腫瘍微小環境
腫瘍微小環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:02 UTC 版)
自然リンパ系細胞の様々なグループは、幾つかの方法で腫瘍形成に影響を与える。 ILC1は、最も重要な抗腫瘍能力を持つILCの集団であり、NK細胞は腫瘍細胞の表面の欠損したMHCクラスIを認識する能力を持っており、MHCクラスI上に外来抗原を提示している腫瘍細胞を認識して殺す細胞傷害性T細胞と補完的に作用する。NK細胞は細胞表面に、腫瘍細胞上に過剰に発現したストレス誘導リガンドに特異的なNK細胞活性化受容体を多数発現している。 ILC1は、サイトカインであるIFN-γとTNF-αを産生することで腫瘍微小環境に影響を与える。IFN-γとTNF-αは、免疫反応の初期に、M1マクロファージ(英語版)、樹状細胞、細胞傷害性T細胞などの他の免疫細胞を極性化させ、炎症環境を作り出す。上手くいけば、これらの細胞が集まって来て、腫瘍化した細胞を殺す事が出来る。しかし場合によっては、IFN-γやTNF-αが骨髄由来抑制細胞(英語版)等の免疫抑制性の免疫細胞や抗炎症性サイトカインを誘導し、腫瘍細胞が逃避出来る様な免疫環境を作ってしまう事もある。 腫瘍監視におけるILC2とILC3の役割は、これらの細胞が存在する組織の微小環境に依存している。 ILC2は、IL-13、IL-4、アンフィレグリン(英語版)等の抗炎症免疫反応を促進するサイトカインを産生し、腫瘍の成長を促進する。しかし、状況によってはILC2がIL-5を産生し、好酸球の細胞障害性反応を促進する事で、抗腫瘍性反応を惹起する場合がある。 ILC3もまた、腫瘍の増殖または抗腫瘍の環境に関与し得る。IL-17の産生は血管の透過性を亢進させるので、腫瘍の成長と転移を促進するが、ILC3の表面にあるMHCクラスIIのアップレギュレーションは、CD4+T細胞を活性化し、抗腫瘍効果を発揮する。また、ILC3は、肺癌における三次リンパ系構造の形成を促進し、保護的な役割を果たす事が報告されている。
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