メメントモリ
「メメントモリ」とは、「死を意識せよ」「いつか必ず死ぬということを心に留めておけ」という意味のラテン語の箴言(アフォリズム)である。日本語では「死を想え」「汝死を忘る勿れ」のように訳されることが多い。
「メメントモリ(memento mori)」はラテン語の表現である。「memento」は英語の「remember」に相当し、同じく「mori」は英語の「die / death」に相当する。
「memento mori」を英語に直訳すれば「remember to die(死を忘れるな)」あるいは「remember that you have to die(お前は必ず死ぬ、ということを忘れるな)」ということになる。
「メメントモリ(memento mori)」という言葉は、多種多様に解釈できる。古代ローマでは「一寸先は闇(明日も命があるとは限らない)(だから今を楽しめ)(だから気を引き締めて生きよ)」といった意味合いで用いられていたとも言われている。西欧キリスト教文化の下ではキリスト教的死生観を象徴する言葉となり、絵画をはじめとする芸術作品のモチーフとして多用された。
芸術作品のモチーフ(題材)としての「メメントモリ」は、「人はいつかは死ぬ」こと、「死は身近にある」こと、そして「現世の栄華は虚しい」こと、「今を精一杯生きるべきである」こと、等々のメッセージを観る者に投げかける。
ゲーム「メメントモリ」とは
ゲームの分野における「メメントモリ」は、バンク・オブ・イノベーションが2022年に配信を開始したゲームアプリの名称である。通称「メメモリ」。プラットフォームはスマートフォンおよびPCに対応している。ゲーム「メメントモリ」は、「神の呪い」や「魔女狩り」が存在するファンタジー世界を舞台に、過酷な運命を負った美少女たちが戦いを繰り広げるPRGである。美麗イラスト、豪華声優陣、全キャラクターの専用曲が用意されている点などが特徴である。アイテム課金制でプレイ自体は無料。
ゲーム「メメントモリ」における「ゴールド」は、ゲーム内の通貨のことである。「ダイヤ」は、ガチャをひくためのアイテム(いわゆる「課金石」)。「ルーン」はキャラクターのパラメータを強化するアイテムのことである。
ゲーム「メメントモリ」は配信当初から大きな注目と期待を集めた。2022年10月の配信開始タイミングに連動して、バンク・オブ・イノベーションの株価は約4倍に跳ね上がった。「メメントモリ」は配信開始から同年12月末までの間に累計DL数が200万弱に達している。
メメントモリ
「メメントモリ」の基本的な意味
「メメントモリ」の基本的な意味は、「いつか自分が死ぬことを忘れるな」「死を想え」である。日常生活を送っている内に、死というものを忘れそうになる人に対して、死を意識させるための言葉として使用される。そして、細かな意味合いは、使用する場面に応じて異なる。人は永遠に生きられない、栄華は続かないという戒めとして用いられることもあれば、人はいずれ死ぬものであるため、今を楽しんだ方が良いという意味合いで使う場合もある。また、死に関係する作品のタイトルなど、固有名詞でメメントモリが使われることも多い。その場合、「メメント・モリ」「ミミントモリ」といったつづりになる場合もある。「メメントモリ」の語源・由来
「メメントモリ」は、ラテン語の「memento mori」が由来である。「memento」が「覚えること」、「mori」が「死」を意味する。その音の響きを元に、カタカナ表記したのがメメントモリであり、意味は同じだ。古代ローマでは、戦いに勝利し、凱旋した将軍に対して、使用人が「memento mori」という言葉を使用した。「今日は勝ったが、明日以降はどうなるかわからない。常に死を想え」と、将軍に釘を刺すことが目的であった。そして、いずれ死ぬのだから、今を楽しもうという意味の言葉として、一般人に浸透することとなった。それが、キリスト教の世界においては、いずれ死ぬのだから、現世の栄光や楽しみに執着してはいけないという意味の言葉となった。そのような経緯があるため、現代で使われるメメントモリは、場面によって意味合いが異なる。
「メメントモリ」の類語
「メメントモリ」の類語としては、「ヴァニタス」が挙げられる。人はいずれ死ぬため、生とは空しいものであるという意味の言葉だ。キリスト教における、メメントモリに近い意味合いを持つ。また、今を楽しめという意味の「カルペ・ディエム」も、メメントモリの類語である。「メメントモリ」の対義語
