えんしょうせい‐ちょうしっかん〔エンシヤウセイチヤウシツクワン〕【炎症性腸疾患】
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)には、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)とクローン病 (Crohn’s disease: CD)があり、いずれも、再燃と緩解を繰り返す、下痢、血便や腹痛を伴った難治性の慢性炎症疾患で国の難病(特定疾患)に指定されています。UCは大腸で発症し、CDは消化管全域において発症します。本症の原因は不明ですが、遺伝子的な素因によって、通常の腸内細菌に対して異常な免疫応答を示すことが病態発症につながることが推定されています。治療法には、生活指導、食事療法、アミノサリチル酸製剤やステロイド剤、免疫抑制剤などの薬物療法が挙げられます。無菌条件下で飼育した動物モデルでは、IBD様腸炎が発症しないことなど、IBDの発症・進展に腸内細菌の存在が重要であることが明らかになりつつあり、プロバイオティクス等腸内細菌をターゲットとした疾患予防法の開発が期待されています。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/03 09:10 UTC 版)
炎症性腸疾患 | |
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分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 消化器学 |
DiseasesDB | 31127 |
eMedicine | med/1169 emerg/106 oph/520 |
MeSH | D015212 |
GeneReviews |
炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん、英: inflammatory bowel disease、略:IBD)とは、主として消化管に炎症をおこす慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎(英: ulcerative colitis、略:UC)、クローン病(英: Crohn's disease、略:CD)の2疾患からなる。
感染性腸炎とは違い、この二疾患は主に自己免疫的な機序によると考えられている慢性疾患。治療はメサラジンに代表されるサリチル酸製剤、インフリキシマブに代表される抗TNF-α抗体、副腎皮質ステロイドなどを用いて寛解に導き、刺激の多い食事を控えて寛解を維持するという点で共通している。
感染性腸炎のカンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎、アメーバ赤痢(アメーバ性大腸炎)は間違いやすく、中でもカンピロバクター腸炎の鑑別は難しく、内視鏡検査、培養検査、抗体検査が併用される[1]。
脚注
- ^ 大川清孝、青木哲哉、上田渉 ほか、「非定型的炎症性腸疾患―診断と経過 炎症性腸疾患と鑑別困難な感染性腸炎の診断と経過―潰瘍性大腸炎との鑑別を中心に」 『胃と腸』(2006/5/25) 41巻6号、p.959-970、doi:10.11477/mf.1403100616
関連項目
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
- 身体障害 - 身体障害者福祉法 - 身体障害者手帳
- 障害者福祉
- 障害者基本法
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)
- 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
- 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
- 障害年金
外部リンク
- 炎症性腸疾患(IBD) - 日本消化器病学会ガイドライン
- Inflammatory Bowel Disease Genetics(IBD)(英語)- NIDDK
炎症性腸疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 02:05 UTC 版)
「エプスタイン・バール・ウイルス」の記事における「炎症性腸疾患」の解説
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)とは、主として消化管に慢性炎症を引き起こす疾患の総称であり、大腸に原因不明の炎症を起こす潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)と、全消化管(主として小腸・大腸)に原因不明の炎症を起こすクローン病(Crohn's disease;CD)の2疾患からなる。 古くには日本で、1999年に当時山口大学の研究者らが、外科的に切除した結腸検体(11例:クローン病、5例:潰瘍性大腸炎、9例:大腸癌における非病変部、10例:虫垂炎)におけるEBV感染を EBER-1(EBV-encoded small RNA 1)の in situ ハイブリダイゼーションによって調査している。結果としてはクローン病患者の切除標本11例中7例(63.6%)に、潰瘍性大腸炎患者の切除標本5例中3例(60.0%)にEBV感染が確認され、さらに潰瘍・びらんの分布とEBER-1陽性EBV感染細胞の分布が一致し、主なEBV感染細胞は粘膜上皮系細胞ではなく粘膜固有層のB細胞であった。 40例のIBD患者のうち17例の難治性のIBDにおいては定量リアルタイムPCR・免疫組織科学の検出により、EBVと同じヘルペスウイルス科のサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)・EBVの腸管感染が全員に確認でき、難治性でない23例からは13例(56.5%)に確認できたという研究もある。