猿
『西遊記』 孫悟空は、猪八戒・沙悟浄とともに、三蔵法師の供をして西天取経の旅に出る。道中、孫悟空は、白骨夫人・金閣・銀閣など、さまざまな妖怪たちと闘う。
『桃太郎』(昔話) 鬼退治の旅で山奥に入った桃太郎が、猿と出会う。猿は日本一の黍団子をもらって家来になり、犬・雉とともに鬼が島へ攻め入る(青森県三戸郡)。
『ラーマーヤナ』 猿のハヌーマン(ハヌマット)はラーマ王子を助け、魔王ラーヴァナの住むランカー島へ攻め入る。
★2.猿婿。
『キングコング』(クーパー他) 南海の孤島で、原住民の娘をキングコングの花嫁とする儀式が行われる。白人の女優アンが島を訪れたため、原住民たちは彼女を捕らえてコングの花嫁にする。コングはアンを気に入り、ニューヨークへ運ばれてからもコングはアンを捜し、拉致して摩天楼に登る→〔怪物退治〕3a。
『猿婿入り』(昔話) 「田に水を引いてくれる者に娘をやる」と爺が言い、それを聞いた猿が水を引く。爺の長女・次女は「猿の嫁にはならぬ」と断り、末娘が猿とともに山に行って嫁になる。実家への里帰りの時、娘は「爺の好物だから」と言って、猿に餅入りの臼を背負わせ、川端の桜の木の1枝を望んで、木登りさせる。枝が折れて猿は川に流れる(山形県最上郡真室川町及位)。
『捜神記』巻12-9(通巻308話) 蜀の山中には、身長7尺ほどの猿に似た化け物がおり、通りかかる美女をさらって女房にする。男児を産まない女は山に一生とどまるが、男児を産んだ女は、母子ともに抱きかかえて家へ帰してくれる。成長後の男児は普通の人と変わらず、「楊」という姓を名乗る。
『人間が猿になった話』(谷崎潤一郎) 猿廻しの猿が芸者お染を恋慕し、厠の下から手を出してお染を驚かしたり、眠るお染の胸の上にすわって恋心を訴えたりする。お染は、逃れられぬ運命とあきらめて、猿と一緒に山奥へ入る。数年後、ある人が塩原温泉へ行き、山の上で猿と遊ぶ人間の女を見た。
『“ホロー”サル』(インドの昔話) “ホロー”サルたちは、人間の魂を持つ猿だ。ある村に兄妹がいたが、妹は年頃になって、1匹の“ホロー”サルを夫とした。兄は怒ってその“ホロー”サルをナイフで刺し殺し、妹の産んだ2匹のサルも殺した。妹は悲しんで、食事ものどを通らず、やせ細って死んだ。兄は、「妹が死んだのはサルのせいだ」と考え、“ホロー”サルを捜して殺しまわった(少数民族タグサ族)。
『今昔物語集』巻26-7 美作国の猿神が、毎年処女1人を生贄にとる。旅の猟師が、生贄に指名された処女と結婚し、猛犬を用いて猿神を退治する。
『今昔物語集』巻26-8 飛騨山中の隠れ里に迷いこんだ旅僧が、猿神の生贄にされそうになるが、隠し持った刀で猿神を退治する。
『猿神退治』(昔話) 村の鎮守が、毎年娘を人身御供にとる。「伊勢の国のよだの町の『天地白』に、このことかまえて聞かせるな」と化け物が歌っていたので、旅のばくち打ちが伊勢へ行って「天地白」を捜し、連れて来る。「天地白」は犬の名で、娘の身代わりに櫃に入って鎮守の森に登る。「天地白」と化け物は激しく闘い、どちらも死ぬ。化け物の正体は狒々猿(ひひざる)だった。ばくち打ちは村の庄屋の婿になった(福島県南会津郡)。
★4.猿女房。
『太平広記』巻445所収『伝奇』 孫恪は金持ちの袁家の娘と結婚し2人の子をもうけ、10数年がたつ。恪は官吏となって一家で赴任する途次、寺に立ち寄るが、妻は壁に別れの詩を書きつけ、子を残して、猿となって去った。
『太平広記』巻446所収『瀟湘録(焦封伝)』 焦封は、美女に化けた猩々の家でしばらく暮らした。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)203「猿と漁師」 漁師たちが川で網を打つのを見た猿が、その真似を試みる。しかし、網に触れると手が絡まってしまい、猿は自分の愚行を悔いる。
『ジャータカ』第273話 猿が、眠る亀の口に男根を挿入して、強く噛まれた。ボーディサッタが亀に話しかけ、亀は猿の男根を放した。