「メメントモリ」の対義語としては、「カルペ・ディエム」が挙げられる。メメントモリの類語でもあるが、死を忘れるなというメメントモリに対して、死を意識せずに今を大切にしろという、反対の意味合いになる場合もある。「メメントモリ(ゲームアプリ)」とは
ゲームアプリの「メメントモリ」は、魔女狩りをテーマにした作品である。特別な能力を持つことで、魔女として迫害された少女たちが、死にたくないという思いを抱えながら、世界を取り戻していくという内容だ。その独特の世界観によって、多くの人の心を惹きつけ、アプリのセルランでは上位に入ることが多い。キャラのグラフィックと音楽に力が入っており、キャラごとに専用楽曲が用意されている。基本的なプレイは、バトルによって敵を倒し、素材を手に入れるというものだ。バトルは、アプリを起動していない間も進行する。また、他のプレイヤーとギルドを組み、ギルド同士で戦うギルドバトルも行える。そして、序盤に強いキャラを手に入れた方が、効率的にゲームを進められる。そのため、初回のボーナスガチャで、強いキャラが出るまでゲームをリセットする、リセマラを行うプレイヤーは少なくない。
「メメントモリ(デッドバイデイライト)」とは
ゲームであるデッドバイデイライト、dbdにおける「メメントモリ」は、キラーが持つ能力のひとつだ。dbdでは、キラーとなったプレイヤーは、他のプレイヤーが操るサバイバーを、フックに吊るして処刑しなければならない。そのフックに吊る動作を省き、サバイバーを直接処刑できるのがメメントモリである。「メメントモリ(モンストアニメ)」とは
モンストの「メメントモリ」は、アニメ1期に登場した闘神キャラである。喪服を着用し、頭には大きな彼岸花を着けているという、死を連想させるデザインのキャラだ。人の心を魂の牢獄に閉じ込める能力を持ち、主人公のライバルである神倶土春馬に憑依した。「メメントモリ」を含むその他の用語の解説
メメントモリ(漫画)とは
「メメントモリ」は、女性をメインターゲットとした作品である。羽曳野凜と桐条緋生という、異母兄弟が主人公だ。そして、凛を守るために緋生が命を落としたことをきっかけに、死神にまつわる能力が目覚めるという内容である。
「メメントモリ」の使い方・例文
「メメントモリ」は、「死を忘れるな」「生に執着するな」「今を楽しむ」といった考え方を指すために使用する。例文にすると、「今生きていることに感謝するためには、メメントモリが重要である」「現世の栄光にすがりすぎている彼は、メメントモリの考えを取り入れた方が良いかもしれない」「彼女は、メメントモリの精神で、自分の生きたいように生きている」といった形だ。メメント‐モリ【(ラテン)memento mori】
メメントモリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/29 06:51 UTC 版)
メメントモリ(Memento mori)
- メメント・モリ - ラテン語の警句。
文学
- 藤原新也著『メメント・モリ:死を想え』(1983年)
- 日野原重明著『メメント・モリ:死を見つめ、今を生きる:死を想え』(2009年)
- 原田宗典著『メメント・モリ』(2015年)
- 岡和田晃編集『メメント・モリ〈死を想え〉:
病疾 ()に蠢く死の舞踏』〈ナイトランド・クォータリー〉vol. 25(2021年)
映像作品
- 映画『メメント』(2000年公開) - 原案『Memento Mori』(短編小説)。
- メメント・モリ (X-ファイルのエピソード) - 『X-ファイル』のエピソード。
音楽
- 花 -Mémento-Mori- - Mr.Childrenの11枚目のシングル曲。
- memento mori - BUCK-TICKのアルバムおよびその収録曲。
- メメント・モリ (デペッシュ・モードのアルバム) - デペッシュ・モードのアルバム。
- メメント・モリ - ReoNaの楽曲『HUMAN』に収録している。
- メメント・モリ - 大森元貴のアルバム『French』の二曲目に収録
ゲーム
- メメントモリ (ゲーム) - バンク・オブ・イノベーションが配信しているスマートフォンおよびパーソナルコンピュータ向けゲームアプリ。
メメント・モリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/25 15:57 UTC 版)
