がんへの関与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 09:41 UTC 版)
β-カテニンはがん原遺伝子である。この遺伝子の変異は、原発性肝細胞がん、大腸がん、卵巣がん、肺がん、膠芽腫などさまざまながんで一般的にみられる。シーケンシングされたあらゆるがん組織試料のうち約10%でCTNNB1遺伝子の変異がみられると推計されている。こうした変異の大部分はβ-カテニンのN末端の小さな領域、β-TrCP結合モチーフに集中している。このモチーフの機能喪失変異は、β-カテニンのユビキチン化と分解を基本的に不可能にする。そのためβ-カテニンは外部刺激がなくとも核へ移行し、継続的に標的遺伝子の転写が駆動される。核内のβ-カテニンレベルの増加は基底細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、毛母腫(英語版)、髄芽腫でも指摘されている。これらの観察結果はβ-カテニン遺伝子の変異を示唆している場合もそうでない場合もあり、Wnt経路の他の構成要素の異常の結果である可能性もある。 同様の変異は、APCのβ-カテニン結合モチーフでも高頻度で見られる。遺伝性のAPC機能喪失変異は家族性大腸腺腫症と呼ばれる疾患を引き起こし、患者の大腸には数百のポリープが生じる。これらのポリープの大部分は良性であるものの、時間の進行とともに致死性のがんへと形質転換を行う可能性がある。大腸がんではAPCの体細胞変異も稀ではない。β-カテニンとAPCは、K-RasやSMAD4(英語版)とともに、大腸がんの発生に関与する重要な遺伝子である。もともと上皮性の表現型を示していた細胞を浸潤性の高い間葉型へと変化させるβ-カテニンの能力は、がんの転移に大きく寄与している。
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