完成形変体刀十二本
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 15:59 UTC 版)
四季崎記紀が作った千本の日本刀の中でも最も完成度の高いと言われている十二本の刀で、それぞれ何らかの特殊な機能を持っている。一般的な刀の形をしていないものもあるが、とがめは“日本で作られたから日本刀だろう”としている。完成形変体刀十二本は一本で国がひとつ買える価値があるらしい。 「斬れない物はない」とされる「鈍」と、「絶対に壊れない」とされる「鉋」のように矛盾した特性も存在しているが、このような場合、完成度に優れる後期に製作された側の特性が優先するだろうととがめは推測している。 絶刀「鉋」(ゼットウ・カンナ) 所有者・真庭蝙蝠。「頑丈さ」に主眼が置かれている。否定姫は「世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀」と称した。 切刃造の直刀。刀身は五尺ほど。鍔や鞘がなく、綾杉肌に二筋桶が彫られている。決して折れず曲がらないため、真庭蝙蝠は「永久機関のような刀」と評した。斬るよりも突く方に向いている。前所有者は美濃の涙磊落(なみだ らいらく)。 斬刀「鈍」(ザントウ・ナマクラ) 所有者・宇練銀閣。「切れ味」に主眼が置かれている。否定姫は「ありとあらゆる存在を一刀両断にできる、鋭利な刀」と称した。 柄や鍔、鞘が真っ黒な刀。あらゆる物を抵抗なく一刀両断できる。宇練家に代々受け継がれており、宇練銀閣の十代前の先祖、宇練金閣(うねり きんかく)はこの刀で一万人切りを成したと言われている。所有者である宇練の居合い抜きの速さゆえ、初登場時には刀身が見えず、「鉋」や「鎩」のような、比較的まともな刀剣型の変体刀の中では唯一、造りや刃紋に関する言及が無かった。後に刀身を見た七花は、「なんか普通」と述べている。刀身によって物質の分子結合を破壊しているらしく、このおかげで「なんでも斬れる」という特性を発揮している。 千刀「鎩」(セントウ・ツルギ) 所有者・敦賀迷彩。「多さ」に主眼が置かれている。否定姫は「いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀」と称した。 千本で一本と言われていて、千本の刀すべてが材質、重量、切れ味とも同じに作られている点を除けば、完成形変体刀で最も「普通の名刀」。刃渡り二尺四寸、三ツ棟、刃文は小乱の鎬造。迷彩はこれについて「原型となった1本の刀を元に大量生産した」という仮説を持っており、決闘の条件としてとがめにその原型を探させた。とがめは鞘の古さや傷から「おそらくこれだろう」と一本を迷彩に示したが、決闘終盤で迷彩が手にした一本こそが本当の原型だった。 「鎩」は一応、実在する漢字である。 薄刀「針」(ハクトウ・ハリ) 所有者・錆白兵。「薄さ」と「軽さ」に主眼が置かれているが、劇中では「脆弱さ」がその特徴とされることもある。否定姫は「羽毛のように軽く、硝子細工のように脆い、美しき刀」と称した。 向こう側が透けて見え、刀身自体も目をこらさないと見えないほどに薄く、それ故に美しい。鞘には花の模様が描かれている。十二本の中で最も扱いにくく、壊れやすいとされており、剣筋をずらさずに完全な軌跡を描いて斬りつけなければ攻撃すら出来ない。また、当たったときに相手が身体の筋をずらしても壊れてしまうため、使い手にはこれを壊さず扱う尋常ではない高い技術が求められる。双刀「鎚」の対とされている。前所有者は越後の傷木浅慮(きずき せんりょ)。 賊刀「鎧」(ゾクトウ・ヨロイ) 所有者・校倉必。「防御力」に主眼が置かれている。否定姫は「守りに重きを置いた、巨大な防御力を有する、甲冑を模した刀」と称した。 見た目は七尺ほどの西洋甲冑。部品の継ぎ目が刃になっており、日本刀を鍛えるように作られた鎧とも言われた。受けた衝撃を外に逃がす機能を持っており、装甲を透過して内部に損傷を与える鎧通しのような技も防ぐことができる。また、一度身につけると内部からしか開けられないため、強引に脱がせることも不可能(そのため、中の人間が死ぬと事実上使用不可能になるので、収集の際とがめは七花に校倉を殺さないよう指示した)。その機能から圧倒的な防御性能を持つのだが、その大きさ故に着こなすことが出来たのは歴代継承者の中でも2、3人ほどしか居ないであろうと言われている。 双刀「鎚」(ソウトウ・カナヅチ) 所有者・凍空こなゆき(ただし、元々の所有者は凍空一族の村長の息子で、こなゆきは「鎚」の存在を知らず、とがめに聞かされて思い当たった村長の家の跡を掘り起こして発見した)。「重さ」に主眼が置かれている。否定姫は「すさまじい質量のかたまりであり、持ち上げることさえ満足に敵わない刀」と称した。七実が「鎚」を手に入れなかった理由はその大きさから持ち運び辛かったからであることが、悪刀「鐚」を入手した時の独り言から伺える。 刃渡り二尺三寸ほど、鞘も鍔も刃文もなく、上下の区別もあいまいな石刀。