予防の可能性
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検診 人の血液にのみ反応する免疫便潜血検査は、スクリーニングとしての精度(感度)は低いが安価で検査への負担の少ない検診の方法として、現在日本では概ね(自治体や各企業により違いがあるが)35歳から40歳以上の人に対して推奨されている。健康診断の「大腸がん検診」はほとんどの場合これをさす。便潜血は単回検査では感度は低いが、複数年に渡り毎年施行した場合の「プログラム感度」は95%以上であり、早期大腸癌発見と大腸癌死減少に有用である。 血液検査による腫瘍マーカー(CA 19-9やCEA)による検診・人間ドックの方法もあるが、病期が進行するまで異常値を示さない場合が多く早期発見にはつながりにくい。そのため、年齢や生活習慣および病歴などからみたハイリスクグループには、大腸内視鏡による検診が推奨されている。 大腸癌検診を受けている人では、大腸癌による死亡率が低い。 検査 ハイリスクグループや何らかの症状のある人は検査を受けるべきである。ほとんどの大腸がんは、腺腫性ポリープから発生する。これらの病変は大腸内視鏡検査で検知可能で除去可能である。50歳から始めて5年か10年毎に一度のこの内視鏡検査と病変の除去で、がん死のリスクを80%以上減少させることができる。 米国全国総合がんネットワークによる現在のガイドラインにおける限り、大腸がんの家族歴がなく、腺種や炎症性腸疾患の病歴がない平均的な対象者で、5年毎のS字結腸の内視鏡検査と毎年の便潜血反応検査、あるいは、バリウム注腸二重造影検査は、10年毎の内視鏡検査よりも望ましい検査方法であるとされている。 生活習慣及び栄養 様々な国々での大腸がんの発生を比較すると、座り作業で、高カロリー食品の食べ過ぎ、多量の赤肉または加工肉の摂取は大腸がんの発生のリスクを高めることを強く示唆している。反面、健全な体重、適度な運動、良い栄養は一般的にがんのリスクを下げる。生活習慣を変えることにより大腸がんのリスクを60-80%下げることができると言われている。 身体活動量の多い人で大腸癌リスクが低くなるという報告がある。 便通は、大腸癌リスクと関係ない。下痢便は、直腸癌リスクと関連があるかもしれないという報告がある。 野菜・果物をたくさん食べても大腸癌リスクは変わらず。 果物、野菜、シリアルその他の食物繊維の多量の摂取は、大腸がんと腺種のリスクを下げると考えられてきた。この理論を検証するため16年にわたる88,757人を対象とした調査では、食物繊維の多い食事は大腸がんのリスクを下げてはいなかった。2005年の別の調査でもその結果を支持している。 ハーバード大学公衆衛生学部は「食物繊維の摂取は、健康効果のある健全な食事としてもてはやされ、心臓病、糖尿病、憩室疾患、便秘を含む様々な疾患のリスクを減少させていた。多くの人が信じていたにも関わらず、食物繊維には大腸がんのリスクの減少の効果はほとんど認められなかった。」と発表している。 世界保健機関(WHO)と国際がん研究機関 (IARC) による、「生活習慣とがんの関連」についてのリスクを下げるもの、リスクを上げるものに関する報告がある。 生活習慣とがんの関連(WHO/IARC)関連の強さリスクを下げるもの(部位)リスクを上げるもの(部位)確実 身体活動(結腸) たばこ(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、骨髄性白血病) 他人のたばこの煙(肺)過体重と肥満(食道<腺がん>、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓) 飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、アフラトキシン(肝臓)、鹹魚|中国式塩蔵魚(zh:鹹魚)(鼻咽頭) 可能性大 野菜・果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸)身体活動(乳房) 貯蔵肉(結腸、直腸)塩蔵品および食塩(胃) 熱い飲食物(口腔、咽頭、食道) 可能性あり データ不十分 食物繊維、大豆、魚、ω-3脂肪酸、カロテノイド、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、亜鉛、セレン、非栄養性植物機能成分(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) 動物性脂肪 複素環式アミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物 ビタミンD アメリカ国立癌研究所は、ビタミンDの摂取が大腸がん及びその他のがんの予防効果について限定されているか証拠が不十分なので、大腸がん及びその他のがんの予防のためにビタミンDサプリメントの摂取を勧奨はしないとしている。 ビタミンDの摂取が少ないと直腸がんのリスクが高かったとの報告がある。 カルシウム 2つの無作為化比較試験の国際コクラン共同計画によるメタ分析によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。 カルシウムとビタミンDの両方を多く摂取するグループで大腸癌のリスクが低下したとの報告がある。 ある無作為化比較試験は、1,000mgのカルシウム成分と400IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった。 ω-3脂肪酸 魚由来のω-3脂肪酸およびトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低い。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられない。魚を食べても大腸癌のリスクが低下しないとの研究がある。 アスピリン 後述の#化学療法を参照のこと。 ビタミンB6 ビタミンB6を多く摂取するグループで大腸癌のリスクが低下したとの報告がある。 コーヒー コーヒーは女性の浸潤結腸がんを予防したとの報告がある。 酪酸菌及び酪酸 酪酸を生成する代表的な酪酸菌であるクロストリジウム・ブチリカムは、偏性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌である。クロストリジウム属のタイプ種でもある。芽胞の形で環境中に広く存在しているが、特に動物の消化管内常在菌として知られている。日本では宮入菌と呼ばれる株が酪酸菌の有用菌株として著名であり、芽胞を製剤化して整腸剤として用いられている。クロストリジウム属の一部の菌は酪酸菌として知られ、漬物の酪酸臭の原因となる。酪酸は、腸管増殖因子として作用し、抗炎症作用を有し、傷害腸管の修復にも関与している。腸内細菌が産生した酪酸が、ヒストンのアセチル化を促進し、p21遺伝子を刺激し、細胞サイクルをG1期で留めるタンパク質であるp21が大腸がんをG1期に留め置き大腸がんを抑制することが指摘されている。酪酸生成能が高いButyrivibrio fibrisolvensをマウスに投与したところ、酪酸生成量が増加し、発癌物質で誘発した大腸前癌病変の形成が抑制され、大腸がんを予防、抑制する可能性が指摘されている。大腸癌患者の糞便を健常者のものと比較すると有機酸濃度が低く、特にn-酪酸の濃度がとりわけ低値であったことが報告されている。
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予防の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 04:00 UTC 版)
大豆に含まれるイソフラボン成分であるゲニステイン濃度、ダイゼインの代謝物であるエコール濃度が高いグループの前立腺に限局する前立腺癌リスクは低くなる。イソフラボンの血中濃度が高いと、限局前立腺癌のリスクを低下させる。進行前立腺癌では作用しない。緑茶をよく飲むグループで進行前立腺癌のリスクが低下する。 他に肉食を控えて減塩し、新鮮な野菜や果物を中心にした食生活も効果があるとされる[要出典]。 2016年にハーバード大学公衆衛生教室から発表された、アメリカ人の男性を約20年間追跡調査した研究によると20代の時に月21回以上射精していた人の前立腺癌のリスクは、4~7回の人よりも2割少なかった。
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