栄養価及び効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 01:05 UTC 版)
野菜の多くは無機塩類やビタミン類、食物繊維、抗酸化物質を含むフィトケミカルが豊富で、癌予防を含めた各種健康維持に役立っている。 野菜は、果物とともに癌予防の可能性が大きいものとされている。 デザイナーフーズ計画は、1990年代、アメリカ国立癌研究所 (NCI) によって2000万ドルの予算でがんを予防するために、フィトケミカルを特定して加工食品に加える目的で開始された計画である。デザイナーフーズ計画では、がん予防に有効性のあると考えられる野菜類などが40種類ほど公開された。デザイナーフーズ計画で発表された野菜はつぎのとおり。 にんにく、タマネギ(ユリ科) ニンジン、セロリ、パースニップ (セリ科) トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ(ナス科) キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ(アブラナ科) キュウリ(ウリ科) 香辛料では甘草(リコリス )、ショウガ、ウコン(ターメリック)、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノであり、豆類では大豆である。 野菜などで変異原性物質Trp-P-1(3-amino-1,4-di-methyl-5H-pyrido[4,3-b]indole)に対して抗変異原性を示すものは次のようなものがある。 抗変異原性++++:ダイコン(葉)、キクナ、アスパラガス、ピーマン、キュウリ 抗変異原性+++:ニラ、ハクサイ、ゴボウ 抗変異原性++:ネギ、ホウレンソウ、パセリ、レタス、ズイキ、ニンジン、ショウガ、サツマイモ、ラディッシュ、ナス、キャベツ、ブロッコリー、シイタケ 抗変異原性+:チンゲンサイ、コマツナ、セロリ、レンコン、カブ、ダイコン(根)、オクラ、ウリ 野菜などで変異原性物質NIHP(2-ヒドロキシ-3-(1-N-ニトロソインドリル)-プロピオン酸)に対して抗変異原性を示すものは次のようなものがある。 抗変異原性++++:トマト、タマネギ 抗変異原性+++:ナス、キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ダイコン(根)、エノキ、シメジ 抗変異原性++:アスパラガス、シイタケ 抗変異原性+:コマツナ、トウガラシ キャベツ、ブロッコリー、ゴボウ、ナス、ショウガ等に強い抗変異原性があることが知られている。加えて、エストラゴン、オレガノ、ギョウジャニンニク、シロザ、タイム、ツクシ、フキノトウ、モミジガサ、レモンバームの野菜類9種にもTrp-P-1に対して強い抗変異原性があり、キク科、シソ科、アブラナ科、セリ科の植物に抗変異原性があるものが多い。 2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防」が報告され、野菜についても以下のようにコメントされている(詳細は「食生活指針」を参照のこと)。 植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。推奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。トランス脂肪酸は心臓病のリスクとなるが、がんへの関与は知られていない。 腎臓に障害がなくカリウムを摂取しても問題がなければ、カリウムを豊富に含む野菜や果物の摂取を増やすことにより血圧の降圧が期待できる。 スイスのバーゼル大学の生理学者、グスタフ・フォン・ブンゲ (de:Gustav von Bunge) は、肉を食べると含硫アミノ酸(メチオニン、システインなど)のチオール基が硫酸に代謝され、体組織を酸性にするのでアルカリ性のミネラルを摂取する必要がある、と主張した。2002年のWHOの報告書では、カルシウムの摂取量が多い国に骨折が多いという「カルシウム・パラドックス」の理由として、カルシウムの摂取量よりも、タンパク質によるカルシウムを排出させる酸性の負荷の悪影響のほうが大きいのではないか、と推論されている。 ハーバード大学で、栄養学を教えているウォルター・ウィレット教授は、タンパク質を摂取しすぎれば酸を中和するために骨が使われるので骨が弱くなる可能性がある、として注意を促している。野菜は果物とともにアルカリ性食品に分類されている。 詳細は「酸性食品とアルカリ性食品」を参照 ヒトの消化管は自力ではデンプンやグリコーゲン以外の多くの多糖類を消化できないが、大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することによって、一部が酪酸やプロピオン酸のような短鎖脂肪酸に変換されてエネルギー源として吸収される。食物繊維の大半がセルロースであり、人間のセルロース利用能力は意外に高く、粉末にしたセルロースであれば腸内細菌を介してほぼ100%分解利用されるとも言われている。デンプンは約4kcal/g のエネルギーを産生するが、食物繊維は腸内細菌による醗酵分解によってエネルギーを産生し、その値は一定でないが、有効エネルギーは0~2kcal/gであると考えられている。また、食物繊維の望ましい摂取量は、成人男性で19g/日以上、成人女性で17g/日以上である。食物繊維は、大腸内で腸内細菌によりヒトが吸収できる分解物に転換されることから、食後長時間を経てから体内にエネルギーとして吸収される特徴を持ち、エネルギー吸収の平準化に寄与している。 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)では、望ましい野菜の摂取量は成人1人1日あたり350g以上とされている。日本人の平均ではこの目標に対して8割程度の摂取量にとどまっており、若年層においては7割~6割程度にとどまっている状況にある。平成24年の調査では20歳以上の日本人の平均野菜摂取量は、286.5g/人日であった。所得と生活習慣等に関する状況の調査においては、所得が高いほど野菜摂取量が多く、所得が低いほど野菜摂取量が低い傾向が見られた。
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