炎症性腸疾患(IBD)と腸管癌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:02 UTC 版)
「自然リンパ球」の記事における「炎症性腸疾患(IBD)と腸管癌」の解説
IL-17を産生するNCR- ILC3は、クローン病患者の腸内に多く存在する事から、IBDの病態生理に寄与しているとの研究結果が出ている。また、クローン病患者の腸管粘膜に存在するILC1の数は、ILC全体の約10%から40%に増加しており、ILCの増加は病気の重症度と相関している。腸内のILC3とILC1の可塑性がクローン病の重要な因子である事を示唆する証拠があり、樹状細胞が産生するIL-12にさらされるとILC3がILC1に分化する。しかし、腸内に存在するIL-23、IL-1B、レチノイン酸は、分化したILC1をILC3に戻す様に促す事が出来る。また、クローン病患者の腸内にはIFN-γを産生するILC2が存在し、サイトカインなどの特定の環境因子に反応して、ILC2が炎症誘発性の表現型を獲得する能力がある事も示唆されている。 IBD患者は、慢性炎症時にILC3がILC1の炎症促進表現型を獲得すると、慢性炎症により腸管癌になるリスクが上昇する。IBD患者の腸内にはILCが蓄積している為、ILCが腫瘍化を促進する役割を担っているのではないかと考えられている。これを裏付ける様に、腸癌の腫瘍微小環境では、炎症誘発性サイトカインであるIL-23、IL-17、IL-22の量が増加しているという研究結果がある。 NK細胞は、抗腫瘍効果のあるIFN-γを分泌する。複数の研究で、腸癌患者の腸や末梢血に存在するNK細胞とIFN-γの量が低下している事が示されている。腸癌の環境におけるこれらの細胞の正確な役割については、更なる研究が必要である。
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