理論展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 08:23 UTC 版)
手塚一志の述べる理論の一例を挙げる。 クオ・メソッド 「クオ・メソッド」とは= 【】(connective unified operation method)の略称。 左右にある2つの弓状線による骨盤操作は、全身400の筋肉や200の関節200の骨を連鎖連動させ、統括的に全身を意のままに操ることが可能である。 その発想は、人類600万年間の進化の過程で淘汰させることなく受け継がれてきたヒト本来の理にかなった運動の原理、すなわちカラダの操り方の探求から生まれた。 2006年に手塚一志が開発、提唱。 多くのアスリートたちが、このメソッドを取り入れ、自らの競技に転用し成果を挙げてきた。 また、転用範囲はアスリートのみにとどまらず、キッズ~シニア層まで幅広く、すべての人々の日常生活の質を上げる効果も期待できるとされている。 操育 クオ・メソッドの発想から生まれた、ヒトにとって理に適ったカラダの操り方を育む考え方。 このメソッドを、アスリートや一般の方が自らのカラダの中に取り込む(落とし込む)ための方法としては、独自開発した体操を3種類の体操を用いる。 この進め方を「操育プログラム」として完成させたことで、全世代・全スポーツ種目・全ての人たちが効率の高い運動を一生涯手に入れることが可能となった。 スパイラル・リリース ピッチングやテニスのストロークやゴルフのスウィングやランニングの蹴り動作の中で出現する、腕または脚全体のネジリ戻し運動のこと。 加速シーンのスタートのとき(ループモーションの初期シーン)、腕や脚はもっとも深くネジられ、もうこれ以上はネジることはできないという状態にまで達すると、RSSCという筋肉の束状の反射が生じる仕組みをヒトは有している。 このRSSCがきっかけとなり、外向きのネジリ運動は一気に内向きのネジリ運動へと入れ替わりループモーションを生む。そのループの中間位では、すべての筋肉が平等な張力、それもニュートラルな状態となる。おそらく、指先や足先や用具の先端の速度は、そのシーンがもっとも大きく、リリースやインパクトのシーンと重なることになる。 リリース後もネジリ戻し運動は継続され、今度は腕や脚が内向きに最大にネジられる状態まで続く。このネジリ戻しの運動とその途中にリリースが存在する現象を「スパイラル・リリース」と名づけた。 肩や肘や膝などに対し負担の少ない、解剖学的にも生理学的にも極めて合理的運動様式である。 ただし、この動きは、無意識化の反射によって形成させるゆえ、意図的に腕や脚をネジることは、障害に関係してくるリスクがある。 RSSC RSSCとは、SSC=伸張―短縮サイクル(ストレッチ・ショートニング・サイクル)(生理学 用語)に、手塚が「R=ローテーター(束状回旋)」の概念を加えて生まれた「ローテーター・ストレッチ・ショートニング・サイクル ( Rotator Stretch-Shortening Cycle )の略称。 筋肉をいったん伸張させてから短縮させると、筋肉や腱の中にあるセンサーの作用により、神経を通じて脊髄に信号が送られてくる。 その信号は再度神経を通り筋肉に戻り、単に収縮するより大きな速度で収縮することがわかっている。ヒトや脊椎動物はこの原理を利用しさまざまな運動や動作を行っている。 ただ、これまでは、単一の筋にそれぞれ個別にこの反射サイクル現象が起きていると考えられてきたが、手塚が「肩周辺の筋肉はすべて束ねられ協調しながら内向きと外向きのネジリ反射に参与している(1995)」と主張。 この現象の存在の発見により、「スパイラルリリース」の存在や、そのリリース後に腕が内向きにネジられる現象が起こることのつじつまが合うと仮説を立てた。 「このことは、個性レベルの問題ではなく、77億人の世界のすべての人々にとって共通の仕組み(サイクル)として内蔵され、これを基に運動(スポーツ)を行うよう設計されている」(手塚) イナーシャルリダクション(慣性力補正) スポーツパフォーマンスには、さまざまな慣性力が生じる。 中でも、カラダを高速回転(スピン)させたり、腕や脚や用具をスウィングを伴うスポーツ種目では、重力・遠心力・コリオリなどの慣性力の合力がその運動に加算され、パフォーマンスとして表面に出現している。しかも、そのスピンやスウィング速度が大きくなるトップアスリートになればなるほど加算される慣性力は増大し、その結果ハイパフォーマンスを実現している。 言い方を替えれば、彼らの内部に内在する身体感覚は、目に見えるパフォーマンスよりもコンパクトではずであり、この両者の間には”ギャップ”が存在することになる。