打ち上げ後の各国・機関の反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 01:38 UTC 版)
「光明星3号2号機」の記事における「打ち上げ後の各国・機関の反応」の解説
北朝鮮が開発・製造するロケットは、北朝鮮の弾道ミサイル・核開発計画と表裏一体の存在であると国際社会からみなされている事から、かねてから国際連合安全保障理事会決議1718と決議1874で発射しないよう強く要求されていた。このような状況で発射が強行されたことから、発射後すぐに、日本、アメリカ、韓国、国際連合安全保障理事会議長国のモロッコ等は、銀河3号ロケットを用いた光明星3号2号機の打ち上げが決議1718と決議1874に違反する行為であるとする立場をとった。 その後は安保理での制裁・非難決議の採択を目指して各国間で交渉が続けられ、2013年1月23日に北朝鮮に対する追加制裁を明記した決議2087が全会一致で採択された。 また、日本政府は、国内向けには「事実上のミサイル」という表現で銀河3号がミサイルであると断定する主張を行っている。日韓の主要メディアは、国内向けには「ミサイルの発射」や「大陸間弾道ミサイル級ミサイル技術の確保」として報道している。 国際連合 日本時間12月13日未明に行われた国連安保理での緊急会合後に、議長国のモロッコのルリシュキ国連大使は、発射が過去の決議1718と決議1874に対する「明白な違反」に当たると指摘し、発射を非難するプレス声明を発表した。国連安保理は2013年1月23日に、北朝鮮に対する追加制裁を明記した決議2087を全会一致で採択した。決議では今回の発射が決議1718と決議1874に違反する発射であり、北朝鮮が新たなミサイル発射や核実験を行った場合には「重大な措置」を講じると警告した。また、これまでの制裁対象に加えて、新たに朝鮮宇宙空間技術委員会等の6団体とペク・チャンホ衛星制御センター長ら4名の個人を海外資産凍結や海外渡航禁止の制裁対象に追加した。 北大西洋条約機構 アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長は、「今回の挑発的行為によって地域の緊張が増幅され、朝鮮半島がさらに不安定化する恐れがある」と指摘した上で、「NATOは引き続き北朝鮮当局に対し、国際法に基づいた義務を履行するよう求める」と表明した。 アゼルバイジャン アゼルバイジャンは、12日の国連安全保障理事会緊急会議で、新たな制裁決議が必要との意思をはっきり示した。 アメリカ合衆国 発射同日中にNORADは、北朝鮮が人工衛星の軌道投入に成功したと見られる事を発表した。ホワイトハウスは発射の4時間後に「国際社会は協調して、国連安保理違反には結果がともなうことを北朝鮮に明確に伝えなければいけない」との声明を発表し、国連安保理による追加制裁を求めた。スーザン・ライス国連大使は日本時間12月13日未明に行われた国連安保理での緊急会合後、記者団に対して「北朝鮮に対し、決議違反には結果が伴うとの明確なメッセージを送るため、安保理メンバーが一致して対応しなければならない」と話した。 レオン・パネッタ国防長官は、発射について「あからさまな挑発行為」だと非難し、もし北朝鮮がアメリカに向けてミサイルを発射したとしても、アメリカ軍は迎撃できると確信していると強調した。 イギリス マーク・ライアル・グラント国連大使は、国連安保理が「北朝鮮の挑発に強硬な態度を取るべきだ」と語った。 イラン 国際社会の大半の国から発射を非難される中、イランは12日、人工衛星を搭載したロケットの発射成功に対して北朝鮮に祝電を送った。さらにCNNによるとイランの軍高官は、発射成功に歓迎を表明したと伝えた。北朝鮮がイランやパキスタンに技術を売り込めるためとしている。一方でイラン外務省のラスール・モハージェルアジア太平洋局長は、北朝鮮への開発技術などの軍事的支援について「いかなる軍事的な関係もない」と明確に否定した。イランはロケット・ミサイル分野において、公式には否定しているものの、北朝鮮と密接な技術協力を行っていると広く考えられており、イランが次世代ロケットとして開発中のシムルグは銀河2号及び3号と外見が酷似していることが知られている。 インド インド外務省は、北朝鮮の「不当行為」は、朝鮮半島の平和と安定性に悪影響を及ぼし、決議1874に違反したロケット発射を懸念しているとする声明を発表した。 カナダ ジョン・ベアード外相は、「北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル実験を明確に非難する」との声明を出し、北朝鮮の行動は国連安保理決議で定められた国際的義務の順守を拒否する意思であると強く非難した。 