なお、オリエンタルランドの筆頭株主は大手私鉄の京成電鉄であり、京成グループの企業でもある。そのため車両の検査業務などで京成とは協力関係にある。 ドリーム開発 - 1967年から長期営業休止だったドリーム開発ドリームランド線をダイエー100%の子会社である同社が営業再開しようとしたが、親会社のダイエーの経営が傾き2003年に営業再開を断念した。 湘南モノレール - 神奈川県内を走るモノレール。三菱重工業が、懸垂式モノレールの技術開発・拡販のために敷設した。開業から半世紀以上が過ぎてから、公共交通の経営再建を手がける経営共創基盤の傘下に移っている。 既存の鉄道事業者を買収し、経営傘下に置いて鉄道事業に参入したもの紀州鉄道 - 1928年に御坊臨港鉄道として開業した路線。災害やモータリゼーションの進展によって廃止の危機に追い込まれていたものを、1972年に東京の磐梯電鉄不動産が約1億円で買収。翌年1月、「紀州鉄道」に社名を変更。現在は不動産・ゴルフ場・リゾート開発会社の鶴屋産業の傘下となっている。 銚子電気鉄道 - 1990年に経営権が千葉交通から東金市の建設業・内野屋工務店に移転。子会社「銚電恒産」を設立してその子会社となった。しかし、1998年に同社が自己破産申請をしたため、現在では銚子市・千葉県が経営支援を行っている。 2005 - 2006年には、投資ファンドの「村上ファンド」が阪神の株式を取得、経営に乗り出そうとした例がある。 経営再建のため異業種の企業やその出身者が経営参画・経営支援しているもの東京モノレール - 建設費がかさんだゆえの高運賃もあって経営危機に瀕し、日立グループのもとで再建。長らく日立物流の子会社であったが、のちにJR東日本の子会社となっている(ただし、日立製作所も12%の株を保持(2012年3月現在))。 水間鉄道 - バブル期の過大投資がたたり、2005年に会社更生法の適用を申請。大阪市に本社をおく外食チェーン・グルメ杵屋が支援企業に決定し、経営再建がなされた。現在、グルメ杵屋の100%子会社である。 高松琴平電気鉄道 - 自社ターミナルに建設したコトデンそごうがそごうグループ破綻の影響で破産し、その影響で2001年に民事再生法の適用を申請して経営破綻した。地元に本社を置く大手食品加工メーカー、加ト吉の支援の元で経営再建をした。 しなの鉄道 - 長野県の第三セクター鉄道。経営再建のために、最初は格安航空券販売で知られる旅行代理店エイチ・アイ・エス、次に格安航空会社のスカイマークから社長を迎えて経営再建を果たした。資本関係上の提携や買収をした訳ではなく、厳密には「異業種からの参入」とは言い難いものの、2代続けて航空関連業界関係者から経営者を招聘して経営再建した。 行政が地方鉄道存続のために、経営企業を公募したもの和歌山電鐵 - 廃線となる南海貴志川線を、和歌山市などの自治体が公的な財政補助を前提に存続させることになった。しかし、沿線自治体の財政状況の関係で第三セクター設立は困難だったために、経営企業を公募した。不動産会社や外食産業など何社か異業種からの応募もあり、異業種からの参入の可能性もあった。最終的には、他地域の鉄軌道事業者である岡山電気軌道が経営することに決まった。 WILLER TRAINS - 慢性的な赤字に苦しむ第三セクターの北近畿タンゴ鉄道の運営を行うために設立された、旅行業などを営むWILLERの子会社。 かつては、炭鉱鉄道のように鉱業会社が運営する鉄道も多かった。こうした鉄道の例として、太平洋石炭販売輸送が挙げられる。また、岩手開発鉄道、秩父鉄道、三岐鉄道は太平洋セメントが大株主であり、セメント製品及び原料の輸送を手掛けている。
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