そのためにどちらでもない自在という意味で「双」の字が当てられている。イラストでは炎が波打ったような刀身に二又に分かれて中央に穴が開いた柄、柄頭に平べったいモーニングスターが取り付けられた形状になっている。軽く投げ重力に任せて落としただけで硬い地面にめり込むほど重い。薄刀「針」の対とされている。凍空一族は主に狩りに使用していた。 悪刀「鐚」(アクトウ・ビタ) 所有者・鑢七実。「活性力」に主眼が置かれている。否定姫は「所有者の死さえ許さず、無理矢理に人を生かし続ける凶悪な刀」と称した。 変体刀十二本の中で最も凶悪な一振りとされる。忍者の道具である苦無の形をしており(小振りなため持ち運びやすいと七実に言われた)、常に雷を帯び、電極のように身体に差し込むことによって、所有者の疲弊も死も許さず人体を無理矢理に生かし続ける凶悪な刀。七実に奪われる前は陸奥の壱級災害指定地域、死霊山の祠に祀られ、死霊山神衛隊によって守護されていた。 微刀「釵」(ビトウ・カンザシ) 所有者・日和号。「人間らしさ」に主眼が置かれている。否定姫は「武器でありながら人である、恋する殺人人形とも言える刀」と称した。 刀の所持者(前述)を参照。「微刀」は「美刀」とかけている。自らの愛した女性を象っていることから、四季崎記紀の人間らしさが唯一かいま見える刀とされる。 王刀「鋸」(オウトウ・ノコギリ) 所有者・汽口斬愧。「毒気のなさ」に主眼が置かれている。否定姫は「人を正し、心を正す、精神的王道を歩ます、教導的な解毒の刀」と称した。 柄を入れても三尺にも満たない木刀。毒気の無さを超えて所有者の毒気を抜く作用にまで達しており、心を正して精神的王道を歩ませる。よく手入れされており、古い時代を感じながらもつい今さっき作られたような真新しさも感じさせるといった、矛盾した印象がある。毒刀「鍍」の対とされている。 心王一鞘流に持ち込まれたのは八代目当主の頃であり、それまでの来歴や何故ここに持ち込まれたかは一切不明。 誠刀「銓」(セイトウ・ハカリ) 所有者・彼我木輪廻。「誠実さ」に主眼が置かれている。否定姫は「人間の姿勢を天秤にかけるように、人によって受け取り方さえ違う曖昧な刀」と称した。 刃なき刀であり、柄と鍔だけしか無い。「銓」は天秤を意味し、己自身を測る刀。相手を斬る刀ではなく、自分を切る刀、自分を試す刀、自分を知る刀であり、「無刀」とも表現された。輪廻は四季崎から直々にこの刀を貰ったが、貰ってすぐに「迷惑だから」と地中に埋めたところ、その上に城が建ってしまった。鷹比等が歴史の改竄に気付いたのはこのためだと、とがめは推測しており、鷹比等の個性を作るためだけに四季崎が自身に手渡したと輪廻は推測している。戦国時代、輪廻は「銓」の力を使いあちこちの戦いを封印していた。 毒刀「鍍」(ドクトウ・メッキ) 所有者・真庭鳳凰。「毒気の強さ」に主眼が置かれている。長さは五尺に少し足りないくらい。否定姫は「所有すると人が斬りたくなる、刀の毒がもっとも強く内包された刀」と称した。 禍々しい色の鞘に収められた、鍔の無い大きく反った黒刀。長さは五尺に少し足りないくらい。王刀「鋸」の対とされている。富士の樹海から鳳凰が回収した。 持つと人を斬りたくなるという変体刀の「刀の毒」が、もっとも深く刻み込まれている。鳳凰は刀の毒(=四季崎記紀の魂?)に乗っ取られてしまったが、持った人間が必ずしもそうなるとは限らない。 「四季崎記紀の人格の完全発現」はあくまでも「真庭鳳凰」という常人を超越した人物が「物に宿った記録を読み取る」という真庭川獺の手で刀を握ったが故であり、後に手にした呂桐番外は四季崎の人格を発現させることは無く、ただ自我を失い「毒」に支配されるだけだった。 炎刀「銃」(エントウ・ジュウ) 所有者・左右田右衛門左衛門。「連射性と速射性と精密性」に主眼が置かれている。否定姫は「遠距離からの連続精密攻撃を可能にした、飛び道具としての刀」と称した。 炎の模様があしらわれた回転式連発拳銃と自動式連発拳銃からなる、一対の「刀」。連射性と速射性に加え高い命中精度を持っている。遠距離から攻撃が可能なため、半端な間合いは意味をなさない。「炎刀」とは「遠刀」と掛けて命名されたとも考えられる。 回転式は装弾数六発、自動式は装弾数十一発(ただしアニメ版では両方とも明らかに装弾数を超えた連続射撃を披露している)。 かつては信濃にあった(アニメ版では人鳥の情報として、禅寺の塔頭に保管されていたことが語られている)。とがめと七花が蝦夷から否定屋敷に来た時点で既に否定屋敷に置かれており、とがめは否定姫の趣味に合わない武骨さから、七花は刀としての共感覚からそれに違和感を持ったのだが、完成形変体刀とは見抜けなかった。それでも、とがめは出羽で人鳥から鳳凰の身に起こったことを聞いた後で、「銃」は否定姫が所有しているだろうと推測していた。
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