企画展「表現の不自由展・その後」
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「あいちトリエンナーレ」の記事における「企画展「表現の不自由展・その後」」の解説
2019年3月27日、あいちトリエンナーレ2019の企画発表会の際に、「表現の不自由展」が行われることと、その展示主旨が公表される。 2019年7月29日、芸術祭実行委員会の大村秀章愛知県知事は「表現の不自由展・その後」実行委員会(アライ=ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三)と7月1日付で契約書を締結し、7月31日(開催前日)に愛知県芸術文化センター8階の愛知県美術館ギャラリーで企画展「表現の不自由展・その後」が開催されることが発表された。会場は愛知県芸術文化センター8階、愛知県美術館ギャラリー。 「表現の不自由展」は、新宿ニコンサロンが安世鴻による元慰安婦の写真展を中止にした事件(ニコン慰安婦写真展中止事件)を契機に開催された企画展で「その後」は続編に位置付けられており、津田大介は群馬県と市民団体が裁判中により群馬県立近代美術館が展示を拒否した「群馬県朝鮮人強制連行追悼碑」に展示依頼を出すなど展示の拡充が行われた。 この企画展は芸術監督の津田大介が招聘し、不自由展実行委員会の必要経費を立て替えて実現させたもので、企画内容は芸術監督の津田大介、不自由展実行委員会の間で決定され、チーフキュレーターの飯田志保子は関わっていなかった。 企画テーマは『「慰安婦」問題、天皇と戦争、植民地支配、憲法9条、政権批判など、近年公共の文化施設で「タブー」とされがちなテーマの作品が、当時いかにして「排除」されたのか、実際に展示不許可になった理由とともに展示した』だが、後述する『平和の少女像(日本政府の呼称は「慰安婦像」)』や大浦信行の『遠近を抱えて PartII(「昭和天皇の肖像写真を燃やし、その灰を靴で踏みつける」表現が批判の対象となった)』などの炎上した作品は「排除」されたことはない。 キュレーションは安倍晋三内閣総理大臣の影響を受けており、慰安婦問題に関連した展示が多い理由は「安倍晋三政権が(慰安婦被害を)目につかないようにしたからこそ、そうなっただけ」と説明されている。そのほかにも「安倍政権の右傾化への警鐘」を掲げた『時代の肖像ー絶滅危惧種』、「ABE IS OVER」を掲げた『マネキンフラッシュモブ』、安倍政権の圧力で海外に出展できなかったと主張する『気合い100連発』などの表現物が展示された。 開催の前日、美術批評家の黒瀬陽平は以下の見解を示している。 公立美術館では、ほとんど前例がない美術展。だが規制にもいろんなレベルがあり、すべてを「表現の自由」でくくるのは、危険な面もある。規制された作品を集めただけでは、スキャンダリズムと変わらない。公共施設や公金を投じた事業である以上、市民の疑問やクレームに答える義務が発生する。作者や主催者が美術としての論理や価値をしっかり示すことができれば、成功したと言えるだろう。 黒瀬の懸念は的中し、キュレーター不在で設置した展示会場は、質の高い鑑賞空間の構築に失敗し、開催3日目で中止が決定された。文化芸術の発展を目的に文化庁が支援した国際芸術祭に日韓外交戦争などの政治問題を持ち込んだことは『あいちトリエンナーレの期待水準に達しない、また「芸術の名を借りた政治プロパガンダ」と批判される展示をみとめてしまった。(あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 中間報告)』と批判の対象となり、日本の文化振興政策にも影響を与えた。 『表現の不自由展』展示作品一覧 作家名作品名形態施設理由備考安世鴻 重重―中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の女性たち 写真 ニコンサロン 開催すれば関係者に危険が及んだり、不買運動が起きたりするリスクがあり判断されたため ニコン慰安婦写真展中止事件を参照。 大浦信行 遠近を抱えて PartII 版画映像 新作 (撤去の実績なし) 「遠近を抱えて」の続編として制作。昭和天皇の御真影を大写しにして、ガスバーナーで燃やし、燃え残りの灰を足で踏みつぶす映像(産経新聞)。 大橋藍 アルバイト先の香港式中華料理店の社長から「オレ、中国のもの食わないから。」と言われて頂いた、厨房で働く香港出身のKさんからのお土産のお菓子 テキスト菓子 国立新美術館 お菓子が腐敗するため 岡本光博 落米のおそれあり 絵画 沖縄県うるま市観光物産協会 地域活性化のイベントに不適切とされたため キム・ソギョンキム・ウンソン 平和の少女像(ミニチュア) 造形 東京都美術館 運営要綱(特定の政治・宗教に関連する展示はできない)に抵触したため 韓国ソウル日本大使館前にある慰安婦像のミニチュア キム・ソギョンキム・ウンソン 平和の少女像(複製) 造形 在大韓民国日本国大使館 (撤去の実績なし) (非公開) 9条俳句 色紙 さいたま市大宮区の公民館だより 「公平中立の立場から好ましくない」とされたため 句の内容は「梅雨空に 『九条守れ』の 女性デモ」 小泉明郎 空気 #1 絵画 東京都現代美術館 天皇の肖像を扱っているため 嶋田美子 焼かれるべき絵 / 焼いたもの 版画写真 不明 不明 昭和天皇の御真影の顔を剥落した銅版画加工 白川昌生 群馬県朝鮮人強制連行追悼碑 造形 群馬県立近代美術館 群馬県が係争中の事件(朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑訴訟)に関連した作品のため 趙延修 償わなければならないこと 絵画 千葉市美術館 地域交流がテーマのイベント(「ウリハッキョと千葉のともだち展」)で政府批判を展開するのは不適切とされたため 在日朝鮮人高校生による慰安婦問題日韓合意を批判した作品 Chim↑Pom 気合100連発 映像 ある国のトリエンナーレ? 安倍政権の圧力? 森美術館の所蔵品 中垣克久 .mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}時代(とき)の肖像―絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳― 造形0 東京都美術館 作品に貼られた紙が「直接的な政治的メッセージにあたる」とされたため 作品に貼られていた文言は「憲法九条を守り、靖国神社参拝の愚を認め、現政権の右傾化を阻止して、もっと知的な思慮深い政治を求めよう」 永幡幸司 福島サウンドスケープ 映像 千葉県立中央博物館 「特定の者に対する批判と受け取られる可能性のある表現」が「公正を期さなければいけない」公立博物館としてふさわしくないとされたため 藤江民 Tami Fujie 1986 work 版画 富山県立図書館 (撤去されたか不明) 1994年、富山県立近代美術館に出展された作品。富山県立図書館に寄贈を申し込んだが、拒否された マネキンフラッシュモブ パフォーマンス 映像 海老名市 自由通路での集合やデモを禁止した市条例に抵触するため 海老名駅前の自由通路で行われた「アベ政治を許さない」などと書かれたプラカードを掲げたパフォーマンス 横尾忠則 ラッピング電車の第五条案「ターザン」 写真 JR西日本 JR福知山線脱線事故の被害者遺族に配慮したため 暗黒舞踏派ガルメラ商会 版画 ニューヨーク近代美術館? (撤去されたか不明) ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「TOKYO 1955-1970:新しい前衛」展で旭日旗を用いた作品が在米韓国人団体から批判された(戦犯旗問題)が、実際に撤去されたかは不明。
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