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メメント・モリ(羅: memento mori)は、ラテン語の成句で「死を想え[1]」「死を忘るるなかれ[2]」、つまり「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」といった意味の警句。芸術作品のモチーフとして広く使われる。
歴史


「メメント・モリ」という成句の初出は、『オックスフォード英語辞典』(OED)によれば、シェイクスピア『ヘンリー四世 第1部』第3幕第3場である[6][7][8]。ただし、「メメント・モリ」にあたる思想は古代からある[7]。
古代ローマでは、将軍が凱旋式のパレードで歓声を浴びている際、将軍の後ろに立つ奴隷が「あなたは(不死身の神ではなく)いつか死ぬ人間であることを忘れるな[注釈 1]」と忠告する文化があった[9][注釈 2]。あるいは、詩人ホラティウスが「今を生きろ」(カルペ・ディエム)、「今は飲むべきだ、今は気ままに大地を踏み鳴らすべきだ[注釈 3]」として、限りある人生の謳歌をうたった。古代ローマの宴会では、同様の謳歌を出席者がうたう文化があり、その際はテーブルの上に骸骨の人形(larva convivialis)が置かれた[12][13]。この骸骨人形はポンペイなどから出土している[12]。またポンペイの出土品には、同様の謳歌を描いたと推定される骸骨のモザイク画もあり、『メメント・モリ』の題で呼ばれている[3][4][5]。以上の他、マルクス・アウレリウス『自省録』などストア派の書物や、プラトン『パイドン』、聖書の『詩篇』などにも「メメント・モリ」にあたる思想が説かれている[14]。
中世ヨーロッパでは、ペストや戦火により死が社会全体にあふれ、後述の「死の舞踏」など、「メメント・モリ」にあたる思想が流行した[15]。
京都学派の哲学者として知られる田辺元は、最晩年に「死の哲学(死の弁証法)」と呼ばれる哲学を構想した。その哲学の概略を示すために発表された論文が「メメント モリ」と題されている。田辺はこの論文の中で現代を「死の時代」と規定した。近代人が生きることの快楽と喜びを無反省に追求し続けた結果、生を豊かにするはずの科学技術がかえって人間の生を脅かすという自己矛盾的事態を招来し、現代人をニヒリズムに追い込んだというのである。田辺はこの窮状を打破するために、メメント・モリの戒告(「死を忘れるな」)に立ち返るべきだと主張する[16]。
関連作品
- 墓石

- 腐敗した死体を表現した墓(トランジ)は、15世紀にヨーロッパの富裕階級の間で流行した。
- 「死の舞踏」は、「メメント・モリ」の最も知られているテーマで、死神が貧乏人と金持ちを等しく連れ去っており、これはヨーロッパの多くの教会に飾り付けられた。その後の植民地時代のアメリカでも、ピューリタンの墓には翼を持つ頭蓋骨、骸骨、蝋燭を消す天使が描かれている。
- 静物画
- 芸術では、「静物画」は以前「ヴァニタス」(羅: vanitas、「空虚」)と呼ばれていた。静物画を描く際には、なにかしら死を連想させるシンボルを描くべきだと考えられていたからである。明らかに死を意味する骸骨(頭蓋骨)や、より繊細な表現としては花びらが落ちつつある花などが、よくシンボルとして使用されていた。
- 写真
- 写真が発明されると、親族の死体を写真で記録することが流行した。
- 時計
- 時計は、「現世での時間がどんどん少なくなっていくことを示すもの」と考えられていた。公共の時計には、 ultima forsan(ことによると、最後〈の時間〉)や vulnerant omnes,ultima necat(みな傷つけられ、最後は殺される)という銘が打たれていた。現代では tempus fugit(時は飛ぶ)の銘が打たれることが多い。ドイツのアウクスブルクにある有名なからくり時計は、「死神が時を打つ」というものである。スコットランド女王メアリーは、銀の頭蓋骨の形で表面にホラティウスの詩の一文が飾られた、大きな懐中時計を持っていた[17]。
- 文学
- イギリスの作品では、トーマス・ブラウンの『Hydriotaphia, Urn Burial』とジェレミー・テイラーの『聖なる生、及び聖なる死』がある。また、トーマス・グレーの『Elegy in a Country Churchyard』やエドワード・ヤングの『Night Thoughts』も、このテーマを扱っている。