さらに定量リアルタイムPCR・免疫組織科学に加え in situ ハイブリダイゼーションによってCMV・EBVのIBD患者における感染を調べ、難治性かどうかによらずCMV・EBV感染細胞とそうでない細胞の分布が炎症した粘膜の分布と一致していること、CMV・EBVのウイルス量に比例して炎症の度合いや病気の活動度が高くなっていることを突き止めた研究もある。しかし、PCRによる検出のみの結果ではあるが、炎症部とそうでない部分にあまりウイルス量の差異がないという結果もある(それでもなおEBV、続いてCMV、の感染はIBD患者において普遍的であると結論づけている)。2018年には、62例の潰瘍性大腸炎・3例のクローン病・2例の中間性腸炎患者からの結腸切除検体におけるEBV感染を高感度EBER-1(EBV-encoded small RNA 1)の in situ ハイブリダイゼーションによって調べ、67例中40例(60%)の切除検体からEBVが検出され、難治性IBD患者においては炎症・潰瘍の深度とEBER-1の陽性度に正相関があることが結論づけられた研究もある。 近年、日本においてもEBVとIBDの関連が明らかとなっている。2017年に国立国際医療研究センターの研究グループは、PCRにて89例のIBD患者の大腸内視鏡における潰瘍の細胞検体におけるヘルペスウイルス感染を調べ、EBV:59.3%、CMV:24.4%、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6):39%、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7):39%、という存在率になっていたことを報告している。2018年に大阪市立大学・兵庫医科大学の研究者らは、PCRにて66例の潰瘍性大腸炎患者・54例のクローン病患者、29例の健常対照群の大腸粘膜細胞検体におけるヘルペスウイルス感染を調べ、潰瘍性大腸炎に関してはEBVが21.2%・CMVが15.1%、クローン病患者においてはEBVが9.3%・CMVが0%、健常対照群においてはEBVが0%・CMVが3.4%の存在率であり、HHV-6・HHV-7の存在率に関してはこの3つの群の中で統計的な差は見られなかったと報告し、CMVとEBVないしはHHV-6の共感染は結腸切除の重要かつ独立したリスク因子となっていると結論づけている。 また2001年に東海大の研究者らが参加した研究で、クローン病の腸管組織において産生が過多となっている炎症性のTh1サイトカインの一つIL-12と、そのIL-12のp40ユニットのホモログであるEpstein-Barr virus-induced gene 3(EBI3)のIBD患者の結腸粘膜における発現を、それらのmRNAをRT-PCRを用いることで検出し調べ(EBI3はEBVに潜伏感染したB細胞にて発現誘導される遺伝子である)、結果としてほとんど全ての潰瘍性大腸炎患者の炎症部・非炎症部両方に於いてEBI3の発現が増大しており、クローン病に於いては一部に認められた。また、IBD患者の回結腸の切除標本36例(うち潰瘍性大腸炎16例、クローン病20例)におけるEBV感染細胞・EBI3の発現をそれぞれ in situ ハイブリダイゼーション・免疫組織科学によって調べた研究では、潰瘍性大腸炎・クローン病の切除標本両方とも非活動的炎症部に比べ活動的炎症部に於いてEBV感染細胞・EBI3陽性細胞の数が増大していることがわかっており(この2疾患の間に特に統計的な差はなかった)、EBV感染細胞に於いてのEBI3の発現は潰瘍性大腸炎・クローン病共に限定的に起こっており、炎症性細胞の流入・増殖に続いて活動的な炎症部におけるEBV感染細胞の増大が起こり、これは局所的なEBI3の産生には寄与しないことが分かった。抗原提示細胞(樹状細胞・単球・マクロファージ)は、免疫応答を引き起こし持続させるために重要なIL-12ファミリーのサイトカインを放出し、IL-12p35・IL-12p19はIL-12p40と二量体を形成しそれぞれIL-12(IL-12p75)・IL-23を形成する。EBI3はIL-12p28と二量体を形成し、IL-27を形成する(IL-27はIL-6とTGF-βによるIL-17産生Th17細胞の誘導を直接的に抑制し、IL-6によるT細胞の増殖を阻止する。IL-27受容体を欠損させたマウスではIL-17を産生するTh17細胞性の実験的自己免疫性脳脊髄炎に非常にかかりやすくなることが知られている)。EBVに感染した腸管の粘膜上皮細胞はEBI3・IL-12p35・IL-12p19を発現するが、IL-12(IL-12p75)・IL-23・IL-27の形成に必要なIL-12p40・IL-12p28の共発現は起こさないので、EBI3・IL-12p35・IL-12p19と関わる未知のIL-12関連分子の存在が示唆された。最終的には、EBI3が制御性T細胞の転写因子Foxp3の下流標的遺伝子であることが判明し、EBI3はIL-12p35と二量体を形成することで免疫抑制系のサイトカインの一種であるIL-35を形成し、このIL-35はFoxp3を発現する制御性T細胞の増大と免疫抑制系サイトカインのIL-10の産生増大に寄与しTh17細胞への分化を阻止することが判明した(IL-35はマウスのコラーゲン関節炎を効率的に抑制したが、IFN-γの合成も増大した)。EBI3をノックアウトしIL-35を欠損させたマウスではTh1・Th17細胞性の腸炎が発症することが分かっている。 IBDの治療においてよくアザチオプリン・メルカプトプリンといったチオプリン系の免疫抑制剤、TNF-α拮抗剤(インフリキシマブ・アダリムマブ)が用いられるが、これはEBVによる日和見リンパ腫のリスク因子となることが分かっている。IBD患者における悪性リンパ腫発症のスペクトルを調べた研究もあり、腸粘膜において異型性浸潤が見つかった場合、EBVの検査をするべきと結論づけている研究もある。 また、小児のIBDに先天的EBV特異的免疫不全症を引き起こすX連鎖リンパ増殖症候群(X-linked lymphoproliferative syndrome;XLP、ダンカン病)の原因遺伝子のうちの一つXIAPに変異があることがよくある(4%)。
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