むろん、スピンやスウィング速度が高くなればなるほど、そのギャップは大きくなる。 このことを「イナーシャルリダクション(慣性力補正)」と名づけた。 プレーヤーは、表現されるパフォーマンスの通りの動きをなぞる(トレース)ってしまうと、本来のキレのあるパフォーマンスを遂行することはできない。そのパフォーマンスを遂行したいなら、 慣性力分をリダクション(補正)した身体感覚を持ってコントロールする必要がある。 このことは、パフォーマンス速度が増大すればするほどリダクションも大きくなる。 加えて言えば、速度が大きくはない子ども(キッズ)のパフォーマンスでは、このリダクションは小さくなるはずである。つまり、子どもの頃はトップアスリートと同様の身体感覚は持てないことになる。おそらく、ゴールデンエイジを越えた後のジュニアから成人に移り変わる頃、パフォーマンス速度の増大を経験しながらリダクションを磨き自らのカラダをコントロールする術を身に付けると考えられる。 シンクロニステック・コーディネーション 他者との動作タイミング(呼吸)をそろえる同調行為のこと。 ヒトは、重力と筋の弛緩作用を活用し、縦方向の重心の上げ下げによって他者(複数も含む)とのタイミングをそろえ、共同作業を円滑にする行為を内在している。 たとえば、相槌。ジャンケン。なわとびのタイミング合わせのときなど、無意識の内に、上下方向の運動を使い、自分以外の者(物)との同調行為を選択している。 これは、打者が投手の重心の下方向への移動時に、上げていた足の踵部分をそろえるように「クンッ」と踏み降ろすことで自分の重心を同調させることの発見からスタートした。この時点では、まだ投手はボールを投じていないが、約18m離れた相手との同調には最高できている。 ここでまずヒトとヒトとのタイミングを揃え、ボールが投じられたあとはそのボールとの”間合い”を調整することでインパクトが成立する。よって、インパクトの確実性を高めるには、タイミング揃えのシンクロニステック・コーディネーションに加え、間合い調整のためのスウィングコントロールの両者が必要となる。 芯・キレ・ムチ 操育度が向上することにより安定的に出現する、カラダの動きまたは動作表現。 芯 = 回転(反転)反復運動中のカラダに現れる架空の回転軸 キレ = カラダの動きに現れるキレ味の向上 ムチ = 腕や脚が無関節動物になったかのようなしなり 操育度が増すことにより、つまり理に適ったカラダの操り方が習熟されるていくほどに、運動中に、この「芯・キレ・ムチ」の3つの動きが顕著に安定し出現してくる。 逆に「芯もキレもムチもない」ように感じられる動きには、理に適ったカラダの操り方ではなく、他の運動様式でごまか(代用)している可能性(危険性)が疑われる。 この3つの動きが安定していない状態で、各スポーツ種目の練習を強化しすぎると、いわゆる”悪い癖”となって一生付きまとわれたり、またはケガを誘発する要因になる可能性もあり。 ジャイロボール ボールの回転軸が進行方向に向いており、初速、終速の差を、ボールの縫い目によって発生する空気抵抗を操り打者を打ち取ろうとする球種。空気抵抗の少ないフォーシームジャイロと空気抵抗の多いツーシームジャイロの2種類が確認されている。 W-スピン 脊柱を中心とした回旋を第1軸、腕の作り出す回旋を第2軸とし、第1軸のファーストスピンがかなり進んだタイミングで急激に第2軸のセカンドスピンを起こすことにより、腕の先端や足先を加速し、その結果、ボールやバットに効率的な加速を与えるとしている。 うねり打法 うねりのように下から螺旋的に下半身からの力をバットに伝える打法。クオ・メソッドの応用で変化球等に回旋軸を崩されにくい。2段階のタイミング調節が出来(1段階目はクオ・メソッドの隠し)、変化球でタイミングを外され、前骨盤が開きかけても後ろ骨盤の意識で粘りを出し、タイミング調節をコントロールしやすい特性を持つ。 サークルスクラッチ 投手や他の野球選手用に開発した、肩甲骨+肩関節+腕周辺のコンディショニング運動。顔の前で曲げた肘の先端部で円を描く動きと、手首から指先にかけて“引っかき(スクラッチ)モーション”を行うことから、この名前が付いた。別冊宝島263『スポーツトレーニングが変わる本』(宝島社)1996年発行(共著)中で初公表。のちに「マエケン体操」になる。http://www.youtube.com/watch?v=nqFbpzd2Jmo
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