韓国 発射同日に金星煥外交通商相は「北朝鮮はこれについて厳重な責任を負わなければならない。北朝鮮は今回の発射によって、国際社会からよりいっそう孤立するだろう」との声明を発表した。 ロケット「羅老」の打上げを成功させる事でイランに次ぐ10番目の人工衛星発射成功国を目指していた韓国では、北朝鮮に先を越されたことで国内に屈辱感が満ち溢れたとされている。これを、ソ連がアメリカに先んじて世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた際の反応に倣い、「韓国版スプートニク・ショック」とする報道もある。韓国のロケット技術は北朝鮮に5年から7年も遅れているとの報道もなされた。羅老によるSTSAT-2Cの打ち上げの成功は、約1ヶ月半後の2013年1月30日であった。ただし、今回の発射はロシアとの共同開発であり、韓国が純粋に関わった部分は多くない。純粋な韓国製のロケットについてはKSLV-2の打ち上げが2022年6月21日に成功し、自力で衛星の打ち上げが可能な7番目の国になった。 北朝鮮 北朝鮮は、銀河3号打ち上げから約1時間半後の11時20分すぎ(平壌時間および日本時間)、朝鮮中央通信で、光明星3号2号機の打ち上げと軌道投入に成功したと報道した。また、朝鮮中央放送も正午過ぎから特別放送で同様の内容の放送を行った。いずれも4月の1号機失敗の報道より早い。 また、朝鮮中央通信は北朝鮮外務省のスポークスマンの声明を引用する形で「宇宙の平和利用の権利は、国連安保理があれこれ言える問題ではない」と報道し、朝鮮中央テレビは放送の中で「宇宙を平和目的のために利用する独自の権利を完全に行使することによって、わが国の科学、技術、経済の発展における偉大な転換をなし遂げた」と述べた。12月13日に朝鮮中央通信は、12日の朝に金正恩第一書記が衛星管制総合指揮所を訪れて「最終命令」を下して発射に踏み切った事を発表した。 2013年1月1日に金正恩は、19年ぶりとなる「新年の辞」を放送した。その中で、ミサイル発射の意義を強調した。 グアテマラ グアテマラは、12日の国連安全保障理事会緊急会議で、新たな制裁決議が必要との意思をはっきり示した。 中華民国(台湾) 馬英九中華民国総統は、北朝鮮の行動は非常に賢明な行動ではないと不満を表明した。 中国 中国政府当局は「遺憾の意」を表明したものの、李保東国連大使は12日の国連安全保障理事会緊急会議で、「朝鮮半島の緊張を高める行動はとるべきではない」と新たな制裁決議に反対し、「4月と同じような安保理の対応」を要求した。4日に洪磊外交部報道官が北朝鮮を名指しで「慎重に行動すべきだ」と自制を強く求めたのを無視したため、何らかの対応には賛成だが、新たな制裁の枠組み導入には反対した形となる。なお、環球時報や新華社などの中国国営メディアは発射を強く非難した。 日本 4月の打ち上げでは日本政府の対応の遅れが非難されたが、今回の打ち上げでは約2分後に配信されたアメリカ軍の早期警戒衛星の情報(SEW)を元に、発射から約5分後にエムネットを通じて全国の自治体に通達が行われた。航路が確認されたのは9時54分であり、その1分後にJアラートで沖縄県の41市町村に速報がなされた。打ち上げから約12分後、Jアラート速報から約6分後の10時1分(日本標準時)に、銀河3号は宮古島と石垣島の間の上空を、弾道ミサイル防衛システムの射程外の高度で通過した。事前に展開していた自衛隊のイージス艦やパトリオットミサイルは、飛翔体が日本領土へ落下する恐れがなかったことから迎撃措置を行わず、森本敏防衛大臣は同日中に破壊措置命令を解除して部隊の撤収作業に入った。 藤村修内閣官房長官は、発射から約30分後の記者会見で「今回、北朝鮮が発射を強行したことは、極めて遺憾であり、わが国として容認できるものではなく、北朝鮮に対して、厳重に抗議をいたします。」と述べた。 発射同日に野田佳彦内閣総理大臣は「国際社会と連携をしながら、厳しく対応してまいりたいと思います」との声明を発表した。日本時間12月13日未明に行われた国連安保理での緊急会合後に、西田恒夫国連大使は記者団に対して「制裁を含む新たな措置が適切だ」と話した。 フランス ジェラール・アロー国連大使は、「遅かれ早かれ決議を採択するのは理にかなっている」と述べた。 ブルガリア ブルガリア外務省のスポークスマンは、北朝鮮が国際社会の訴えを公然と無視して発射に踏み切ったことについて強い懸念を表明した。 ロシア ロシア外務省は、「国連安保理決議に違反している。国際社会の意見に反して発射したことは深い遺憾」と批判する声明を出した。ロシア政府は4月の1号機発射の際には「安保理決議違反」や「深い遺憾」という表現を避けていた。
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