急増を続ける社会保障費と高齢化社会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 02:29 UTC 版)
「社会保障」の記事における「急増を続ける社会保障費と高齢化社会」の解説
日本の社会保障給付費の推移年度金額国民所得比1980年 24兆9290億円 12.23% 1985年 35兆6894億円 13.70% 1990年 47兆4238億円 13.67% 1995年 64兆9918億円 17.10% 2000年 78兆4062億円 20.10% 2005年 88兆8529億円 23.89% 2010年 105兆3647億円 28.89% 2015年 116兆8133億円 29.75% 2019年 123兆9241億円 30.88% 2025年(2018年の予測) 140兆8000億円 2040年(2018年の予測) 188兆5000億円 社会保障給付費の対GDP比は、2018年度の21.5%(名目額121.3兆円)から、2025年度に21.7~21.8%(同140.2~140.6兆円)となる。その後15年間で2.1~2.2%ポイント上昇し、2040年度には23.8~24.0%(同188.2~190.0兆円)となる。 社会保障負担の対GDP比は、2018年度の20.8%(名目額117.2兆円)から、2025年度に21.5~21.6%(同139.0~139.4兆円)となり、2040年度は23.5~23.7%(同185.6~187.3兆円)へと上昇する。その内訳をみると、保険料負担は2018年度の12.4%(同70.2兆円)から、2025年度に12.6%(同81.2~81.4兆円)となり、2040年度には13.4~13.5%(同106.1~107.0兆円)へと上昇、公費負担は2018年度の8.3%(同46.9兆円)から、2025年度に9.0%(同57.8~58.0兆円)となり、2040年度には10.1~10.2%(同79.5~80.3兆円)へと上昇する。(「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(2018年5月厚生労働省推計)の「計画ベース・経済ベースラインケースによる」のケースによる)。 左派ポピュリズムから始まった低負担高福祉の社会保障問題 日本では、前年に初の財政赤字であった1975年から消費税導入が検討されていたものの、与党・野党間の単なる政争の具に利用されて、1993年に自民党が誕生後初の下野となった細川内閣も自民党による消費税導入を批判していたものの、与党となると財源が足りないことを理解し、国民福祉税を構想・提案している。2009年に民主党政権が誕生すると、民主党も税収不足を与党として把握すると野党時代に反対していた消費税増税を決め、2012年に消費税法改正において社会保障と少子化対策・財政赤字対策に消費税増税を与野党合意、後に実行されている。このように日本では消費税導入・増税の反対が、単なる支持集めの道具とされてきて、バブル経済など景気が良かった時期に消費税が導入されず、財政赤字が右肩上がりになっていた。そもそも日本が社会保障による慢性的な財政赤字に陥る最大要因となったのは1969年12月21日に 日本社会党と日本共産党、左派団体の支援を受けて東京都知事に当選した美濃部亮吉が増税など支給に対する財源の負担を求めずに高齢者の医療費負担の全額無償化を行ったことからだった。これ以降、高齢者の医療費無償を求める左派ポピュリズム運動が起きて、左派組織の支援を受けた候補が当選が増加する。NHKも1960~70年代に日本で蔓延した左派ポピュリズムによる「“老人医療費無料化”がもたらしたもの」という特集を組んで批判している。1973年1月1日に第33回衆議院議員総選挙での敗北と左派政党の増進への危機感から、財源と財政から継続不可と反対のあったが、内閣総理大臣田中角栄の主導で、70歳以上の老人医療費の無料化が実施された。高齢者の無償のための医療費負担は、国が3分の2で地方自治体が3分の1を負担することになった。NHKも「社会の激動期、老人医療費無料化が一人歩きを始めます。東京の美濃部知事など革新自治体が全国に誕生。老人医療費無料化という政策は、支持を集めるための格好の材料となっていきます。そうした国民の声に押されて、国も1973年、国策として無料化を決断した」と報道している。社会保障の両輪であった予防と健康管理が置き去りにされたことで、この政策は、医療を必要としない高齢者が病院に入院するなど、社会的入院・コンビニ受診の問題を引き起こし、高齢者医療費の増大を招いたと指摘している。同年7月 に美濃部都知事は国の無償制度の対象外だった、都内の65歳以上70歳未満の医療費も無料化する「マル福」制度を開始する。さらに、高齢者の東京都交通局が運営する運賃無料化というバラマキ政策や多額の税収を産んでいた公営ギャンブルである後楽園競輪場を1972年10月26日から廃止していた上に東京都は増税せずにバラマキをするポピュリズム政策の連発で東京都は財政赤字に陥る。1974年、前年の1973年10月に発生した第1次石油危機で高度経済成長が終了して、日本は戦後初のマイナス成長と増税なしの高齢者医療費無償という過剰な高福祉の社会保障支出で大幅な歳入不足の財政赤字になり、以降は赤字国債を発行することになる。1975年12月に歳入不足のため、補正予算にて財政法で禁じている赤字国債を2兆3000億円分発行する。のちに内閣総理大臣となる当時の大平正芳大蔵大臣は「子孫に赤字国債のツケを回すようなことがあってはならない」と決意する。首相就任後は何度も消費税の導入を図るが、1980年に選挙運動中に死亡する。以降も消費税を訴える度に反対する野党に自民党は敗北したため、1989年まで導入されずに増大する高齢者への社会保障支出のためにその後の日本の国債依存財政が始まる。1979年に第35回総選挙において大平正芳首相が一般消費税(税率5%)の導入を打ち出すが、自民党が過半数割れに追い込まれる大敗を喫する。1987年に中曽根康弘首相は「大型間接税」ほどの包括性をもたない「新型間接税」であるとして売上税法案(税率5%)を国会提出。しかし、第11回統一地方選挙で自民党が敗北したため、廃案で与野党合意。1988年に導入論議から約20年後の竹下内閣時に消費税法が成立。12月30日公布。1989年4月1日に消費税法施行 税率3%で導入された。1994年2月 細川内閣にて細川護煕首相が、消費税を廃止して税率7%の目的税「国民福祉税」を導入する構想を発表するが、担当となる閣僚を含めた政権要人からも反対論が上がり、即日白紙撤回。11月25日に村山内閣で3年後の1997年、に消費税等の増税(3%から5%に増税、うち地方消費税1%導入)のための税制改革関連法案を成立。1997年に村山富市首相が成立させた法案に基づき、橋本内閣が実施した。 2019年度の日本の社会保障費は歳出の33.6%を占め、約35兆8421億円が支出されている。社会保障費の内訳では、高齢者関係給付が圧倒的多数を占め、逆に児童・育児家庭分野などの割合が低い。日本は世界の全世代型福祉国家と比べて、社会保険など現役世代に大きく重い負担させて高齢者にのみ年金、医療費、介護費への手厚く多額の社会保障費が支出されている。ここ数年は保育所など子育て世代への割合を増やしているが、社会に必要な子育て世代よりも高齢者世代に対してアンバランスな税金分配されてきたことが少子高齢化の原因になっている。 「日本の福祉#財政」も参照
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