『パンチャタントラ』第1巻第1話 猿が角材の上で遊び、そこに打ちこんであった楔(くさび)を引き抜いた。猿は木に陰嚢をはさまれて、死んでしまった。
*猿が、手を貝にはさまれる→〔貝〕4aの『今昔物語集』巻29-35。
*猿田毘古神(サルタビコノカミ)が、手を貝にはさまれる→〔貝〕4bの『古事記』上巻。
★6.ずる賢い猿。
『毛蟹の由来』(中国の昔話) ずる賢い猿が、蟹の握り飯を取り上げて食べ、代わりに桃の種を与える。蟹は種を川岸に埋め、それが桃の木になって、3年後にはたくさんの実をつける。蟹は木に登れず、猿が木に登って勝手に桃を食べるので、蟹は「おれにも投げてくれ」と頼む。猿は桃の種を投げつけ、蟹はけがをする。蟹が木を揺すると、猿は怒って木から飛び降り、蟹をつかまえようと追いかける(浙江省)→〔蟹〕6c。
『猿蟹合戦』(昔話) ずる賢い猿が、蟹の握り飯を取り上げて食べ、代わりに柿の種を与える。蟹の蒔いた種が柿の木になって実をつけるが、蟹の横這いでは、なかなか木に登れない。そこへ猿が来て木に登り、甘い柿を取って食べる。蟹が下から「こっちにも投げておくれよ」と言うと、猿は多くの渋柿を蟹に投げつけ、甲羅を砕いて殺す→〔仇討ち〕9。
『古今著聞集』巻20「魚虫禽獣」第30・通巻680話 越後国の乙寺の僧が『法華経』を読誦していると、2匹の猿がやって来て聴聞する。僧は猿のために『法華経』を書写してやるが、全巻書写する前に、2匹の猿は山の穴に落ちて死んでしまった。それから40余年後、国守として赴任した紀躬高が、乙寺に参詣して、「私の前世は猿で、経の力で人間に転生した。書写を完成させたい」と述べた〔*『今昔物語集』巻14-6の異伝では、承平4年(934)に赴任した国守・藤原子高(こたか)と彼の妻が、2匹の猿の生まれ変わりだった、と記す〕。
『日本霊異記』下-24 昔、東天竺国の大王が、修行僧の従者について、「人数が多すぎる」と言って制限した。この罪のために大王は死後、猿の身をうけ、日本の近江国の陀我(=多賀)神社の神になった〔*陀我の神は、猿の身(=畜生道)を脱れたいと願い、寺で読経を聴聞した〕。
『這う男』(ドイル) 著名な生理学者プレスベリー教授は61歳であるが、同僚教授の令嬢を熱烈に恋し、年齢差を乗り越えて婚約した。プレスベリー教授は若返りを願い、尾長猿の血清を何度も注射する。その結果彼は、木登りや四つん這い歩行などの発作を起こすようになる。あげくのはてに大型犬と喧嘩をし、喉を噛まれて瀕死の重傷を負った。
『ホーキング、宇宙と人間を語る』第6章 マヤの伝説では、創造主は最初、大地の泥から人間を造った。彼らは意味のある言葉を話さなかったので、創造主は彼らを溶かして棄てた。創造主は次に、木から人間を造った。彼らは愚鈍だったので、創造主は彼らも棄てることにした。彼らはそれを察知して森に逃れ、私たちが「猿」と呼ぶものになった。2度の失敗の後、創造主はトウモロコシから人間を造った。これが現在の人間の始祖である。
『かのように』(森鴎外) 五条子爵は、息子秀麿が皇室の藩屏になって、身分相応の働きをすることを期待していた。しかし秀麿は、神話を歴史として認めず、神霊の存在も否定しているようなので(*→〔歴史〕3)、父子爵はそのことが気がかりだった。ある日、食事の席で父子爵は、「どうも人間が猿から出来たなんぞと思っていられては困るからな」と言い、秀麿はぎくりとした。
★8.猿のたたり。
『捜神記』巻20-12(通巻460話) 男が山で子猿を捕らえ、家へ連れ帰る。母猿があとを追って来るが、男は子猿を殺す。母猿は悲鳴をあげ、木の上から身を投げて死ぬ。男が母猿の腹を裂くと、腸が1寸ごとに断ち切れていた。それから半年もたたぬうちに、男の家族は流行病で死に、一家は全滅する。
*猿が人間を支配する世界→〔逆さまの世界〕2の『猿の惑星』(シャフナー)。
*猿の尾の短いわけ→〔尾〕4。
猿と同じ種類の言葉
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