脚注
注釈
出典
- ^ 『死を想え』 - コトバンク
- ^ “『身体巡礼』解剖的なひとのまなざし”. HONZ (2016年12月2日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b “人生を肯定した人々 「ポンペイ展」(2022.06.01)”. 京都大学新聞社/Kyoto University Press. 2024年11月21日閲覧。
- ^ a b “人生を謳歌、味わい尽くす美 特別展「ポンペイ」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2024年11月21日閲覧。
- ^ a b 本村凌二 監修、かみゆ歴史編集部 編『古代ローマ解剖図鑑』エクスナレッジ、2024年。ISBN 9784767832791。143頁。
- ^ Charlotte Brewer. “Shakespeare, Word-Coining and the OED.” Shakespeare Survey: A Midsummer Night's Dream, Peter Holland, ed., vol. 65, Cambridge University Press, Cambridge, 2012. pp. 353.
- ^ a b Blake Palmer. “Memento Mori: The Importance of Death for a Virtuous Life” (英語). Curationist. 2024年11月13日閲覧。
- ^ “Henry IV, Part 1 - Act 3, scene 3 | Folger Shakespeare Library” (英語). www.folger.edu. 2024年11月13日閲覧。
- ^ メアリー・ビアード著、宮﨑真紀訳『SPQR ローマ帝国史Ⅰ 共和政の時代』亜紀書房、2018年、ISBN 978-4-7505-1537-3。口絵9番。
- ^ テルトゥリアヌス 著、鈴木一郎 訳「護教論(アポロゲティクス)」『キリスト教教父著作集 第14巻』教文館、1987年。NDLJP:12214745。82頁。
- ^ “Tertullian: Apologeticum”. www.tertullian.org. 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b “Skeletons On The Table | Plymouth Brethren Writings”. plymouthbrethren.org. 2024年11月21日閲覧。
- ^ ペトロニウス『サテュリコン』34節
- ^ “History of Memento Mori” (英語). Daily Stoic (2018年8月2日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ 小林道憲「メメント・モリ」『生成流転の哲学 人生と世界を考える』ミネルヴァ書房、2024年。ISBN 9784623097357。271-272頁。
- ^ 田辺元(1964(1957))「メメント モリ」,『田辺元全集 第13巻』,pp165-175,筑摩書房 / 青空文庫
- ^ “'Memento mori' watch in the form of a skull, known as the 'Mary Queen of Scots' watch.”. Science Museum Group. 2022年9月11日閲覧。
参考文献
- ジョン・フィンレー著『一冊で学位美術史』2021年、246頁、ISBN 978-4-315-52484-0
関連項目
- その日を摘め (Carpe diem)
- 時は飛ぶ (Tempus fugit)
- 死は確実、時は不確実 (Mors certa hora incerta)
- ヴァニタス (Vanitas)
- 死生学
- バロック
- メメントモリ
- もののあはれ
- 無常
- 葬儀芸術
- Category:死生観
- Category:死と文化
外部リンク
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